壊れていますか?いいえ、壊れていませんでした
さて、30階層のボスですが、転移魔法陣に乗って起動すると……
どうやら30m四方位の岩で出来た部屋に出ましたが、これは今までのボス部屋と同じ感じですかね。
そして私たちが出たのは片方の壁の前5mほどの位置、今までだとボス部屋に入ってすぐといった位置です。
そして、私達のいるのとは反対側の壁の近くの床に魔法陣が輝きだし、何かが姿を現し始めました。
まだシルエットしか見えませんが、幅1m全高1.5mほどでしょうか?頭と思われるところは一回り大きそうですね。
そしてその姿がかなり実体を伴ってきたのですが、どうやら真ん中は白、他は黒っぽい感じで、左手に何か持っていそうな……
そうして実体化が終わるのを待って鑑定した結果、特に注意事項や特記事項はなさそうなので、その事だけをみんなに伝えて弓を射る場所を……
なにやら体の下のほう、床ぎりぎりのあたりに違和感を覚えたのでそこを狙って
「あ・た・れっ!」
射った矢は見事狙った場所に当たりました!そして矢が当たった瞬間
「フギシニャーーー!?!?」
と、叫び声のような悲鳴のような声が聞こえてきました。
なんでしょう、猫が喧嘩している時の声に似ている気もしますが、よっぽど怒っているのか、はたまた痛かったのか……
とりあえずまだ生きているようですが、どうやら倒れこんで床を転げまわっていますよ?
それをチャンスと見たのか、玲子さんと沙織さんが敵に突っ込んでいき、スキルを使って一気に畳みかけに行きました。
なので、今のうちに詳しく鑑定を……
「たぬき?」
「え?」
その私のつぶやきを聞いて、榊さんから疑問の声が来たのですが
「シガラタヌキって名前なの」
「シガラタヌキって、信樂焼のあれ?よくお蕎麦屋さんなんかの前にある?」
「んー?あぁ、何か違和感があると思ったら、前に行ったお蕎麦屋さんに置いてあったのと違って、お股の所に変なのが付いてるんだ!」
よく思い出してみると、お蕎麦屋さんにあったのはお股の所が壊れて空洞だったんですよね。
で、この敵はそこが壊れていないから、それで違和感を覚えたんですね!
どうやら無事とどめを刺せたようなので、皆で合流して玲子さんに前に行ったお蕎麦屋さんのタヌキとそこが違うよねと、股間部分を指して言ったところ、言われてみればそうねと苦笑いの表情で返されました。
それを聞いていた皆にどういう事なのかを聞かれたのですが、玲子さんが説明してくれ、それを聞いたみんなはと言うと、どうして壊れていたのかに疑問を持ったようですが
「そういうものじゃないの?」
と聞くと、皆声をそろえてそれは違うと否定されました。
「ふーん、てっきりゲン担ぎ的に壊しているのかと思ってた」
「いやいや、それはないからね知佳ちゃん」
「まぁ、偶然とはいえ弱点だったようですし、よかったのでは?」
「あー、まぁ偶然と言うか必然と言うか……」
「男性隊員の方達は狙えますかね?」
「弱点ぽいし、狙うかどうかは本人次第じゃない?」
などの会話がありましたが、ドロップに変わったので確認をしましょう!
今回は魔石と毛皮、スクロールが1つ、あとは何やら陶器製の瓶?その瓶には「酒」と書かれていますから、中身はお酒なんでしょうかね?
鑑定した結果は、やはりお酒のようです。そしてスクロールはどうやらファイアニードルのようです。
「え?これ中身お酒なの?」
「みたいだよー」
「お酒なら、今日飲めるわねっ」
「検査に回さなくていいの?お酒って出たの初めてだよね?」
そういうと玲子さんは黙ってしまい、じーっとお酒の瓶を見ていますが……
「その辺は会長と相談しては?」
「そ、そうね。そうしましょう」
んー、玲子さんお酒そんなに好きだっけ?飲んでるところあんまり見た記憶ないんだけど。
「あぁ、あまり飲む方じゃないけど、今までのお肉とかの味を考えるとね?かなり美味しそうだから飲んでみたいなって」
なるほど、そういうものなんですね。私には関係ないけど!
そしてシガラタヌキの現れた魔法陣が再び輝き出したので、31階層へいきましょー!
「これは……」
「ちょっと蒸し暑い」
「そうですか?私はいつも通りですけど」
「わたくしも特に変わった気はしませんが、見た感じは暑そうですね」
31階層はね、今までに増して木々が増え、密林っぽくなってきました。
そして葵さんと楓さんは暑いと言っていますが、私は今まで通り暑くも寒くもなく快適なのですが……
「うっ、知佳さんから離れると暑いです」
「あ、本当だ。知佳ちゃんに近寄ると涼しくなった」
ん?どういう事でしょう。私が涼しい……あー、スキル「砦」の結界の効果でしょうか?確か結界内は快適な状態が維持されるとあったはず。
その事を伝えると
「知佳ちゃん、ここからは私が押していく」
「いえいえ、知佳さんを押すのは私の役目ですから!」
「何をおっしゃる、少なくとも今日はわたくしの役目ですよ?」
などと、皆して私の車椅子を押す役目を奪い合い
「いーや、ここは押し慣れてる私の役目よ!」
と玲子さんまで……
「ね、ねぇ。結界の範囲を広げればいいだけじゃない……かな?」
そういうと、皆も気が付いたようでバツが悪そうな顔をしています。
とはいえね、今日はもういい時間なので帰るんですけどね?
まあ、これだけ木々が多いとさすがに自転車で行くのも大変そうだし、私の移動方法も考え直さないとだし、ここ以降の攻略は今までと違って時間がかかりそうですね。
そして、いつも通り外に出る前に着替えた上に提出品(見せるだけ)の準備もし、お外です!
……
KD対策本部での報告なのですが
「こ、この報告は本当に……?」
と報告の内容が信じられないのか、阿方さんはわなわなと震えながら報告書を見ています。
あ、報告書と言うのは、本日の新規更新階層の情報を簡単に書いたものと、その地図なんですけどね。
どうやら1日がかりとはいえ、25階層から一気に30階層に行ったのが信じられない様子です。
「うその報告をしても仕方ありませんし」
とは玲子さん。今回は一気に進み過ぎたかな?と言う気もしないでもないですが、明日から更新速度遅れそうですしね、気にしなーい。
「それと、この30階層のボス……信樂焼のタヌキ、ですか?」
「信樂焼と言っても、見た目がそう見えるだけでれっきとした生き物?魔物?でしたよ?」
「弱点が股間……まあ、生物として雄ならそこは弱点でしょうが……そこ、狙いますか……」
と言った時の阿方さんは何とも言えないと言った表情ですし、他の男性の方達も内また気味になったり、腰が引けたりしていましたが、違和感があったのだから仕方ないのです!
「しかし、とうとう非生物が敵として出てきましたね」
「非生物というか、見た目がそうだと言うだけで、一応タヌキ……タヌキってあんなずんぐりむっくりだっけ?」
「タヌキは、本来はどちらかと言うと猫とか犬っぽい感じですね」
「ま、まあ倒した感じは生物的だったので、いいのでは?」
などと、タヌキについても何やら思うところがありそうですが、どうやらタヌキのインパクトがすごくてトリュフについては話題に上りませんね。
その後はそろそろ夕飯なのでと玲子さんが話を切り上げ、お家に帰ります!
車の中で玲子さんに、最後無理やり切り上げたでしょうと聞いてみると、ニヤリとした表情だけしていました。