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地下の世界樹

◆時系列的には少し前のお話になります。

 ここが日本なら、そろそろ夕方のチャイムが聞こえてくる時間帯、

 魔王様と一緒に対戦ゲームをプレイしていた元春が伸びをしながら、こんなことを聞いてくる。


「マリィちゃん遅くね」


「今日はまたシルビアさん達を魔鏡の向こう側に案内してるみたいだから」


「そういやマリィちゃんとこの鏡って、ここ以外にも色々行けるんだっけか」


 そう、マリィさんがこのアヴァロン=エラへの転移に使っている魔鏡は、空の上の砦やダンジョンの中と――、このアヴァロン=エラ以外にも六つの世界へ転移できるようになっており。


「たしか、行ける世界全部に世界樹植えたんだったよな。あれってどうなったん」


「育ってはいるけど、ほとんどが普通の木と変わらないサイズかな」


 成長記録はこちらにも送られてきているので、とりあえず喫緊に送られてきたメタルカーバンクルが管理していたダンジョン内に植えた世界樹の画像を浮かべたところ、元春はそれを覗き込み。


「裏の世界樹と比べるとしょぼく感じるけど、何ヶ月かでそれってのもスゲーよな」


 小さな苗から育てて一年足らずで、道路脇の並木よりも大きくなっているのは、植物としては破格の成長だ。


「しっかしコレ、なんでダンジョンの中に植えたん?」


  これも前に話したような気がするけど――、


「実験の一環だね。環境の違いでどう成長に変化があるのかとか、世界樹による魔力の循環によって周辺の環境がどう変化するのかとかを調べてるんだよ」


 後はダンジョンがある場所が周辺の自然環境が厳しいこともあって、周辺の環境整備の一環で世界樹を育ててみようということになったからだ。


「他んとこはどうなってるん?」


「大して変わらないよ」


  強いてあげるならキメラばかりが住む島の世界樹が一番育っているってくらいで、雪山などはあまり成長していないというのが現状だ。

 ただ、あの過酷な環境で、しかもメイドさんが数日に一度データを集めに行くだけで、多少なりとも成長しているのだから、世界樹の生命力には驚かされるいうものだ。


「空中要塞はラピュタみたいになるんかな」


 元春の妄想は夢のある話だけど、そうなってしまうと世界樹の重さで空中要塞が墜落してしまうのが怖いので、盆栽みたいに器の大きさで成長をコントロールできればいいと考えていたりする。


「結局、マリィのところにある魔鏡ってなんなの?」


「空中要塞とダンジョンにいたメタルカーバンクルに使われている技術と似ているので、そっちが出所なんじゃないかって予想です」


「そうなん」


「あんた知らなかったの」


  玲さんは呆れたようにしてるけど、この事実が判明したのは結構後になってのことだから、元春には話していなかったのかもしれない。


「じゃあ、前に倒した山羊はどうなるん」


「山羊?」


「どこぞの勇者っぽいパーティと一緒にでっけー山羊ロボがこっちに飛んできたことがあったんすよ。その山羊ん中に空中要塞を飛ばしてるのと同じような魔石を積んでたんす」


 それはエクスカリバー2を譲ったレイさん達と共に転移してきたダンジョンガーディアンのことだろう。


「偶然にしては出来過ぎっすよね」


 たしかに、これを偶然といってしまえばそれまでの話なんだけど――、


「あの山羊型ゴーレムに使われていた技術体系は他と共通点がないみたいだから、魔石は別に見つかったもので、そこからゴーレムが作られたんじゃないかっていうのが僕達の予想だね」


 そして、魔石そのものに繋がりのようなものがあって、それが魔鏡による転移に関わっているという可能性もあるんじゃないかというのがソニアの推察のようで、


「にしても、ゾディアックは意味深だよな」


「それはそうなんだけど、魔法陣とかそういうものは世界が変わっても似通ってるから」


「言われてみると、あっちで見た魔法陣とかも、わたしが見てもあんまり違和感を感じなかったかも」


  玲さんがいうのは聖女召喚の魔法陣のことかな?

 実際、聖女召喚の魔法陣については、ナタリアさんから情報をいただいているので、僕も実物を知っているんだけど、それは確かに漫画やアニメでみるような幾何学的なデザインのそれであり。


「ああいう意味ありそうなもんって集めたくなるよなあ」


「さすがに無理でしょ」


「つっても、エクスカリバーさんのお仲間だって半分揃ってんだし、やっぱ因果律とかそういうのがあんじゃね」


 元春が言った因果律うんぬんに関して言えば僕達がゲートなどを使って、多少なりとも干渉をしているという部分が重要なんだと思われるが――、


「大きい魔石はいろいろと使い道があるから、レプリカを作る研究も進んでるし、自力で揃えるなんてパターンもあるかも」


「いや、それは違うくね」


   ◆


 さて、万屋にてそんな会話が繰り広げられる一方、場所は変わってガルダシア城のメイド室――、

 数名のメイド達が休憩する中、入ってくるのは外套を羽織った二人のメイドだった。


 二人はマリィ達とはまた別口で各所の見回りを行っていたようで――、


「ただいま戻りました」


「ご苦労様、なにか報告とかある」


「特にありません」


「そう、ちなみにラピスの様子はどうだった」


 ラピスというのは保護したカーバンクルの亜種につけられた名前である。


「まだ警戒されているみたいですねぇ。雫は虎助様が用意してくださったエサ箱のおかげで雫の回収は出来ていますけど」


「雫といえばミスリルの実験はどうなったの」


「塊のままでの錬成はまだまだ難しいようです。細かくすれば大丈夫なようですが」


「あ、でも、村の炉だと鋳溶かすのに時間がかかるみたいで、前に買い出しに行った時、そのことを虎助様に相談したんですけど、訓練場建設に合わせてトンネルの中に大きめの炉を作ったらどうですかってぇ――」


「それはマリィ様に判断を仰ぐしかないわね。視察からお帰りになられてから相談してみましょ」


  村に重要な施設とはいえ、一介のメイドでしかない自分が勝手に決める訳には行かないと結論を後回しに。


「トンネルで育てている作物はどう」


「ウドという木ですね?そちらは順調そうです」


「でも、あれって本当に食べられるの?普通に背の低い木にしか見えなかったけど」


「見た感じ、前に缶詰でいただいたものに似ていましたけどぉ」


 こればっかりは実際に食べてみないとわからないということで、今度大きめのウドを収穫して、自分達で試食をすることになり。


「後は栗?ウドを探していた時に見つけたものを虎助様に増やしていただくことになった筈だけど」


「栗いいですよね。早く育てたいです」


 彼女達も剥き栗などは虎助にもらって食べたことがあった。


「実がなるのに少しかかるとのことだけど、保存が効くというのが魅力よね」


「木自体はあちらで育ててもらえるので、実際にはそれより早く実をつけるとのことですが」


「気長にやっていくしかないですね」

◆次回投稿は水曜日の予定です。

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