●その頃の某国首脳執務室と、とある民家にて……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 某国首脳執務室 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そこではこの国の国主が執務机に向かって、何かの書類を処理していた。
……その時、突然電話が鳴り出したので出てみると
「なんだと、ジャパンの総理からホットラインが来ただと?用件は何だ」
「なんでも最近発生したダンジョンについての新たな情報があり、各国で共有した方がいいとのことです」
「なんともお人好しな国だな。こちらからはいまだ情報を出していないというのに、向こうから勝手に有利な情報を流してくれるとは、のんきなもんだ」
「あれじゃないですか、自国にはすでにセーフダンジョンが一つできているから、その余裕を見せようとしているとか」
「フン、どうだか……今の総理はなかなか狸だからな。まぁいい、せっかく情報をくれるというのだ、もらうだけもらっておこう。以前テロがあった時に救助活動で世話になった恩もあるしな」
そうしてつながったホットラインで伝えられた内容はダンジョンストアに関することで、中でドロップした武器などを登録し、追加で同じものを買う事が出来る様になるという情報だった。
ただし、登録したものがラインナップに出てくるのは登録した場所のみのため、登録するダンジョンを一カ所にまとめ、多重登録を防ぎDPの無駄を起こさないようにするのがいいだろうという提案だった。
また、向こうのダンジョンでは現在21階層まで到達しており、そこは草原フィールドで薬草なるものが取得でき、物によってはポーションを作成できる可能性があるとのこと。
たしかに、まだそこまで到達していない我々にとってはありがたい情報だ。
だが全てのダンジョンが21階層から草原フィールドになるのかの確証はまだ取れていないと言っている。
が、アメリカでも21階層は草原フィールドだったとの追加情報までくれた。
これの大事なところは、21階層が草原フィールドの可能性が高いというのもあるが、なによりジャパンもアメリカもすでに21階層に到達していると言う事だ。
そしてその後、多少の世間話などもしたのだが、その中でジャパンの巨大掲示板ではテロリストが聖戦を謳ってダンジョンに自爆テロを仕掛けたりするんじゃないかと話題になっているんだとか。
何を馬鹿なことを、神からの警告を無視して実行に移すわけがない、と一蹴したかったが、ジャパンは国民ですら非常時には突飛な才能を発揮し、こと非現実的な事柄に対しては国の頭脳集団よりもはるかに対応力がある事を考えると、一考の余地はあるのではないかと思い始めてしまった。
そう思い始めると疑惑は留まる事を知らず、あいつらなら神の警告に耳を傾けることなく、本来なら利己的な戦いをさも聖戦だと偽って行う可能性は捨てきれない。
……しかたない、今回は色々と有益な情報をもらったことだし、テロ対策チームにさらなる警戒をするよう呼び掛けるとするか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ とある民家にて ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
東京都郊外にある、とある金属加工工場に隣接している民家の一室にて……
えっと……捨て垢ってどうやってとるんだ?
えーい、面倒くさい。もう武器に5桁の数字をマジックで書いて、その画像を添付すればいいだろ。
文面は……
≪自宅鍛冶師です、証拠の武器の画像と5桁の数字です≫
これでいっか、送信っと。
本当に返事来るのかな?変なあおりとか詐欺とかじゃないと良いんだけど……
おっと、もう返事がきたか?
あれ?送ったメールアドレスと違うところから?でもこれ俺と同じ携帯会社のアドレスだよ……な?
タイトルはReになってるし、大丈夫かな?
どれどれ、内容はと……
その後何度かメールでやり取りをし、聞かれた事はというと
・どうしてこの武器を作ろうと思ったのか?
・この武器はすべて自分で作ったのか?
・今回の武器を作るにあたって考慮した点や苦労した点
・今現在本当に無職なのか?
等々を、向こうの見解なんかを交えて面白おかしく聞かれて、ついつい色々教えたのはちょっと防犯意識が足りなかったかな?
でも結果として、武器を作ることを仕事にする気はないかと聞かれたときは焦ったね。
もっとも、最初はアルバイト的なことで良いからと言う事でそれならと返事をしたところ、それじゃ親御さんに話を通してくれとなった。
え?こんなこと親に話さなきゃいけないの?と最初は俺も思った。
でも、アルバイトとはいえ仕事として今後武器を作るなら、家の作業場でやるなら材料費なり工作機械の使用料を払う必要が出てくるとか、怪しい相手に武器を作ったとなれば親が心配するだろうと諭され、親に相談することに。
ただ、その時親を説得して了承が取れれば、一度こちらに挨拶に来てくれるとまで言っている。
しかも親の説得材料として、向こうの電話番号も教えられ、きちんとした契約をまとめる前に一度親御さんとお話をさせてほしいとまで言われた。
そこまで言われたら俺も断る理由もないし、何とか親を説得してみせる!
と意気込んで親父に話をしたんだが……
話の途中で相手の電話番号の事を伝えると、親父はすぐに一度茶の間を出てどこかに電話……たぶん相手に電話していたんだろう。
その後はあっけないほどの急展開で、明日の午後相手が会いに来るから、そこで詳しい話を聞こうと言う事になった。
え?そんなあっけなく認めてもらえるの?
そう思って聞いてみたら
「まだ認めたわけじゃねぇ、ただお前がやっと働こうってんだ、頭から否定するだけじゃダメだろう?それに向こうさんもきちんと礼儀を通してきている。一度会って話を聞くくらいはしねえとな!」
と言って笑っていた。
その話は母ちゃんにもしていたみたいで、その日の夕飯はそれはもう豪勢なものだった。
だったのだが……母ちゃんよ。赤飯を炊くってのはどうなんだい?