決まりませんか?いいえ、決まりました
そして三人から自己紹介されたのですが……ここにいる女性が最終選考対象なのですよね?榊さんは?下ですでに自己紹介済みだからOK?
そして自己紹介が終わると、お爺ちゃんは三人に対して隣の部屋でしばらく待っている様伝えたのですが、自己紹介をした三人はかなりびっくりしていました。
当初の予定と何か違うのですかね?
そして名残惜しそうにこちらを……とくに沙織さんに対して目線を投げかけた後移動していきました。
あ、二人目の方だけは相変わらず私の車椅子を見ていましたね。これがかなり特殊だってわかって、それで興味を引かれたとか?
そしてお爺ちゃんはみんなに席に座るように勧めた後、私に対して
「知佳ちゃん、もう決まったみたいだけど、誰がよかったかな?」
とそう聞かれたので素直に
「榊さん!」
と素直に答えました。ですがなぜかみんな驚いています、なんでだろ?ここにいる女の人で一番いいと思った人を選んでいいんだよね?
「さ、榊君か……えっと、本当に榊君がいいのか?今隣に移動した三人はだめか?」
んー、何でしょう。もしかして榊さんはダメだった?榊さんを見てみると、きょとんとした顔をしています。
「んっと、ここにいる女性って事だったから、榊さんが一番いいなって」
「そ、そうか。ちなみにさっきの三人はどこかダメなところはあったか?」
「んーとね。一人目のパーマの人は、いい人だとは思うんだけど、私の足をじっと見てたから変に気にしすぎて逆にダメかなって。ああいう人って必要以上に気を使ってくるからこっちも疲れちゃうんだよね」
そういうと何となくだけど納得したようでした。
「二人目のウェーブの人は、私には全く興味なさそうで、車椅子ばかり見てたねー。なのでダンジョンに一緒に行くのはどうかなって。で、三人目の人は絶対いや」
「さ、三人目は絶対いやって、あれだけでどうしてそう思ったんだい?」
とお爺ちゃんはすごく不思議そうな顔をしていたので、思ったことを素直に伝えてみました。
「あの人、最初に私の足を見てめんどくさそうな顔をしたんだよね。すぐに悲しそうな顔に変えたけど。でね、それを見て義両親を思い出したから、いやかなって」
私がそういうと、他の皆も三人目の人の表情の変化には気が付いていたようで、私の意見に同意してくれました。
「そうか、あの子はそんな子だったか……」
それを聞いたお爺ちゃんはちょっと遠い目をしていますが、やっぱり外面を取り繕うのがうまい人なのかな?
「で、榊君が残ったという訳か……」
ちょっと勘違いされてる?
「ちがうよー。榊さんはね、ここに来るまでにさりげない気遣いを見せてくれたし、しゃべり方のイントネーションがね、なんか温かい感じだったの。ちょっとお父さんに似てるかな?あとは、私が車椅子に乗っていても普通に接してくれたから、一緒にいても気が楽そうだなって」
「車椅子に乗っていても普通に……か?」
「なんていうのかな……私が車いすに乗っていることが特別な事じゃなくて、普通の事として受け止めてくれてる感じがしたの。で、昨日楓さんがその場のノリで決めればいいって言ってたから、榊さんがいいかなって」
そういうと、お爺ちゃんはまたもや遠い目をしてから榊さんを見て
「と言う事なのだが、榊君はどうかね?」
「わたくし……ですか?確かに私もダンジョン関連で会長の補佐をさせていただく手前、ダンジョンにも何度か赴いていますが、ほとんど後ろから棒でつつくくらいしかできていませんよ?そんなわたくしでもいいのでしょうか?」
んー?これってやっぱり榊さんは選抜メンバーとは違ったのかな?
だとしたらさっきの三人には悪いことしちゃった?
「今回のこの場を設ける時に説明したと思うが、今回求めているメンバーは後衛……というのだったかな?だよな玲子君」
「はいそうですね。知佳ちゃんの負担を減らすのが主な目的ですので、前衛に立ってもらう事はそうそうないかと思います」
「後衛というと、バッファーですか?ヒーラーですか?それともスペルアタッカーですか?」
ん?なんかゲームに出てくる様な言葉が出てきましたよ?もしかしてそこそこやる人かな?
「あ、もしかして榊さんってゲームやられます?」
「えぇ、お恥ずかしい話ですが、実はMMORPGが好きでして、それなりにはやりこんでいます」
「ほうほう、これは意外な一面じゃな。会社ではそんな事はおくびにも出さないから全然気が付かなかったよ」
「会長、さすがに仕事中にそういう事は表に出しませんよ?」
「とはいってもだね、ダンジョン関連の話をしていても私よくわかりませんといった表情をしていなかったかね?」
「それは、実際のダンジョンとゲームでは違いますから、思い込みや先入観で仕事でミスをするわけにはいきませんからね」
ふむふむ、まじめな人なのね。そしてゲームもやっているから魔法やダンジョンに対しても理解がある……と。
「ちなみに榊さんはゲームでは主に何の職をやるのですか?」
「わたくしはスペルユーザー系がメインですが色々やりますね」
「それはそれは……会長、ちょうどいい人材じゃないですか!」
んー、玲子さんがお爺ちゃんを会長って呼ぶの、ちょっと違和感あるなぁ。でもここ会社だし、仕方ないのかな?
これが大人になるって事なのね!
「じゃぁ、榊君で決まりかな?」
「でも会長、そうすると会長の補佐は誰がなさるのですか?」
「そっちは代わりの人員をだれか見繕うよ。当面の間は笹本君にでも頼むかな?」
「笹本先輩にですか?もともとわたくしは笹本先輩の手が回らなくなってきたからって京都支社から引き抜かれてきたんですけど?」
「まぁ、そこはそれだ。早めに後任を見つけるからそれまでは我慢してもらうよ」
んー、榊さんを引き抜ける流れ?あれ、もしかしてこれってヘッドハンティングとかいうやつ?
「じゃ、後任を見つけた後の引継ぎまではこちらも頼むとして、現段階をもって榊君もわが社のダンジョンアタックチームに所属と言う事で頼むよ」
「で、でもやっぱり会長のサポートが……」
んー、もう一押しってとこかな?ちょっとあざとく、上目遣いでおねだりする感じで心をえぐるように行ってみましょう!
「榊さん、私と一緒にダンジョンもぐるの、いやですか?」
「うっ……そ、その顔は卑怯ですっ。わ、わたくしとしても、まだ一般開放されていないダンジョンに入れるのはとても心躍るものがありますが、本当にわたくしで良いのでしょうかというのが……」
あとはもうね、わたしからーの、れいこさんからーの、ほかのみんなからーの、そしてとどめはお爺ちゃんからの会長命令発令で榊さんも折れてくれました。
あ、決して無理強いしたわけじゃないのよ?どうやらサポートのために引き抜かれて本社に来たのに、結果が出る前に他の仕事に回っていいのかっていう葛藤があったらしくてね?その壁を取り除くための後押しの会長命令だと思うのよ?
最終的にOKもらう時は結構嬉しそうな顔をしていましたからね!
そうと決まれば後はさっきの三人の事なんだけど……結構時間たってるけど大丈夫かな?
ま、難しいことは大人に任せましょう!
そんなこんなで新しい人員も決まったと言う事で、あとはお爺ちゃんに任せてお家に帰ります。
責任は、偉い人に取ってもらわないとねっ!