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ダンジョンアタックリザルト

 ダンジョンから引き換えした白盾の乙女のメンバーは、リーヒルとわかれたその足でアヴァロン=エラへとやって来ていた。


「こんな時間にすみません」


「気にしないで下さい。

 まだ帰るには早い時間でしたから」


 すっかり日も暮れているにも関わらず、万屋の店長である虎助はいつもの笑顔でエレオノール達の荷物を受け取ると、すぐに〈金龍の眼〉を使って鑑定を始める。


「服の方は……、

 そうですね。ウチで一番安い革鎧くらいのもので、

 武器の方は魔法銃で間違いないみたいですね」


「やはりそうですか」


「それで、その銃はどんなものなの?」


「雷の魔弾が撃ち出せる魔法銃のようです。

 威力の程は実際に使ってみないとわかりませんが」


 鑑定でわかるのはあくまでその概要で、その武器がどれくらいの代物なのかは、実際に使ってみないことにはわからない。


「じゃあ、訓練場で試してみましょうか」


「我々が見学してもよろしいんでしょうか」


「はい、見つかっているのがあちらのダンジョンなので、皆さんにもしっかりと性能を把握しておいてもらった方がいいかと」


「たしかに、それはそうですね」


 今回持ち込まれた魔法銃以外にも、あのダンジョンにはこれと同じものが隠されているのかもしれない。

 それが他の誰かの手に渡った場合、エレオノール達に牙を向くことだってありえるのだ。

 その時にこの魔法銃がどういう物かを知っておくことは重要なことであってと、虎助は店番をそこに残っていた玲とベルに任せると、白盾の乙女の四人を連れて訓練場へ向かい。

 壁際に作られた土壁の前に藁束を突き刺し、反対の壁際まで離れて試射をはじめる。

 すると、バシュッという音と共に電撃が迸り、的になった藁束が軽く弾け。


「威力はそんなにって感じっすね」


「最小威力で撃ちましたから」


「それって威力の調節とかできるの?」


「引き金を引いたまま固定すると、銃身に魔力が溜められ、威力が上がっていく仕様になっているみたいです」


 虎助が見せる銃の側面にはご親切にもメーターがついており、どれくらい魔力を込めているのかがわかるようになっているようだ。


「次、魔力を最大まで装填して撃ってみますね」


 虎助はそう言うと、今度は引き金をホールドした状態で魔力を溜めて、解き放つと先程の気の抜けたようは発射音とは違い、小さな雷が落ちたような音が響き、的である藁束が粉々に砕け散る。


「ひゃっ!?」


「凄いっすね」


「これを受けたらどうなってしまうんでしょう」


「でしたら、次は適当な鎧でも撃ってみましょうか」


 虎助はエレオノールのリアクションに苦笑しながらも、手が空いているエレインに工房の集積場から、壊してもいい鎧を持ってきてもらい試してみる。

 すると、これが思ったよりも地味な結果で。


「さっきと比べると微妙な結果っすね」


「金属製なので吸収されてしまったのでは?」


 この魔法銃の攻撃は雷属性のものになる。

 その対象が金属製の鎧ともなると、鎧自体にはダメージがいかないのではなかと虎助は応え。


「つまり、この魔法銃から放たれた攻撃は鎧を貫いてくるということですか」


「あくまで一般的な金属製の鎧という但し書きがつきますが」


 電気を通すのはただの金属製の防具に限る。

 これが魔獣素材やミスリルなどの魔法金属で出来ていた場合、また違った結果になるだろうということで、


「次はこの魔弾を受けた時のダメージを確かめてみましょうか」


「どうやって?」


「簡単です」


 虎助はそう言って口元に笑みを浮かべると「こうやるんです」と手の平に銃口を押し付け引き金を引く。


「ちょっ!?」


「見た目のわりに威力の方は控えめのようですね」


「無茶しすぎよ」


 心配をする白盾の乙女の一方で、虎助としては何度も試射した結果から、最小限の攻撃なら害はないと判断していた。

 そして、実際に受けてみての評価は以下のようなものだった。


「テーザー銃のようなものですか」


「テーザー銃?」


「僕達のいる世界に電撃を使った制圧用の銃があるんです。

 おそらくこれもそれと同じようなものかと」


 ちなみに、その出力に幅があるのは魔獣への対策を兼ねてのことではないかと虎助は続け、持ち込まれた魔法銃の性能をおおよそ把握したところで、次に用意するのは万屋の方で開封するには手狭だと調べなかった箱である。


「開けてみましょうか」


「いよいよっすね」


「見た目は大きめのクーラーボックスのようですが、材質はジュラルミンとかそういった感じですね。

 鍵はダイヤルロック式みたいなものですか」


 本当に簡易的な鍵である。

 そのことから、この中身がそこまで重要なもので無いことが伺えるが、


「罠はないようなので、エレイン君」


 鍵を安全に開くのに総当りするしかないのならエレインに任せるのが一番だと、虎助が席を譲ったところでエレインが解錠を試していくのだが、


「早っ」


「この手のものがゲートに流れてくることもありますから」


 アヴァロン=エラにはいろいろな世界からの漂流物が流れてくる。

 その中には今回のような鍵付きのものもある訳で、その開封作業のほぼすべてをエレインがやっていることから、この手の作業には手慣れているのだと、虎助が誇らしげにしている間にも鍵開け作業は終了したようだ。

 『解錠完了』という魔法窓(フキダシ)を浮かべたエレインが脇に移動したのを見て、虎助が開いた箱の中を覗き込むと、そこに入っていたのは何本もの布のようなものが巻かれた円筒状の物体だった。


「中身は反物ですか?」


「いえ、これは簡易的なバリケードのようですね」


 虎助が見るのは、開けた蓋の裏に貼り付けられた説明書。

 それによると、この円筒状のアイテムは布を広げ、その両端についている棒を地面に接地して魔力を流すと即席の壁になるというもののようで、

 実際に虎助と魔法使いのリーサが使ってみたところ、見た目はただ布を立てただけにしか見えないが、そのバリケードは虎助が蹴りつけても小動(こゆるぎ)もしないほどのものだった。


「おおっ、結構しっかりしてるっすね」


「地面に突き刺しても居ないのに、少し押しただけではビクともしませんね」


 そして、どうやらこのバリケードは地面から魔素を吸い上げて効果を持続するもののようで、地脈の力が強い場所ではかなり強力な壁になりそうだと、検証が一通り終わったところで、他に白盾の乙女が回収してきた箱も開けてみるのだが、その中身はすべて同じもので。


「箱もお返ししますね」


「この箱はなにか特別なものなのですか」


「一応、中身を保護する為の魔法がかけられているみたいですけど、特に珍しいものでもなさそうですね」


 ちなみに、箱の素材は魔獣化した植物の樹脂とアルミニウム合金で出来ているみたいで、軽く丈夫に作られているようだが、それ自体は万屋でも簡単に作れるものらしく。


「そういうことなら向こうに持っていっても仕方がないわね」


「では、一つを覗いて万屋さんで処分をお願いできますか」


 提出する用として一つの箱を残して、後は万屋が引き取ることに。


「それで、例の結界装置はどうなりました」


「それなんですけど、あの後、リーヒルさん達と相談したんですが結界を作る魔導器を作るとなると、他で使われる可能性もあると思いまして、こんなものを用意してみました」


 と、虎助の指示でエレインが持って来るのはカンテラのような魔導器だ。


「話に聞いた四獣が狼系の魔獣ということで、嗅覚に訴える幻覚系の魔導器を用意してみました」


 そう、問題となっている魔獣の種類がわかっているのなら、わざわざ強力な結界装置を作るより、こちらの方が楽で目立たないだろうとの配慮から――というよりも、つい先日の魔女達のトラップ訓練を企画するさいに思いついたというのが正確なのだが――魔獣の侵入を防ぐ結界よりもこちらの方が無難だと、その魔導器が作られたようだ。


「嗅覚――、

 つまり臭いですか」


「それって、この魔導器から嫌な臭いが出るってことっすよね」


「試してみます?」


 この虎助の提案にココが真っ先に嫌な顔をするのだが、そんなリアクションは想定していたとばかりに虎助は「大丈夫ですよ」と一言。

 有無を言わさずその魔導器を発動させると、見た目上は特に変化は見られなかったものの、周囲の空気は明らかに違い。


「ありゃりゃ、ぜんぜん臭くないっすよ」


「なんでしょう、癖のある香辛料のような香りですね」


「えっと、こんなので魔獣の侵入を防げるの」


 リーサが心配そうな顔をするものの、


「この魔導器は強い個体が戦いの際に出す臭いを再現したもので、一定レベル以下の魔獣は近づこうともしないみたいです」


 そして、その効果について、強い魔獣ばかりが迷い込んでくるアヴァロン=エラでも、それなりの効果が発揮することが確認されていると虎助が言えば、白盾の乙女の四人も納得したか。

 代表してエレオノールが「わかりました」と、とりあえず、これをギルドの方に提出することになるのだった。

◆次回投稿は水曜日の予定です。

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