第一話 夏の思い出
あれは僕が小学3年生の夏だった。
悪友のフナッチとイソと僕の3人で自転車をこいで海へ行った。
ひとしきり泳いだ後は得体の知れない海の生き物を焼いて食うのが
僕たちの楽しみだった。
海流の加減なのかその砂浜にはたくさんの漂流物が打ち上げられている。
僕たちは焚き火の上に乗せる鉄板を浜辺で探した。
イイモン見つけた!!
フナッチはそう叫びながら4リットルのオイル缶を持ってきた。
石を組んでぐらつかない様に焚き火の上にオイル缶を置いて
その上につぶ貝やムール貝を乗せていく。
だがチリチリジュージューと言う音に混じって
妙に不吉なベコボコギギギギギ・・・・・と言う音がしてきた。
見るとそのオイル缶は蓋が閉まっており、あろう事かじわじわと膨らんで来ていた。
よく見ると蓋の隙間から青っぽい煙まで立ちのぼっている。
これは・・・・爆発するんじゃないのか?
みんながそう思ったが状況の怖さに誰も動けない。
そして・・・・
ボンッと言う音と共に蓋がはじけて僕の胸の真ん中に当たった。
ショックと熱さで驚いている僕の目の前にもっと驚く光景があった。
ロケットのように凄い勢いでオイル缶本体が向かいに座っていたフナッチの
お腹に飛んでいったのだ。
オイル缶はフナッチのお腹に命中。
しかも青い炎を噴き出しながら尚も加速中。まるでガメラだ。
胸にやけどをした僕と腹に大やけどを負ったフナッチだが
子供の回復力はすごい。
1週間後にはまた海に行って遊べるまでに回復した。
夏休みの中頃から秋にかけて僕には妙なアダ名がついた。
胸の真ん中に丸いヤケドがあったために
ウルトラマンと呼ばれたのだった。
そして同じように・・・・・
夏休みの中頃から今に至るまでフナッチには妙なアダ名がついた。
お腹の真ん中に大きな半月形のヤケドがあったために
ドラえもんと呼ばれたのだった。
苦い。あまりにも苦い夏の日の思い出だった。