このままいきますか?いいえ、乗り換えます
これから二条の本社まで榊さんを迎えに行くのですが、その時に玲子さんにちょっと質問を。
「ねーねー、玲子さん」
「ん?どうしたの知佳ちゃん」
「えっとね、自転車の件伝えなかったけど、いつかバレるかなって思ったのね」
それを聞いた玲子さんもさすがにいつまでも隠し通すのは難しいとわかっているのか、ちょっと難しい顔をしています。
「でね、私の持ち物に異次元バッグがあるじゃない?」
それを聞いた玲子さんは、そういえば!といった表情になり
「そういえばそんなものもあったわね。いつも知佳ちゃんのスキルのほうに入れてもらってるから忘れていたわ」
「あれ、総裁のほうにいくつか渡していましたよね?色々調べているみたいですが、世に出すのはまだ早いとかなんとか言っていた気がしますよ?」
その会話を聞いた葵さんが会話に参加してきましたが、やっぱりいろいろまずいよね。
「あー、その存在を全く知られていない状態でそんなもの持ってたら、海外から武器とかその他のヤバい物も密輸し放題だよね」
「あとは脱税にも使えますね」
などとやっぱりちょっと考えただけでも色々とやばそうですね。
「んー、そうなるとそっちを持っているってバラすのもダメかぁ……」
と今の会話を聞いて悩んでいると
「でも、知佳ちゃんのスキルで同じことができるとバレるよりは、アイテムでできるってバレるほうがまだ良いんじゃない?」
「そうですね、知佳さんがスキルでそれが出来るってバレた段階で、海外には行けなくなりそうですね」
「えー、そうなの?まぁ、今までそんなチャンスは全くなかったし、これからも無さそうな気がするからあまり気にならないけど……」
いままではね、貧乏ってほどではないけどあの義両親がいたし、私も足がこれでお祖母ちゃんも海外旅行に行くほど元気ってわけでもなかったのでね、海外旅行は考えてもいなかったですね。
「これからは、二条の皆様とそういう機会もあるかと思いますので、とりあえずスキルの件は絶対バレてはいけないですね」
「まぁ、今日の夜にでもみんなに相談してみましょう」
そんな会話をしていると二条の本社についたようで、地下駐車場に入っていきました。
ここでね、会社に荷物を取りに来ていた榊さんと合流してから社員食堂でお昼を取って、そのあと倉庫ダンジョンに行く予定です。
なお、ミミちゃんはさすがに社員食堂に連れて行くわけにはいかないのでお留守番。
あとでぺティーチャーム(ミミちゃんの好物の犬用缶詰)をあげることで交渉成立させました!
そしてエレベーター前で車を降りると、なぜかお爺ちゃんや高志伯父さんが地下駐車場エレベーター前にいますが……なぜ?
「知佳君ようこそ、今日こっちに来ると聞いてね、ぜひ一緒にお昼をと思ったんだけど、いいかな?」
そうさわやかな笑顔で言ってきたのは高志伯父さんです。
実はね、お爺ちゃんと高志伯父さんの後ろにそれぞれ女性の方が一人づついまして、いかにも秘書って感じの方なんですけど、会社では体面を気にしてさわやかイメージを通しているのでしょうかね?
いつもはもっとこう……孫や姪に優しい人ってイメージなんですけど、今日はちょっと違いますよ?
まぁ、断る理由もないし、せっかくなので一緒に食べましょうかね。と言う事でOKを出すと、二人とも嬉しそうに食堂まで案内してくれるようです。
そして乗ったエレベータでふとした疑問について質問してみます。
「今日って土曜日だよね?お二人ともお休みじゃないの?」
「あぁ、今日は休日出勤なんだよ。とはいえ早めに上がるつもりでいるけどね」
「ふえ~、おやすみの日までお仕事だなんて、もしかしてブラック企業というやつ?だめよ、休みはちゃんと休まないと!」
「いや、知佳君違うんだよ。ほら、来週からゴールデンウィークが始まるじゃないか。そこできちんと休むために、今のうちにスケジュールを前倒して進めておくんだよ」
「あ、そういえば来週から始まるんだっけ。なるほど、そのためなのね」
そんな会話をエレベータでしつつ、そして会話の内容に周りから生暖かい目で見られつつエレベーターは食堂のある階層へと到着しました。
したのですが、この階ってもしかして全部食堂なの?エレベーターの正面が食堂の入り口ですよ?
そして、周りの人からは注目を浴びまくりなんですけど……きっとお爺ちゃんや高志伯父さんと一緒にいるからですよね?
車いすに乗った子供がいるからじゃ……無いですよね?
そんなこんなで周りから注目を浴びつつもお爺ちゃん達とお昼を社員食堂でいただきました。
この時、秘書さん達も一緒に食事をとっていたのですが、途中でお爺ちゃんの秘書さんに何やら緊急連絡?が来たらしく、名残惜しそうにしながら退席してしまうという一幕もあり、お昼中もお仕事が急に入ったりするんだという社会人の厳しさを知る一幕もありました。
そんなこんなで、定食のおいしさに舌鼓を打ちつつ社員食堂の料理人の人の腕前に感心し、楽しいひと時を過ごしました。
食べ終わった後はさっそく倉庫ダンジョンに行くため、お爺ちゃん達に駐車場までお見送りをしてもらい、別れを惜しみつつ移動となります。
当初の予定ではこのまま倉庫ダンジョンに行く予定だったのですが、何やらトラブルがあったのか一度二条のお屋敷によるそうです。
二条のお屋敷につくと車がもう一台用意されていて、どうやらそちらの車で行くらしく、乗り換えだそうです。
この車、沙織さんのかな?こちらの車も何度か乗ったことがあるのですが、基本設計が同じなため私のほうの車と乗り心地は一緒です。
でも、こっちを使うと言う事は私の車に何か問題があったのかな?そう思って聞いてみると、定期点検が前倒しになったらしく、そのための乗り換えだとか。
なんでも、新車の場合は一月ほどで一度点検した方がいいのだそうですよ?
そして気持ちを新たに倉庫ダンジョンにしゅっぱーつ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 二条本家車庫 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そこには知佳の祖母である二条秋絵と、二条家専属の整備士3名の姿があった。
「それで、発信機とやらは見つかったのかい?」
「はい、車の下に仕掛けられていました」
「ドライブレコーダーの確認は?やった奴の姿は映ってたのかい?」
「今見直していますが、その様な様子は今の所一切見当たりません」
何が起こっているのかというと、今日のお昼に知佳たちが二条の本社に寄った時に、知佳の車から不明な電波が出ているとの報告が上がってきた。
そのため、本来なら二条本社から倉庫ダンジョンに直接向かう予定を急遽変更し、沙織の車に乗り換えてもらったのだ。
そして車を調べた結果、車体下部に発信機が取り付けられていた。
この車は停車中もいたずらなどの対策のために、二条家の車庫に置いている以外の時は常に車全周を監視できるドライブレコーダーを稼働させてるのにも拘らず、それらの映像からでは犯人が仕掛けに来た様子が映っていない。
「ん?もしかすると……」
「なんだい、何かわかったのかい?」
「いえ、仕掛けられそうな場所が一カ所だけ……ですが、そこで仕掛けられたとしたら仕掛ける理由が……」
「どこだいそれ」
「えっと……あった、ここです。ここならもしかしたらドライブレコーダーに映る事なく仕掛けることが」
そう言って見せられた映像は、警視庁地下駐車場だった。
その駐車場の車を止める場所、その真ん中に床下のメンテナンス用であろうハッチが映っていた。
「ここかい。と言う事は、知佳ちゃんたちがダンジョンに行っている間にこのハッチから車の下に侵入して発信機を取り付けた……と?」
「今日仕掛けられたとすると、それ以外は考えられません。あとは信号待ちでなどの可能性も絶対ないとは言い切れませんが、さすがにそれは……」
「目立ちすぎるし、ドライブレコーダーにもさすがに映っていないんだろう?」
「はい」
「これは、確認する必要がありそうだね。発信機はそのままにしておいておくれ。それと、今日はもういいよ」
そう言って、秋絵は不満を隠そうともせず屋敷に戻っていった。