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モッフルと浄化の検証

 ◆モッフル


「なにそれ?」


「ワッフルを作る機械です。今日はこれでモッフルを作ろうかと思いまして」


「えっと、ワッフルはわかるけど、モッフルって?」


「餅で作るワッフルっすよ。なんか昔流行ったらしいっす」


 それは正月三ヶ日が過ぎた昼下がり。

 そろそろ雑煮などにも飽きてきて、まだまだ残っているモチをどうやって消費しようかと考えていたところ、元春からモッフルを作ったらどうだとアイデアを出してくれて、今日そのマシンを持ってきてもらったのだ。


 ちなみに、モッフルの作り方は簡単で、切り餅を水に濡らして軽く電子レンジで温め、柔らかくしたモチをこのワッフルメーカーでプレスして焼くだけというものらしい。


 そうして作ったモッフルを皿に乗せ、みなさんにも消費を手伝ってもらおうと「なにを乗せます?」と訊ねると――、


「わたしはきなこと黒蜜かな」


「私もそれでお願いしますの」


「二人とも渋いなあ。

 てか、それだときなこが穴にメッチャ入らねー?」


「茶こしを使えばいいんじゃない。

 そういうあんたはなにを食べるのよ」


「そっすね。俺はとろけるチーズを乗せてモチピザみてーにするのが好きっすね。マオっちは?」


「……同じくピザ」


 これにマリィさんと玲さんはわりと定番の味付けを――、

 元春と魔王様はピザ風のモッフルをご所望のようだ。


 ということで、先ずは簡単なマリィさんと玲さんのモッフルから作っていこうと、追加のモッフルを焼きながら、用意してあったきなこと黒蜜を出来たばかりのモッフルにかけて二人にお出しして、続けて焼けたモッフルには、元春と魔王様のリクエストでケチャップをかけ、その上にとろけるチーズを乗っけて一つ魔法式を発動させる。


「おお、バーナー」


 これは赤い薔薇のみなさんにウケるかと作った魔法で、威力を上げれば攻撃魔法としても使えるものだったりする。

 そんな魔法でチーズに焦げ目をつければモッフルピザの完成だ。


「うおっ、めっちゃ伸びる」


「……アツアツ」


「そっちも美味しそうね」


「もう一個食べます?」


 この悪魔の誘いに、玲さんが「う~ん」と腕組みしつつも、すでにモチをセットして焼き始めたマシンに視線を落とし。


「ねぇ、この機械って使い道が限定的すぎない」


「一応、付替え用の鉄板があってホットサンドにも使えるようになっているみたいですよ」


 説明書を読むと、このワッフルメーカーにはホットサンド用のプレートが付いているようで、プレートを付け替えればホットサンドメーカーになるらしい。


「ただ、このままでもホットサンドは作れるようですけど」


「それ、なんか具とかはみ出ない?」


「むしろはみ出したとことか、美味そうじゃね」


 たしかに、ホットサンドなんかでも端っこのカリカリに焼けた部分なんか、香ばしくて味が濃くなっていて美味しそうだ。

 と、これには玲さんも同意のようだ。

 元春の言葉にどこかソワソワとした様子を醸し出していたので「試してみますか」と訊ねると、やや遠慮がちにも。


「面倒じゃない?」


「これを使えば簡単かと」


 個人的にはモチを消費してもらいたいところだけど、折角なのでと僕がお店の裏から持ってくるのは、冬のおやつの定番、冷凍肉まん。

 これを解凍して、バターを塗ったワッフルメーカーに挟んで焼けば――、


「おお、キャンプの奴な」


「意外と飛び出さないんだ」


「ゆっくり押し付けるのがコツみたいです」


 パンにしろ、中華まんの皮にしろ、一気にプレスするから大きくハミ出してしまうのであって、ゆっくりと圧をかけてやれば、意外と綺麗に焼き上がるのだ。


 ちなみに、焼き上がった肉まんのお味であるが――、


「……パリパリ」


「なんか専門店の変わり種餃子って感じだな」


「餃子のタレが欲しくなるかも」


 そういうことなら、ここは簡単にとポン酢とラー油を用意。


「つか、これのピザまんで作れば簡単だったんじゃね」


「いや、モチを消費してもらいたかったから」


 大量に残ったモチを消費するべく、わざわざワッフルメーカーを持ってきたのに、それで別のものを作っていたのなら本末転倒である。



 ◆浄化の検証


「これは意外な結果だね」


「動物と植物の違いとか?」


「そんな単純なことですの?」


 さて、僕と万屋の常連さんとで荒野のど真ん中でテーブルを広げてなにをやっているのかというと、

 先日、異世界から流れてきたシュールストレミングに浄化の魔法をかけた際に起きた変化。

 その検証にと地球のシュールストレミングでも同じことが出来るか試したみたところ、こちらもしっかり美味しくいただけたということで、

 その流れから、通販で買える他の臭いのキツい食べ物でもためしてみようということになり、くさやと臭豆腐をお取り寄せ。

 浄化の魔法を試してみると、くさやは普通に美味しくなったのだが、臭豆腐の方は臭いこそ消えたものの、劇的に美味しくなることは無いという結果に終わり。


「素材をそのまま発酵させたものと加工品を発酵させたものの違いというのはどうでしょう?」


 くさやの方は元の魚に味をつけて加工したものだが、臭豆腐の方は大豆から豆腐を作り、更にそこから発酵させるという手間が加えられている。

 そのことが関係しているのではないかと、僕は疑うのだが皆の反応はイマイチで。


「そうだ。納豆に浄化をかけてみたら、あれって豆をそのまま発酵させただけだから、虎助の説があってるなら、それで美味しくなるんじゃない」


「たしかに、そうですね」


 なにより納豆ならすぐに用意が出来ると、いったん自宅に戻って、持ってきた納豆に浄化の魔法をかけてみたのだが。


「これ、ネバネバが消えてない?」


「甘納豆のようになりましたわね」


 浄化の魔法にさらされた納豆は、豆のサイズも種類もまったく違うものの甘納豆ように粉を吹いたような状態になってしまった。


「でもよ。納豆のネバネバって旨味とかそういうのじゃなかったっけか」


「汚れを落とす時に使うから、そっちの判定を受けたのかもね」


 魔法の効果というものは認識によるところも大きくて、納豆がこの状態になってしまったのは、汚れを落とすという意識が働きからだろう。

 ただ、納豆のネバネバは害があるものではないから、成分自体はのこっているのではないかと付属のタレを投入。


「タレは絡むの?」


 この状態を見るに、あまり絡みそうにないものの、僕は納豆をそのまま食べるほどの上級者ではないので、豆に味が馴染むようにと箸で混ぜていくと。


「おっ、ネバネバしてきたんじゃね」


「少し弱い気がしますが、たしかに粘りが出てきていますわね」


 ネバネバの元になっている成分自体は残っているらしく、タレの水分が加わったことで、若干ネバネバが戻ってきたみたいだと、さっそく味見をしてみるのだが。


「どう?」


「うーん、そもそも納豆を単体で食べることがあまりありませんからね。むしろ苦手な人に食べてもらったら方がわかりやすいかもしれません」


 僕がそう言ってマリィさんを見るのだが、残念ながらというべきか、マリィさんは納豆が食べられる人なので、僕はそのまま視線をスライドさせて魔王様の頭の上にいる小さな妖精に目を留める。


「じゃあ、フルフルさん。お願いできますか」


「ええっ、ワタシ?」


「なんとなくわかるけど、やっぱ臭いが駄目なん?」


「それもあるけど、前に食べた時、体中ネバネバで大変なことになったんだよ」


 魔王様のお昼ごはんに出した時、自分もと妖精の数名がまとわりついてしまい大惨事となってしまったのだ。


 ちなみに、その時、浄化の魔法を使ったのだが、妖精のみなさんには鱗粉がある為、納豆がこう変化することにはまったく気が付かなかったが、いま思えばあの時も今と同じ変化が起きていたのかもしれない。


「ちょ、フルフルっちが納豆でベタベタとか、俺がいない間になにやってんだよ」


 僕は掴みかかってくる元春を「はいはい」と軽く受け流し、この納豆をそのままフルフルさんに渡したら、また大変なことになってしまうからと、タレを絡めた納豆を一粒、箸で摘み、それをそのままフルフルさんに食べてもらう。

 すると、フルフルさんはもっちゃもっちゃと口を動かしながらも首を傾げて、また一口、パクリと納豆を頬張り。


「悪くはないんじゃない。なんか普通の豆って感じ?」


 ファーストインパクトの所為で食わず嫌いなところもあったとは思うのだけど、そのコメントから察するに気になる臭いも消えて食べやすくなってるって感じかな。


「ってことは、やっぱり植物かそうじゃないかって感じ?」


「特定は難しそうですね


「とりあえず、そのままだと食い辛いのに片っ端から浄化をかけてきゃいいんじゃね」


「それしかないか」

◆次回投稿は水曜日の予定です。

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