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幕間・簡単シェイクの作り方

◆今週の三話目です。栄養ドリンクの話と被っている気もしたのですが(内部時間敵に)夏らしいSSを入れたくて書いてみました。


 午後、魔王様とマリィさんがやっている対戦ゲームの音をBGMに一人まったりと店番をしていると、真っ赤に湯だった坊主頭がゲートからの道をゾンビのように歩いてきて、店に入るなりこう叫ぶ。


「暑いっ!!」


「奉仕作業は終わったのかい?」


「つか、なんで俺が自転車置き場の草取りをしなきゃなんねーんだよ」


「水泳部から盗撮の苦情があったかって聞いたけど」


 実は元春が所属している部活が夏休み中の水泳部を無断撮影していたと学校から注意を受け、そのペナルティとして夏の日差しを浴び、絶賛成長中の雑草の除去を命じられたのだ。

 と、そういうことなら罰も当たり前だという僕のツッコミに、元春は「うっ」と絶句をするも、


「そ、それよか、クーラーをもっとガンガンに効かせようぜ」


 しょうがないな。都合の悪いことは聞こえない~。とばかりに無理やりに話題転換を謀る元春に、

 僕は頭を振り振りカウンターの上に置いてあった金属製のリモコンを元春に渡すと、それを手にした元春がピッとエアコンの温度を下げようとして、何かに気付いたようにこう声をかけてくる。


「あれ、ここのクーラーって普通のクーラーじゃねえの?」


(ガワ)は普通のクーラーだけど中身は魔具になってるよ」


 そう、万屋に備え付けられたエアコンは、見た目、地球で売っているただのエアコンのように見えるのだが、その中身は純然たる魔法製品なのだ。


「その割にはドライとか空気清浄機能がついてんだけどよ」


「それは生活魔法の応用だよ。ファンタジー世界だと魔獣なんかの影響で、普通に毒霧なんかが発生するらしいから、わりと必須の魔法らしいよ」


「恐るべしだなファンタジー。でもよ、まだ足りねー。こりゃ体の中から冷やすしか無いな。虎助、冷たい飲み物プリーズ」


 現代日本で販売されるエアコン機器にも劣らぬ魔動エアコンの機能性に驚きつつも、まだ俺の熱を冷ますのには足りないとばかに飲み物を強請ってくる元春。だがしかし、


「あ、ゴメン。飲み物は魔王様とマリィさんに出してるので最後だから」


「マジか」


 ある意味で無慈悲な宣告ともいえる僕からの言葉にガックリと項垂れてしまう元春。

 たぶん、お金を使うのは勿体無いと、万屋にある冷たい飲み物を目当てに、この暑い中、頑張ってこの万屋までやって来たのだろう。

 もう仕方が無いな。

 哀れ元春とは言わないが、せっかく友人がこの万屋を頼ってきてくれたのだ。


「じゃあ、今から買ってきてあげるよ。何がいい?」


「マ○クシェイク」


 カウンターにもたれかかったままピクリとも動かない元春に、僕は苦笑しながらも立ち上がり、今ならマリィさん達の他にお客様もいないし――と、買ってくる飲み物の種類を聞いてみるのだが、こともあろうに元春はこんなリクエストをしてくるのだ。

 まあ、おまかせって言われるよりはいいんだけど、それを僕に買ってこいと?


「どこまで買いに行かせようとしてるのさ」


「急に飲みたくなったんだもん」


 だもん――って、だからそういう可愛い感じの仕草は今の君がしても気持ち悪いだけだから。

 僕は心の中でそう思いながらも、


「もう、分かったよ。でも、わざわざ駅前まで買いに行くなんて面倒臭いから自作のでいいかな?」


「おう――っ、つか、シェイクって自分で作れるもんなんか!?」


 どうも元春はシェイクを作るのには特別な機械が必要だと思っているようだ。


「そりゃ作れるでしょ。だって普通に売ってるんだよ。ほら、ご近所の喫茶店にもミルクセーキがあるよね」


「ちょっと待て、ミルクセーキってシェイクなのか」


「いや、セーキっていうのは英語のシェイクなんだよ」


「マジか!?」


 と、そんな僕達のやり取りを見て、マリィさんと魔王様もそこまでして元春が飲みたがる飲み物に興味を持ったようだ。


「あの、そのシェイクとはどのようなものなんですの?」


「甘くて冷たくてドロっとした飲み物ですね」


「そうそう白くてドロっとした液体だな」


 マリィさんの質問に迂闊にもセクハラ発言をしてしまう元春。これはもう病気なんだろう。

 しかし、こういう発言に敏感なマリィさんは気づいていないようだ。

 ならば、ここはあえて被害を出すこともないだろうと元春にアイコンタクトを送って、無言を貫いて、


「あの、私達にもそのシェイクとやらをいただけますか」


「……(コクコク)」


 マリィさん達がリクエストをするならば作らないわけにはいかないだろうと、余計なツッコミは入れずに了解の旨を伝え、いったん自宅に戻って数分後、戻ってきた僕は手にはバケツのような物体と小さなビニール袋が抱えられていた。


「アイスですわね」


「シェイクっていう飲み物はバニラアイスをベースに使うと簡単に作るんですよ」


 ゴトリとカウンターの上に荷物を下ろし、ここでシェイク作りに欠かせない器具を取り出す。


「錬金釜を使いますの?」


「本当はミキサーを使って作るんですけど。持ってくるのが面倒でしたので、今回はこれで代用しようかと」


 そう、僕の錬金釜はその金ピカな見た目から分かるように高級品だ。当然ミキサーのような機能も搭載していて、今回はそれを利用しようというのだ。

 僕は用意した錬金釜に、一応の為にと二度三度と浄化の魔法をかけ、それからアイスと同量の牛乳を投入する。


「それで、皆さん何味にしますか?」


「つか、味とかまで選べんのかよ」


「うん。ジャムを使えばいろんな味が作れるよ」


 呆れながらも聞いてくる元春に僕はそう答えながらも、持ってきたビニール袋からパンに塗るチョコレートクリームにイチゴジャム、ブルーベリージャムに普通のバナナと取り出していく。


「因みにバニラのシェイクを飲みたい場合はガムシロップを入れればそれで完成だから」


 簡単に説明したところで改めてどんな味がいいかを訊ねると、


「だったら俺はバナナシェイクで」


(わたくし)はイチゴジャムを使ったものをお願いしますの」


「……チョコレート」


 順番に錬金釜を使ってシェイクを作り、出来上がったそれを断熱性の高いアダマンタイト製のタンブラーに移して、家にあったストローをさせば出来上がり。

 元春はこんなに簡単にできるのかと驚きながらも、マリィさんと魔王様は初見の飲み物ということでおそるおそると口をつけ、ストローを吸い上げた瞬間、その表情は幸せなものに変わる。


「マジで、こんなに簡単にシェイクができんのかよ!?」


「美味しいですの」


「(コクコク)」


 そんな各人のリアクションを横目に『さて、僕はどんな味にしようかな。ここは珍しい味のチョコバナナとかもいいかも――』と、どんなシェイクを作ろうかとアレコレ迷う僕だった。

◆個人的にはミルクセーキというとどうしてもあったかい飲み物というイメージがあります。

 何故か幕間の方が評判が良い気がします。いろいろ考えずに勢いで書いているからでしょうか。

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