肩車にしますか?いいえ、車椅子で行きます
お家に帰ってきてね、食事の前にみんなに今日の収穫を簡単に報告です。
「なんと、トリュフが採れたと!?」
「それは、ダンジョン産と言う事を考えると期待が持てますねぇ」
「お酒もあるのか……ダンジョン産のお酒、問題は1つしかないことだが」
「小分けして鑑定に回して、あとは飲んでしまってもいいのでは?知佳さんの鑑定では問題ないのでしょう?」
などなど、皆さん今日のドロップ品に大変興味がある模様。
なお、魔石や毛皮は当然のことながら、初登場のファイアニードルのスキルスクロールにすら見向きもしません!
まぁ、そうしていてもね、ご飯の時間になればさすがにご飯に集中です。
多少そわそわして見えるのは見なかった事にしましょうね。
その後談話室に移動しての報告会なのですが……
「お酒はもっと取ってくることは可能かね?あ、トリュフもだな」
「これがダンジョン産のお酒……入れ物からして日本酒か焼酎かと思っていたけれど、匂いから日本酒だね」
「トリュフも、匂いがすごいですね。みんなはこの匂いは大丈夫かな?」
とどうやら匂いがすごくて誰か具合悪くなったりしていないか気にしている模様。
たとえいい匂いだとしても、匂いがきついと具合が悪くなることもありますからね。香水なんかがいい例ですよね!
そして具合が悪くなったわけではないのですが、ミミちゃんがね……嬉しさからか足にじゃれて来てすごい!
なのでミミちゃんの分を取り皿に取り分けているのですが、早く寄越せと言ってきます。
これ、お皿ごと渡したら碌に噛みもせず一気に飲み込んでしまいそうなのでね、一切れずつ手ずから食べさせてあげる事にしましょう。
そんなこんなをしながら、大人な皆さんは今日の戦利品のお酒をちびりちびりと飲み、私と沙織さんはお茶で報告会です。
お酒はね、全部で一升あるらしいので、一人一杯(一合)までとなっております!
じゃないと、残りの取り合いで喧嘩にまで発展しそうなのでね、残った一合を鑑定に回すんだとか。
近いうちにまた取ってこないとダメですかね?
お酒以外で話題となったのが、背負い子。
これからの階層は背負い子が必須になりそうなのですが、敵への警戒や出会った時に問題と言う事で、正面を向いて背負える背負い子を用意するか、はたまた肩車ではどうかとか(どうやら肩車用の補助具があるそうです)色々案が出たのですが……
「知佳さんを肩車……顔の両脇にあの太腿……是非肩車にしましょう!わたしが責任をもって肩車します!」
「いやいや、沙織さん何言ってるの?さすがにそれはないでしょ!」
「あのぷにぷにに顔を挟まれるなんて、これが天国……」
何やら逝っちゃってますが、ただのお肉だからね?私の太腿だからね!?
「いや知佳ちゃん、それなら知佳ちゃんも背負った人も両手を使えるし、ありなんじゃない?」
「いや、玲子さんも何言ってるの?肩車よ?高いのよ?怖いよ!?」
森の木々の中を肩車とか、想像するだけでめちゃくちゃ怖いです!
「きちんと保持しますし、大丈夫ですよ。それにしても、あの太腿にほおずりし放題ですか……」
「榊さんも待って?ないから、さすがにそれは無いからね?」
「肩車……枝に頭ぶつける」
「それ!そう、肩車で移動なんかしたら木の枝に顔ぶつけちゃうから!」
などと、おんぶに続いて新たな戦いが発生しましたが、何とか阻止することに成功。楓さんには感謝です!
「しかし、それだとどうするんだい?結局誰かにおんぶしてもらって移動するのかい?」
と結局おんぶに決まりそうになったのですが……
「ところで知佳ちゃんや、ちょっと試してほしいことがあるんだけど、良いかえ?」
「ん?なーに曾お婆ちゃん」
「ちょっとこっちへおいで」
そういって、テラスからお庭に出たのですが
「ここでその塀を出してみてもらえるかえ?高さはそうさね、30cmほどで、そこら辺りに1mx1mほどの大きさでいいよ」
「んー、お庭が変になるかもしれないけど、いいの?」
「それは大丈夫さね」
と言われたので、出してみることに。
……無事出ますが、何かあるのでしょうかね?
「お母様、何かあるのかい?」
「これは話には聞いていたけど、不思議なものだね」
そうして曾お婆ちゃんはと言うと、その出した小さな塀に近づき、おもむろに上に乗りましたよ?すでに酔っているのでしょうか……
「ふんふん……知佳ちゃんや、今度は向こうに高さ30cm、幅1m、長さは……3~4mほどでいいか、できるかえ?」
「んー、こっちからこっちってこと?」
そう言って右から左に指さしたのですが
「あぁ、塀だから長さで言うと横になるのか。そうじゃなくてね、ここから向こうへの長さ、塀の厚さと言い換えた方が良いかい?」
ああ、向こうに向けて縦長の塀を出すのですね!
言わんとしていることが理解できたので早速やってみることに。
イメージとしては、目の前から向こうに伸びる塀をイメージして、高さは30cmで……えいっ
すると、見事に高さ高さ30cm、幅1m、長さ4mほどの岩の道が……
「できるねぇ。それじゃこれの初めの所を知佳ちゃんが車いすで登れるようにスロープにすることは出来るかい?」
といわれ、言われたとおりにイメージしてみると……変形できました!
「じゃ、知佳ちゃんここに上って、あの端まで行ってそこからさらに伸ばすことは出来るかい?」
ふむふむ、言われた通りやると出来ますね。
「さらにその端まで行って次を出してみてごらん」
言われたようにすると、どんどんと道が伸びていきます!
「あ……」
ん?誰かが後ろで声をあげ……何でしょうね?
後ろを振り返ってみると、最初のほうの塀が消えて元の芝生になっています!
あれですかね?砦の効果範囲を出たから消えたのでしょうか。
「ご隠居が何を言いたいのかわかりました」
「なるほど、これで森の中に道を作れば、知佳君は車椅子のまま移動できると言う事ですね、さすがお義母さん、年の功ですね!」
「だてに年は取っておらんからね。これなら車椅子のまま進めるだろうさね」
おぉぉ、塀にこんな使い道があったなんて、酔ってるとか言ってごめんなさい!
しかも芝生の上に出したのに塀の上には芝生は無く、塀が戻れば芝生も元通り。
「これ……どうなってるんだろう?」
「神様の特別スキルって事で、深く考えない方が良いんじゃないか?きっと我々が考えても理解できない現象だと思うよ」
そんなものですかね?まぁ、この車椅子もよくわからないけど良い物ですし、そういうものなんでしょう!
しかし、そうなるとまた一つ気になることが……
「これ、木があるとどうなるんだろう?」
「壁がある所には塀は出せなかったんだろう?だとしたら、一定以上の物があるところでは出せないのかもしれないね」
「今日は暗いですし、明日の朝にでも庭木のある所でいろいろ試してみましょう」
と言う事で、厳密にどこまで行けるのかはさらなる調査が必要ですが、とりあえずの移動方法は何とかなりそうです!
その後は、夜はまだ肌寒いと言う事でお部屋に戻り、敵についてだったり、地形についてだったり、いかにしてミミちゃんにトリュフを探させるかだったりについて話し合い、夜は更けていきました。