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27.集結

王都にある賢人会の本部では、大騒ぎが起きていた。

レジーは自身が死ぬとそれを通達する魔法を賢人会の本部に設置していた。

それが、発動し、ナウビスやヨウルカスは、レジーが敵に敗れたことを知ったのだ。


「ここまでやる相手だったとは……」


ヨウルカスが呑気にそう言うと、ナウビスは半狂乱になりながら叫んだ。


「どうするんだ!? お前の責任だぞ!」

「ええ? 俺の、ですか?」

「そうだろ! お前、まさか、賢人会を乗っ取るために、芝居をしているんじゃないだろうな!?」


「プロパガンダだと?」

「ああ、そうだ! ここで貴様が出て、奴らを殺せば、指示を得られると思っているんだろう!? させんぞ! ここは私のものだ!」


ナウビスは狂っていた。

手駒の賢者を失うことは、賢人会の下っ端を失うこととはわけが違う。

いつ後ろから刺されるか分からない恐怖に、ずっと怯えていなくてはならない。

そういう後ろ暗いことをしてきたのだ。


「そこまで焦られてもねえ……。俺だって、賢人会みたいな弱小団体は、いらないのですが」

「貴様!!」


掴みかかろうとしたナウビスの後ろから、ナイフが刺さる。


「なん……だと……?」


ヨウルカスは全くそちらに目を向けず、棚からブドウ酒を取り出して、ゴブレットに注いだ。


「さっき、乗っ取るために、とかなんとか言っていましたね。真実は少し違っていて、最初からあなたのものじゃなかったんですよ。彼らのほとんどは、俺が作った『永久人形(エテル)』の失敗作。人間じゃないんです。今頃は、人間を全員殺してムリンに向かう準備を終えているところでしょう」

「き、貴様……!」


ナウビスの前に、大きな黒い魔法陣が浮かぶ。

憎しみのこもった、死の魔法だ。


「その状態でも魔法陣を出せるところは、さすが、と言っておきましょう。でも――――」


ナウビスの周囲は、すでにヨウルカスの手下に囲まれていた。

ローブの隙間から、銀色の剣が見えている。


「ヨウルカスううううう!!!」

「退場願いましょうか」


ナウビスが、魔法を発動させる前に、体中を剣で貫かれ、魔法陣は薄くなり、消えた。


「ヨウルカス、か。手垢にまみれたその名はもう捨てましょう。これからの俺の名前は、『リブラ』だ。永久人形さえ出来てしまえば、隠れ蓑も必要ない」


ブドウ酒を飲み干し、リブラは言った。


「行くぞ、お前ら。ありったけのラドンを出せ。奴らを確実に消滅させる」


賢人会の人形たちは、一様に深い礼をした。






どこまでも続く荒野に、どう見ても不釣り合いな、大きな屋敷がある。

その隣りには、鍛冶場があり、そこでは、緑色の肌をした、ひとつ目の少女が、刀を鍛えていた。

すでにほとんど出来上がった刀の、刃を見ては少し研ぐ。


その傍らに、木の幹のように乾いた肌をした男が立っていた。

彼は様子をじっと見つめ、刀の完成を待っていた。


「――――よし、完成。これでいいだろ?」


彼女が、出来上がった刀を彼に渡すと、彼は光を当てて歪みの確認をしたあと、手に持ち、軽く振る。


「良く出来てる。ゼナ、感謝するぜ」


ゼナと呼ばれた少女は、タオルで手を拭いて、言った。


「初めて弟子にやる刀だろ? そりゃ、アタシも気合が入るってもんだ」

「魔力を流しやすくするなんて注文、難しくなかったか?」

「トキサメには分からないかもしれないけど、みんな多かれ少なかれ魔力を流しながら武器を使うもんさ。でないと、すぐ刃がかけちまう」


「そりゃ未熟なだけだろ」

「あんたに比べて未熟じゃないやつって誰だい?」


ふたりがそんなことを話していると、トキサメの背後で、小さな骸骨に羽根が生えたような生き物が飛んだ。


「あ?」

「これ、ムルカちゃんのやつじゃん」


ふたりが注目すると、それは激しく上下しながらもその場で滞空し、声を発し始めた。


「トキサメ、聞こえますか? ヨウルカスがやっと尻尾を出しました。これから、ムリンでやつを迎え撃ちます。来なくてもいいですけど、弟子は借りて行きます。では」


そこまで言うと、骸骨は白い骨粉となり、風に吹かれて消えていった。


「来なくてもいい、だってよ」


ゼナが笑うと、トキサメは指先で頭を掻いた。


「こりゃ、行かねえとあとで何言われるか分かんねえな……」

「間に合うかい?」

「あー、頼む」


その方法を使うのは本当に嫌だったが、走って帰っては確実に間に合わない。

ゼナが満面の笑みで、言った。


「フィロメラ! トキサメ帰るってよ!」


その声に応えるようにして地面が震え、土が盛り上がったかと思うと、無表情な面が現れた。


「帰る、帰る?」

「ああ。フィロメラ、ムリンまで頼む」

「わかる、わかった」


地面から巨大な手が一本生え、トキサメを掴んだ。


「あ、カタナ、不良品だったらまたいつでも来てね」

「今言うことか?」


フィロメラは大きく振りかぶり、ムリンのある方角へと、トキサメを投げた。

凄まじい勢いであり、投擲の風圧で周囲の地面が土煙をあげる。

あっという間に、トキサメの姿は見えなくなった。


「あんなやり方できるの、あいつだけだね。普通なら死んでるよ」

「トキサメ、体、強く、強い」

「強いっていうかさ……」


その後には、何の言葉も続かなかった。

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