●ダンジョン出現一月後の他国の状況
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 某諸島のとある国 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここは某国の大統領官邸、そこには大統領および数人の閣僚が顔を突き合わせて会議を行っていた。
「しかし、かの国はやはりこういう事には強いな……」
「だてに日いづる国やら神々の住まう国などと言われていませんな」
「ジャパニメーションはやはり実話を基にしているのかもな……」
そこで行われていた会話は一月ほど前に現れたダンジョンについての会話だったのだが、その内容は突飛な事に対する対応に世界でもっとも信頼のある国の話題であった。
もっとも、かの国の国民からしてみれば、突飛な事に対する対応力に信頼があっても喜ぶことでは……いや、かの国の国民なら喜ぶかもしれない。
「でも早々のうちに助言を求めて正解でしたな」
「ですな、こちらも情報を出したとはいえ、かの国の反応を見るにすでに持っていた情報のようだったが、そんなことは微塵も匂わせずに色々な情報を今も提供してもらえてる。今まではかの国とはあまり関わり合いがなかったが、これからは積極的に協力関係を築いていきたいものだな」
「しかし、国民の義勇隊ですか……あれ、正式に認めてよかったのですか?」
部下の一人がそう言って大統領の顔色をうかがうが、大統領としても本意ではないが国の、はては民の将来を考えるに苦渋の決断だったのであろう表情をしてる。
「我が国には外貨を稼ぐ手段がろくになく民に貧困を強いている現状、今回のダンジョン発生は降ってわいたような幸運だからな。民がやる気になっている今、国がそれを援助するのは当たり前だろう?」
「ですな。とはいえ、無理はしてほしくないものですが……」
「そこだ!そこだけは徹底して指導しておけ。今あせって無理に奥に先に進むことはない。きちんと段階を追っていけば結果はおのずとついてくるときちんと全員に理解させてるのだ」
「幸い、今まで貧困だったせいか、日々の食事が何とかなればあまり無茶をすることなく出てきてくれてますしな。このまま下層である程度ダンジョンに慣れて、さらには後進の育成にも力を入れられるよう進めていきますよ」
こうして国として貧困にあえいでいたとある国では、国全体が一丸となってダンジョン攻略に乗り出していった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 某大陸大国 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
某大国国家元首官邸では、この国の国家元首、および軍の上官数名が談話室に集まり、お酒を飲みながら何やら会議のようなものを行っていた。
「くそっ、何だ今回の放送は。なぜ我々の企みがばれている。しかも一週間以内に一定以上攻略しないとすべてのダンジョンを消すだと!そんなことされては大損害どころではないぞっ」
「しかし、あの言葉を信じることなくこのまま放置を続けるのもどうかと思われます。崩壊メーターが全て真っ赤にそまり、その状況から数日経過するも崩壊の兆候が全くないのはおかしいと思ってはいたのですが、奴が止めていたというのならば納得です」
その発言には、当初の計測結果よりもダンジョンの崩壊が遅れていることに対する理由がわかり、調査の不手際を疑われていた軍高官の安堵した気持ちが多分に込められていた。
「くっ、あそこを崩壊させて邪魔者一族を一掃し、その時の被害状況を見て他国のダンジョンにミサイルを撃ち込んで効率的にダメージを与える計画を、こんなことでとん挫させるわけには……」
「とりあえず、現状立ち入りを止めているダンジョンには早急に人員を送り一定以上の成果を上げ、ダンジョンの崩壊を防がねばならないと愚考しますが、いかがいたしましょうか」
「いかがも何も、せっかくのお宝を無暗に消すわけにはいかん。あの言葉が本当かどうか確かめるためにそこまでの危険を冒すわけにもいかんから、確実に成果をあげられるよう経験の多い専門部隊を送り込め!」
「そうなると彼らが現在攻略中のダンジョンのほうはどういたしますか?」
そういったダンジョン攻略作戦を任されている軍高官は、一つでも多くのダンジョンをセーフダンジョンにするため、現在攻略を進めさせている軍の重要地点近くのダンジョンに派遣されている特殊部隊の今後の配置を計算しつつ、また計画を練り直せばならないことになったと頭を悩ますのだった。
「仕方ないからまたあの派閥の連中を放り込んでおけ」
「しかし、無理にダンジョンに入らせるのもよくないと言っていましたが?」
「ふん、今までさんざん送り込んだのに我々には何も問題は起こっていない。と言う事はこれからも起こらんと言う事だ。どうせはったりだよはったり」
「本当にはったりでしょうか?他の事を考えると、一概にはったりと決めつけるのも後々問題になるのでは?」
「そんなもの、これまで我々には問題がなかったのだ。と言う事は問題が起こるとしても直接ダンジョンに入れさせた連中だろう。そいつらの監視を怠らずしておけ」
その発言を聞いた軍上官がちょっと気まずそうな表情をした。
「管理体制に多少の人員入れ替えを行っても?」
「なんだ、何か問題でもあるのか?」
「いえ、今の話ですとうちの娘婿の一人がもしかすると影響が出るかもしれませんので、影響の薄そうなところに配置換えをですな」
「まぁ、そのくらいの事は構わんよ」
こうしてダンジョンを使ったとある計画をしていた国の上層部は、計画の変更を余儀なくされていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 某砂漠の多いとある国 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とある国の小さな町の中にある、石造りの建物の地下に数人の男が集っていた。
「同士A、今回の神の放送を聞くに、いま計画していることを行うのはまずいのではないか?」
「同士C、あれは神ではない、神を騙る悪魔だ。我々の神は唯一にして至高、あんなわけのわからないものと一緒にするでない」
「しかし同士B、全員に……それこそ耳が聞こえないものにも聞かせる御業は神としか言いようがないではないか!今回のダンジョンも神が我々に与えた試練に違いない!」
「そうだ同士C、今回の件は至高の神が我々に国土、そして聖地を奪還するために与えたもうた試練だ。聖地から一番近いダンジョンを攻撃し崩壊させることができれば聖地周辺は神の御業により浄化され、邪教徒共を一掃してくれるだろう。そう、これは我々に与えられた聖戦への序曲なのだよ!」
「しかし、神はこうも言った。今回のダンジョンを国家間の争いに用いてはならないと」
「同士Bよ、これは国家間の争いではない、あくまでも邪教徒との闘いだ。我々にとって譲ることのできない聖戦なのだよ!」
こうして、他国にある他の宗教の聖堂を20年ほど前に勝手に聖地と決めつけた過激派ゲリラの面々は、自分たちの、自分たちによる、自分たちだけのための聖戦の準備を進めていくのだった。
なお、余談ではあるがこの過激派の指導者は、その国で過去に犯罪を犯した結果国外逃亡し、その結果この国へ流れ着いた経歴があるとかないとか……