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とある特殊部隊の新装備

 ガラハドとマーリンのお披露目から翌日、僕とマリィさんは工房にいた。

 因みに元春は友人達と海水浴という名のナンパへ、魔王様はいつものように和室でゲームをしている。

 今日は久しぶりに賢者様もご来店したのだが、どうも秘密の研究が架橋を迎えているらしく、材料を買い込むとすぐに自分の世界へと帰っていった。

 そんな中、僕とマリィさんが工房で何をしようとしているのかというと、なんというか、昨日、特殊部隊員の皆さんが四対ニでガラハド&マーリンコンビに挑んだのだが、どうも、なまじファンタジー武器に慣れてしまったが所為で、現代武器で戦うと火力不足になってしまうというかなんというか、まあ、母さんが懸念した通り、死に戻りに慣れてしまったのも大きかったのかもしれないし、惜しいところまでは削れるのだが、最終的に負けてしまう。そんな結果ばかりだったのだ。

 だからと僕は、これは防具の見直しをした方がいいのでは――と工房にきてみたのだが、特殊部隊の基本装備であるプロテクターやプレートキャリア、タクティクスベストなどを、見た目を変えずに強化するとなると、素材的に難しいものがあって、そうなると、一番の強化し易い防具はなんだと考えて、見た目がこちらの防具とあまり変わらないステンレス製のライオットシールドに白羽の矢が立ったのだが、常に持ち歩くのは大き過ぎる装備ということで、現在、その辺りの対策をどうするのかと迷っているのだ。


「マジックバッグなどの収納系のアイテムを使うというのはダメなのです?」


「これは特殊部隊の皆さんにも言ったんですけど、ビッグマウス素材の在庫が少ないんですよ。ですから、よくて三人分のアクセサリーポーチくらいが精々ですね」


「あら、この間、たくさん倒したばかりではありませんの」


「マジックバッグは人気商品ですからね。店に出せばすぐに売れちゃうんですよ」


「そもそもマジックバッグを作れる錬金術師が少ないですからね。見つけたら取り敢えず買うというのは当然の選択ですの」


「そうなんですか?そんなにむずかしい魔導器でもないような気がしますけど――」


 マジックバッグというのは、いや、収納系のマジックアイテムは、空間系の特性を持つ魔物の素材を加工、ひな型となるアイテムを作り出し、そこに活性化の魔法を付与、その上で細かな制御系の魔法式を刻印、力の方向性を調整するだけで完成するけっこうお手軽なアイテムである。

 僕は単純に、その空間系の能力を持つ魔獣素材が滅多に取れないものだから、レアなアイテムという位置付けになってると思っていたけど、どうも違うらしい。


「それは多分この世界に漂う恐ろしいまでの魔素のおかげなのでしょうね。この環境の中でなら作業中の素材の劣化がありませんから」


 マリィさん曰く、魔獣素材そのものの特性を生かすアイテムを作ることは、結構、難易度が高いことなんだそうだ。

 魔獣は死んだその時から徐々に魔素が抜け始める。なんでも、その抜け初めの魔素に魔獣が持つ特有の力の根源が多く含まれているらしく、特殊なマジックアイテムを作るにはその抜けていく力の保持が必要不可欠なのだという。

 しかし、平時で既に魔素が飽和状態のアヴァロン=エラではその減衰がほぼ存在していなく、だから、アヴァロン=エラでは素人の僕でもわりと簡単にマジックアイテムが作れているのではとのことである。

 だけど、その理屈だと、他の世界では――、特に魔素の薄い地球なんかでは、素材の持ち味を生かしたマジックアイテムなんかはまともに作れないのでは?

 僕なんかは思ってしまうのだが、そこは特殊な魔法結界やら魔法陣やらと、素材から魔素が漏れ出すのを減衰させる技術が存在するらしい。

 つまり、マジックアイテムスミスと呼ばれる職人さん達は、職人さんであると同時に強力な魔法使いでもあるという。

 まあ、戦闘ではなく生産に特化した魔法使いになる場合が多いらしいのだが……。

 もしかすると、鍛冶師やマジックアイテムの職人なんかにドワーフやエルフのイメージが多いのは、長き時を生き、魔力を育てることができるからこそって理由もあるのかもしれない。


 残り少ない夏休みの間に、その辺りの魔法をソニアにレクチャーしてもらった方がいいのかもしれないな。


 僕が魔法の道具作りに関する新しい情報にそんなことを考えていると、武器や防具のアイデア出しに定評があるマリィさんは、説明しながらもいろいろと考えていてくれたらしい。いいアイデアが思い浮かんだとばかりに手を叩き。


「マオの〈聖盾(アイギス)〉を流用させてもらってはどうですの。ディロックに封じられるくらいですから魔具として作れるのではありませんの」


「作れなくも無いでしょうけど〈聖盾(アイギス)〉上級魔法ですから、適性でもなければゲートの力を借りないとほぼ発動は不可能だと思いますよ」


「そうでしたわね。虎助がポンポン使うものですから〈聖盾(アイギス)〉が上級の魔法であることを忘れていましたの」


 そうなのだ。僕が使う〈聖盾(アイギス)〉は、あくまで魔法窓(ウィンドウ)を経由して、ゲートという巨大な儀式場の魔力や魔法式を利用させてもらい、発動させてもらっているもので、僕自身が使っている魔法ではない。


「そういう訳ですから、単純に〈聖盾(アイギス)〉などといった強力な防御系の魔法の魔法式を込めた魔具を作ったところで、それで解決とはならないんですよ」


 そもそも魔素が薄い地球では、一度使ってしまえば、数日、数ヶ月、と使えなくなってしまうような魔法はあまり役に立たない。

 威力は落ちてでも、可能な限り消費魔力を抑えた魔法こそが真に求められる魔法なのだ。


「ならばディロックはどうですの?あれならば先込め式の魔法です。魔力を殆ど使用しませんの」


「それなんですが、〈聖盾(アイギス)〉のディロックはオーナーのハンドメイドですから、店で売っているディロックとは価値がまるで違うんですよ」


 現在、万屋で売っているディロックは安いもので銀貨5枚程度という価格である。

 だがそれは、中級以下の魔法に過剰な魔力を注ぐことによって作られる量産型のディロックで、それが上級魔法の、ソニアの手によるハンドメイドともなると、その手間賃(というか面倒臭がって作りたがらないソニアを説得する費用)も含めて相当な額になってしまうのだ。

 そんなディロックを揃えるくらいなら、同じような効果を持つ手榴弾を僕達の世界で買った方が安いというもの。

それに、見た目はただの宝石のような魔法兵器であるディロックが地球でも流通するようになってしまったら、それこそ悪辣なテロなどに使われかねない。そんな可能性まで考えると迂闊に地球にディロックを持ち込むことができないのだ。


「となると、あと考えられるのは、盾そのものを形状変化させるて運びやすくすることくらいですの」


 形状変化といえば錬金術。マリィさんのアイデアはナイスアイデアのように聞こえるのだが、


「アイテムの形状変化には時間がかかりますからね」


 ハンドメイドで行う錬金術には時間がかかる。

 それが盾として使えるくらいの強度を持ったものともなると、咄嗟の時には使えないだろう。


「特殊個体のスライムを素材に瞬時に形状が変えられる魔法剣が存在すると聞いたことがありますけど」


 さすがに武器マニアのマリィさんだ。今の状況にぴったりな武器を例として出してくれるが、


 剣の素材に使えるスライムって液体金属みたいなものかな。

 というか、それって伝説の○○○メタルの剣なんじゃ……。


 いろんな意味で興味はあるけど――素材がなければどうにもならない。


「となると残す可能性としては変形式の盾とかですかね」


 SPだったかな。たしか特別に作ったアタッシュケースみたいなものを盾代わりに使うという映像を、以前テレビかなにかで見た事があるような気がする。

 例えば盾を幾つかのパーツに分割してそれぞれを各所に装備、普段はプロテクターとして使って、いざとなった時に、元春の鎧に組み込んだ群体操作の魔法式(プログラム)を使って盾に合体とか、そういう装備なら作れるかもしれない。

 だけど、それだと今度は盾を装備した後の全身の防御力が下がるかな。

 だったら普段は腰とかその辺にコンパクトにしたものをぶら下げておいて、なんか折りたたみ傘みたいにぱっとワンタッチで開くようにして、


 ――って、そうか、傘でいいんだ。


「何か思いつきましたか」


「いえね。折り畳み傘の仕組みが使えないかと思いまして……」


「傘というと、この前いただいた透明な膜で覆われたあの傘ですの?」


 透明? ああ、前に雨が降った日にゲートのところで配っていたビニール傘のことかな。


「あれではなくてですね。たしかカウンターの下に置き傘あったような――、ちょっと待っていて下さいね」


 僕は万屋に戻って実物を持ってきてマリィさんに試してもらう。

 スイッチを押した瞬間、シャキンと軸が伸び、バッと開いた傘にマリィさんは、


「なんですのこの傘は――、魔法みたいですの――っ!?」


 魔法使いであるマリィさんがそんなに驚く程のものではないと思いますけど……。

 僕はマリィさんのリアクションに若干引きつつも、


「なんか、バネとか折り方ですぐに開けるような仕掛けが施されているんですよ。これを盾として使えないかと思いまして」


 すると、マリィさんは少し考えるようにたぷり腕組みをして、


「ですが、所詮は傘ですの。すぐ壊れてしまうのではありません?」


 たしかに傘は脆いものだ。

 だが、それをこの万屋にある高級素材を駆使して強化したらどうだろう。

 例えば、骨組みはアダマンタイトで作って、布地の部分をミスリルの金属糸で作ってみたらかなりの耐久力になるのではないか。

 加えて、傘の部分に春日井さん達でも使えそうな魔法反射の魔法式を縫い付けておけば、銃弾も魔法も弾ける高性能な傘が作れるのではないか。

 そう考えたのだが、


「ぜ、贅沢過ぎではありません?」


 贅沢って……、普段から魔法剣に多大な資金をつぎ込むマリィさんが言う言葉ではないと思うんですけど。

 でも、たしかに、アダマンタイトを骨組みに使うとなると、作業効率も考えてお高いものになってしまいそうだ。


「となると、骨組みの部分をそのまま魔法金属化させて使えばコストも安く出来ますかね」


 これなら、既存の骨組み部分をそのまま強化。後で傘の部分をミスリル製のものに張り替えるだけで完成だ。

 まあ、その骨組み部分が魔法金属化させたことによってどれだけの強度を持つのかは作ってみないと分からないけど、たしか傘を使うような暗殺者もいるなんて話も聞いたことがあるし、石突きの部分を改造すれば、暗器としても使えるかもしれないな。

 いや、ミスリルで作った布地に魔法式を刺繍して魔法銃みたいにするのも面白いかも。

 次々湧いてくるアイデアが呟きとして漏れていたのか、考えをまとめて顔を上げた時、マリィさんがこう言うのだ。


「虎助は私のことを、貴方も人のことは言えないと思いますの」

◆本作を読んでくださる皆様のおかげでそろそろ一周年。あと一ヶ月でどうにか100話に到達できるように頑張って書いております。

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