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魔女と聖水

「聖水ですか?」


「我々で作れるものなのでしょうか」


「あくまで浄化を目的とした魔法の水ですから」


 場所はこのアヴァロン=エラに訓練を受けに来た魔女のみなさんが宿泊するトレーラーハウスの前――、

 三好さんに魔女の皆さん、そして玲さんを集めて、なにを始めようとしているのかといえば、聖水作りのレクチャーだ。


 三好さんの刀である虎徹の整備に端を発した、三好さんからの実家(?)の倉庫が呪われたアイテムでいっぱいだという話に、だったら自分で作ったらいいじゃないかと――、

 ついでに魔女の皆さんもおぼえておいて損はないと、皆で聖水作りをしてみようということになったのだ。


 ちなみに、聖水を作るというと、聖職者の領分というイメージがあるけど、実は魔法薬としての聖水も存在していたりして、まずはその一番簡単な作り方から教えていくことにする。


 といっても、最初にやってもらう聖水の作り方は本当に簡単なもので、錬金術で浄化した水に精霊金を放り込んでしまえば、後は時間が解決してくれるというものだ。


「えっ、これだけで?」


「本当にこれで聖水が作れるんですか?」


「作り方は簡単ですが、元になる素材が希少なものですから」


 そう、精霊金は普通なら滅多に手に入らない素材になる。


「ちなみに、この方法なら、精霊金が朽ちてなくならない限り、半永久的に聖水が作れます」


 まあ、いいものを作ろうとなったら、それだけ時間がかかるのだが――、


 そして、【聖女】の実績を持つ玲さんだったら、その精霊金すらも使わずに聖水が作れると説明したところ、魔女の皆さんは拍子抜けといったご様子で、

 そんな中、ご実家というか所属組織が抱える呪いのアイテムの量に切実な問題を抱える三好さんの手が上がる。


「この金属そのものを使って呪いを打ち消すことは出来ないのですか?」


「出来なくはありませんが、消耗品にしてしまえば誰にでも使えますから」


 精霊金を使って呪われたアイテムを浄化する魔導器を作ることは可能である。

 ただ、その場合、使い手に才能が求められる、汎用性に欠けるものになってしまうようで、

 僕が魔法窓(ウィンドウ)を片手に応えると、三好さんは「成程――」腕を組み、気持ちを切り替えこう聞いてくる。


「それでこの聖水はどの程度のものが処理できるのですか」


「漬けておく時間や水の状態によって効果は変わってくるみたいです」


 つまり、用意した水にどれだけ精霊の力――もしくは神聖な力を取り込めるかということである。


「ちなみに、この金属を買い取るとなるとどの程度の金額になるのでしょう?」


「残念ですが、手に入れられる数が少ないので売りに出してはいないんですよ」


 いま、僕達が扱っている精霊金は、魔王様の拠点の主であるニュクスさんのご好意で譲ってもらったものである。

 ゆえに、万屋(うち)で売りに出せるようなものではなく。


「ただ、今日実験に使ったものはそのまま持って帰って頂いても構いません」


「ほ、本当ですか」


「そちらは前に別のアイテム作りに使ったものの端材になりますから」


 これは形を見てもらえばわかると思うが、今回の実験で使った精霊金はプレス加工などで出るバリのようなものであって、精霊金はその特性上、再利用することが難しい金属になるので、折角だから今回みなさんに配ってしまおうということだ。


 と、精霊金を水に漬け込んでいる間に魔法薬としての聖水の作り方をやっていこう。


「とりあえず、素材とレシピはこんな感じです」


 大きな魔法窓(ウィンドウ)を使ってする僕の説明に合わせて、エレイン君がみなさんに各種薬草などを配布。


「作り方が幾つかあるようですが、この素材なら地球でも作れそうですね」


「はい、そう思ってレシピを選んでみました」


 ちなみに、これら材料で錬金する聖水も作り方はそれほど難しいものではなく。

 熱に弱いもの、オイルとして取り扱うものなど、種類別に成分を抽出。

 それを決められた分量・順番、場合によっては魔力付与をするなどをして混ぜていくだけだ。


「通常の魔法薬作りとなんら代わりませんね」


「呪いや穢れ、瘴気などに対するレジストポーションのようなものですから」


 それら状態異常に抵抗した結果、呪いが解かれるということだと説明をしたところ、メリーさんも納得のご様子で、


「……私のところにもそういった部門を設けるべきか」


「いいと思いますよ」


 一方、三好さんがポツリと漏らした思案げな言葉に笑顔で応える。

 実際、錬金術はしっかりとした錬金釜と魔力さえあれば誰にでも使える技術であって、


「つまり、錬金術に魔法的な素質は必要ないと?」


「それは微妙なところですね。

 道具が悪ければそれを補う力が必要ですし、あと戦闘に錬金術を使う場合などは才能が必要になってきますから」


 錬金術は属性ではなく、単に一つの技術体系でしかない。

 ただ、パキートさんの専属メイドであらせられるレニさんのように、特定の物質に特化した錬金術を戦闘に利用する場合や、魔導器などの補助を受けずにする場合は才能が必要になってくる訳で、


「あと、最上級の魔法薬を作りたい場合は水や闇、アクセサリーを作りたいなら火や土などといった感じで、自分の得意な魔法によって加工技術に差が出てくるみたいですよ」


 ただ、このくらいのレベルになると、逆に作ろうとするものの素材入手が困難になるようで、特に地球など魔素が薄い環境下ではあまり意味がなくなってきてしまうのだ。


「とりあえず、どれでもいいのでレシピにある聖水を作ってみましょうか」


 なんにしても、この聖水作りは錬金術を齧ったことがある人ならそこまで難しくない作業であって、初心者の三好さんは多少苦戦していたようだが、周りがフォローを入れたことで無事に完成。


「ちゃんと出来ているんでしょうか」


「魔王様がちょうどいいものを用意して下さいましたので試していきましょう」


 ここで魔王様がいつもの背負籠で運び込んでくれたのは、スタンドアローンなガラティーン(土の聖鎧)さんとクレラント(風の聖剣)さんが、夜の森の外苑で回収してきてくれたばかりの呪われたアイテム。


「虎助殿、それでその禍々しい武器群はどのようなものなのだ?」


「待ってください」


 急かすようなリュドミラさんの声に、僕が〈金龍の眼〉を使って籠の中身を鑑定していくと――、


「元々はどこかの国の兵士のもののようですね。

 それを魔獣が奪い去った後、このような状態になってしまったといったところでしょうか」


 杖やメイスなど、似たような武器がそれなりの数そろっているということは、相手は武器を使い、群れを作るゴブリンとかオーク、もしくはアンデッドの軍勢になるのかな?

 それらが未だ夜の森の外苑にいるというエルフ達に討伐されたか、それとも同じ魔獣に殺されたか、最終的にガラティーンさんに回収されたといったところのようだ。


 ちなみに、武器としての性能はそこまでいいものではないようだが、呪われたアイテムは浄化後に特殊な能力を得ている場合が多く、今回はそれを期待して解呪していこうということになった。


「誰の聖水から試していきましょうか」


「ならば私のものでお願いします」


 まず浄化に名乗り出るのは錬金術初心者の三好さんだ。

 ちなみに、今回魔王様が提供してくださった呪われた武器類は、万屋(うち)を介して魔王様と三好さんや魔女の皆さんとで直接取引することになっていて、呪いが解けた暁には、呪いを解いたその人に交渉権が渡されるそうだ。


 ということで、まずは錬金術初心者の三好さんが試金石にと作った聖水を呪われた騎士剣に振りかけたところ、黒い煙が上がるも、さすがに素人同然の三好さんが作った聖水で呪いが解けることはなかったようだ。


 その後、代わる代わる魔女の皆さんが自分が作った聖水をかけていくと、そろそろ順番が一巡しそうなタイミングで歓声が上がる。


「あ、綺麗になった。これって浄化されてません?」


 そう言ってはしゃぐのは、数日前に錬金ドリンクの実験代役になったサリサさんだ。

 そして、テンション高いまま腕にしがみついてくる彼女に、僕はすぐに〈金龍の眼〉を取り出し、その杖を鑑定。


「おめでとうございます。呪いは完全に消えてます」


「やった」


 すると、しっかり浄化がなされたようで、杖の性能の方もそこそこ高いものになってくれたようで、これに続けとばかりに魔女のみなさんが聖水を作りを急ぎ、他のアイテムの解呪を試していって――、

 その結果、魔王様が持ってきてくれた呪われた武器はすべて浄化され、魔女の皆さんの悲喜こもごもが見られるのだった。

◆次回投稿は水曜日の予定です。

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― 新着の感想 ―
ある意味、福袋開封っぽい呪いの解除結果でしたねぇ。
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