新生活
物語が読みたかった。
そして読みたいものは読んできた。
だが、私はもっと読みたい。
もっとたくさんの世界を読みたい、感じたい。
痒いところに手が届かない。
なれば、私自らが自らの世界を創り上げ自分のためにかきあげよう。
これは私のための物語・・・。その物語を忘れぬよう、備忘を兼ねてここに書こう。
私の世界のお裾分け、楽しみ共感できるのならば、読み進めてほしい。
そこに結末が訪れるかどうか、この世界がどこまで続くものか
私さえも知らない。
「ここが青桜台学園か」
俺は周囲を怪しくない範囲で観察しながら道を進む。
まさか学園に入ることになるとは思いもしていなかったのだ、今更必要なことは何もないのである。
そんな俺が学園に入ることになったのは一週間前にさかのぼる。
「サスティ、ご苦労だったな」
「いえ、任務ですから」
モニタに映る壮年の男は頭をぼりぼりと書きながらため息をつく
「若い男が仕事一筋の人間になっていくようで俺は罪悪感でつぶれそうだよ」
「それでは他に話もないようなので失礼します」
「まぁ待て、そんな仕事好きなお前に新しい任務だ」
「失礼しました、監査長」
「青桜台学園は知っているか?」
ニホンにある学園だ。これは比較的重要な施設なので叩き込まれた記憶がある。
20年前に核ダイヤモンド電池が劇的な変化を遂げた際、パワードスーツ(PS)が外部電力を必要としなくなった。
それによりPSが重機のような扱いから、民間・軍用機へとシフト。
ニホンでの次世代の研究者や操士・整備員を育成するという目的で、資産家の青葉一族が立ち上げた全寮制の私立学校。
実際に核電池を用いた銃やPSの装備で成果を上げている。要監視対象である。
「勿論。何かとんでもないものを作ったのか・・・?」
「いや、研究開発段階だ。どうやら学園長が青葉一族にすら内密に光学迷彩に着手させたらしい」
「光学迷彩ッ!?ミリタリーバランスどころの騒ぎじゃないぞ」
重々しくうなずきゆっくりと言葉を続ける
「上から直々に下った命令だ。青桜台学園に潜入し、この技術の確立を阻止せよ」
「完成状況次第では現物、理論の奪取及び論文を含めた研究者の始末へ移行も視野に入れろ」
この手の任務は何度か経験があるが、流石にここまでぶっ飛んだ代物は初めてである。
「了解、それで潜入の手はずは」
「生徒として潜り込め、書類はこちらですでに準備済みだ」
「学生になるのか?動きづらくなりそうだが」
「馬鹿言え、教師みたいな大人は多少警戒されるが学生のほうが自由度が高い」
「了解、しかしあそこはPSが下手な軍地基地なんてレベルじゃなかったよな」
「ああ、勿論生身とは言わん。全寮制だしな。支給品のベッドは断って家具一式用意した」
「家具一式ね・・・一体普通の家具の何十倍なんだろうな?」
俺はあきれたように笑うが、今回の任務は非常に重要だ。
上からの下命だけあって、予算がふんだんにあるのだろう
「驚け驚け、天蓋付きのベッドだ。勿論豪華そうに見せるためで中にPSを仕込んでいる」
天蓋付きベッドとは・・・逆に目立ちそうなものだが、それに俺は少女趣味をもってはいない
「ドレッサーには整備メンテナンス用具、予備の実弾が入ってる」
「待て、100歩譲って天蓋ベッドはいいとしてドレッサーなんて男の部屋にあったらおかしいだろ」
「はっはっは、お前よく化粧してるじゃねえか!」
「フェイスペイントで!!学園に通えってか!!」
「冗談だ、いや家具については本当だが」
頭が痛くなる、いや友人を作るつもりも招くつもりもないが、どうにも心が落ち着かない。
「詳細は追ってデータ送付する、スカイが先に潜っているお前の下に付けるからうまく使え 以上だ」