表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

652/847

旅行の計画

 それはある日の帰り道、携帯で旅行サイトを見ながら歩く元春に「危ないよ」と注意をしつつも、僕がそのサイトのアドレスを後で教えてくれるように頼んだところ、元春が顔を上げ。


「おっ、今回は虎助も参加か?」


「ううん、年末に義父さんと母さんに旅行をプレゼントしようかって話があるから、その参考にしようと思って」


「親に旅行をプレゼントするとか実在の話だったんか」


 まあ、僕くらいの年齢ではあんまりないとは思うんだけど、あぶく銭――といったら語弊があるか、思わぬ収入があったらそうする人は多いんじゃないかな。


「それに、この件は義姉さんも協力してくれるから」


「志帆姉まで協力すんのかよ。なにを企んでんだ?」


 企んでるって、さすがにそれはちょっと酷いかな。

 元春からしてみると、義姉さんがお金を出すことか、母さんに何かをプレゼントすることに驚きがあるかもしれないのだけれど、そこには特に裏もなく。


「義父さんを喜ばせたいだけだと思うよ。

 今年はずっと忙しくて、夫婦で何かをするって機会が少なかったから」


 ビッグフットの件もあって仕事が立て込んでいた義父さんと、どこからか押し付けられた教育係に忙しい母さん。

 義姉さんも仕事をするようになって、すれ違い気味の二人に気を使ったのだろう……多分。


「志帆姉って、文句とか言う割にそういうとこ義理堅いよな」


「だよね」


 実際、義姉さんはあれで気遣いしいな人なのだ。

 まあ、それが義父さん以外の男性(・・)に向けられることは殆どないのだが……。


「んで、なんか計画とかあるん?」


「適当に温泉とか考えてるけど」


「イズナさん、温泉好きだもんな」


 ブートキャンプの傍ら、温泉などに浸かってるなんてことはままあることで、僕もそれに習って温泉旅行でもと考えていた。

 ただ――、


「けどよ。いまから調べても年末とか予約とれねーんじゃね」


「やっぱり難しい?」


「そりゃそうだろ。この時期となると有名所はほぼ全滅だろ」


 なんとなくわかっていたものの、改めて聞かされるとやっぱりかとそう思わざるを得ない。

 ちなみに、元春がどうして年末の旅館事情に詳しいのかといえば、長い休みにはよく遠出をするからで、意外にもこの友人は企画した側の役割だからと、宿の手配から移動手段の確保を――まあ、こっちは知り合いの先輩に頼ることが多いのだが――と、しっかりと計画を立ててくれ、この時期にホテルの予約状況などをよく知っていいたりするのである。


「なんでもっと早く決めてなかったん」


「それなんだけど――、

 母さんも義父さんも急なスケジュール変更とかよくあるから、確実に暇な日とかの確認がとれなくて」


 今回の計画が文化祭が終わってから何気なく思いついたものってこともあるのだが、義父さんも母さんも突発的なトラブルでスケジュールが大幅に狂ってくることがよくあるから、長期の計画た立て辛く。


「ああ、十三さんは海外――、

 イズナさんもここ一年くらいずっと忙しかったもんな。

 ウチのおふくろもイズナさんと休みが合わねーって嘆いてたぜ」


 僕と元春が長い付き合いであるように、母さんと千代さんとの付き合いも長く、休みが会う時はちょくちょく買物なんかに出かけていたりしている。

 しかし、そんな千代さんですら、母さんとスケジュールを合わせるのが難しいというのだから、年末まで仕事が詰まっている二人のスケジュールを合わせることが難しいのは言わずもがなで、


「ちなみに、ビジホとかだったら次郎に頼めば取れると思うんだけどよ」


 確かに、アイドルのコンサートの関係で、すぐに止まれるような場所も探せるネットワークを持っている次郎君なら、そういった宿泊所も探せるんだろうけど。


「せっかくの旅行だし、おちついた旅館とかに泊まって欲しいんだよね」


 宿泊場所の環境に関しては、僕の母さんは言うに及ばず、義父さんも世界各地を飛び回っているその職業柄、特にこだわりはないと思うのだが、せっかくプレゼントするのだから、いいところに泊まって欲しいというのが本音であって。


「そりゃそうか、つっても俺等じゃ、そういうとこの伝手はねーからな」


 この元春の言葉に頷きかけたところで、ふと思い出したことが一つ。


「なにか思いついたん?」


「実は前に魔女のみなさんが貸別荘をやってるって聞いたことがあって、

 そこなら、もしかして今からでも間に合うんじゃいかなって」


 魔女の技術でも稼ぐことは、表向きの職業を持っている。

 その中には山奥での貸別荘をやっているなんて話もあった筈だ。

 だとするなら、静流さんに――、

 いや、義姉さんを通じて佐藤さんに確認を取ってもらった方がいいと、魔法窓(ウィンドウ)を開き。


「しかし、魔女の別荘か。なんか凄そうだな」


「佐藤さんの家と一緒で、いかにもな古民家って感じらしいけど」


「へーって、虎助、佐藤さん家に行ったことがあるん?」


「前に義姉さんがハイエストのメンバーとかち合った時に呼ばれてね」


 それは義姉さんが魔女の工房跡を調べていた時のこと、

 遭遇したハイエストのメンバーと戦いになって、その処理に困った義姉さんから呼び出されたことがあったのだ。

 その時に佐藤さんのお家にお邪魔したことがあって、


「どんな感じなん?」


「一応、こんな感じかな」


 と、見せるのは、ちょうどいま義姉さんから送られてきたアドレスから開くことができる、魔女さん関連の貸別荘を紹介したサイト。


「なんか小洒落てんな」


「でも、駄目みたいだね。予約でいっぱいだ」


 そのサイトから予約の空き状況を調べてみたのだが、温泉があるところはほぼ全滅で――、


「ただ、仲間内で使ってるところなら空いてるのか」


「どんなんなん?」


 そんな元春からの声にちょっと待ってと、義姉さんというか佐藤さんが追加で送ってくれた写真とコメントを元春に見せてみると。


「なんつーか、俺のイメージしてたのんと違うな」


「そう? さっきの貸別荘とそんなに変わらない気がするんだけど」


「魔女のお姉様方が使う場所って聞いたからよ。

 もっと三角木馬とか、ラバースーツとか、バフォメットの像とかが置いてある感じだと思ってたんだよ」


 まったく急に真面目な顔をしたと思ったら何を言ってるんだか。

 と、白い目を向ける僕に元春は――、


「いや、だって魔女が泊まりに来たりすんだろ。そうすっとサバトが開かれるわけじゃん。エロエロエッサイムじゃん」


「あのさ。それ、僕達が知ってる魔女のみなさんとは別のグループのことだと思うけど」


 魔女狩りなどの資料と実際の魔女さん達の様子を比べるに、そういうことがあったという話は悪魔崇拝者というのが正確なところで、

 元春が想像しているようなことは、いまで言うところの新興宗教団体みたいなところがやっていたと思うというのが僕の見解だ。

 ただ、元春は諦め悪く。


「けど、そういうトコあるかもじゃん」


「まあ、元春が信じたいなら、そう信じていればいいんだけど。

 魔女の皆さん達の前で変なことを言わないでね」


 一応の注意を入れつつも、義姉さんに連絡。

 宿泊場所はそこでいいとして、後はその近くで観光できる場所があればと、元春に教えてもらったサイトで情報を集める僕であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓↓↓クリックしていただけるとありがたいです↓↓↓ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ