迂回しますか?いいえ、つっきります
先ほどは先走って叱られてしまいましたが、その後は特に問題なく、出てくる敵をバッタバッタとなぎ倒し!進むこと出口の魔法陣への半分くらいの距離まで来たのですが……
うん、さっきから見えてはいたんだけどね、どうやらこのフロアの真ん中に結構深い森があるみたいでね?
右を見ると500mほど森が続き、左はもっと遠くまで……
「これ、どうする?まっすぐ行く?右行く?左行く?」
「そうね、安全そうなのは右かな?」
「ですが、見えない先がどうなっているか次第ですよね?」
ですよねぇ、ここから見た感じだと右が一番楽そうだけど、右の森が切れた先が今までと同じように楽な道なのか、はたまたさらなる困難が待ち受けているのか……
もっとも、まっすぐ行って森を突っ切るのもなにがしかの困難がありそうだし、左も左で同様。
「今の所出てきた敵って今までの階層で出てきた敵しかいないし、数も5匹まででしょ?」
「そうねー、敵に関しては特に脅威って事はないわね」
「そうするとね、敵が近くにいるかどうかは私のスキル効果で判るし、葵さんや楓さんのスキルでもある程度分かるでしょ?だから森を突っ切るのが良いかなって思うのー」
「んー、それも一つの手だけど、知佳ちゃん車椅子で行けそう?」
そういえばそうね、見た感じ木々の間は車椅子が通れるだけの幅はあるみたいだけど、木々の間に藪があったりもするし見える範囲での最短コースは無理なのかな?そう考えていると……
「さすがにそのまま車椅子でというのは難しそうですね。今後は森の中を進むことも頭に入れて、知佳さんの松葉杖と藪漕ぎ用の鉈などを用意してきた方がよさそうですね」
「あとはあれね、知佳ちゃんを乗せて移動できるような背負子なんかもあるといいかもしれないわね」
「え?私背負われちゃうの?いくら背が小さいといっても重くない?」
「いやー、知佳ちゃん位なら行ける行ける。何ならこの森をおんぶで抜けようか?」
え?玲子さん何言ってるの?ここ、一応ダンジョンの中よ?
「そうですね、それも一つの手かもしれませんね」
え、葵さんまで?
「それでは、何かあっても一番大丈夫そうな私が背負います!」
と沙織さんが言い出したのですが……
「いや、防御力なら私のほうが……」
「でも葵さんは敵が出たときに引き付けてもらう役目がありますし、ついでに言うと楓さんはこういう場所のほうが力を発揮できるでしょう?そうすると必然的に私か玲子さんが知佳さんを背負う事になると思うのですが、私の武器は槍ですからこういう場所だと取り回しが難しいのですよ。それにこの鎧がありますから、知佳さんを背負ったまま敵の攻撃を食らってもたぶんダメージはないでしょうから私が一番いいと思います」
「んー、そこまで言われると確かに沙織さんが一番いいのかな?」
えっと、ちょっとまって?何やら私が背負われてこの森を抜けることで話が進んでますよ?
「ね、ねえ。私が背負われてこの森を抜けることは確定なの?」
そう聞いてみると、みんなして何を言ってるんだという顔になり
「え?抜けないの?」
「知佳さん、私の背中は嫌ですか?」
「今後どうしても森を抜けなければならない状況というのが発生しそうですし、ここで試しておくことは重要だと思いますよ?」
「そうそう、知佳ちゃんは沙織さんの背中でのんびりしてると良い」
うごごご、皆してさも当然のごとく……でも確かに今回は横から行けば車椅子でそのまま行ける可能性はあるけど、今後森林地帯とか、また別の車椅子じゃ無理な状況もあるかもしれないし、ここは試して問題点を洗い出すのがいいのかな?
「う……そ、それじゃお願いしようかな。でも、重かったらすぐ言ってね?」
「大丈夫だと思いますよ?私もレベルが上がってかなり力も強くなっていますし、知佳さんの一人や二人位!」
「いや、私は一人しかいないからね?」
そして背負われて進むことになりました。
沙織さんの武器の槍は、いざという時にすぐ使えるように背負われた状態で私が持つことになり、隊列としては先頭を楓さんが、その次に葵さん、真ん中に私と沙織さん、殿を玲子さんが務める事になりました。
なったのですが、少し進んだところで隊列変更に。
なぜかというと、藪がそこそこあり沙織さんが歩きにくい状況もあるため、葵さんと玲子さんを入れ替えそこそこ邪魔な藪は玲子さんが剣で薙ぎ払うという方法に変更となりました。
「やっぱり藪漕ぎ用の鉈かマチェットのようなものを用意した方がいいですね」
「そうねー、その辺については登山なんかの知識を応用できそうね」
と、周りを警戒しつつも今後の対策なども話し合い、森を進むこと20分ほど行くと、先のほうは木々が薄れて開けた場所がありそうな感じですよ?
「この先森が開けてるっぽいね。でも森を抜ける……ってわけじゃないかな?その先も森は続いてるみたいね」
「ねーねー、開けてるなら一回休憩しよ?沙織さんも大変でしょ?」
「いえ、知佳さん軽いから全然大丈夫ですよ?それに太腿のお肉がぷにっとしていて持ちやすいですし」
「あー、ひっどーい!」
ちょ、さらっとディスられましたよ?
「あ、悪い意味じゃないのよ?なんていうのかしら……ぷにぷにっとしていて肌触りというか質感というか、いつまで揉んでいても飽きが来ないというか……」
「むむ、それでたまにもみもみされてたのか。持った時のすわりが悪くてもみもみしてるのかと思ったよ」
「あー、ビーズクッションを揉んだ時とか、水風船を持った時みたいなあれ?」
「そうそう、それです!」
むむむ、私の太腿はビーズクッションや水風船と同等ですかそうですか……どうせぷにってますよー。
……ちくせう
「まぁ、何にしても森の中で警戒しながらっていうのも初めてだし、開けている場所の状況次第で休憩しましょう」
そうこうしているうちに開けている場所についたのですが、そこには小さな池があり、その周り数メートルの幅で原っぱになっていました。
んー、木漏れ日が差し込んでなかなか雅な風景ですね!
「おー、これはいい感じの休憩ポイントになるねぇ」
「敵が出なければ……ですけどね」
「そういえば森に入ってから一回も敵出てきてないねぇ」
「そうですね、生き物の気配はあるのですが、こちらに寄ってくる感じでもなかったですしね」
考えてみれば森の中って色々敵がいそうな気がするんだけど、全然出てきてないんだよねぇ、何か理由があるのかな?
「んー、一番危険そうな森の中が一番安全という、ある意味罠だよね」
「今回たまたまなだけかもしれませんよ?」
そんな会話をしつつ、私は聖域を発動してみんなが休憩できる状態にしてから、車椅子を出してそちらに座らせてもらいました。
「でも、この階層って敵少ないですよね?」
「そう?そうかな……今日ここに来るまでに戦ったのって4回だっけ?多いわけじゃないけど特に少ないってわけでもないような?」
移動時間1時間ちょっとで4回って、多くも少なくもないような?もっとも森に入って20分で0回は場所も考えると断然少ないんでしょうけど……
そう思っているのはどうやら私だけのようで、皆は何か思うところがありそうです。