●ダンジョン発生から一月後の政府記者会見会場 その1
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 総理官邸 記者会見会場 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
2020年4月24日金曜日 15時50分
総理官邸記者会見会場には、国内はもとより海外からも記者が押しかけていた。
また、ダンジョン発生後初めて質疑応答のある公式記者会見と言う事もあり、いつにも増した熱気が会場を満たしている。
会場には、いつもなら答弁台が1つ設けられているだけなのだが、今回はそれが4つ設けられており、それも記者たちの熱気に拍車をかけている原因の一つであろう。
会場内では国内記者同士、海外の記者同士の会話はもちろん、国内の記者と海外の記者の間でも会話が繰り広げられ、それだけでも今回の会見に対する期待度がうかがえる。
しかし、幾人かの記者は他の記者と会話することなく、持ち込んだPCに向かって何かの文書を打ち込んでいる様子も見受けられた。
また、会見場入り口前には多くの記者と思われる人たちがおり、これから会場に入ろうとする記者に対して紙切れを渡したり、何やら交渉を持ちかけようとするものがひしめいている様子もうかがえる。
その中には毎回記者会見で関係のない質問をし、質問時間を無駄に浪費することにより他の記者から煙たがられているS新聞所属の記者の姿もあった。
きっと今までの行動から、今回は質問時間を無駄にするべきでないと判断され、自社の上層部から今回の会見への参加を禁止されたのであろう。
決して政府からくぎを刺されたとか、他の記者たちからのプレッシャーに負けたとか、今回時間を無駄にした場合の読者からの悪感情が爆発し、発行部数が激減する事を危ぶんだわけではないはずだ!
それでもめげずに自分が質問しようとしていた事柄を他の記者に依頼しようという、その姿勢はプロ意識のなせる業であろうが、メモの内容を見た者はその顔に嫌悪感をうかべ、誰一人メモを受け止めることはしなかったのは当然の事であろう。
--- 16時00分 ---
会場の上座側の扉が開かれ、扉の向こうから総理大臣、内閣官房長官、防衛大臣、ダンジョン対策本部長、広報官の5人が姿を現した。
扉が開いたその瞬間、数多のカメラのフラッシュが焚かれ、総理をはじめ今回の会見に挑む政府の面々の姿を映していた。
今回の会見は複数のTV局でも生放送で伝えられ、各局ではスタジオに有識者たちを招いて特別番組を放映している。
会見に挑む面々は、上座に掲げられている国旗に丁寧な礼をし、その後用意されたそれぞれの席に一度着席し、その後壇上の答弁台に総理大臣が立つと同時に、広報官による記者会見の開会宣言が行われ会見が始まった。
「去る3月25日、地球そのものの意思と名乗る存在から全世界にダンジョンを作成したと…………」
と、総理大臣のほうから今回の会見に対するあらましの説明があり、その後ダンジョンに対する政府としての対応の説明に移っていった。
その内容は昨夜最終決定された内容であり、その内容は会見場前方に映し出されると同時に各記者の手元にはすでに印刷されたものが配られていたため、記者はそれを見ながら総理の説明を聞き、手元のPCに何かを打ち込んだりしている。
「以上が、ダンジョン発生から現在に至るまでの政府としての対応および今後についての公式な見解となります」
そう総理が説明を締めくくると、司会者のほうからこれから質疑応答を行う旨を伝えられ、質疑応答に対しての注意事項を告げられる。
それと同時に、残った3つの答弁台に内閣官房長官、防衛大臣、ダンジョン対策本部長がついた。
そして、司会者から今回は内容がないようなだけに、特別な形で質疑応答を行うと説明され、回答者の紹介が改めて行われたが、ダンジョン対策本部長の説明になるとまたもや数多のフラッシュが焚かれる事になった。
質疑応答の内容を一部抜粋して以下に記す
◆概要について
A新聞社男性記者
質:119のダンジョンが国内に出来たといわれたが、119で全てと断言した根拠は?120番目のダンジョンがないと判断した明確な理由をお教え願いたい。
総理大臣:国防にかかわることなのでどうして判明したかはこの場でお伝えすることはできないが、現段階で発生しているダンジョンは119個だとこの場をお借りして断言いたします。
B通信社男性記者
質:119のダンジョンの場所について公式発表はないがなぜなのか?特にセーフダンジョンの場所については?
防衛大臣:国防にかかわる内容なので公式発表できるわけないだろう?でも、国民の皆さんなら情報社会の今の世の中、少し調べれば大体は判るんじゃないですかね?
◆現在までに行った対策について
C新聞社女性記者
質:ダンジョン対策本部のメンバーはどのようにして選出したのか?また、今後増やす予定はあるのか?
官房長官:政府側で必要と思われる人員を配置した。必要に応じて今後も増やしていく予定である。
B通信社男性記者
質:増やす予定のメンバーは政府の独断で決めるのか?
防衛大臣:我々以外のだれが決めるんですかね?もしかしてあなたが決めたいとか?
D新聞社男性記者
質:ダンジョンアタックチームに協力を要請した組織などの内訳を教えていただきたい
防衛大臣:国防に関する内容なのでお答えできません
E通信社女性記者
質:現在すべてのダンジョンを封鎖しているとのことですが、いつ頃封鎖解除を行いますか?
対策本部長:解除を行っても大丈夫と政府のほうの判断がおりてからであり、詳しい時期はまだ未定である
◆ダンジョン発生について
F新聞社男性記者
質:私有地に発生したダンジョンについて現在どのようにするのがいいと政府としては考えているのか?
官房長官:国で買い上げるのが一番いいと考えているが、思い出の土地等といった理由により手放したくないと言う事もあるかもしれない。だから持ち主との話し合いが必要だと考えている。