●名も無き特殊部隊の秘密訓練2
◆荒い出来になってしまったかもしれませんがご容赦を。(いつものことかもしれませんが)
結局、教官の声に押し切られるように教官の息子さんこと虎助君と戦うことになってしまった私達。
しかし、一対一ではまるで歯が立たず、あまりの体たらくに教官からの提案で三人でかかっていってもいい事になったのだが、それでも勝てなくて、
自信もプライドも粉々に砕かれて、頭と胴が切り分けられた隊員達が、知らない間に用意された机の上の座布団に木魚のように並べられていく。
一方的な展開は留まることを知らず、最後に隊長がやられ、晒し者状態になった私達の注目を拍手で集めて教官が言う。
「さて、みんな自分の実力は分かったかしら。でも気を落とさないでね。いま虎助がやったのは知ってる者と知らない者との差を見せつけただけだから、魔法があったらもう少し善戦できると思うわよ」
そして、聞かされた内容は衝撃の事実だった。
教官は今いるここが異世界で魔法が誰にでも使える技術なのだというのだ。
そのシンプルかつ端的な話は、にわかには信じられないものだったが、こうして首一つになっても生きている状況を見せられては嘘と断じることも難しい。
もしかすると教官は手っ取り早く魔法の存在を知らしめる為にこんな事をしたのではないか。
そんな風に考える一方で、この場において、唯一五体満足である八尾さんが教官を睨み付けながらも言う。
「ここでその訓練を受けたならアンタに勝てるようになるのか」
あれだけ打ちのめされてもまだ闘争心を失わないその姿勢には感服するけど、そんなことを言ったらまた何をされるかわかったものじゃない。八尾さんの発言に隊員の多くが顔を青くする中、教官は本当に楽しそうに笑い。
「たぶん無理なんじゃないかしら。君達と私達とじゃ始まりが違うからね」
瞬間移動でもするかのような素早過ぎる動きで八尾さんの前に立った教官は続けて、
「純粋な格闘技戦ならもしかすると八尾君にも勝てるチャンスはあるかもしれないけど、なんでもありの戦いになったら勝つのは絶対私達だから」
いや、いまの動きを見ただけでも格闘戦ですら勝てないように思えますけど。
やけくそ気味なツッコミを心の中で入れる私のとは違い、思慮深い隊長は教官の言い回しが気になったのだろう。遠慮がちにも訊ねかける。
「教官、なんでもありの実戦というのはどういった意味でしょう」
すると教官は軽く腕を組み。
「一番わかりやすいのは毒かしらね。最近で言うとウィルスや細菌兵器がそうなんだけど、私達は子供の頃から色々な毒をを少量ずつ体に取り込んで免疫を鍛えているから、毒が効かない体になってるのよ。だから、例えば毒ガスや細菌兵器なんかを使われた戦場でも自由に動き回れるわけ。君はそんな私達に何でもありになった戦場で勝てると思う」
「あの、それって忍者とかがやる修行法ですよね」
私は思わず口に出して聞いていた。
しまった!!と後悔するも時既に遅し、教官は私の質問を聞くや、音もなく歩いてくると更なる爆弾を投げ落としたのだ。
「そうね。だって私達は忍者だもん。それに私もまだ修行中の身なのよ。これからも強くなっていくから、そこのところも考慮してほしいわね」
愕然とする私達。自信満々で忍者を自称する事もそうなのだが、何よりも、教官がまだまだ強くなるというのが信じられなかったのだ。
だが、そんな衝撃発言も息子さんである虎助君にとってはいつものことなのかもしれない。
「すいません。そういう人ですから諦めてください」
本当に申し訳なさそうに頭を何度も下げながら、「エレイン君です」と紹介されたゴーレムに手伝ってもらいながらテキパキと頭と胴をくっつけてくれる。
途中、切り離されても感覚が繋がっているみたいで、一部の隊員が、不意に敏感な脇腹を抱えられて、思わず暴れてしまうなどというハプニングがあったものの、どうにか全員無事な姿を取り戻し。
「大丈夫ですか?違和感とかありませんか」
「ああ、ありがとう。問題無い。それよりも教官の言っていることは――」
心配そうにしてくれる虎助君に、隊長がそれどころではないと、しかし、教官の問い質すような行為ははばかられると、奥歯に物が挟まったような口調で訊ねると、
虎助君は苦笑いを浮かべながらも、
「本当ですね。実際、調味料代わりに毒なんかを入れてきますので、母さんが食事を作ろうとしたら要注意です。一度、友達が僕の弁当を食べちゃって生死の境をさまよったりもしましたから」
というか、そんな大事件がうっかりで済ませちゃうんなんて――、
なんで報道されなかったの?とか、その被害者はどうなったの?とか、気になることは多々あったのだけれど、それが口を突いて出る前に、教官が「はいはい、余計な詮索は命を縮めるわよ」と物騒な言葉でみんなの注目を集めて、
「それよりも今は君達の訓練が先でしょ。加藤さんにも頼まれたし、なんか物騒になってるからね。君達には魔法を覚えてパワーアップしてもらいます。そして、その講師は私の息子の虎助が担当します」
「え、僕が皆さんに教える役なの?」
最後になって突然講師を任命された虎助君が素っ頓狂な声を上げる。
私達も虎助君が呼ばれたのはお手伝いとして――とその程度に思っていたのだが、どうも教官は教官で教える相手がいるらしい。
「私も直々に鍛えてあげたいのはやまやまだけど、頼まれているのはこの子達だけじゃないからね。それに初心者に魔法を教えるなら虎助の方が向いているでしょ。夏休みで暇なんだからバイトと思って頑張って」
バイト感覚で戦闘訓練の教官だなんて馬鹿げた話にも聞こえてしまうが、虎助君の実力は体験済みだ。今更、異を唱える人なんてこの隊の中にはいないだろう。
「でも、向こうで使い物になるくらいの魔法使いを育てるとなると、普通にやって半年くらいかかるんだけど」
よく分からないけど、半年で魔法を覚えられるならそれは短いんじゃないかな。私なんかはそう思ってしまうのだが、
「別にしっかりとした魔法を覚えさせなくても大丈夫よ。そもそも向こうは魔法が使いにくい環境なんでしょ。だから、多少手荒になってもいいから。一ヶ月でこの中の何人かが使い物になるようになればいいと思うわ」
手荒って、息子である虎助君に実銃を持った兵士と殺り合わせようする教官が言うといい予感がまるでしないんですけど。
しかし、虎助君の反応はあっさりとしたもので、
「それでディストピアを使おうって言うんだね。確かにあそこなら、最悪、死にはしないけど。何回も殺されるようだとトラウマだったり、死ぬことへの危機感が薄れちゃったりすると思うんだけど」
何回も殺される?虎助君から飛び出した物騒な発言に隊員たちの間からざわめきが起こる。
と、そんな私達の反応に虎助君は慌てるように手を振って、
「あ、大丈夫ですよ。いま言った通り、殺されますけど死にはしませんから」
殺されるけど死にはしない――って、ますますもって意味が分からないんですけど。
だが、詳しい説明を求めようとする私達に先回りするように教官が、
「多少のリスクは承知の上よね」
「いや、母さん。リスクってディストピアにそんなのはないから」
そして明かされたディストピアという場所の真実は、
曰く、この異世界には仮想現実のような空間があって、そこに存在する魔獣なる敵を相手に魔法などの特訓が行えるとのことらしいのだ。
「強いていうなら死ぬ時に死ぬほど痛かったりするだけで実害はありませんから」
あの、実害が無いって、死ぬ時に死ぬほど痛いって時点で既に相当なリスクだと思うのですけど……。
そんな私の心の声を表情から読み取りでもしたのか、虎助君は困ったなぁとそんな苦笑を零して。
「取り敢えず、装備さえしっかり整えておけば滅多なことがなきゃ死にませんから」
「そうかしら、志保ちゃんは随分あっさり殺されてたみたいだけど」
楽しそうに茶々を入れてくる教官を虎助君は恨めしそうに睨んで、
「ベル君お願い」
一体だけ色の違うゴーレムに声をかける。
すると、その緑色のゴーレムはおおきくひらいた口の中から、いかにもファンタジーですといばんばかりの武器や防具、ゲームで言うところのアクセサリに該当する装備だろうか指輪やネックレスの類、後は色とりどりの液体が入った瓶に宝石のようなアイテムと、現代日本人から見ると怪しげにみえる物品を私達の首が置かれていた机いっぱいに広げたのだ。
そして、
「では、お好きな装備を選んでください。気になるものがあったらお答えしますので」
虎助君はこう言うけど、どうしたらいいものか。まるでゲームに登場するようなアイテムにさすがの隊長も面を食らっているみたいだ。
ならばここはそっち方面の知識に長けた私が――と手を上げる。
「あの、教官が持ってきてくれた(らしい)銃火器やプロテクターなどではダメなんですか?」
「相手が相手ですからね。時間があったら皆さんの装備を強化なんてこともできるんですけど、全員分ともなるとさすがに時間がかかりますので……」
そこまで言って教官をチラリ見る虎助君。そして、
「無理にとはいいませんが、せめて魔法効果が付与された防具の類は持っていっても損はないと思いますよ」
「魔法効果と言いますと」
「今から戦うスカルドラゴンは闇属性のブレスを使ってきますからね。皆さんが付けるようなプロテクターや防弾チョッキでの防御は難しいかと、それに攻撃という面でも、実銃より、それに特化した武器の方がたたかいやすいかと」
たしかに、相手がアンデッドというのなら銃はあまり役に立たないか。
まあ、現代モノの対ゾンビゲームなんかでは普通に銃なんかを使っていんだけど、ヘッドショットでゾンビが倒せるなんて話はあくまでゲームの設定であって、それがドラゴンってなると銃よりも剣の方が……って――、
「ちょっと待ってください。いま、ドラゴンって言いました?」
「はい」
「私達が戦うのってドラゴンなんですか!?」
言いながらも声が裏返る。
「ドラゴンと言っても実物のドラゴンじゃなくて幽霊みたいなものですけどね」
「それでもドラゴンなんですよね」
質問を重ねる私に虎助君は申し訳無さそうに「はい」とバツが悪そうに笑う。
その顔を見る限り、嘘や冗談で言っている訳ではなさそうではある。
あるのだが、
「その、私達、ドラゴンなんかに勝てるんですかね?」
「さっきも言いましたけど、相手は幽霊みたいなものですから、装備と作戦次第で勝てるかと」
つまり、そのスカルドラゴンという相手にはゲームにありがちな弱点があり、ここに並べられた武器が弱点を突くものであると。
真面目な隊長や体育会系の八尾さんは私達の話についてこられないのか、今の話しにも首を傾げるばかりだけど、ゲームなどに触れたことのある隊員は彼の言葉を、私と同じくそんな風に噛み砕いたみたいだ。
「あの、因みにさっき言っていた魔法の付与効果というのはどういうものなんです?」
「このポーションみたいな薬とか宝石のようなものはどうやって使うんですか?」
「魔法の使い方ですが、ラノベみたいに詠唱とか魔法陣みたいなのがあるんでしょうか?」
虎助君と私の会話を聞いて、ある者は真剣に、ある者は目を輝かせて、ある者は必死の形相で虎助君に質問を飛ばしていく。
そして、並べられた装備品、魔法の道具の使い方、各種消耗品の説明を受けて、それぞれが使ってもいいと思える武器や防具、アイテムを確保したところで、全員にとある一枚の紙が配られる。
「では、最後にこれにサインをお願いできますか」
そこの書かれていた文言は、バンジージャンプの前に書かされたりすることでお馴染みの『何があっても自己責任』という誓約書であった。
「あの、これは?」
「はい。これから行くディストピアという場所に危険が無いことは実験で確かめているんですけど、万が一の為にですかね」
まさにバンジージャンプなどと同じく、不測の事態に陥った場合に責任は取れませんよという確認をするための書類だったらしい。
正直、それを聞いてしまうと二の足を踏んでしまいそうになるのだが、
ニコニコと無言のプレッシャーをかけてくる教官の手前、署名しない訳にもいかないだろう。
私達が大人しくその書類にサインをしている間にも虎助君は、何やらSFじみた仮想ウィンドウのようなものを呼び出したかと思いきや、幾つかの操作を行い、やってきた緑青色のゴーレムに声をかけ、その口の中から一振りの小剣を用意させる。
すると、その小剣を見た教官が首を傾けて、
「あら、コレ。この間、私達が倒したドラゴンの剣とは違う剣よね」
「初心者にフォレストワイバーンは厳しいかなと思ってね。今回はスカルドラゴンにしたんだよ」
「スカルドラゴン?そんなの前にはなかったわよね」
「うん。フォレストワイパーンのディストピアはエルブンナイツなんて凄そうな肩書を持ってる人でも現実逃避するくらいの難度みたいだからね。もう少し軽めのディストピアができないかってソニアに頼んだんだよ。そしたら、死霊術を使った下位の龍種のディストピアを作ってくれたんだ」
「ふぅん。あれよりも簡単なディストピアかあ。でも、ドラゴンはドラゴンよね。暇ができたら私も戦ってみたいわ」
よく分からないけれど、以前にもっと強いドラゴンと戦わされた人がいたみたいだ。
そう考えると私達はまだラッキーな方なのかもしれない。
だけど、教官の口ぶりから察するに、教官はそのドラゴンを倒してしまったみたいである。
規格外な人だとは思っていたけれど、まさか、ドラゴンにも勝つ人だなんて、しかも、新しいドラゴンがいると知るや戦うのを楽しみにするなんて、本当にどういう人なの教官は――。
改めて、私達は大変な人に教えを乞う立場になってしまったのではないか。親子の会話にいろいろと考えさせられつつも、私はサインをした書類をベル君だったかしら緑色のゴーレムに提出。
ついにそのドラゴンに挑むことになる。
「では、準備が完了した人から順番に、一人づつこの剣に触れていって下さい。あ、移動したらそこから動かないでくださいね。敵に殺されても実際に死ぬことはありませんが、痛みはきちんと存在していますからね」
紫色の小剣の前に集められた私達に虎助君から最終的な指示が飛ぶ。
心構えをする余裕もなく、まず初めに隊長が小剣に触れて光の粒と消える。
「大丈夫ですよ。どんどん移動してください」
流れ作業で一人また一人と消えていく同僚たち。
そして、ついに私の順番となる。
「緊張することないですよ」
微笑む虎助君に促され、私が小剣に手を伸ばしたその刹那、世界が変わる。
目の前が眩い光で覆われて、次に見た光景を一言で言い表すなら廃都の入り口。何処ともしれない空の上に浮かぶ巨大な門の前にいた。
周囲は断崖絶壁、遠く見える空には暗雲垂れ込めている。絶海の孤島ならぬ。絶空の伏魔殿。そんな雰囲気の建物が空に浮かんでいた。
と、私がそんな現実離れした光景に見とれている間にも全隊員の移動が完了したようだ。
最後に虎助君がやって来て、
「さて、皆さんの訓練相手は建物の中です。さっそく行きましょうか。 ああ、因みにになりますが、この場所は安全地帯になっていますから、危ないと感じたら逃げ込むのもアリですよ。 では改めて行きましょう」
気負いのない声に押されるように入った建物内部はコロッセオのような円形闘技場になっていた。
学生の頃、卒業旅行で行ったイタリアのコロッセオは闘技場部分が崩落していたが、こちらは砂が敷き詰められたバトルステージが健在のようだ。
そして、バトルステージの中央、不自然に設置してある恐竜の骨格標本が私達の訓練相手か。
「あれが皆さんの修行相手であるスカルドラゴンです。皆さんで倒せるようになって下さいね」
「あの、それだけですか?」
ペコリと一礼。仕事は終わったと立ち去ろうとする虎助君を隊長が慌てて引き止める。と、
「え、ええと、入る前にも説明した通り、アンデットなので何人かの方が持ってきて下さった銀製の武器が効果大です。あと、魔法は使えば使うほどに魔力が上がり、使用方法も体が覚えてくれますからじゃんじゃん使っても大丈夫ですよ。因みにさっきも言いましたがここなら何度死んでも生き返ります。過信は禁物ですが、その辺はご安心を――、もしも無理だと感じたら入り口のちょうど真逆、あそこに見える出口の先にある魔法陣から脱出できるようになっていますから」
虎助君は指折り数えるように要点を繰り返した後、「そんなところでしょうかね」と独りごち、改めて私達を見回してそれ以上の質問がないことを確認すると、「うん」と頷き、スタスタと紫色の骨格標本に近付いてそのひざ小僧をノックする。
そして、
「では皆さん。頑張ってくださいね」
今度こそと出口と言っていた場所に向かって歩き出す。
だが、そんな虎助君を追いかける存在がいた。そう、動き出したスカルドラゴンだ。
ガシャンガシャンとその大きな体の向きを変えたスカルドラゴンが出口へ向かう虎助君に襲いかかる。
危ない!!
反射的に持ってきた銃を構える私と隊長。
しかし、攻撃の必要はなかったみたいだ。
打ち下ろさんとされる骨の巨拳は突如として現れた氷壁によって防がれたのだ。
一発、二発。そして紫色の火炎放射と、スカルドラゴンの攻撃を受け止めた氷壁が砕かれる。
しかし、そこにはもう虎輔君の姿はなかった。
おそらくは入る前に説明されたディロックという魔法の道具だろう。巨大な氷壁を使い捨てにし、出口までの移動時間を稼いだのだ。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!」
どこから発せられる咆哮なのか、虎助君という獲物を失ったスカルドラゴンがゆっくりとこちらに振り返る。
スカルドラゴンは動き出す前に私達の姿を確認していたのだ。
虎助君を襲った理由は一番最初に触れたからだろう。
しかし、スカルドラゴンは虎助君の姿を見失った。
ということは、つまり、ターゲットが私達に移った訳だ。
怒り狂ったように唸り声をあげるスカルドラゴンの口内が紫色の炎で満たされる。
そして、
「ヤバイ。ブレスです!!」
誰かが反射的に叫んだ直後、紫色の炎が私達に襲いかかる。
そのスピードは不意に突っ込んでくる自動車なんかよりも断然早く、私達は避ける暇なく紫のブレスに飲み込まれてしまう。
しかし、ブレスの被害を最も受けたのは前列にいた隊員ではなくて、虎助君の注意を真に受けずロクな装備を身に着けてこなかった隊員だった。
炎に巻かれた隊員が「熱い」「冷たい」と転げ回り、数秒、光の粒となって消えてしまう。
たぶん今のが虎助君が言っていた殺されても死なないというヤツなのだろう。
一方で、魔法効果によってブレスから逃れた幾人かの隊員が、殺されてたまるかとばかりに発砲。反撃に出る。
しかし、放たれた銃弾は、スカルドラゴンの巨体にぶつかり甲高い音を鳴らすだけで、特にダメージを与えたようには見えなかった。
銃なんて役に立たない。アンティークな剣や槍を勧めた虎助君の意図が理解できた。
そして絶望的な戦いが幕を開ける。
銃を投げ捨て、剣を取り、私達はあの炎を吐く巨大な骨の塊に立ち向かわなくてはならないのだ。
魔法の道具の使い方は教わった。しかし、この混乱の中で冷静に使えることなどできようか。
それでなくとも私達は魔法初心者なのだ。
少しでも隙を見せたら、容赦なくブレスが襲いかかってくる色々と考えている余裕もない。
残された手段はただ剣を取り、目の前の敵に対応するしかなかったのだ。
ギシギシカタカタと振り回される骨をかいくぐって攻撃を仕掛ける私達。
しかし、初めて戦う巨大な敵に、一人、また一人と、巨大な拳で、その爪で、あるいは熱くて冷たいその炎で屠られていく。
そして、最後まで残ったのは私と隊長と八尾さんとあと一名の隊員だった。
「ハハッ、俺等にアレを倒せってか。無茶すぎんだろ」
迫りくる巨大な骨格標本を前に八尾さんの乾いた笑いが虚しく響いた。
◆特殊部隊の皆さんの活躍はここでいったん放置プレイ。かつての志保と同じくオートモードでのレベル(魔力)上げとなります。
因みにスカルドラゴンに触れて初めてミッションスタートという仕様は、カーバンクルのディストピアに潜った元春の物言いから付け足されたギミックとなります。(つまり、ディストピアは初期に作った作品であればある程、レトロゲームのような理不尽空間になっているのです)




