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アメリカ魔女の帰還

 巨大錬金釜の作成から数日、メリーさん達が帰国の途についた。

 これにより北米の主だったメンバーの強化はほぼ完了。

 後は個人個人の判断で訓練をしていくことになるようだ。


 ということで、皆さんを見送ってきたのだが、実は魔女の中にはまだ残っている人が居たりして、


「リュドミラさんは帰らなくてよかったんですか?」


「自分は後進を育てなければと思っていまして」


 聞けば、リュドミラさんは今ある工房長の座をそろそろ次に譲ろうと考えているらしく、今回のことを機に後進が育ってくれることを願っているみたいだ。

 なんでも、工房長というポジションは魔法の研究や素材の調達や工房の利用権などで有利に働くも、その代わりに地域のまとめ役という仕事を押し付けられる為、個人的な活動に一定の制限がかかってしまうデメリットがあって、リュドミラさんとしてはその辺を煩わしく思っているとのことである。


「魔法銃作りはどうですか?」


「ようやく形になってきたというところです」


 ちなみに、リュドミラさんがここアヴァロン=エラへとやってきた一番の目的は、ハイエストなどに対抗する為の武器作りで、ここでは武器そのものこそあまり販売していないものの、素材のラインナップは他とは比べ物にならなくて、さらに大まかな加工は一般のお客様からも請け負っている為、それをベースに今は自分の必要な魔法を選別・付与しているところなのだ。


「攻撃はもちろん、足止めにも使える重力系の魔弾を組み込みたいのですが、いい素材がなかなか見つかりませんで」


 たしかに、重力系の力を持つ魔獣は希少であって、万屋(うち)でも取り扱っていない時の方が多く。


「しかし、そういう魔法なら大地系の素材で代用が出来ませんか?」


「いま作っている銃はできれば妥協したくありませんので」


「そうですか、だったら影龍の鱗を使うというのはどうでしょう」


 影の魔法には影縫いや潜影などといった重力魔法と似た効果を持つものの多い。

 だから、その最高峰たる影龍の鱗を使えば同じような魔法が付与できるのではないかと僕が言えば、リュドミラさんは少し迷う素振りを見せながらも。


「龍種の素材をいまの自分が使うのはさすがに厳しいかと」


「では、何か良さそうな素材を手に入れたらお知らせしますね」


「お願いします」


 たしかに、龍種の素材の力を十全に引き出す作業はかなり難しく。

 それは魔女の工房の長を務めるリュドミラさんでも同じことのようだと、店の前で彼女と分かれ、店内に入ると声をかけてきたのは元春だ。


「中二姉さんとなに話してたんだ?」


 年齢的にお姉さんが多いということで、魔女の皆さんにあまり積極的に話しかけてこなかった元春だったが、僕がリュドミラさんと親しげに話をしているのを見て、会話の内容が気になったのだろう。

 じゃっかん前のめり気味な元春の問いかけに僕はカウンターに戻りながら。


「魔法銃の進捗について話してたんだよ」


「リュドミラ姉さん、めっちゃこだわってそうだよな」


 たしかに、かなりこだわっているけど、元春だって同じような立場ならそうするだろうし、自分が使うメイン武器ならそれが普通なんじゃないだろうか。

 僕が心の中でツッコミを入れる一方で元春の意識はもう次に向かっているようだ。


「魔女のお姉さんの追加は?」


「いまのところ予定はないね」


「そっか――」


 元春としてはお姉さんタイプでもない限り、【G】の影響を受けずに接してくれる魔女のみなさんは貴重な存在なのだろう。


「でも、先に帰った三好さんが組織内の混乱が落ち着いたら仲間を連れて来るっていってたから、またすぐに人が増えそうだけど」


「川西さんトコみてーにゴリマッチョだらけとかにならね」


 陰陽術に適正がない人ばかり集められた集団だって話だから、肉体の信奉者ばかりということも――ありえるのか?


「ちょいちょい、なんだよその顔は」


「ちょっと考えたんだけど三好さんのところに集まる人は術者っていうより、フィジカル系の人ばっかみたいだから、元春の言うこともあながち的外れでもないかなって」


「よしっ、輝虎っちに連絡だ。女の子ばかりのウハウハ修行にしてもらっぞ」


「どうやって説明するのさ」


 マッチョ集団は嫌だから女子でお願いしますとか、そんな要望が通る筈がなく、そう聞き返せば、


「そこは女の子の方が魔法に向いてるとかいって、お姉さんをいっぱい集めてもらうとか」


 実は元春のこの主張はあながち的外れでもなくて、純粋な魔法技術に関しては、なまじ肉体的な能力が高い男性より、女性の方が上手く扱えるようになるケースが多く。

 実際に訓練を請け負う万屋の側としては属性を揃えてもらった方が教えやすく。


「光と影の女の子がいいと思います」


「なんか読み切り漫画のタイトルみたいだけど、女性限定はともかくとして属性縛りは悪くないと思う」


 三好さんの話を聞くに、彼女がトップを任されるのグループは、陰陽道の基本となる五行から外れた属性に適正がある人ばかりということなので、先に〈小さな世界〉で得意な属性を調べてもらって派遣して貰う人を絞ってもらえればありがたい。


「そこは確約するとこなんじゃね」


「三好さんの側の事情もあるし、人員の選出には母さんも絡んできそうだから」


 母さんという名目を出せば流石の元春も文句は言えないようで「しゃーなしか」となぜか上から目線で腕を組み。


「五行に引っかからなそうで多い属性ってなにがある?」


「氷とか雷はどうなん?」


氷と雷は水と火、もしくは風に引っかかりそうではあるんだけど、戦術的な観点から使い勝手の良さそうな氷か雷属性の使い手が増えると、三好さんの派閥としても力になると思うから。


「光を基軸に、氷か雷、後はバフデバフに適正がありそうな人をお願いしようかな」


「ああいう魔法は属性関係なさそうだもんな」


 実際には燃え盛る炎にかけて攻撃力を上昇させるとか、そういった概念を持つ魔法は結構あるのだが、それなら普通に火の魔法も使える訳で、

 もしも、僕のようにあまり他で見ない属性に適正がある人がいたのなら、ソニアも興味があるだろうし、あえて招いて属性とは関係ない魔法からおぼえてもらうというのもありじゃないかと、元春の要望についてはそういう方向で話を詰めるとして、


「光と影は女の子。大切なことだから二回言ったぞ」


「はいはい」


 元春のやる気ださせる為にも、一応女性の方が魔法に対する適性が高いという事実は、一つの指標として添えておくことにしようか。

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