戦って見せますか?いいえ、断ります
あーさー
今日はね、15時位までダンジョンに入って、その後は温泉に移動するそうです。
なのでいつもと比べると少し早めに出てくることになりそうなのでね、さっさとボスまで行って牛肉を取ってくるのです!
そしてダンジョンですが、5階層からなのでね、サクサク進んでボスに向かいます。
ところが、そろそろボス部屋というところで、ボス部屋の入り口の所に数人いるのを察知しました。
なので一回止まってみんなを呼び、小声で
「ねーねー、部屋の前の所に何人かいるよ」
「なんだろう、待ち伏せ?」
「一応自転車はしまいましょうか」
と言う事で自転車をしまって、歩きで移動することに。
次の角を曲がったらボス部屋の扉が見えるはずなのですが、楓さんが角から顔を出して覗いたところ、やはり6人の自衛隊員の方がいたそうです。
「いますね」
「どんな感じ?」
「休憩とも待ち伏せとも取れますね。半数が床に座っていて残り半数は周囲警戒しています」
「んー、少し待ってみるかなあ」
「でもそれだと時間なくなっちゃうよ?」
「そうだねぇ、ボス周回の回数へっちゃうね」
「少し戻って、どこかで早めのお昼にしますか?」
「そうしようか」
ということで、少し戻って行き止まりでお昼を取ることになりました。
一応ね、あの人たちがこっちに来ないとも限らないので、皆鎧を隠すためのコートを羽織る事にします。
もちろん、行き止まりの通路の入り口は塀を出して塞ぐ事も忘れずに。
そしてお昼ごはんはというと……
「うわ、ご飯の上に豚肉が乗ってる?」
「これはこの地方名物の豚丼ですね。豚肉を焼いて甘辛いタレをかけた物です」
「おぉ、おいしそー」
なんかね、普通に豚肉を焼いてご飯で食べるのとも、生姜焼きとも違う甘辛い、あえて言うなら焼き鳥のたれに似た感じのたれのかかったお肉と、そのたれのしみ込んだご飯がマッチしてとても美味しいです。
ミミちゃんにもちゃんとお肉を小さく切ったものが用意されているのでね、大満足です。
そうしてお昼を食べていたのですが……
「ねぇ、誰かこっちに来てるよ?さっきの人達かな?」
「んー、困ったな。ダンジョンの中では関わらないように話が行っていると思うんだけど……」
「とりあえず塀は消しちゃってください。見られないに越したことはないので」
と言う事なので、見られる前に消しちゃいましょう。
すると、消して少ししてから
「あ、本当にいた」
「おー、明るいな。これがライトの魔法か」
「ホントだ、飯食ってるよ。休憩中かな?」
「どうもー、君たちが例の一般人の人?良かったらこの後少し俺たちと一緒に行動しない?」
「是非君たちの戦い方見せてよ。噂だとすごいんでしょ?」
と、こちらはご飯を食べているのに遠慮なくどんどん話しかけられ、落ち着いて食べる雰囲気じゃなくなってしまいました。
そう思っていると榊さんがおもむろに
「ダンジョン内ではお互い不干渉、という取り決めになっているかと思うのですが?」
「そんな硬いこと言わずにさ、袖振り合うも何とやらっていうじゃない?困ったときはお互い様だしさ」
「私たちは何も困っては……いえ、一つ困ったことがありましたね」
「でしょでしょ、女の子たちだけでダンジョンにもぐるのって色々大変だよね?俺たちに協力させてよ」
「では、今とても邪魔な人たちがいるので排除してもらえませんか?」
「え?それって誰?どの人?言ってくれれば排除してあげるよ」
といった事を、にやにやとにやけながらというか、これは馬鹿にしているのでしょうか?
どうやら判ってやっているようですね。
「ねぇ、この事をあなたたちの上に報告したら、あなた達はただじゃ済まないと思うんだけど、いいの?」
「まってくれ、俺たちは何も君たちに危害を加えようというんじゃないんだ。ただ、一般人なのに助っ人に呼ばれる位だからどれだけ強いのかをだね」
「そうそう、その強さっていうのをさ、実際に戦って見せてくれるだけでいいんだよ」
「俺達にどんな凄い戦い方するのか見せてよ。このダンジョンのトップチームである俺たちよりも強いんだろう?」
んー、なんでしょう。一人は周りの人を諫めようとしてる感じですけど、何人かの方達はちょっと怒ってるっぽい?
ただ、どちらにしろ私としてはあまり関わり合いになりたくないんですけど。
そんな私に気を使ったのか、玲子さんが私を守る様に斜め前に立ち、その横に榊さんも立って
「ダンジョン内では知り合い同士でない限りお互い不干渉。そういうルールになっていたと思いますが?」
そう榊さんが言ったのですが
「え?俺たち自衛隊員、君たちそこに呼ばれた助っ人。知り合いだろ?」
「いえ、私達はあなた達の名前も所属も知りませんし、顔も知りませんので知り合いではないですね」
「そんなつれないこと言わないでさ、ちょっとだけ戦う所見せてくれればいいから」
としつこく言い募ってきます。
んー、こんな事なら来なきゃよかったですかね……と思っていると玲子さんから小声で
「知佳ちゃん、今日もちゃんと撮影してる?」
「いつも通りだよ」
「りょーかい」
そう言うと、自衛隊の方達を無視してみんなにそろそろ行こうと言い、ボス部屋に行く事になりました。
あ、私には結界は極力範囲を狭めておいてと先ほどついでに言われています。
私たちの情報を極力与えたくないって事ですかね?
「では私たちはボスに行きますので、これで失礼させてもらいますね」
「えー、ちょっと位戦う所見せてよ」
「いつか敵になるかもしれない人には見せられません」
玲子さんがそう言い捨てると、相手のうちの一人、一番こちらを馬鹿にしたように話していた人が
「おい、俺たちが敵に回るかもしれないって言っているのか、俺たちは自衛隊員だぞ?」
「だってそうでしょう?決められたルールを守らない人達なんて、今後何してくるか判らないじゃないですか」
「なんだと!」
とその人が激高しましたが、それを後ろにいた人が肩をつかんで止めました。
「おいやめろ!そこまで言われるなら諦めるよ。我々としても民間人に助っ人を頼む位だからさぞ強いと思っていてね、是非その強さの一端でも見せてほしいと思っていたんだ。すまなかったな」
「それならそれで正式に依頼されてはどうですか?その依頼が通るとは思えませんけどね」
「その通り、君たちの話が来た時にそう上申したんだが許可が下りなくてな。こういう形で見せてもらおうと思ったんだが……」
どうやら彼らにもここのダンジョンでのトップチームとしてのプライドがある様で、いざ「外部から助っ人がきます。でもその助っ人は実は一般人です」といわれて、はいそうですかとは納得できない模様。
まぁ、その気持ちも判らないでもないですけど……
「ともかく、外に出たらこの事は報告させてもらいますので」
「ふん、民間人の言う事と俺たちの言う事、どっちを信じるかな」
「バカやめろ、今回は全面的にこっちが悪いんだ。すまなかったな」
「謝るくらいなら最初からしないか、こちらが最初に断った段階であきらめるべきでしたね」
そうして一応今回のいざこざは終息し、私たちはボス部屋へ。
ボス部屋へ移動する時、皆して管理はどうなってるのとか愚痴を言っていましたが、ボス部屋への扉が開くとそれもおさまり、皆これから起こる戦闘に意識を切り替えたようです。
私もいつでも弓を撃てるよう準備し、ちらりと私たちの後ろをついてきた自衛隊の人たちを一瞥した後、ボス部屋へ。
「知佳ちゃん、いつも通り出会い頭に一発頼むね」
「はーい」
そうこうしていると、入ってきた扉がしまり部屋の中の魔法陣から敵が現れ始めました。