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変態

◆前回の続きというか、書ききれなかった部分で、短めです。

 義姉さん達が戻ってきたところで、元春がゲットした権能の確認といこう。


「あはは、変態とかアンタにピッタリじゃない」


「ちょっ、志帆姉、笑い事じゃないっての」


「それでどんな効果なのよ」


「さぁ」


 そう言って肩をすくめると、義姉さんが少しポカンとした後、こう聞いてくる。


「虎助のメガネで見れないの?」


「眼鏡っていうと〈金龍の眼〉?」


「名前は知らないけど、アンタが鑑定の時なんかに使ってる虫眼鏡みたいなヤツよ」


 虫眼鏡というのが表現として正しいのかと言われるとやや疑問は残るが、義姉さんが言っている眼鏡はおそらく〈金龍の眼〉で間違いないだろう。

 ただ、〈金龍の眼〉などにおける鑑定というのはあくまで物品などに限定したものであって、

 他人のステイタスを見るような力はないのである。

 だとしたら、どうすればいいのかと頭を捻る義姉さんや元春に、マリィさんがゆさりと手を上げ。


「あの、虎助達にはこの実績がどう見えていますの」


「ん、どう見えてるって――」「どういうことなん?」


 どこか意味の通じないその言葉に首を傾げる元春や義姉さんの一方で、僕は以前にも聞いたこのフレーズの意味に気付く。


「そうか、僕達は日本語で変態を把握しているから」


「成程、そういうことね」


 ということで、マリィさんにどういう言葉なのかを説明してもらったところ、その変態は姿形を変える意味での変態という言葉のようで、


「つまり、メタモルフォーゼ的なことですね」


「ですの」


 英語の意味で通じるならそういうことなのだろう。


「って、それ、夢の能力じゃね」


 喜ぶ元春にどこか不機嫌な義姉さん。

 ただ、ここで義姉さんと一緒にディストピアに潜っていた鈴さんが顎に指を添え。


「だけど、人間が変身なんて、そんなことが可能なのかい?今までのそれと毛色が違うような気がするけど」


 たしかに、それが巨獣や神獣などから得られるようなレアな権能と言ってしまえばそれまでであるが、実績に付随する権能というものは、基本的に持ち主の潜在能力を拡張していくようなものである。


「意識的に使えないの?」


「うん、使ってみればいいんじゃない」


「そう言われてもなあ」


 故に、それが特別なものだとしたら、自分自身の力でどうにかなるんじゃないかと元春に確かめてもらうのだが、やはり漠然と使えといわれて使えるものではないようで。


「手本になるようなもんがあれば違うんだろうけどな」


「変身の魔法とかってないの?」


「そういう魔法はかなり特殊な才能が必要になりますから」


 データベースにも幾つかあるのだが、その殆どが上位とされる魔法ばかりで、その属性魔法が得意という前提があってこそのもので、単純に変身というなら、フェアリーベリーやそれを原料に現在試作しているヴェラさん専用の人化薬などがあったりするのだが。


「そういえばハイエストの何人かは獣人に変身してたか」


「ハイエストって、なんかその名前も久しぶりに聞いたわね」


 義姉さんがはじめてハイエスト遭遇したのもそんなに前のことじゃないのだが、その後、いろいろイベント事があったから、すっかり記憶の彼方になってたのかな。


「で、ソイツ等はどうやって変身してるの?」


「あの人達の場合はそういう一族だったからって感じになるのかな」


 彼らはいわゆるライカンスロープなどと呼ばれる一族という括りで、純然な才能によって獣人化とも呼べる力を使っていた。


「ソイツ等も変態持ちだったとか」


「たしか、そういう権能は持ってなかったと思うけど」


 隠し持った能力があると面倒事になるかもしれないからと、捕縛したハイエストの超能力者には強制的にステイタスカードを使ってもらったのだが、【変態】という実績はなかった筈だと、

 データを引き出してチェックしてみると。


「この【ライカンスロープ】の中にある〈覚醒〉っていうのがそうかな」


「しかし、このステイタスの持ち主は【見習い拷問官】だの【見習い暗殺者】だのと随分と物騒な実績を持ってるね」


「でも、両方見習いとか」


「僕もちょっとだけしか、関わっていないんですけど、いろいろな意味で、そういう実績を持っていてもおかしくないような人間でしたよ」


 救援要請を受けて杏さんを助けた時は襲われる寸前だったし、

 それ以前に被害を受けた杏さんのお姉さんも、いまはすっかり回復したけど、この男の所業によって片手足を失ったいたのである。

 ちなみに、元春のツッコミにあった見習い云々の話は、たぶんあの群狼という男が自分の能力を過信して、人を舐めていたのが原因なのではないだろうか。

 実際、彼もあの影の狼を除いた実力はそれほど高いわけでもなかったのだ。


「こんなヤツ、捕まえた時に処しておけば良かったんじゃない」


 相変わらず義姉さんは容赦がないけど。


「引き渡す前に母さんがいろいろとやってたから、次はないと思うよ。あと、物理的にもそういうことができないようにしておいたから」


「ふーん、それならいいけど」


 ということで、群狼に関する話はこれで終了。


「結局、俺はどうなるん」


「うーん、【変態】は、たぶん生来得られる【ライカンスロープ】なんかと違って後付けの権能だから、あんまり大きな変化はないと思うんだけど」


 幻影などはともかくとして、肉体そのものを変化させるのは、いくら高い実績を得たとしても難しいと思うので、

 あるとするなら、長年同じものを作り続けた職人さんの手の皮の一部が厚くなったりするような、そんな変化くらいじゃないかと、僕なりの予想を語ったところ。


「でも、変態っていうなら虫とかみたいに変わったりしないの?」


 成程、芋虫が蛹になって蝶になるみたいに元春も――、


「ちょっと巡、変なこと想像させないでよ」


「さすがの俺も人外になるのはちょっと勘弁っすよ」


 ある意味で納得できてしまう巡さんの想像に、義姉さんと元春がそれぞれに別のツッコミを入れ。


「とりあえず、後で万能薬でも渡しておくよ」


 元春がいきなり別人になってしまったら、千代さんだってビックリしちゃうだろうし」


「てか、そんなんで大丈夫かよ」


「とりあえずの対処法としてだから」


 どこまでが有効なのかはわからないけど、なにかしらの状態異常が起こった時に一番頼りになるのは万能薬である。


「それで、義姉さん達はどうする? 一応、挑戦するつもりだったみたいだけど」


「もちろんやるけど、あんな実績取れるのなんて元春くらいなもんでしょ」


「だよね~」


「まあ、直接本体を叩いた虎助君がそれを得ていないということだから」


 ということで、義姉さん、巡さん、鈴さん、玲さんの四人はそのままドッペルゲンガーのディストピアに挑み、無事に攻略。

 ただ、その際に獲得した実績に変態がなかったことだけは記しておこう。

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