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アグレッシブ・オブザーバー  作者: 深層^0
学園へ
4/8

編入生の実力?柊の予感

 「今日から編入しました、柳 優也です。PSはバイトで使っていたのでそこそこ自信があります。まだこの学園のことは右も左もわかりませんので、迷惑をかけることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

―――パチパチとまばらに拍手があがる


 緊張しているのか、やけに硬い挨拶、というのが第一印象。

見た目はこれといって特徴のない、中肉中背の男子。

ただPSに自信がある、という言葉が私が彼に興味を持たせた。


PSが一般に認知されて20年、家に近い値段こそするものの

車のように維持費が高くはなく、パワーがあるため雪国では一般家庭に置いてあるところも少なくない。

 バイトで使うとなると、土木関係か運搬、倉庫関係なのだろう。

昔から使ってるところは外部電源で稼働させているような旧式だろうし、どれくらいの実力か興味が湧いて仕方ない。


 私は軍人、PSの操士になりたい。

そのために青桜台学園に来て、時間が許す限り乗り込んだ。

夏休みでさえ、友達と遊びにいくことも碌にせずひたすらPSに乗り込んだ。

彼の実力があるなら、私の実力向上のために相手になってもらう必要がある。

今日は幸い、昼前の授業にPS操作がある。

模擬戦であれば、一度相手になってもらえばいい。相手にならなければ、変えればいいのだ。

私は久々に相手が見つかるかもしれない、と心の高ぶりを感じられずにはいられなかった。


 「ところで、柳君はPSのことについてどれくらいわかっていますか?」

授業で彼に先生が質問する。確かにここの授業にはPSの技術に関するものがあるため

把握する必要があるのだろう。実際この授業はPSの技術に関したものなのでついでに確認したのだろう。


 「PS、パワードスーツと呼ばれる2mほどの機械です。40年ほど前に生産が開始され、主に建築や工場などの現場で扱われていたものが始まりです。もともとは外部電源や背中に巨大なバッテリーを背負って作業していたものが、20年ほど前に核電池が開発されたことで脚光を浴びて独立起動させることが可能になり、軍用民用問わずに普及し始めた、こんな感じですか?」

 「ええ、その通りで間違いないわ、では核電池についてはわかりますか?」

 「核ダイヤモンド電池と言われる、原子炉等で減速材として用いられていた黒鉛、これの一部が変化したものを気化させ炭素14を取り出したものを人口ダイヤモンドにすることに成功した過去の実験に関連するもので、ダイヤモンドに放出ベータ放射線が結晶格子と相互作用することで微量の電気を生み出す。これに公開されていない特殊な薬剤を干渉させることで1000倍に及ぶ電力を半永久的に生み出すようにしたもので現在、PSを始めとした銃などの軍用品、身近な物では無停電電源装置などに搭載されています。PSには一般的に肢体の全て、合計5つ内蔵されていることが多いです」


 驚いた、これは授業で習う範囲ではあるけれど。一般常識という範囲ではないから普通の学校からの編入生がここまで知っているとは思わなかった。予習をしっかりしているのだろう。


 「その通りです、予習をしっかりしているのですね、これなら普段の授業にもついていけるでしょう」


他の授業ではこれと言って目立ったこともなく、問題のPS操作の授業に入った。


 「そんじゃ授業始めるぞ、柳お前PS操作できるんだったな?」

 「はい」

 「なら、大丈夫か。みんなで格納庫に行ってPSでグラウンドに集合だ案内してやれ、お前に貸与される分もすでに名札かかってるはずだ」

 「了解」


 今日は十中八九、模擬戦。それなら誰かと組まれる前に私が確保するに限る。

 「柳君、案内するよ」

 「えっと、ありがとう。ごめんまだ名前覚えていなくて・・・」

 「私は柊 星良 ひいらぎでもせいらでも好きに呼んでくれたらいいよ」

 「柊さんか、ありがとうお願いしてもいいかな」

どうにも堅いが、言葉の詰まり方からみてしゃべり慣れていない。緊張なのかもしれない。

確かに年頃の男の子が知らない女子から話かけられると照れるものなんだろう。


 「ここが、格納庫。グラウンドの隣ね、ラックに名札がかかってるはずだから探してみて」

私は自分のPSを起動させる。

 「――システム、拡声器起動」

 「柳君、あった?」

少し声を落とし気味でつぶやくように喋った言葉が格納庫内に反響する。

 「あぁ・・・あったよ。ありがとう、助かった」

彼は驚いた様子もなく手早く、PSを着ると起動させる。

かなり慣れた様子で、その辺の子よりも早い、それに拡声器にも驚いた様子がないことから標準搭載されていることを知っているのだろう。

口だけではなく、本当に仕事で乗り慣れている、そんな感じがする。


 「よし、そろったな。そんじゃいつも通り今日も模擬戦だ、適当に二人一組になれ」

一般通信回線を通じて先生の声が聞こえる。

 「柳君、せっかくだし、私と組んでみない?」

先手を取る、ここまでして誰かに取られたら無駄足になってしまう。

 「んーそうだな、知り合いも相手もいないし、柊さんが大丈夫ならお願いしてもいいかな」

 「気にしないで、せっかくの知り合ったんだしこれくらいはね?」

嘘だ、私は喜んで相手になるのだ、普段もみんなが相手にならないので先生に相手してもらっているほどなのだ。


 「あ?柳は柊と組んだのか?まぁいいが・・・大丈夫か?」

 「先生、それはどういうことですか?」

 「ちょっと酷くないですか先生、変なこと言わないでください」

せっかく相手になるかもしれないと組んだ相手を取り上げさせるわけにはいかない。

 「あぁ、悪かった悪かった、大丈夫だろ 気にするな」


 「それじゃ、始めてくれ。あぁ柳の為に行っておくが武装はペイント弾だから遠慮なく打っていいぞ、近接武器もゴムだ、大けがにはならないだろうがそっちは少し気を付けてくれ」


 「それじゃ柳君よろしくね、いくよ!」





 「――武装右ガトリング」

 腕部内蔵のガトリング砲が飛び出し、回転、ペイント弾射撃を開始する。

柳君は冷静に飛び退くが、武装を起動した様子は見えない。

回避するだけの技術はあるが、武装を知らないのかもしれない。

だが、そんなことは関係ない。

私は再度柳君へ射撃を行う

 「――武装左ハンドガン」

内蔵ハンドガンが放出され、左手でキャッチする。ハンドガンは放出されるので慣れていないと拾いなおす羽目になるが、ガトリングより使いやすさは上だ。


 再び飛び退き、着地する瞬間を狙って私はハンドガン射撃。

―――タタタン

もらった、慣れてはいるといってもこの程度なら相手にならない。

やはり、先生に相手してもらうのが一番なのかもしれない。


私はその瞬間目を大きく見開いた。

着地する瞬間、彼は射撃を見切ったかのように空中で半回転すると、両手で地面を叩く

その勢いで、慣性を殺し逆方向である前方へ大きく跳躍。バク転しながら前に迫ってくるようなものだ。


――ッ!


私は右に飛び退き、バランスを崩しつつもハンドガンで射撃を再開する。

しかし、バランスを崩した状態での射撃はなかなか当たらない。


体制を立て直し、再び腕部ガトリングで射撃を再開するが、いつの間にか彼の機体にはハンドガンが握られている。


曲芸かのように飛び退きながら彼はハンドガンで射撃を行う。

――ジャンプしながらなんて精度!


私はステップ機動でそれを回避

「――武装グレネード」

腕部ガトリングの後ろからグレネードが発射される

勿論これもペイントが巻き散らかされるだけで生身じゃない限り致命傷にはなりえない

彼はハンドガンでそれを打ち落とした。


―――が、隙は十分。


ハンドガンのペイントが彼に命中し、私の勝利である。



しかし、あれほどの機動をしてグレネードすら打ち落とす彼が本当にその後の攻撃に備えられなかったのか。

私の中には疑念が生まれることになった。


 「柊さん強いですね-、まるで攻撃できなかったよ」

 「あぁ、彼女は学園でも屈指の強さだよ、むしろよくあそこまで持ったもんだ」

先生は軽くそう言っているが、彼の戦いをほとんど見ていないのだろう。

実際他の生徒の監督もあるのだろうから、仕方ないし、あれを見てたらそんな言葉が出ないはずだ。

 「いえいえ、柳君も本当に乗り慣れているんですね、びっくりしました」



 彼の実力はもっと上のはず、そうであればぜひ引き出したい。戦ってみたい。

私の中で一つの目的ができた瞬間だった。

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