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聖騎士その後

◆短めです。

 それは、アビーさんとサイネリアさんとフラッシュバンの実験をした日の午後のこと、

 珍しく賢者様からの念話通信が飛んできたので、魔法窓(ウィンドウ)を開いてみると、そこには賢者様にアニマさん、ホリルさんにナタリアさん、そしてアンドロイドのプルさんと、賢者様の研究室のメンバーが勢ぞろいで、


『虎助、忙しいとこ悪いが、いまちょっといいか』


「構いませんよ。なにかありました?」


 これといって特に心当たりはないのだが、あえて万屋に顔を出さず、念話通信を使って連絡をつけてきたことから、なにか急ぎの用事があるのだろうと訊ねたところ、賢者様の方から幾つかのデータが送られてきて、


『神秘教会の騎士につけた貞操帯の反応が一個消えてんだよ』


「それは――、

 こっちでも確認します」


 賢者様に断りを入れて調べてみると、たしかに、先日、賢者様の拠点近くに入り込んできた神秘教会の騎士達につけた〈息子殺しの貞操帯〉の一つの反応が消えていた。


 ちなみに、その装備主は特に役職のない一般騎士のようで、


「殺された?」


 ここで会話に加わったのは玲さんだ。

 神秘教会とは浅からぬ因縁がある玲さんとしては、賢者様からの報告は気になる内容だったみたいだ。


「直前まではしっかり健康体だから、殺されたってことは無いと思います」


 ただ、彼等につけた息子殺しの貞操帯には、通信が可能である限り、装備者のバイタルサインを賢者様の元に送る機能がついている。

 賢者様から提供されたそのデータを調べた限りでは、通信が途絶えるその直前まで、多少の脈拍の上昇は見られるものの、装備者が平常状態であったことが記されていて、

 その兵士が一瞬で消滅させられたとかでなければ、死んだということはないだろう。


『ということは、モノを壊されたってのが一番の可能性か』


「結構丈夫に作ったつもりなんですけど」


 彼等につけた貞操帯は、戦いの後に回収した鎧の金属の量を計算、工房にストックしてあった同量の下位魔法金属を使って仕上げたものなので、そこらの工具では歯が立たないくらいの耐久力はあった筈なのだ。

 さらに、それを壊そうとすると装備者に強烈な罰が降されることになっていたのだが、直前のバイタルを見る限り、それもなかったようで、

 それら情報を鑑みると、


「なにか特殊な方法で壊されたか、外されたってことになりますかね」


『まあ、無駄に歴史の長い(・・・・・・・・)神秘教会(アイツ等)なら変なシェルの――、

 いや、魔導器とかの一つや二つもっていそうだが』


『そうなると他も壊される感じになるの?』


 賢者様に続いて語尾のトーンを上げたのはナタリアさん。

 たしかに、彼女の言う通り、壊せるとわかれば壊すことが当然であるが、


「いまのところ、反応がなくなったのはこの一つだけなんですよね」


『そうなると、反応が無くなったのは偶然?』


 その可能性もあるにはあるが、


「どうなんでしょう。反応は同じ場所に騎士達が集まっているようですし」


 これが貞操帯の除去の為に集められているのだとしたら、偶然と捉えるのは難しく。


『やっぱり実験台とかそういう感じかしら』


『それならなんで、他に解除されるヤツが出ねぇんだ』


『解除した後の仕掛けを警戒してるとか、それをするのに時間がかかるとか』


 ただ、これ以上は相手の動きを見てみないことには判断できないと、しばらくモニターを続けることになり。


「ちなみに、この騎士達が集まっている場所がどんなところなのかわかります?」


 魔法技術にせよ地球にも勝るほど発展しているだけあって、現地の詳細な地図はすでに手に入れている。

 それと照らし合わせて見れば、どこの街のどんな場所にいるのかはわかっているのだが、騎士達が集められている場所には大学があるだけで、特に特別な場所ではないようであるが、


『ティアマト機関だろうな』


「ティアマト機関?

 なんすかそのかっちょいいの」


 いかにもな名前の登場に大興奮するのは、午後になってお店にやってきた元春だ。


『この大学は神秘教会との繋がりがあってな。研究機関が大学の中にあるんだよ。

 たしか、あそこは魔導器(レガシー)の研究が盛んだったな。これは決まりか』


 成程、その内容を聞く限り、騎士達が集められているのにも納得だ。


「しっかし、ティアマトなんて意味ありげっすね」


『うん? 元春少年なんか知ってるのか』


「いや、ティアマトってのは俺等の世界で有名なドラゴンの名前なんすよ。

 あと原初の女神』


 原初の女神?

 ドラゴンの方は知っているけど、女神の方は初耳だとインターネットで調べてみると、どうも僕達が知っているドラゴンの姿というのは、実は神話の記述にはないものらしく、世界創造の際に女神がとった異形の姿を『大洪水を起こすドラゴン』として表現されたことによるものだったみたいだ。


 そうなると、確かに元春の言う通り、なにかしら因縁めいたものを感じなくもないのだが、


「翻訳の関係でそうなった。同一の神なのか――」


『召喚なんて魔法があるくらいだし、繋がりがあるってこともあるかもしれないわね』


 たしかに、これはナタリアさんの言う通りだと、これに関しては、あとでソニアにも意見を聞いてみるとにして、


「こっちから中継機と蒼空とネズレムを送りますので大学内を調べてみますか」


『そうだな』

◆設定ありありなお話は文章量の割にどうしても時間がかかってしまうんですよね。

 考える分には楽しいんですけど……。


◆次回投稿は水曜日を予定しております。

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