●ダンジョン発生から一月後の政府記者会見会場 その2
◆ダンジョンの特性について
G新聞社女性記者
質:全くダンジョンに入らなかった場合、どのくらいの期間でダンジョンからモンスターがあふれ出すか、政府としては認識していますか?
対策本部長:現在我々の調査では、25日間全くダンジョンに入らなかった場合にモンスターがあふれ出すとの試算が出ています。
H新聞社男性記者
質:25日であふれると言う事は、1つの石が赤く染まるのに5日かかると計算できますが、現在4つ目まで染まった状態のダンジョンはあるのですか?
対策本部長:ありません。現在一番多く染まっているものでも3つ目が少し赤くなった程度ですね。これはダンジョン崩壊までの期間が変動するかどうかを確認するためにあえてそうしているのであって、この状態になったダンジョンは即ダンジョンアタックチームが中に入り、崩壊メーターの色がすべて消えるまで内部でモンスターの駆除を行っています。
I通信社の女性記者
質:地球そのものの意思と名乗る存在が、昨夜ダンジョンをわざと崩壊させようとしている国があると言っていましたが、日本ではそのような予定はされていたのでしょうか?
防衛大臣:そんなことするわけないだろう?国民の命を何だと思ってるんだ!おたく、日本人じゃないよね?もしかしておたくの国でそういう予定の噂でもあるの?
質:そ、そんなわけないでしょう?失礼なことを言わないでください!
防衛大臣:どっちが失礼なのかね?ねぇ、みなさん。
◆ダンジョンにおける被害
J新聞社男性記者
質:国民の死者は0人との公式発表ですが、本当ですか?
総理大臣:その件につきまして、我が国の法律にも絡んでくるのですが、現在我が国で死亡とみなされる条件が、ぶっちゃけると死体があるか、または明確な証拠があるかと言う事なのですが、前述したとおりダンジョン内では被害者と思われる方たちがなくなったと思われる証拠が何も出てきませんでした。ですのでそれらの方たちはダンジョン内で行方不明になったと現状みなされています。
C新聞社女性記者
質:そういう事ですと、今後もダンジョン内で亡くなった方がいた場合、日本の法律に当てはめると確か7年……でしたか?の行方不明期間を待たないと死亡扱いにはできないと言う事でしょうか?
総理大臣:その辺については法改正も視野に入れ検討中です。
B通信社男性記者
質:すでに亡くなったと思われる国民の方がいますが、国のほうとしてはそれらの方たちに対してどのような責任を取っていくのか、この場で明確にしていただきたい!
防衛大臣:あなた、日本の方じゃないよね?なのにうちの国民の安否を気遣ってくれるなんて、嬉しいねぇ。で、質問はどう責任を取るかでしたっけ?天災が起こってそれに巻き込まれた国民がいた。国としてはお悔やみを申し上げるが天災で起こったことに対して責任をどうとればいいんですかね?国としてはその方たちには災害弔慰金を払う以上に現状どうにもできない状況でね。もしかしておたくの国では天災を事前に予知して全てに対応できてるんですかね?
なおこの発言の後、他の記者たちからは「お前はもう質問するな」などのヤジが飛んでいたが、本人は周囲の記者をにらみつけるなどしており、あきらめる様子はなさそうであった。
◆私有地に発生したダンジョンについて
H新聞社男性記者
質:ダンジョン発生地のみならず、周囲1kmに関して、土地の売買及び貸与を規制したとありますが、これはいつ頃までを想定していますか?
防衛大臣:これも国防にかかわることなんでね、いつまでっていうのは今の所明確な期限は判らないね。ただ、これはあくまでも仮定の話なんだけどね、ダンジョン周辺をね、集団で取り囲まれてダンジョンに入ることができなくなるとね、そのダンジョンが崩壊することになるのでね、国民の皆様にはその辺ご理解いただきたいなと、思ってる訳ですわ。
I通信社の女性記者
質:それらの土地について、海外の資産家などが購入を考えた場合、どのような手続きをすれば購入できるのでしょうか?
防衛大臣:今の話、聞いてた?あ、聞いてたの?それじゃ売らないってこと判らないかな?
◆今後について
A新聞社男性記者
質:国民に対するダンジョン開放を前向きに検討するとのことですが、現段階で決まっている範囲でいいのでもう少し詳しくお願いいたします。
総理大臣:ダンジョンを一般開放するにあたって、現在の日本では様々な法律の壁があると認識しており、それらに対する法改正、並びにダンジョンに関した新たな法整備が必要となるため、それらすべてをクリアする必要があります。ですので、現段階で明確にいついつ一般開放します……とは断言できません。
ですが、昨夜の地球そのものの意思の言う通り、今後ダンジョン崩壊までのスピードが上がる点を考えますと、なるべく早めの一般開放が必要なのだなと、我々も認識しています。
官房長官:それらの法改正の中にね、ダンジョン内でモンスターと戦うために武器が必要になります。ですが、我が国には銃刀法という法律がありまして、一定以上の長さの刃物を持ち歩いてはいけない、武器となるものをもって集まってはいけないなど、ダンジョンにもぐるにはマイナスとなる法律がいくつもありましてね、それらをどう変えていくかも、重要な点だと認識しています。
防衛大臣:あー、ここで変な期待を持たれてもあれだから、一つだけ決まっていることを。今銃刀法の話が出ましたがね、ダンジョン内では銃火器の使用がほぼできないというのが判明しています。ですので、将来的にダンジョンに関連して様々な法改正が行われていても、我が国では銃に関しての規制緩和が行われることはありません。
I通信社女性記者
質:ダンジョンを一般開放するとのことですが、それは日本国籍を持たない人々にも開放すると言う事でよろしいのでしょうか?
防衛大臣:あー、またあなたね。えっとね、あなた知らないのかもしれないけどね、ダンジョンはその国の国民でないと近寄ることができないのよ。わかる?近寄れないなら入れないよね?
質:ですが、一般開放するのでしたらそこを何とかする義務もあるのでは?
防衛大臣:義務……義務ねぇ。じゃあね、お宅の国でその方法を開発して、特許でも取って全世界に公表すればいいんじゃないですか?そうなったらうちの国でも他国籍の方たちに開放するか検討させてもらいますよ。
これを聞いた女性記者は顔を真っ赤にして何やら騒ぎだしたが、即座に会場の警備員に連れ出されていき、その騒ぎの最中に時間切れとなり今回の記者会見は終了となった。