●その頃の各国首脳の様子と……
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このお話は、180話「●その頃のM王国の様子と……」より少し前のお話です
◆◇◆ その頃の各国首脳の様子 ◆◇◆
ここは首相官邸のとある個室での出来事
「本日は私の呼びかけに集まっていただき感謝します」
「まぁ、参加しないわけにはいきませんからな」
「ですな」
そこには大型のディスプレイがあり、その画面はというと6つに分割され、それぞれにフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダの6か国の首脳の姿が映し出されていた。
所謂G7のメンバー勢揃いと言ったところであろう。
「それで修蔵、今回の趣旨をあらためて説明してもらえるかな?」
そう日本の総理に問いかけたのは、アメリカの大統領であるジョー・ウェストウッドである。
「そうですな。皆さんご存じの通り、現在世界各国にダンジョンが出来ました。このダンジョンについて、全世界で認識を統一し、相互援助組織を作りたいと思い、こうして皆様に声をかけさせてもらった次第です」
そこで語られた内容とは
世界各国が参加できる、ダンジョンに関連する情報を管理する組織を立ち上げたい。
その組織で行う主な業務内容は以下の通り。
・参加国全てが最終的に一つはダンジョンをクリアできるよう、様々な援助を行う
・人命にかかわる情報は必ず共有する
・人命に直接かかわりはしないが、様々な情報を有益な情報についても、可能な限り共有する
・ダンジョンを用いて非人道的な行いをしている国が無いか可能な限り監視し、その疑いがある場合は調査団を派遣する
・調査の結果ダンジョンを用いて非人道的な行いをした国があった時には制裁を与える
と言ったことが主な内容となる事を説明。
しかし、ここでフランス大統領ミシェルから次のような提案がだされた。
「それらを決める前に、まず最初にいくつか決めたいことがあるのだがよろしいか?」
「その決めたい事とは?」
「地球そのものの意思と言ったかね?あれの正式名称をまず最初に決めたいのだが」
そう、本人は名前を名乗っていないので、こういった会議の場でも地球そのものの意思と呼ばれているが、それではいささか長い。
なので、もっと簡略な呼び名を決めたいという提案だった。
そうして少しの間議論されたのだが、新たに名前を付けるよりはと言う事で、地球そのものの意思の事は「地球」と公式名が定められた。
次に、この会談の結果作られる組織の名前について。
こちらも様々な案が上がったが、最終的に「国際ダンジョン機関(World Dungeon Organization)」通称WDOとなった。
そして次に、この組織での取り決め的な事柄を決めていく雰囲気だったのだが……ここにきてドイツ首相から提案があった
「まず大前提としての取り決めを定めたい」
「大前提というと?」
「地球が言うには、セーフダンジョンは最大で100までらしいじゃないか。現状だと日本がその半数以上を獲得してしまうのではないかと、我々は危惧していてね?」
「それは……」
その発言に、言葉に詰まる修蔵であったが
「それは、確かに問題だな」
アメリカ大統領のジョーがしたり顔で同意した。
そして他の首脳たちもその点について同意したため、修蔵は何か考えがあるのかと問いかけるが
「それではどうしろと?まさかダンジョンをクリアするなとは、言わんでしょうな?」
各国首脳の言い分を聞くとなればダンジョンをクリアするなと言う事になってしまう。
しかしそうすれば5年後にはせっかくの宝の山が消えて無くなる事を意味する。
「まぁ、さすがにクリアをするなとは言えない。言えないが、攻略スピードを落としてもらう事を希望する」
「いや、攻略スピードはむしろ早めてもらっても構わない。こちらもそこから上がってくる情報は重宝しているのでね。ただ、クリア数に制限を設けさせてもらいたい」
どうやら各国首脳は、100の枠全てを早い者勝ちにするのではなく、各国での上限を設けたいと、そういう事らしい。
「ではその数をどう決めると?まさかGDPなり人口比なりで決めるとか言い出さないでしょうな?」
「それについてなんだがね、年間のクリア数に上限を設けたい」
「上限?例えば幾つを提案なされるのか?」
そこで提案された内容は、ダンジョン発生から4年間の間、各国最大で3つまで。
そして残り1年になった時、この制限を解除するという内容だった。
「馬鹿な!それでは4年目が終わるまでに最大12のダンジョンしかクリアできないではないか。それでは最終的に我が国の大半のダンジョンを放棄することになる!」
その発言を聞いた修蔵は、とてもその内容を受け入れるわけにはいかず、怒り心頭で言い返した。
しかしその発言に対し、他の国々もここは譲れないと言い返すが
「まぁ、待ちたまえ。4年で年3つはさすがに私も厳しいと思う。それに日本にばかりセーフダンジョンを持っていかれたくないのなら、皆さんも自国のダンジョン攻略を頑張ればいいだけだろう?」
ここにきてアメリカ大統領が日本の肩を持ち始めた。
その発言に、一部の首脳は裏切るのか?という視線を向けたが
「それに、大変なのは最初の1つをクリアするまで。1つをクリアしたら2つ目以降は時間の問題。そうなった時に困るのは皆さん方も一緒ではないかね?」
そう言われ、確かにそれでは4年縛りはかなり不利になる可能性が高いと思いなおしたのか、他の首脳たちも思案し始めた。
「そう考えると丸4年間制限をかけるのはナンセンスだよ。残り1年では残ったダンジョンのクリアにも支障が出る。しかし、制限なしというのも、日本にセーフダンジョンのほとんどを取られそうなのは現状では明白」
先ほどの内容と合わせて考えると、さすがに条件が厳しすぎたかと思いなおし、少々ばつの悪そうな表情をしていた。
「どうだろう?ここで意見が割れて今回の集まりがおじゃんになった場合、無制限になるどころか日本からの情報ももらえなくなる可能性まである。我々ももう少し譲歩する必要があるのではないかと、私は思うのだが?」
その意見にはさすがに反論できる首脳はおらず、ではどこまで譲歩するのかの話に移っていったが、結論として
「それでは丸3年が経過、または100のセーフダンジョンが出来るまでの間各国でクリアしていいダンジョンは年4つとすることで良いですかな?」
何とか年5つをもぎ取りたかった修蔵だった。
しかし、年4つでも3年毎年取れれば日本にあるダンジョンの1割がセーフダンジョンになるだろうと言われてしまえば、ここら辺が譲歩の限界と見て取るしかなかった。
それに4年目からは取り放題。
3年目が終わるまでは複数のダンジョンをクリア手前で止めておき、制限解除になれば一気に取りに行けばいいだろうという目論見もあるようだ。
これ以上無理をいってWDO設立が立ち消えとなった場合、日本が経済制裁などを食らう可能性が高い。
また、現在この場に参加していない他の国々もWDOに参加しなくなる可能性もある。
そして現在ここに参加している他の国々も、初年度はあきらめるとしても2年目以降は自国でもダンジョンクリアが出来るだろうという目算もある。
そうなった時を考えると、今回の制限がトータルでマイナスに働かないぎりぎりのラインが、このクリア数だったのだろう。
「ではWDOに参加する国には丸三年たつまでの間、セーフダンジョンは年4つまでという上限を守ってもらうのが大前提と言う事でよろしいですね?」
これに各国首脳は賛成し、WDOにおける最初のルールが決められたのだった。
その後、この組織で行うべき業務内容や、参加するにあたっての条件などについて話し合いが行われた。
しかし、いきなり全てが決まるわけもなく、それらについては次回持ち越しとなった。
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