アーチェリー経験者ですか?いいえ、未経験です
21階層で森を抜けた後も何度か敵と戦い、その中で知佳も何度か弓を射て直接戦闘にも貢献できました!
「知佳ちゃん、いまさらだけどさ?」
「ん、なーにー?」
魔法陣の光が見えてきて、もうすぐ出口という頃に玲子さんから質問が?
「知佳ちゃんて、過去にアーチェリーとかやってたこと、ないよね?」
「ないよー。ゴブリンの弓拾って使ったのが初めてかな?」
「だよねぇ」
「なんでー?」
なんだろ、何か問題があるのかな?
「あ、それ私も思ってました」
「そうですね、実は私も思っていまして」
「知佳ちゃん、ほぼ初めてのわりによく当てる」
「あぁ、そういう事?でも敵までの距離って体育の授業でみんなが走る距離より近いし、何より敵もよく見えてるし、こんなもんじゃないの?」
確かに自分でもびっくりするぐらいよく当たるんだけど、普通じゃないの?敵も動いてないしね。
「いやいや、普通はもっと外すものじゃないの?」
「ですよね、近くても20m以上ありますし、一番遠いのだと40m位は離れてましたよね?」
「アーチェリーの女子の競技のうち一番近い距離の的がたしか30mでしたっけ?これなら少し練習すれば競技大会なんかにも出れそうですね」
へぇ~、そうなんだ。でも一番近い距離が30mならやっぱり普通に当たるものなんだよね?
「なんかね、こう狙って集中すると、矢が的に当たったイメージがわくのね。で、そのイメージ通りに矢を射ってあげると当たるの!」
「へー、知佳ちゃんてもともとアーチェリーに適性があるのかもね」
「それでも、ほぼ練習無しでここまで当たるのはすごいことだと思いますけどね。知佳さん、いっそ本格的にアーチェリーやってみますか?」
「んー、本格的にやる気は今の所ないかなぁ?ダンジョン攻略をどんどん進めたいしね!」
そんな会話をしつつ、周りもしっかり警戒して魔法陣まで移動し無事到着。
結構いい時間なのでね、次の階層に移動してから即外へ。あ、22階層も21階層と同じように草原でした。
そして外へ出る前に今日書いた地図をチェック!
「今回のこの地図、あまり役に立たないかもねぇ」
「そうね、でも今までの迷路階層と比べて今回の階層は真ん中に大きな森があって、そこからどっちの方向に行けばいいってわかってるから、逆にわかりやすいかもね?」
「そうですね。出てくる敵も今までより離れたところからといった感じですし、逆に楽かもしれませんね」
「閉鎖感がないから気分的に楽だった」
「今回の地図は迷路階層とは違う意味で役に立つから心配することはないと思いますよ。今一番求められているのは、どの階層がどういう地形なのかと言う事ですしね」
「そうなの?開始場所からこういけば確実に出口ってわかる方がよくない?」
「それはそうですけどね。でも、迷路階層に行くと思っていたらいきなり草原階層だったとなると、新しい準備なども必要ですからね。次の階層がどういうところなのかがわかるというのはものすごいアドバンテージなのですよ」
「なるほどー、そういう見方もあるのか」
などとそれぞれ簡単な感想を述べた後、外に出て更衣室になっているプレハブ内で着替え、KD対策本部へ寄って今日の報告をし、お家へ帰ります。
「きょーうっのごっはんはなーにっかなっと」
「ふふふ、知佳さんすごく嬉しそうですね」
「うんー。ちょっと前までは家で食べるご飯は多くても玲子さんと二人だったからね。大勢で食べるご飯はそれだけで美味しくなるよね。だから毎日のご飯が楽しみなの!」
「知佳さんたら……それ、お婆様たちに言ったら涙を流して喜びますよ?」
「いやいや、さすがにそこまではないでしょー」
そんな会話をしながら無事帰宅。今日はちょっと遅くなったのでご飯はすぐ出来るとの事なので、このまま食堂の近くの談話室に移動して待ちましょう。
沙織さんや玲子さんと他愛のない話をしつつ夕飯を待っていると、曾お婆ちゃんをはじめ皆が続々集まりだし、忙しいはずのお爺ちゃんや高志伯父さんまで時間前に到着です!
「今日はみんな集まったね。権蔵や高志は仕事大丈夫なのかえ?」
そうは言うけど、お爺ちゃんや高志伯父さんも夕飯に参加できないのは週に1~2回しかないような?みんな忙しいようなこと言ってるけど、本当なのかな?
「明日でダンジョンができて一月ですしね、今日の仕事はキリもよかったので早めに上がってきたのですよ」
「今日は知佳ちゃんがダンジョンに行った日だしな。報告を聞きたいだろ?」
ぬーん、何か期待されてる?
「ふふふ、知佳ちゃんちがうわよ。みんな知佳ちゃんが怪我してないか心配なのよ」
むむ、思ってたのと違った?それにしてもさすが玲子さん。私の顔に書かれた文字を読むのが上手いです。
「そうさな、知佳ちゃんが怪我してないか心配で心配でのんびり仕事もしてられんわ」
「何言ってるのかね。あんたなんか普段は机の前でふんぞり返ってるだけじゃないか」
「お、お母様なんてこと言うんですか!ち、知佳ちゃんそんなことないからね?きちんと仕事してるからね?」
なんか、今日は曾お婆様とお爺ちゃんの漫才の日みたいですね。でも大丈夫、私ちゃんと知ってるから!
「大丈夫!偉い人は問題が起こった時に責任を取るためにいるんだよね?だから普段はデーンと偉そうに構えてればいいんだよね!」
「いや、知佳ちゃん、それは何か違うような?」
「間違っては、いないねぇ。正確には問題が起こらないように普段から配慮し、いざ問題が起こったらそれに対して対処する。そしてどうしようもなくなったら責任を取る……だね」
などと会話をしていると、ご飯の支度ができたようなので食堂に移動です。




