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玲のいない万屋

◆新章開幕です。

 玲さんが地球に戻って数日、春休みに突入した。


「玲とはしばらく会えないのですね」


「新生活の準備がありますし」


 玲さんには大きめのインベントリと魔法の箒を渡してある為、念話通信で連絡も取れる上に万屋に来ようと思えば来れるのだが、四月から復学する大学の準備が結構忙しいらしく、しばらくは他に構っている余裕はないみたいだ。


「しっかし、ここ何日かで一気に人が減っちまったな」


 たしかに、一時期を思えばアヴァロン=エラに常駐する人数は大幅に減っている。

 ただ、先日も言ったようにこの状態が通常営業であって、


「赤い薔薇の皆さんも来てるし、少ないって言うほどじゃなくない」


「そういえばグルメ大好きねーさん達が来てたんだよな。全然見かけねーけどなにやってんだ?」


「ベスちゃんの訓練だね」


「ベスちゃん?

 ああ、なんかちっちゃい女の子を連れて来てんだっけか」


「知り合いの探索者には言ってあるみたいだけど、追手が来るかもしれないから、簡単な魔法をおぼえてもらってるんだよ」


 そう、赤い薔薇の皆さんが知り合いの貴族から護衛を任されたベスちゃんには、最低でも常にメンバーの一人が一緒にいるといった状況なのだが、万が一の場合、自分の身を守れる力を持っていた方がいいということで魔法の訓練を行っているのだ。

  アヴァロン=エラ(ここ)なら基礎魔力もすぐに上がるし、精霊魔法もおぼえられるしね。


「ふーん、それでおっちゃん達が来てねーのか」


「テーガさんとかアムクラブからのお客様が来てないのは、別のダンジョンで新しいエリアが見つかったのもあるのかな。

 今はそっちの探索にかかりっきりになってるみたい」


「そういや、アムクラブってダンジョンがいっぱいあんだったな」


 元春が言うように、彼等が拠点とするアムクラブの周辺には多数のダンジョンが存在していて、それぞれに産出されるものが違ってくるのだ。


「しかし、前々から不思議に思っていたのですが、幾つものダンジョンが一箇所に集まっているというのは聞いたことがありませんわね」


「ソニアは街の周辺にあるダンジョンは単に枝分かれした出入り口でしかないんじゃないかって言ってました」


 マリィさんのこの疑問については現地でも諸説あるようだが、アムクラブの皆さんから提供された情報を総合するに、アムクラブ周辺のダンジョンは枝分かれして派生したダンジョン郡ではないかというのがソニアの見解だそうで、


「つまり全てのダンジョンがつながっているということですの?」


「あくまで集まった情報からの推測になりますが――」


 その答えは実際に攻略してみないとわからないというのが正直なところで、


「んじゃ、おっちゃん達もしばらく来ねー感じか?」


「本人は来ないけど、別の人が来るんじゃない。ダンジョン攻略には魔法薬の補給が必要になるし、依頼される品もあるんだろうから」


 しかし、慣れない人にとっては行って帰るだけでも大変な道のりになるそうなので、

 ある程度、慣れた人が派遣されてくるんじゃないかな。


「でも、ここに来た方が儲かるんじゃね」


「それでもダンジョン攻略は一つのステータスだし、他でしか手に入らないものがあるから」


「そんなんあったっけか」


「ほあ、武器とか魔導器とかあるじゃない」


 そう、万屋で売っている武器は魔剣などに偏っていて、攻撃魔法が付与されたような魔法のアイテムも攻撃的なものはほぼ置いていないのである。


なーる(なるほど)、そりゃ文句がでねーワケだな」


「そもそもウチで売ったとしてもメンテナンスの問題もあるから」


「上位魔法金属などは加工が難しいですものね」


 アギラステアのように魔獣の素材をそのまま加工したものがギリギリなんとかなるが、上位魔法金属を扱える職人がアムクラブには――というよりも、その世界には存在していないようで、

 上位魔法金属の耐久度を考えると日常的なメンテナンスはあまり必要はないのだが、場合によってはここで武器を買ったところで持て余すような事態にもなりかねないのである。


「とはいっても、ワイバーンの骨やオリハルコンそのものは幾つか売れていますから、もしかするとその内、アムクラブでも加工できる人が出てくるかもしれませんが」


「ん、オリハルコンとかそういうので剣を打つのって人間には無理って話じゃなんじゃなかったっけか?」


 たしかに、オリハルコンなどの上位魔法金属の加工には人間が耐えられないレベルの高熱が必須であるものの。


「炉の性能によっては溶かすことは出来るから形を整えることは出来るんだよ。

 まあ、この場合、鍛造よりも耐久力は下がるし、刃がついた武器は仕上げが大変なんだけどね」


「それだけなら、ここでやってるのとかを見ると簡単そうに見えっけど」


「それは道具が揃ってるからだよ」


 代表的なのがアダマンタイトパウダーを使ったサンダーになるかな。

 ああいった特殊な工具を使わない限り、刃を立てるのに相当な時間が必要になってくるのだ。


「ちなみに、そのダンジョンで見つかる武器の性能はどのようなものがございますの」


「ミスリル製の魔法武器が中心みたいです」


「一個人が手に入れられる武器としてはなかなかのものですわね」


「けどよ、ミスリルの魔法の武器なら普通に作れんじゃね」


「出来なくはないと思うけど、魔法付与の難易度が高いから」


 万屋では極小サイズの集積回路(インベントリ)の存在もあって、僕でも魔法の武器が作れてしまうが、

 本来、そういった武器は武器そのものに魔法式を刻まなければならず、武器そのものの性能――特に耐久力――との両立が難しくなってしまうのだ。

 しかも基本的に鍛冶なら鍛冶、錬金術なら錬金術とわかれている場合が殆どで、伝手でもない限り、魔法の武器を作るのにはハードルが高いようで。


「あれはどうなん?素材の力を引き出すとかそういう感じのヤツ」


「どっちにしてもって感じだね。素材加工は錬金術の分野だし」


「だったらここでそういう処理したヤツを買って向こうで作ればいいんじゃね」


「それでは帰る途中で魔法が解けてしまいますわよ」


 鉄は熱い内に打てという言葉があるが、素材の加工も同じような部分があって、定着させるまでが一連の流れで途中で止めることが出来ないのだ。


「錬金釜も幾つか売れていますし、鍛冶に関わっている誰かが使えるようになれば可能だとは思うんですけど」


「それは少々難しいのではありませんの?」


「ん、虎助とか次郎とか、ここ一年で結構使えるように鳴ってんじゃないっすか」


「それはここの環境があるからですの」


 大量の魔素に大量の素材を使い潰す勢いで錬金術を繰り返せばそれは上手くもなるというものだ。


「はぁ、やっぱここの環境がチートなんすね」

◆新章のプロット作成の為、次回更新は日曜日の予定となります。

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