表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

794/848

錬金術師の戦い方

◆長いです。

 訓練施設の一角――、

 魔女の皆さんが遠巻きに眺める中、僕が地面に置くのは百円ライターのような形のマジックアイテムだ。

 これが何かといえば錬金術で作ったトラップ用のアイテムで、踏んだ相手を拘束する効果を持つものなのだが、

 さて、こんなものを用意して、いったい何をしようとしているのかというと、錬金術の練習も兼ねて作ったこのトラップアイテムを使って、今から自作ダンジョンでゲリラ戦の訓練をやっていこうという訳だ。

 ただ、実際にアイテムの効果を見てからでないと仕掛けるものも仕掛けられないということで――、


「まずは最初に作った方のトラップの効果を試していきましょう。誰か実験台になってくれませんか」


「だったら私がやるよ」


 僕の呼びかけに手を上げてくれたのは、北欧系長身美女のヘルヴィさん。

 みんなが見守る中、ヘルヴィさんが僕が地面に置いた罠を踏み抜くと、爆発的に成長した蔓が彼女の体に絡みつき。


「へぇ、こうなるのか」


「ヘルヴィ、抜け出せますか」


「ナイフを使えばできそうだけど、絡みつき方が悪いと自力でどうにかするのは難しそう。魔法を使えばなんとかって感じだね」


「虎助様、使う種に指定はあるのですか?」


 発動したマジックアイテムにヘルヴィさんが感想を口にして、続いてメリーさんが声をかけてくるのは僕である。


「蔓性の植物なら大体は使えるかと、ただ、ものによってはすぐに枯れてしまうこともあるかもしれません」


 ちなみに、今回使ったのは夏場に自宅のグリーンカーテンに使っている時計草の種だ。

 この種を入れたケースを踏むことによって脆い内壁が壊れ、

 一緒にいれた魔法薬が種に触れて、爆発的に成長させるという仕組みとなっている。

 そして、踏んだ人間に成長した蔓が巻き付くのは植物の習性によるもので。


「簡単に出来る割に足止めの効果が高そうなアイテムですね」

 一緒に入れている魔法薬のベースは市販の液体肥料で、容器はペットボトルを錬金術で変形させたものになる。

 後は適当な蔓性植物の種さえ用意すれば簡単に作れるお手軽トラップだ。


「問題はこれがハイエストの超能力者に通じるかですが」


「それは相手にもよるとしかいえませんね」


 例えば風の魔法に似た能力など、相手の超能力によっては簡単に抜け出される可能性もある訳で、


「しかし、ある程度は使う種の種類を変えたり、ケースを大きくしたりで対応できると思います。後はこちらを併用したりするとかですか」


 言って、僕が手に取るのは駄菓子屋に置いてある煙玉のようなアイテム。

 こちらも事前に魔女の皆さんに作ってもらったものなのだが、


「このアイテムは付属の紐を引っ張ることで、催涙ガスのようなものが発生するということですが」


「あ、引っ張るならこちらにした方がいいかと」


 と、僕が手渡すのは今回作ったものの元となった臭い玉。


「思ったよりも臭くありませんね」


「こちらはあくまで鼻がいい魔獣用に配合されたものですから」


 ちなみに、こちらは獣人なんかにも効果があると教えたところ、これにメリーさんが「詳しくお教えお願いできますか」と反応。

 レシピを渡したところで、メリーさんはそれに軽く目を通し。


「人間用との違いは香草の配合の差異くらいですが、ヘルヴィ、人間用の方も使ってみて下さい」


「えっ、どうして自分が?」


「実験役に名乗りを上げたのでは貴方でしょうに」


 天然なのか、計算なのか、最初の蔓トラップの確認を拡大解釈したメリーさんのご指名に、ヘルヴィさんは諦めたようにその臭い玉を受け取って、皆から離れて紐を引く。

 すると、ヘルヴィさんはすぐに煙に巻かれ、淑女にあるまじき濁った悲鳴を上げて転げ回る。


「こんな感じですが、どうでしょう」


「思っていた以上の効き目ですね。ライカンスロープ――、いえ魔獣用の方でも、これだけの効果があるのなら、かなり有用なアイテムになりそうですね」


 と、先に作った二種の錬金トラップの使用感を確かめたところで、そろそろ訓練に移ろうと思うのだが、


「訓練に使う煙玉はどっちにします」


 今回行う訓練は攻め手側と守り手側に別れて、訓練用に作ったダンジョン内に隠した宝玉を攻め手側が探し、守り手側は作ったトラップを仕掛けて排除するというものである。

 ちなみに、守り手の皆さんが隠して、攻め手側の皆さんが探す宝玉については、感知・探査系の魔法で探せるようにと、ミスリルで作ったそれに、攻め手側の皆さんのスクナに協力を願って魔力を込めてもらったいて、

 最後に訓練で使う臭い玉に関してだが、万屋には売り物として魔獣用の臭い玉のストックがあるので、訓練ではそちらを使ってはどうかと訊ねたのだが、


「訓練には緊張感が必要です。なにより余計な予算を使うわけにもいきませんので」


 メリーさんの無慈悲な決定によって、訓練には人間用の臭い玉が使われることが決まり。

 その後、トラップの仕掛け方の技術的な指導を少ししたものの、仕掛ける場所などに関しては皆さんの好きにしてもらった。

 罠を仕掛ける相手が魔獣などならともかく、人間ともなると相手の心理をいかに読むかがポイントになってくるからだ。

 なにより、魔女の皆さんは工房などの周りに魔法的なトラップや結界などを設置することもあるのである、魔法的なトラップの仕掛けについては僕よりも彼女達の方が慣れているだろう。

 ということで、今回はそれも参考にさせてもらおうと、僕は質問をされたら応えるといったスタンスで、守り手側の皆さんが三十分かけて自作ダンジョンに罠を設置。

 待ちかねていた攻め手側の突入となるのだが、勝負は初手でほぼ決してしまった。

 メリーさん率いる守り手側の魔女さん達が地上に戻り、攻め手側のヘルヴィさん達が、いざダンジョンに突入しようと、その入口に近付いたところでトラップが発動し、最後尾にいた飛び入り参加枠のリュドミラさんと三好さんを除く、戦闘系の魔女の皆さんが大量に伸びた蔓に絡め取られてしまい、そこに臭い玉が投下されてしまったのだ。


「へっ!?」


「ありゃ、これって――」


「ヘルヴィ達は油断しすぎです。魔法を使っての遠隔設置をまったく気にしていませんでしたよね」


 そうこれは、トラップ設置の間、待たされていたスタート地点には仕掛けられる筈がないという意識を逆手に取った見事な一手。

 しかし、罠に引っ掛かってしまった皆さんにメリーさんの解説を聞く余裕はないようで、

 僕と守り手側の皆さんが追風と浄化の魔法を連発。

 煙の影響を無くなったところで攻め手側の何人かから、


「ちょっと副長、今のは反則じゃないの?」


 などという文句が上がるものの。


「レギュレーションには違反してないかと、なによりリュドミラ様と三好さんはしっかり警戒していましたよ」


「たしかに、それはそうみたいですけど……」


 最終的には無傷の二人が決め手となったか、魔女の皆さんもいまの敗北を渋々受け入れて仕切り直し。

 ちなみに、改めてダンジョンに潜ることになった攻め手側の皆さんのダンジョン攻略の様子は、アクアとオニキスがカメラマンとなって追いかけることになっており。


「スクナってこういうことも出来るんですね」


「信頼関係の賜物ですよ」


「試してみよっか」


「貴方達、終わってからにしなさい」


 アクアとオニキスの仕事ぶりを見て感心する皆さん。

 そして、スクナ持ちの皆さんが真似しようとするのだが、メリーさんに注意をされてあえなく中断。

 その一方でダンジョンに突入したヘルヴィさん達は、ダンジョンに入って少し進んだ先にある階段ホールのような場所で地図を開いて、宝玉の在り処を予想しているみたいだ。


『やっぱり、縦穴の行き止まりにあるんじゃない』


『逃げ場をなくすなら、あそこしかないもんね』


『問題は大きな行き止まりが四箇所あることだな』


 メタルカーバンクルの性能テストのついでに作ったこの自作ダンジョンは、魔女の皆さんが宿泊するトレーラーハウスの目の前に作られた映画のセットのような訓練施設にある四箇所の建物の地下を掘り下げて、その縦穴を繋ぐように通路や部屋が作られているという構造になっている。

 基本的にすべての通路が――隠された扉なども含めて――どこかしらの場所と繋がっていて、完全に行き詰まりとなるのは、それぞれの縦穴の最深部になるということで、

 攻め手側の皆さんはそこに宝玉が隠したのではないかという予想のようだ。


『しかし、そんな単純でしょうか』


 ここで口を挟んだのは魔女の皆さん以外で唯一――正確に言うなら守り手側には玲さんが――参加している三好さんだ。


『どういうこと?』


『行き止まりに罠を仕掛けるにしても、一人が犠牲になれば済む話なのでは?』


『個人的にはあんまりやりたくないけど、確かにそうすれば簡単にクリア出来ちゃうかも』


 そう、これが実戦だったのなら罠はすべて回避が当然だが、今回の勝負はあくまで余興的なもの。

 タイムリミットがあることまで考えると、いわゆる漢解除でトラップの無効化という強引な手段も選択の一つとして考えられなくはないのである。

 しかし、それはあくまで最終手段。


『とりあえず、今の時点ではどこにあるかもわからないんだ。まずは怪しそうな場所を調べてみるってことでいいんじゃないか』


『そうですね。ここでグダグダしてても時間を無駄にするだけですから』


 ということで、攻め手側のみなさんは、とりあえず、いま自分達がいる縦穴を一番下まで降りてみることにしたようだ。


 ちなみに、そんな様子をモニター越しに見た守り手側の皆さんの反応はというと。


「目的地を決めたのはいいですが、随分と慎重に進んでますね」


「そりゃ、最初にあんなことされたら慎重にもなりますよ」


 たしかに、ありえないと思っていたタイミングで罠に引っ掛かっただけに、ヘルヴィさん達が警戒心を高めてしまうのも仕方のないことだろう。


「だけど、そろそろ魔法使いますよ」


「上手く引っ掛かってくれるといいんだけど」


 というのは、攻め手側の皆さんがいる近くに魔法を使った瞬間に発動するトラップを仕掛けているからであり。


「あれ、なんで罠が作動しないの?」


「たぶん、前方にだけ探知の範囲を広げることで誤爆を避けてるんだと思います」


 探知系の魔法は自分を中心に魔力を波紋状に飛ばすのがデフォルトとなっている。

 だが、いま魔法を使ったリュドミラさんは通路に水を流すように探知の魔力を絞ることで、魔力感知型の罠を発動させずに地面やその周辺の壁にトラップが無いかを確認したみたいだ。


「さすがは工房長だわ」


「だけど、まだこれからだよ」


 ただ、ここで守り手側の皆さんに余裕のようなものが見られるのは、この先の天井に、光魔法と土魔法を組み合わせた、自動ドアと同じ仕組みの罠が設置されており、

 これに引っかかると煙玉が転がり落ちてくるという仕掛けが施されているからなのだが、


「上だ」


 この仕掛けは三好さんに気づかれてしまったみたいだ。

 土で作られたストッパーが外れる僅かな音でも聞きつけたか、彼女の声で難を逃れ。

 ただ、ダンジョンの中で発生する煙はその逃げ道が限られる。

 大量に発生した煙は通路に充満。階段を降りていた攻め手側の皆さんの方へと押し寄せる。

 迫りくる煙にすぐに階段を駆け下りるヘルヴィさん達。

 しかし、最後尾を走っていた魔女さんの一人が、自分のすぐ足元まで到達した煙に、このままでは飲み込まれてしまうと思ってか、一人脇道へと逃げようとしたところでトラップ発動。

 伸びた蔓が彼女の足を絡め取り。


「ちょっと、誰か――」


「リタ?」


「ダメだ近づくな」


 助けようとしたもう一人の魔女さんも伸びる蔓に巻き込まれて身動きが取れなくなって、そこに迫ってくる臭い玉の煙。

 これにヘルヴィさんが一旦は手を伸ばしかけるも――、


「悪い。見捨てる」


「ヘルヴィ――」


 すぐに間に合わないと踵を返して階段を下っていく。

 と、そんなドラマさながらのやり取りがあったりしつつも、その後はなんとか犠牲を出さないままに一つの縦穴の最下層の手前まで到達。


 まず、視界の悪い下り階段に設置されていると思われる罠の一部を解除しようと、軽く探知の魔法を放った後、

 この中で素の身体能力が一番高い三好さんが名乗りを上げて、あえて一人でその階段を駆け下りることになるのだが、


『む、何もないだと?』


 そこに罠は仕掛けられていないようで、

 この結果に考え込むのはリュドミラさんだ。


『これは失敗だったか』


『失敗だったというのは?』


『いや、この様子だと目的の宝玉があるのは下層ではないのではないかと思ってな』


 そう、もしもここに宝玉があるのなら罠の一つも仕掛けている筈だ。

 そして、他の同じような場所に隠されているとしても、相手の興味を引く為に罠が仕掛けられているのではないか――というのがリュドミラさんの予想のようで、


『そう思わせておいて逆にってこともあるのでは?』


『うむ、たしかにそれはあるだろう。しかし、一つ気になることがあるのだ』


 勿体ぶるようなリュドミラさんの口ぶりに『それは――』と誰かが続きを促すと、


『お前達、煙は普通どっちに流れる?』


『そりゃ上に――』


「さすがはリュドミラ様、まさかこれ程早く気づかれるとは――」


 周囲に問いかけるようなリュドミラさんの言葉に感心するのは守り手側のメリーさんだ。


『そう煙は通常上に登るものだ。しかし、ここに来る途中、我々を襲った煙はどうだった?』


『そういえばあの煙、階段の下まで追いかけてきたよね』


 そう、ここに来る道中のトラップで発生した臭い玉の煙。

 あれは通常の煙と違って、あえて下に広がるようなものだった。


『上で試したヤツは普通の煙だったよね』


『そうだな。煙が下に広がるなら、私もあんなに苦しむことはなかった筈だ』


『だけど、どうやって?』


 問題は臭い玉の煙をどうやって操っているかだ。

 と、攻め手側のメンバーが腕を組んだり難しい顔をしたりとなったところで、一人の魔女さんが『あっ』と素っ頓狂な声を上げて。


『これってサリサの魔法だ』


『サリサの魔法? あの子、地面系でしょ。煙を動かす魔法なんてないでしょ』


『ボイスチェンジャーみたいな魔法だよ。たしかあれって土系統の付与で、起動を通る空気の重さを調整して、声色を変えてるって話だったような』


 それは今回の遠征メンバーでいじられキャラを欲しいままにしているサリサさんが、個人的な趣味で作ったされる個人魔法。

 これは自分の喉に属性付与を行うことで、そこを通る空気の重さを変化させ、ヘリウムガスなどの声質変化を魔法で再現、声を変えるという魔法なのだが――、

 今回はそれを臭い玉から吹き出す煙に応用した。


『じゃあ、こっちに宝玉はないってこと?』


『さて、それはわからないが、臭い玉の仕掛けが意図してのものだった場合、我々はここに誘導されたということも考えるべきだ』


 リュドミラさんの予想は正解だ。

 そもそも、お宝はダンジョンの奥に隠すものという意識はあるが、それに加えて、各所に設置してあるトラップも、特に入口に近いものについては、完全に攻め手側の皆さんを下へ下へ追い込むように設置されていた。


 と、そんな事実も含めて、攻め手側の皆さんがどう行動するかであるが、

 とりあえず、もう一箇所の縦の行き止まりを調べて、罠の有無によって判断することにしたようだ。


「ここからは消耗戦ですね」


「遠隔で作動できれば勝負は決まってたんですけど」


 もしも罠が遠隔で起動できたとしたら、攻め手側のみなさんが最下層に降りたタイミングで、仕掛けた臭い玉を一斉に使ってしまえば守り手側の勝利は確実だった。

 しかし、今回の訓練はあくまで相手をどう罠に嵌めるかということが重要で、メリーさん達としてはこの成り行きを見守るしかないのである。


「行きよりもかなり急いでいるようですね」


「降りてくるまでに時間を使っていましたから当然ですよ」


 たしかに、今からもう一箇所の縦穴を調べて、そこから上まで戻って宝玉を探すとなると、あまり移動に時間をかけてもいられない。

 攻め手側の皆さんとしては、ある程度の犠牲を覚悟して、まだ臭い玉の煙に汚染されていない別ルートから上層へ戻るしかないのだ。


 しかし、先を急ぐということは、その分、周囲を気にかける時間が減る訳で、罠に引っかかる確率が高まることを意味している。

 それが蔦のトラップのみならば、ただの時間の無駄になるだけなのだが、セットで設置される臭い玉の煙に巻かれてしまえば、制限時間内の復活は絶望的で。


『ヤバっ、罠を引っ掛けちゃった』


『だったら風の魔法で――』


『ちょっ、それは――』


 煙に巻かれたらお終い――だったら、その前に吹き飛ばしてしまえばいいというのは、誰しもが考えることだろう。

 ただ、その風によって他に設置してあった臭い玉の紐が抜けてしまい、吹き飛ばした以上の煙が通路に溢れる。


 こうなってしまうと、さすがに風の魔法だけではどうすることも出来ない――というよりも、さらなる仕掛けを誘発させてしまうのではとの懸念から、大掛かりな魔法は完全に封じられてしまうのだ。


『バカ』


『ゴメン~』


『反省は後だ。他の通路に回るぞ』


『『『『『『はい』』』』』』


 さすが工房長を任せられるリュドミラさん。

 想定外のやらかしに動揺する皆さんの気持ちを一言で立て直してしまった。


 そして、ヘルヴィさんを先頭に通路を迂回して、もう一箇所の縦階段を調査。

 そこにも大した罠がないことを確認すると、すぐに上層に向けて移動を開始。


 途中、蔓トラップが大量配置された通路などに引っかかりながらも、どうにかこうにか上層に辿り着いたところで、残りの時間は残り十分――、


『む、蔓が――』


『ごめんね輝虎ちゃん』


『構わない。それよりも、そろそろ時間が――』


『というか、これってちょっと厳しくない? ここから通路をくまなく探すなんて無理なんですけど』


『だけど、ここまで来たらなんにもしないでってことはないでしょ』


『そうだな。ここはリュドミラ様――、お願いできますか』


『わかった』


 タイムアップが押し迫っているこの状況では、もう一か八かに賭けるしか無いと、ヘルヴィさんの要請でリュドミラさんが全力の探知を行ったところ周辺の罠が発動。

 無造作に伸びる蔓と大量の煙が皆さんに襲いかかるも、その被害を風と水の守りで被害を最小限に止め、探知を行うリュドミラさんを全力フォロー。

 すると、少しして探知を終えたリュドミラさんが近くの通路を指さし。


『見つけた。この通路を進んだ先の少し登ったところに宝玉はある」


 この探知結果に魔女の一人がダンジョンの地図を読み。


『ねぇ、そこってリタが罠に引っ掛かったところの近くじゃない』


『えっ、マジっぽいじゃん』


『じゃあ、最初に探知を使ってたら終わってたってこと?』


 ちなみに、いまリュドミラさんが見つけた宝玉は罠と一緒に隠してあった為、最初に魔法を使って調べたとしても、あまり意味はなく。


『とにかく、宝玉の位置がわかったなら、後は一直線だ。輝虎』


『任せて』


 風や水など、煙をどうにかできる魔法を持つ魔女さん達が道を切り開き、三好さんが全力疾走。

 多大な犠牲を払いながらも煙だらけの通路を駆け抜け、宝玉を見つけ出すのだが、実は三好さんが宝玉があった区画に入る少し前にタイムアップのブザーが鳴っていた。

 今回の訓練は守り手側の皆さんの勝利に終わり。


「まさかサラサにやられるなんて」


「ふっふっふ、皆さん私を馬鹿にしすぎなんですよ」


 悔しそうにする攻め手側の皆さんの一方で、メリーさんなどの意識は現実を向いていた。


「しかし、この臭い玉は本当に強烈だったな」


「ええ、ハイエストへのいい武器になりそうです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓↓↓クリックしていただけるとありがたいです↓↓↓ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ