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スキル『砦』を使って快適ダンジョンライフ  作者: 日進月歩
第四章 ダンジョン発生から一月経過
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起きますか?いいえ、起きません


 あーさー、今日はね、朝から一日皇居ダンジョンにもぐる予定なのです!


 で、潜る予定内容としては10階層までは一気に駆け抜けて榊さんの到達階層を稼ぎます。

 そして11階に到達出来たら、一度外に出て榊さんの装備を整えたり、スキルを覚えてもらったりする予定です。

 うまくいけばお昼過ぎ位の時間にはそこまで行けるかなと予想しているのですが、どうなる事やら。


 とりあえず、朝ご飯を食べに行きましょうかね。

 着替えた後、玲子さんに髪を簡単にセットしてもらい一緒に食堂へ……


 ん?そういえば今日は沙織さんが来ませんね?もしかして早めに起きて先に行ってるのかな?

 そう思いつつ食堂についたのですが、まだ沙織さんは来ていませんね。


「おはよーございます!」

「はい、知佳ちゃんおはよう」


 朝の挨拶は大事ですからね!

 すでに来ている皆さんも挨拶を返してくれたのですが、沙織さんが一緒でないことに疑問を持ったようです。


「沙織は珍しく寝坊かい?いつもなら知佳ちゃんのお部屋にお邪魔しているだろうに」

「昨日は自転車でダンジョンの中を走り回ったから、疲れてるのかな?」


 そう会話をしていると……突然沙織さん付きのメイドの方が慌てて食堂に駆け込んできました!


「お、奥様、お嬢様、沙織お嬢様が……」

「沙織がどうかしたの?」

「いくらゆすっても目を覚まさないんですっ!」


 それを聞いた美雪伯母さんは驚いた表情で震えだし、高志伯父さんは椅子を倒す勢いで立ち上がり、お婆様はというとそんな二人をたしなめつつとりあえず様子を見に行こうと移動を始めました。

 私も当然心配なので着いていき、皆で沙織さんのお部屋へ。


 そこにはベッドで気持ちよさそうに眠る沙織さんの姿が……

 ただ、美雪伯母さんがいくらゆすっても沙織さんが目を覚ます様子がありません。


 それを見たお爺ちゃんがどこかへ電話を……どうやら主治医の方を呼び出しているようですね。


 その後、とりあえず何が原因かわからないので無暗にゆするのはよくないだろうと、高志伯父さんが美雪伯母さんを止め、皆で様子を見ることに。


 それから5分ほどたった時でしょうか、おもむろに玲子さんが


「知佳ちゃん、鑑定で何かわからないかな?」


 と言い出しました。

 た、確かに鑑定をすれば何かわかるかもしれませんが、人のステータスをむやみに見るのは……でももし急ぎで対処する必要のある事柄だと……

 そう悩んでいると


「知佳君、ステータスを見ることを気にしているのなら何も問題ないから、もしよかったら見てくれないか?」


 と高志伯父さんに言われ、美雪伯母さんを見てもうなずいているので鑑定してみることに。


 沙織さんに近づき、沙織さんを鑑定……としたのですが、特段変わった内容が出てくることはありません。

 でも、でも何かおかしい気が……


 これは、私の鑑定レベルが低いから判らないのかな?


 そう思ってもっと気合を、それこそここでもし判らなかったら沙織さんがいなくなっちゃうかもしれない……そんな最悪の可能性を考え、集中に集中を重ね、沙織さんの全てを知りたいと願い、気合を込めて……鑑定をっ!


 ……すると、徐々に何かがぼんやりと浮かんで……くっ、体から何かが急激に抜けていく感覚が……でも、もうすこし、もう少しで見える気が……



 そうしてどのくらい頑張っていたでしょう、1分?10分?それとも1時間?

 集中に集中を重ね、頭がキリキリと痛み出してきた頃、ようやく……ようやく沙織さんのステータスに状態異常の項目が……見えたっ!


 その状態異常は何かというと


急性脳髄性白血病きゅうせいのうずいせいはっけつびょう


 見えた状態異常の欄に書かれていた病名と思わしき名前を告げると……


「えっ」

「きゅ、急性脳髄性白血病……」


 それを聞いた周りの人は驚きの声をあげ、美雪伯母さんに至ってはめまいを起こしたのか倒れかけていました。

 もっとも、私は集中した結果、無理がたたったのか周りのそんな状況に気が付かず、ぼーっとしてしまっていたのですが……

 そんな私に玲子さんが声をかけてきました。


「知佳ちゃん大丈夫?」

「う、うん。ちょっと……疲れただけ……」


 まだ多少の頭痛はしていますが、そんなことは気にせずそういうと、何やら白いものでお鼻をつままれました。


「知佳ちゃん、そうは言っても鼻血出てる」


 どうやら、集中しすぎたせいか、はたまた気合を入れすぎたせいか鼻血が出ていたようです。


 そして、先ほど読み上げた急性脳髄性白血病とは、お爺ちゃん曰く数年前に初めて発表された病気で、白血病と名前はついていますが既存の白血病とは全く関係がなく、ただ脳髄のガンのようなもので、白血病と似ていることから名付けられた病名のようです。


 この病気、どうやら発症から死に至るまでの期間がすごく短く、また症状も時たま急に眠くなる、感情が乏しくなるなど日常生活でも気が付きにくいなどから、発見が遅れることが多々あるそうです。


 そう言われてみると、沙織さんはダンジョンの帰りに急にうたた寝をしたことがありましたね……


「あ、あの時私が沙織さんを鑑定していれば……」

「知佳ちゃん、それは言っても無理だよ。ほかの誰も沙織さんが病気だなんて思ってなかったもの」

「そうだよ知佳ちゃん。それを言うなら親である私たちのほうが責任は大きい。それに沙織はもともと表情が乏しいからね。この病気にかかったっていうサインが分かりにくい子なんだよ」

「突然眠くなるなんて、だれでもあり得る話だもの。知佳ちゃんのせいではないわ」

「そうだよ、むしろ今この段階で病名が確定できただけでもめっけものだ」

「その点は逆に知佳君に感謝しなければな」


 その後、主治医の先生が来たので病名を先生に伝え、先生の診察も受けたのですが、詳しく検査をしてみなければ何とも言えないと言われました。

 そうしていると、沙織さんが目を覚ましたのですが……


「皆さん私の部屋で何をしているのですか?」


 と、沙織さんは先ほどまでゆすっても起きなかったことを除けば、病気だとは全く信じられないほど普段通りの様子。

 きっと自分が病気だと気が付いていないのでしょうね。

 ですので、なかなか起きてこないから何かの病気じゃないかと私が騒いでしまった結果、皆が集まってしまったと誤魔化しました。


 誤魔化したのですが……


「知佳さん、私何かの病気……なんですよね?」

「え?ちがうよ、起きてこなかったからあせっただけだよ?」


 そう言い訳してみたのですが、私の顔をじーっと見ていた沙織さんはおもむろに主治医の先生を見て


「それで、私はどんな病気なのですか?」


 と問いただしました。


 さすがに誤魔化しきれないと思ったのか、お婆様が沙織さんに真実を伝えてしまいました。

 それを聞いた沙織さんはどうやら急性脳髄性白血病を知っているらしく、真剣な顔をしてあとどれくらい生きられるのかを聞いてきましたが、主治医の先生曰く、いつ発症したのかが判らないが、過去の例から見ると発症から約3カ月が残りの寿命だと伝えました。


 そしてその後、先生から沙織さんに問診というか、こういう症状に思い当たることはないかと色々質問していましたが、それの回答を聞くにつれ先生は何やら思い悩む表情をし


「おかしいですね、沙織お嬢様や周りの方達の話を聞くに、すでに一月以上前から症状が出始めているように思えるのですが、それにしては進行が遅すぎます」


 と言うので、もしかして私の鑑定ミスでは?と思い、そのことを伝えたのですが


「いや、そもそもこの病気の事、知佳ちゃんは知ってたのかい?」

「こんな病気があるなんて、初めて知ったよ?白血病なら何度か治療のニュースを見たことがあるから知ってるけど……」

「となると、やはり知佳ちゃんの鑑定の結果が間違ってるとは思えないんだけどねぇ」

「とりあえず、これから病院に行って精密検査をしてみましょう」


 という話になり、このあと沙織さんは病院へ。

 私も心配なので着いて行きたいのですが、先生曰く本当に急性脳髄性白血病だとしたら、問診した結果では初期も初期の状態なので心配はいらない。

 むしろ発症したと思われる時期から考えるに、他の病気か、はたまた疲れが出ただけの可能性もあるのでどちらにしろ心配はいらないと言われました。


 それらの話の結果、沙織さんから時間を無駄にするのももったいないので、今後どうなるかは別にして今日の所は予定通り皇居ダンジョンに行って榊さんの階層攻略をしてきてほしいとの事。

 たしかに私たちが付いて行って何か出来る訳でもなく、かえって邪魔になってしまう可能性も考えると今できることをするしかないのですが……


「知佳ちゃん、こういう時はただ待つよりも、何か出来る事をしていた方がいいのよ?」


 と玲子さんにさとされ、また美雪伯母さんや高志伯父さんからも、心配せずに当初の予定通り動いてほしいと言われました。

 それら話し合いの結果、私たちは一度お昼にダンジョンの外に出るので、それまでに分かった範囲で連絡を入れてもらう事にしました。


 そんなこんなで、今日は沙織さん抜きでダンジョンアタックをする事になりました。


作者注意:作中に出てきた「急性脳髄性白血病」とは、作者オリジナルの病気であり、現実世界にある病気とは一切関係がありません。

この病気にかかると突然眠くなる(眠る)事があるというのは、子供のころ読んだ漫画に出てきた、とある病気の症状を参考にしました。

今回のこのイベント、実はこの作品を書き始めた当初から考えていたもので、やっとここまで来れたかと感極まる思いです。

これもすべて応援してくださっている皆様のおかげです、本当にありがとうございます。


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短編を書いてみました


勘違いからの婚約破棄騒動


お暇でしたらこちらもよろしくお願いします
― 新着の感想 ―
[良い点] 病気の進行が遅いのは、レベルのおかげか、結界のおかげかな? ダンジョンアタックに深刻さが生まれそう。 [気になる点] 実際にない病気であればがっつり現実から離れた物にした方がわかりやすいで…
[一言] 進行が遅い・・・まさかレベルを上げて物理(抗体)で病気を捻じ伏せるだと!! 将来、風邪予防の標語が、うがい、手洗い、レベル上げ、に成るのか
[一言] 脳にできる癌は現実にもあるのでそちらにした方が良いと思います。(極めて治りにくい難病の一つ) 現在では病名は関係無いものを入れる事はなかったと思います。
感想一覧
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