のんびり行きますか?いいえ、駆け抜けます
やってきました倉庫ダンジョン!
すっごく久しぶりな気がします。かれこれいつぶりでしょうね?
とりあえず今日はね、こちらで榊さんに私たちが普段どう戦っているのかを見せることになっています。
そしてなんと、今日は午後一杯夕方まで私たちの貸し切り状態!
あ、ダンジョンの外では警備の人とかはいますけどね、中には誰も入ってない状況なんだそうです。
まだ残っている人がいないかの確認も玲子さんが済ませ、OKが出たそうですのでみんなで着替えてダンジョンへ!
「んと、榊さんは何階まで行ったことがあるの?」
「わたくしは5階層までですね。本格的にダンジョンアタックをした訳ではないので。他の秘書の方もダンジョンを知っておくという理由の元に、皆さん5階層までだそうですよ」
なるほど、5階層までなら敵は一匹しか出てこないし、十分な安全対策を行ってダンジョンの雰囲気だけでも……といった所なのでしょうか?
「それじゃ、5階層からになるのかな?それとも新規PTだから1階層から?」
「知佳ちゃん、行ける階層はそのPTでの一番到達階層の低い人に合わせるみたいだから、5階層からいけるはずよ?」
というわけで、5階層へしゅっぱーつ!
やってきました5階層。なんかね、見た目は皇居ダンジョンと変わらないのに、すごく懐かしい気がしますよ?
そして取り出しましたる自転車!みんなの分をポンポンと……
「ち、知佳さん!?いま、それどこから出しまし……あー、そういうことですか」
あら、思ったほどびっくりしませんよ?そう思って理由を聞いてみると
「ゲームでは謎のアイテム積載量が当たり前ですし、小説やアニメなんかでも良くありますので」
ふむ、榊さんはアニメとかも見る……と。
「やっぱり、知佳さんが例の初回クリア者だったんですね」
それを聞いた玲子さんが、すごく良い笑顔で(後ろに般若が見えましたが)
「もし外に漏らすような事があれば……」
と言っていましたが、それを聞いた榊さんも
「わたくし、これでも短期間かつ第三とはいえ会長秘書を務めていたのですよ?言って良い情報と悪い情報の区別はつきますよ。それに、せっかく皆さんとお知り合いになれたのに、すぐお別れとか嫌ですしね」
と、良い笑顔で返していました。
そんなやり取りがありましたが、とりあえず安全を考慮して結界をフルに発動しつつ出口の方向を探り、さらに周りの地形や出口の方向を地図と照らし合わせて大体の現在地を把握します。
「んと、この辺……かな?」
「ふむふむ、じゃあここからこういけばいいのかな?」
「だねー。とりあえず5階はサクッと抜けて、6階に行っちゃおう」
「そうね、今日の目標は10階層クリアだからね」
それらの会話を聞いていた榊さんは、今度は落ち着いた様子で
「知佳さんはいろんなことができるんですね」
と言っていました。それに対して葵さんは少し困った表情で
「知佳さんは出来る事が多すぎるんですよ。それで知佳さんの負担を減らすメンバーと言う事で先日の選抜が行われたんです」
「そうだったんですね。わたくしも知佳さんのサポートをと聞いて、当初はこのチームのと思っていたのですが、本当に知佳さんのサポートなんですね」
そう言った榊さんはどこかあきれたような表情で、それでいて楽しそうな雰囲気を醸し出していました。
そしてそれほどスピードは出さずに自転車で走り回り、出た敵は玲子さんが剣で一閃して倒し、倒した敵はドロップに変わるまで待つのも面倒くさいと言う事で私が異次元倉庫に収納し進むこと30分ほどで6階層への魔法陣にたどり着きました。
「えっと、わたくしの経験したダンジョン探索と違うのですが……」
と、榊さんはどうやら困惑している様子です!
「私たちも自転車を使ったのは今日が初めてだけどね、やっぱり移動が速くなると楽でいいわ」
「わたしは、いつもとあまり変わらないけどねー」
そんな会話をしつつ、私は膝の上で暇そうにしているミミちゃんを撫でていました。
6階層以降も同様に進んでいったのですが、ここからは敵の数も増えるので戦闘にさっきよりは時間がかかったものの、皆さん一撃で敵を倒してくれるのでサクサクと進むことができました。
そうしてやってきました10階ボス部屋!
「おかしい……これは何か違う……」
どうやら榊さんのアイデンティティーが崩壊しかけているようですが、そんなことはお構いなしとボス部屋の扉の前に立つ楓さん!いがいと容赦ない?
「ほら、呆けていないでボス行くわよ?」
「どうせなら榊さんが戦ってみますか?」
「いえ、さすがに今のわたくしではまだボスは難しいかと……というか、今日はまだ一度も戦っていないのですが……」
「じゃ、一回目はサクッと……ミミちゃんやる?」
そう玲子さんがミミちゃんに聞くと、ミミちゃんも暇していたせいか、はたまた豚肉が出ると判っているのかやる気満々の様子。
「お、ミミちゃんやる気だねー、それじゃバシッとお願いね!」
玲子さんがミミちゃんにそういうと、それを聞いていた榊さんは慌てて
「え?ミミちゃんが戦うんですか?その……ここのボスってオークですよね、大丈夫なんですか?」
「大丈夫。ミミちゃん初見で一撃で倒したから」
その楓さんのセリフを聞いた榊さんはというと、心ここにあらずという感じで遠くを見ていました……
その後、ミミちゃんは大型化することなく一撃でオークを倒し、またもや倒れたオークの上で遠吠えをしつつ、しっぽをぶんぶん振っていました。
今回もちゃんとお肉が出たので、明日の夕飯は久しぶりに豚肉料理ですね!
しかし、今後の事も考えるともう少し取っておきたい気もします。ですので、玲子さんにその旨伝えたところ……
「リアルダンジョンでボス周回……物語やゲームではあり得る話ですけど、リアルでやる人がいるだなんて……」
などと言っている人がいますが、私たち前にもやりましたよ?
まぁ、お肉ほしいのでね、榊さんが何と言おうとやるんですけどね?
というわけで11階層にまず移動し、皆のコートを取り出して防具を隠し、一度外に出てから入りなおして再びボスに挑戦です!
「今度は知佳ちゃんがやってみる?」
「そうだねー、今日はまだ戦ってないし、弓でやってみようかな?」
そして出てきたオークの眉間を狙って「あたれ」とやったところ、見事眉間を撃ち抜きました!
撃ち抜いたのですが……その矢はオークの頭を貫通し向こうの壁まで!
そして壁に当たった矢がどうなったかというと、バシンッという音とともに砕けました。
「「「え?」」」
それを見たみんなの声が重なったのですが、みんな同じ心境だったようです!
そして砕けた矢を見に行ったのですが、鏃は見事つぶれてひしゃげ、シャフトもアルミ製なのにグシャグシャになっていました。
「これ、もしかして敵が硬くなったら矢が通じない可能性がある?」
「なにかもっと硬いもので作るとかの対策を講じないとだめかもしれませんね」
「硬いものっていうと、ステンレスとか、タングステンとか?」
「いっその事、知佳さんがダンジョン産の金属で作ってみるのもいいかもしれませんよ?ファンタジー物では定番ですし」
などといった、ちょっとした今後への課題も見つかりました。
そして今回のオークはお肉を落としませんでした。
矢の事に気を取られて首を切らなかったのが敗因なのか、それとも100%落とすわけではないのかは今後の課題となりました。……ちくせう。
その後最後にともう一周し、今度は葵さんがオークを抑えるので榊さんに攻撃してみてもらう事になりました。
なったのですが、榊さんの持っている武器は長さ1mちょっとの木の棒、以前はこれで敵の注意をそらす等やっていたらしいのですが、さすがにオーク相手にそれではダメージを通せる気がしないので、今回は沙織さんの使っている槍を借りての攻撃。
その攻撃は見事にオークの喉を突き刺し、一撃で倒すことになりました。
「これがダンジョン産の武器の威力ですか……地球産の素材の槍ではなかなかオークを倒すのは大変と聞いていたのですが、すごいものですね」
「その槍はダンジョン産と言っても、クリア報酬での奴だからまた別物よ?」
などといった感じで今回のダンジョンアタックは終了。
榊さんもどうやらレベルがかなり上がったようで、ダンジョンの外でいろいろ動いて体の動きが違うと感動していました。