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闇の魔法を使ってみよう

 さて、三好さんから諸々の事情を聞いたところで、ベル君に頼んで三好さんに向いている闇属性魔法の魔法式(データ)を取り寄せる。


「まずオススメなのが〈暗幕(ブラックカーテン)〉ですね」


 そう言って、僕が元春を対象に魔法窓から発動したのは範囲に黒いカーテンを作り出すという闇の魔法だ。


「魔法障壁と遮光を兼ねた魔法で、こうやって目を塞ぐように設置すると」


「暗っ!?

 てか、この魔法ヤバない?」


「その魔法は設置式だからちょっと移動すれば逃げられるし、気合とかで簡単にキャンセルできるから、言うほどじゃないと思うけど」


「ちょいちょい、こっちから動くならともかく、気合でキャンセルとかって――あっ出来た」


 元春もなんだかんだで一年以上魔法の訓練をしているから、このくらいのことは出来て当然である。


 と、見本を見せたところで三好さんにも使ってもらおうとするのだが、

 いざ、眼の前に〈暗幕(ブラックカーテン)〉の魔法式を表示された三好さんは、どこか躊躇いがちなご様子で、

今まで使えないとされていたみたいだから、この反応も無理はないのかもしれないが、万屋(ウチ)でダウンロードできる魔法式なら、誰でも下位の魔法の発動くらいは簡単だからと、


「魔力を流してカーテンを閉めるイメージで魔法を発動させてみてください」


 しっかり発動できるように軽くアドバイスをしたところ、三好さんの眼の前に薄っすらとであるが黒いヴェールが張られ。


「出来た」


 感動に震えている三好さんには申し訳ないが、この程度の魔法なら魔法式に魔力さえ流すことが出来るのなら発動して当然の魔法であって、


「ちなみに、魔力とイメージ次第でこんなことも出来たりします」


 これはその応用だと上から下に手を振り下ろせば、縦長の黒い魔法障壁がその場に出現。


「意外な用途で使えそうな魔法ですわね」


「イタズラとかに使えそう」


 なにやら考察をはじめてしまったマリィさんはともかくとして、元春が変なことに使いそうだけど、それはまた後で注意するとして。


「攻撃魔法も使ってみますか」


「攻撃魔法!?」


 うん、いい反応だ。

 やっぱりこういう魔法に憧れがあったのか、凄い食いつきの三好さんに用意するのは〈闇弾(ダークネスバレット)〉という、元春の中二心をくすぐりそうな名前の魔弾を放つ魔法である。


 万屋のデータベースからダウンロードしてきたそれを僕が使ってみせたところ。


「なんつーか、名前に反して地味な魔法だな」


魔弾(バレット)系統はこんなものだよ」


 マリィさんの火弾や玲さんの光線を浴び慣れている所為か、元春はもっと派手な魔法を期待していたみたいだけど、僕が使ったのはあくまで基本的な闇魔法を覚える為の本当にベーシックなものであり。


「威力はどれほどのものですの?」


「それこそ使い手次第になりますね。

 ただ、他の属性と比べると基本的な威力は若干低くなると思いますが」


 基本的に魔弾などの魔力を固めた遠距離魔法攻撃は、魔力の固まりに属性の影響力を加えたのが最終的な威力になって現れる。

 火や土など攻撃力に直結する属性の場合、もともとの魔弾の攻撃力に上乗せされるのだが、逆に闇のように実態が薄い属性というのは攻撃力が弱くなってしまうのだ。


 しかし、こういった魔法は直接的なダメージの代わりに特殊な効果が付与されている場合が多く。


「もしかして、相手を暗闇状態にしたり?」


「ううん、〈闇弾(ダークバレット)〉の追加効果はバフ剥がしだよ」


 どうも三好さんは――見た目通りというのは偏見か――ゲームをあまりやらない人のようである。

 僕と元春の話に首を(かし)げているのを見て、あらためて相手の魔法効果などを消し飛ばす効果があると伝えると、しっかりと興味を持ってくれたみたいだ。

 

 ということで、さっそく〈闇弾(ダークバレット)〉を使ってみようということになって、三好さんが用意した的を目掛けて闇の魔弾を放つのだが、三好さんが放った闇の魔弾は十メートルほど離れた的に届くことはなく霧散してしまい。


「闇の魔弾って射程が短い?」


「そんなことはないと思うけど……、

 もしかして三好さんが魔力を遠くまで飛ばすのが苦手なタイプなのかも」


「そう、ですか」


 僕の指摘に残念そうな顔をする三好さん。

 ずっと魔法が使えないと言われていたそうだから、彼女には魔法らしい魔法に憧れがあるのかもしれない。

 しかし、ここで諦めるのはまだ早い。


「三好さんの場合、そのバトルスタイルから、もしかして飛斬の方が合っているかも知れません」


 魔法というのはイメージによる影響が大きい技術である。

 だとするなら、普段から使い慣れている攻撃方法の延長のような魔法の方が使いやすいのではないだろうかということで、僕は闇の飛斬の魔法式を表示。

 三好さんに用意した木刀に魔力をまとってもらって、アニメや漫画のように斬撃を飛ばすイメージで、その魔法式を斬るようにお願いすると、狙い通りに飛斬が発動し、その斬撃は十メートル以上離れた的を斬り裂き。


「おお、かっちょええ」


「射程も申し分のないレベルになっていますね。

 とりあえず、この二つをおぼえていきましょうか」


 と、これに三好さんから「はい」と張りのある声が返ってきて、本格的な訓練を始めようとしたその時だった。

 唐突にアラーム音が鳴り響き、警戒色に縁取られた魔法窓(ウィンドウ)がポップアップ。


「魔獣か?」


「みたい」


 元春と一緒にその魔法窓(ウィンドウ)を覗き込むと、そこには濃い灰色の毛を持つ羊の群れが映し出されていた。


「久々に団体様のお越しだね」


「で、どうするの?」


「魔獣討伐、手伝います」


「むろん、(わたくし)も強力しますの」


 相手はナイトメアシープという睡眠特化の羊のようだ。

 今日は母さんもいるし、ハッキリと戦いの意志を示されたとなれば止めれらないかと、三好さんを含めたみなさんの参戦を了承し、ゲートまでの移動の間、戦う上での注意点をレクチャー。

 その上で戦闘開始となるのだが、この戦いで大活躍したのが魔王様だ。

 〈静かなる森の捕食者(アルラウネ)〉の蔓を使い、ナイトメアシープの動きを抑えてくれたのだ。


 ちなみに、ふだん戦いにはあまり戦いに加わらない魔王様が、今回はどうして参加しているのかというと、ナイトメアシープは羊毛は熱に弱いところがあるものの、その手触りは最上級のものになるようで、アラクネのみなさんのいいお土産になりそうだからだと、間接的にではあるが戦いに加わってくれたみたいだ。


 そして、逆にそういう意味ではマリィさんが多少戦い難いかと思っていたのだが、マリィさんはマリィさんで逆に剣を片手に嬉々としてナイトメアシープに襲いかかっていた。


 一方、三好さんはというと、新しく使えるようになった魔法をいきなりの実戦で使うようなことはなく、堅実に剣術のみでナイトメアシープと戦っていた。


 そうして、みんなで力を合わせ戦った結果、ものの数分でナイトメアシープの群れの討伐は完了。


「そういや群れってわりに子供がいなかったじゃない。やりやすかったからいいけど」


「子育てが終わったタイミングとかじゃないでしょうか」


 時期的なことを考えるとこれが一番ありそうな理由なのだが、相手は魔獣となると何とも言えないところで。


「まずは毛刈りからやっていきましょうか」


「毛刈りってバリカン使ってやんの?」


「いや、ソレだと時間がかかって肉の鮮度が落ちちゃうから、魔法を使って簡単にやるよ」


「そんな魔法もあるんだ」


 需要があれば生まれる魔法もあるものだ。

 僕はバリカンを動かすフリをしながら聞いてくる元春にそう答えると魔法窓(ウィンドウ)を複数呼び出し。


「それぞれに一枚魔法式を用意しますから、興味があったら手伝っていただけるとありがたいです」


「自分にもできますか」


「何事もチャレンジですの」


 こういった、ちょっとした便利魔法なら魔力が低い人などにも使える工夫がされているからと、三好さんも加わって、みんなで力を合わせて毛刈りを行い。

 毛を刈り取られたナイトメアシープはエレイン君達が解体していく。


「これは壮観――ですね」


「地球だと魔獣の大量発生なんてまずありませんからね」


 地球での魔獣出現はどちらかといえば量より質といった感じである。

 まあ、その質もあまり高くはないのだがと、流れ作業で解体を進めていると、元春が運ばれていく肉を見て、


「今日はジンギスカンか」


「焼肉はこの前たべたばっかだし、羊肉は癖があるから、いろいろ試した後、来週にでも出すよ」


 とはいっても、羊肉の料理なんてジンギスカンしか思い浮かばないんだけど。


「そっちの角はどうするの?」


「魔法の発動体としては有能なようですから、魔法銃の部品や杖にでも使おうかと」


 ちなみに、杖は武器のカテゴリとしては弱いということで、普通にお店で売りに出している。


「吹いたら相手を眠らせるラッパとか作れそうじゃね」


「実際そういうのがあるみたいだね」


 データベースからの紐付きのレシピでそういうのがあることがわかっている。


「マジで、それ一つ作ってくんねーか」


「駄目に決まってるでしょ」


 これに元春が食いついてくるものの、僕が断るまでもなく玲さんからのストップがかかり。


「それにこれ、悪夢を見せるタイプのマジックアイテムみたいだよ」


「結構エグくて草」


 笑い事じゃなくて、本当に面倒なマジックアイテムみたいなので、


「元春が試してみる?」


「勘弁してくれ」


 しかし、そういう素材なら三好さんの刀の柄や鍔に使うのもいいのかもしれないと、三好さんにそう提案。

 すると、彼女はやや困惑するような雰囲気を醸し出しながらも、まさに魔法のような(・・・・・・)効果を発揮するアイテムには興味があるのだろう。


「いいのですか?」


「討伐だけでなく、毛刈りのお手伝いもしていただきましたし、遠慮せずにどうぞ」


「そういうことなら、お願いします」

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