表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『砦』を使って快適ダンジョンライフ  作者: 日進月歩
第三章 皇居ダンジョンへ行こう!
134/232

●ダンジョン発生一か月目前の首相官邸にて……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 総理官邸 会議室 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そこには60歳程の白髪交じりの男、この国の総理をはじめ様々な閣僚たちやダンジョン対策本部の面々が集まっていた。


「明日でダンジョンができてちょうど一月……早いような遅いような、といった感じですか」

「そうですね総理、5年という期限のうちの一月、決して遅いと言う事はないかと思います」

「今後の方針も大まかな筋道としては決まりましたし、何とか明日国民の皆様にそれらを発表する準備もできました。常に後手後手に回る我が国の対応としては早いかと思いますよ?」


 そうそうたるメンバーがここ集まっている理由、それは明日の政府公式発表にて、一月前にダンジョンが出来た事に対する我が国の今までの経過と、今後予定している対応を国民に対して発表する、その最終確認の打ち合わせのためであった。


「それにしても、新しく取り決めたり改定する各法案についてもっともめると思いましたが、案外すんなりいきましたね」

「そうですね、与党はまだしも野党からはもっと反対意見が出るかと思ったのですが、騒いだのは一党だけでしたね」

「あの党はな、国民でもなぜあの党が存在しているのか疑問視する声も多々上がっているが、中身は外国のスパイだからな」

「幹事長、それを言っては……」


 ここで話題に上がったのは日本を共産国にしようと目論む一派の存在する党の事であった。

 一応公安からの情報では某国の息がかかっているとか、本当の国籍は他の国であるとか様々な話があるか、かといってスパイ防止法のない現在の日本で取り締まれるほどの瑕疵かしもないため放置せざるを得ない状況だ。

 とはいえ、提出される法案すべてに対して右ならえになってしまってはそれこそ独裁政権に片足を踏み入れることになってしまうため、与党の大半の議員は必要悪と割り切っている。

 それでも、反対意見しか出さないかの議員たちには時に頭の痛い思いをさせてこられたが……


「いっその事、今後国家公務員や地方公務員の上級になるための条件の一つとして、ダンジョンでレベルを一定数まで上げるという項目を盛り込んでみますか?」

「それは……彼らからは危険がとか何とか色々理由を付けて反対されるでしょうね」

「でも我が国の本当の国民かどうかを判断するいい理由にはなりますよ?」

「そうですね、実施できればいいのですが……それは追々でしょうか?」

「ですな、5年という期間内にそれが出来るかというと、時間が足りませんな……」


 集まった皆はそれぞれ何か思うところがあるのだろう、会議室が一時静寂に包まれた。


「まぁ、今はやるべきことをやりましょう」

「では明日の公式発表の最終確認をさせていただきます。明日午後4時より各放送局に協力いただき、これらのことを発表すると言う事で」


 そういって会議室前方にプロジェクターで発表内容の概要が表示され、その内容は



◆概要

・2020年3月25日に世界中にダンジョンが発生

・日本には119個のダンジョンが発生(うち一つはすでにセーフダンジョンとして問題のない状態となっている)

・日本に発生した119個のダンジョンはすべて把握済み


◆ダンジョン発生から現在までに行った対策

・ダンジョン発生と同時に、政府としては即これに対応するため、ダンジョン対策本部を設置

・国民の皆様に対し、ダンジョン発見の折は政府に報告するよう協力を依頼

・ダンジョン攻略のため、自衛隊をはじめ各方面に協力要請を行い、ダンジョンアタックチームを発足、このチームにより国内すべてのダンジョンの攻略を開始している

・また、国内の119のダンジョンについてはすべて封鎖させてもらい、現在ダンジョンアタックチーム以外の立ち入りは禁止している


◆ダンジョン発生について

・ダンジョン発生場所は既存の建物を壊す形で現れたものは一つもなく、地下などにも発生していない

・ダンジョン発生場所はすべて国有地というわけではなく、私有地にも発生している。これらについては今後どうするか国会で話して決めていくが、その土地の所有者の方に不利益にならない様取り計らう方向で話を進める予定


◆ダンジョンの特性

・各ダンジョンには入り口の上に5つの丸い石のようなものが付いており、ダンジョン攻略をしないでいるとこの石が赤く染まっていく(映像付き)

・この5つの石すべてが赤く染まった時にダンジョン内のモンスターがあふれだすと予想

・ダンジョン内にてモンスターと呼ばれる様々な敵性生物を確認

・ダンジョンに入り、モンスターを退治することによりこの赤い色が減っていく事を確認済み

・セーフダンジョンのみ、入り口上方にこの石がないことを確認済み


◆ダンジョンにおける被害

・ダンジョン発生から現在まで、政府で把握している国民の被害は、死者0人、けが人13人、ダンジョン内で行方不明と思われる者が25人

・なお、国民がダンジョンに入って出てこないと報告のあったダンジョンに対し、ダンジョンアタックチームの面々に捜索に当たってもらったが、行方不明者の消息および遺品などの品も一切発見できていない

・ダンジョンアタックチームには、現状けが人は出ているがいずれも軽傷であり、大きな被害は出ていない


◆私有地に発生したダンジョンに対する対応

・臨時措置として、この発表後よりダンジョン発生地およびその周辺1kmに関して、土地建物の売買および貸与について規制中

・これは他国から国内のダンジョンへの様々な干渉を防ぐための処置であり、事これに至っては国防に関する内容のため国民の皆様にはご理解をいただきたい

・なお、それら該当する土地を売却および貸与したい場合は、近場の役所に申し出ていただければ国のほうで交渉・対応させていただく


◆今後について

・ダンジョン対策本部を中心に我が国のダンジョンを1つでも多くクリアし、日本の将来のためになるよう進めていく方針である

・国民に対してのダンジョン開放の問い合わせが多く来ているが、前向きに検討中であるため、もうしばらくお時間をいただきたい

・これに伴い、ダンジョン法案を新たに設置する方向で検討中

・当面は特別措置法とし、将来的には通常法案として提出する方向で検討中



 これを見た面々はというと、とりあえずここまでこぎつけたかといった満足げな表情であると同時に、隠し切れない疲れがにじみ出ていた。 


「さて、それでは明日読み上げる原稿の最終確認をして、今日は休むとしますか」

「そうですね」


 とその時……



『全世界の諸君、お疲れさまだ。地球そのものの意思である』



 一月前に世界中を激震に飲み込んだあの声が聞こえてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ