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魔女vsブックマスター

 アメリカの魔女のみなさんが訓練を始めて十日ほど――、

 最初に配布した魔法が皆さんほぼ無詠唱で使えるようになったということで、ここいらで一度、実戦をしてみることになった。


 そのターゲットとなるのはブックマスター、アビーさんとサイネリアさん製作の強化ディストピアである。

 第一陣としてジョージアさんを筆頭とした五名を送り出し、残りのみなさんはディストピアの外から内部の様子をモニターする。


 引いた相手は火属性のブックマスターのようだ。

 今回のメンバーには水属性の魔法を得意とするメンバーが二人いて、相性としては悪くない相手といえるだろう。


 攻撃の初手は魔女のみなさんだ。

 というよりも、このブックマスターは一定距離まで近付いたり、魔力の流れを感じなければ動き出さないので、事前にどうするのかは挑戦者側の権利ともいえ、そんなブックマスターを前にジョージアさんが選択したのは、まずは一撃、大きい魔法を当てる作戦のようだ。

 部下の一人、黒髪の魔女さんに命じて、呪文の詠唱を始めさせる。


 しかし、その魔法の発動には少し時間が必要なようで、術者の魔力の高まりと共にブックマスターが動き出してしまうものの、これに土魔法の使い手である魔女さんが壁を作って対応。

 ブックマスターの接近と牽制含みの火球による攻撃を防ぎ、ジョージアさんが今回の訪問で新たにおぼえたノックバック性能が高い風の散弾で牽制してと、他の四人がブックマスターを抑えている内に、一人、黒髪の魔女さんが準備を進めていた魔法が完成したようだ。

 青く輝く魔法陣から大量の水が溢れ出し、濁流となって火のブックマスターを飲み込む。


 しかし、次の瞬間、巻き起こる大爆発。

 どうやら、魔導書の効果により炎を纏っていたブックマスターが、水を被ったことで水蒸気爆発が起きてしまったようだ。

 その衝撃によって、五人の魔女の隊列が大きく崩れる。


 一方、ブックマスターに影響はないようだ。

 いや、ダメージはあったのだと思われるが、

 爆発の中心がブックマスターであることと、アンデッドであるブックマスターには痛みや負傷の概念がほぼないということから、そのまま火炎放射のような魔法で反撃に移り。

 ディストピア化された存在におけるヘイトの原理から、まずは爆発の原因となる濁流の魔法を使った黒髪の魔女さんがその犠牲となる。


 そして、次なるターゲットはジョージアさんのようだ。

 空中でくるりと方向を変えたブックマスターが放つ火炎放射がジョージアさんに襲いかかるも、

 ジョージアさんは迫りくる火炎放射を一点強化(ポイントブースト)で強化した横っ飛びで回避。


『Shit、メリッサがやられたか。

 お前達、メリッサが戻ってくるまで立ち回りに気をつけろ』


『『『了解』』』


 ちなみに、今回のチャレンジにあたって一人三回までの復活が可能な設定となっているのだが、復活までには数分の時間が必要で、

 それまでに更に人数が減ってしまえば、このままゲームーオーバーになりかねないと、ジョージアさんの指示の下、残る四人はしっかり距離を取りつつも攻撃のチャンスを伺っていくことに。


 そんな魔女のみなさんの動きの一方、ブックマスターはジョージアさんに狙いを定めたようだ。

 要所要所で〈一点強化(ポイントブースト)〉を使い、回避を優先しながらも反撃を試みるジョージアさんを火炎放射が追いかける。


 この攻撃に四人の魔女は引き付け役に二人の盾役、そして、隙を伺い弱点である水の魔法でダメージを重ねる役と、それぞれに仕事を分担して慎重に立ち回り。

 攻撃役にヘイトが移りそうになると、それを見越して土の魔法を使う二人の魔女が壁を作ってブックマスターの行く手を塞げば、ジョージアさんが雷を落としてブックマスターの気を引いてと、そんなルーチンワークのような攻撃がしばらく続けば、ブックマスターもさすがにじれてきたのか。


 いや、単に学習しただけなのかもしれない。


 全方位に火炎放射を放ち、周囲を焼き払おうとするも、これに魔女のみなさんはそれぞれの属性の魔法障壁で対抗。

 属性の相性の関係で大きなダメージを受けた人が出てしまったみたいだが、あえて回復を行うことなく、そのまま反撃に打って出る。


 と、大技後の隙を狙われたブックマスターは魔導書を武器に対抗するが多勢に無勢。

 声を掛け合い、順番にぶつけられる魔法にその身を守るマントがボロボロにされていき、ついには弱点である胸の魔石が露出。


 すると、ここでジョージアさんが勝負を決めようとしてか、片手に雷を纏いブックマスターに近づこうとするのだが、その動きに対抗して振るわれる鞭のような炎。

 正確に表現するなら、それは先の火炎放射を魔法的に収束したもので、それそのものに物理的な打撃力はないのだが、炎を収束したことによって、延焼ダメージが上昇し、相性の悪い魔法障壁では防御できない代物になっていた。


 ターゲットとなったジョージアさんは、その炎の鞭にとっさに雷を纏った右手を突き出すことで、なんとか弾き返すことができたが、返す刀で振るわれたしなる炎に腰から斜めに脇腹までを焼き焦がされてしまう。


 一方、ブックマスターは、そのまま他の魔女達にも攻撃をと滅茶苦茶に腕を振り回して炎の鞭を暴れさせる。


 そんな変幻自在な攻撃に翻弄されてダメージを重ねる魔女のみなさん。

 だがしかし、ここで最初に沈んだメリッサさんが戦線復帰。

 狙っていたのだろう、炎の鞭を振り回しながらゆっくりと空中を移動するブックマスターの接近に合わせて、隠れていた柱の影から飛び出して水の散弾ウォータースプラッシュを連射すると、その中の一発がブックマスターの手元に直撃。

 縦横無尽に暴れ回っていた炎の鞭の根本が消し飛ぶ。


 その結果、当然のようにその延長線上にあった炎の鞭もキャンセルされる訳で、

 ここで攻守が逆転――戦闘の流れが一気に変わる。


 攻撃の手を失ったブックマスターは五人の魔女から即座に距離を取ろうとするも、所詮は魔法使いの機動力。

 動いて戦えるメンバーの多い北米支部のみなさんが追いかけられない筈もなく。

 逃げるブックマスターを横から飛びかかったジョージアさんが雷キックで吹き飛ばし、石柱の魔法を使っていた二人の魔女が、地面に倒れ込んだブックマスターを斜めに交差させた二本の石柱でその場にロック。その間に詠唱に入ったメリッサさんともう一人の水属性の魔女が魔法を完成させたところで決着。


 再びの水蒸気爆発が発生するも、先ほど起きたばかりの事故を予想できない筈もなく、五人ともにしっかりと残心を決めたところで僕達の目の前に戻ってきて。


「お疲れ様でした」


「最初にやられてしまったのが


「すみません」


「いや、あれは仕方がない」


 ディストピアではやり直しができる。

 失敗を繰り返さないことが重要なのだ。


「盾役に回るみなさんの防具のアップデートを考えた方がいいのかもしれませんね」


 龍の鱗ほどでないにしろ、不意の大技を食らった際に一撃を防ぐような防具は必要そうだ。

 ただ、こちらに関しては、前に何となく作った防弾帽子のこともあるので後で相談するとして――、


「実績の確認をしましょうか」


「自分は〈魔力向上〉ですね」


「工房長と同じですね」


「私は〈火耐性向上〉。やられたから駄目だと思ったのに」


「耐性だからということもあるかと――」


 あと、その後の健闘と初戦はいい実績が獲得しやすいといったこともある。

 とはいえ、あそこでやられていなかったら、更に上の耐性が手に入っていたかもしれないが、それは仮定の話ということでリザルトは終了。


 続いてジニーさん率いるグループがブックマスターに挑むことになるのだが、この五人は運が悪かったみたいだ。

 雷のブックマスターに瞬殺され、その後、燦さんのグループやヨーロッパの魔女さんも入れたグループなどと挑戦を繰り返し、次におぼえるべき魔法の検討に入るのだった。

◆次回投稿は水曜日の予定です。

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