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●ハーフエルフの少女※

 このマオ視点の話で2章の終了となります。

 漫画とかでも過去編はあまり好きじゃないタイプですので、マオの過去話はあっさりめにまとめてみました。

 マオは両親の存在を知らない。物心付く前に魔獣がひしめく深い森の奥底に捨てられてしまったからだ。

 魔素が濃い森の中に赤ん坊が一人捨てられる。普通ならば死の運命しか待っていないだろう。

 しかし、マオはそんな森の中で幼少期を生き抜いた。

 どうしてそんな事が可能だったのか。それはマオは光の精霊に愛されていたからだ。

 いや、光の精霊だけでなく、火に風、水に土、闇に森と、堕ちた精霊として魔獣に数えられる妖精まで、マオはあらゆる精霊から愛されていた。

 日に数度は魔獣に襲われる環境にありながら、マオは精霊達に守られ、時には精霊達を助けながら共同生活を送っていた。

 僅かながらも知能ある魔獣はマオに跪き、マオもそんな魔獣達を可愛がった。

 そうして、精霊に、友情を結んだ魔獣達に、守られながらの幼少期を過ごしたマオは、精霊たちから魔法を習い、魔獣達と一緒の時間を過ごすことで、いつしかその森の主となっていた。


 原始的ながらも楽しい毎日――、

 だが、そんなある日、マオの運命を変える出会いが訪れる。

 森の中で怪我をして倒れるエルフを発見したのだ。

 マオは自分と同じ姿をしたそのエルフを得意の光魔法で癒やしてあげた。

 しかし、エルフから返ってきたのは感謝ではなく、侮蔑と恐怖の感情だった。

 分からない鳴き声(言葉)を吐き付け、逃げ去っていくエルフの後ろ姿にマオは落ち込んだ。

 良かれと思って助けたのに怒らせてしまうなんてと落ち込んだ。

 だが、しばらくして、そのエルフは戻ってくることになる。

 おそろいの姿をした者達を連れてマオの元に戻ってきたのだ。

 もしかして、お礼を言いに来てくれたのかも――などと淡い期待を抱いてしまうマオだったが、その淡い期待は裏切られてしまう。

 エルフ達はトテトテと遠慮がちに歩み寄ったマオを見付けると冷笑、軽くエルフ同士で会話を交わした後、小首を傾げるマオへと無造作に斬りかかってきたのだ。

 突然の凶行に戸惑うマオ。

 どうしていきなり斬りかかられなければならないのか。

 呆然とするマオに迫る凶刃。その刃がマオに届かんとしたその時、一人のドライアドがマオの前へと踊り出す。

 マオを庇ったドライアドは無残にも斬り捨てられてしまう。

 しかし、エルフ達の攻撃はそこで終わりではなかった。

 ドライアドほどの精霊ならば体が真っ二つになったとしても生きていける。

 まるで当然の報いだと言わんばかりに閃いたエルフの剣がドライアドを細切れにする。


 止めて!!


 マオが叫ぶも、その言葉は届かない。

 ずっと森で暮らしていたマオはエルフが扱う言葉を所持していなかったのだ。

 そう。マオがなぜ彼等が攻撃を仕掛けてくるのか分からかった理由――、それは、エルフたちが放つ悪意の言葉を理解できなかったからだ。


 そして蹂躙は始まった。

 マオを守ろうとする森の仲間にエルフたちが襲いかかる。

 どうにか許して貰おうと獣の言葉で必死に訴えかけるマオ。

 しかし、マオが彼等と同じ言葉を持っていたとしても、彼等がマオの叫びに耳を傾けることはなかっただろう。

 何故なら、彼等こそが、ハーフエルフでありながら精霊に愛されるマオを恐れ、マオを産み落とした母親からマオを奪い、マオをこの森に捨てた張本人なのだから。

 恐怖、嫉妬、嫌悪、侮蔑と、さまざまな感情をその怜悧な面差しの下に隠して、エルフたちは森の住人を害していく。

 それでもマオは諦めなかった。

 争う敵を味方を精霊から授かった魔法(チカラ)癒やし、助けていく。

 だが、そんなマオの行動は、森の賢人を自称するエルフのプライドを傷付けるだけだった。


「何故、私を助ける!?」

「不浄なる手で我に触れるな!!」

「貴様さえいなければ――」


 理不尽なプライドから、剣で、言葉で、マオを傷付けていくエルフたち。

 もしもマオが言葉を理解していたらどうなっていたことだろう。

 しかし、マオにそんな彼等の鳴き声に構っている暇はなかった。

 早く直さなければ手遅れになってしまうからだ。

 マオはその度に傷付き、マオを守ろうとする精霊たちも傷付いていった。

 だが、そんなマオの奮闘も次第に追いつかなくなっていく。

 争いが広範囲に広がり小さなマオには手が回らなくなってしまったのだ。

 徐々に増えていく怪我人にマオに決断が迫られる。

 即ち、誰を助けて、誰を助けないかだ。

 友達と襲いかかるエルフの集団。優先すべきは最初から決まっていた。

 マオはエルフたちを救うのを最小限に、森の仲間達の回復を最優先にしていった。

 すると、当然、争いの均衡は崩れていき、

 追い詰められたエルフたちは最終手段に打って出る。

 エルフ達はマオ達が暮らす森に火を放ったのだ。

 森を焼けば精霊達の活動は制限され、あわよくば魔獣の何体かも道連れに出来る。

 自らを森の賢人として称えるエルフが森を殺す。それは本来、禁忌に当たることだった。

 しかし、彼等は躊躇うことなくそれを実行した。

 その行動の裏側にあるのは、エルフ達それぞれに宿る愚かな自己愛だった。

 巻かれる炎の中で高笑いをするエルフたちの姿を見てマオは何を思ったのだろうか。

 それはマオ自身にもわからない。

 ただ、気が付けばいつもの森を荒らす怖いエルフの剣士達が消えていて、自分の為に怪我を負った精霊や魔獣達が元気になっていた。


 しかし、この事件がきっかけとなって、森が騒がしくなっていく。

 剣士に騎士に魔法使い。とある部族の完全敗退を聞きつけたエルフたちが軍勢を率いてやって来るようになったのだ。

 そんなエルフを相手にマオは力を振るっていく。

 怖がりながらも――、

 震えながらも――、

 森の皆の為に先頭に立って侵略者(エルフ)達の悪意に非がったのだ。

 やってくる敵の多さに自分がこの森から出ていけば――そう思った時もあった。

 けれど、仲間達はそれを良しとしなかった。彼等は彼等でマオのことを愛していたのだ。

 その頃からだろうか、マオは仲間達の為に貪欲に力を求めるようになっていった。

 ただしマオが求める力は何者の侵食にも負けない守りの力だった。

 マオは襲い来るエルフ達と同じ破壊者にはなりたくなかったのだ。

 マオは、守る力を磨き、癒す力を磨き、身勝手なプライドから襲いくるエルフ達から森を守っていった。

 そんな生活を続けること数年――、マオは魔王と呼ばれる存在になっていた。

 もしかしてコミュニケーションが取れれば誤解が解けるかも――と、覚えた言葉で、自分がそう呼ばれる存在になったのだと知ったのだ。


 そして、魔王になってみると訪れる外敵は一層増えた。

 エルフだけでなく、人間や魔人、中には龍種なんて存在も押しかけてくるようになったのだ。

 なんでも、精霊溢れる森を支配する魔王を倒せば、その者が精霊の恩恵に預かれるなどという噂が流れたのだという。


 終わりのない戦いの日々、


 そんな中にあっても、中には話を聞いてくれる人もいたりして、マオはその中の幾人かと交流を深める事に成功したりもした。

 マオはそんな中の一人である黒龍から空間系の秘術に関するとある情報を聞くことになる。

 曰く、巨獣や龍種、神獣などの存在は、自らの寝床となる亜空間をもっているという。

 マオはこれを空間魔法で再現できないかと考えた。

 そうすれば外敵に悩まされることもなかった以前の暮らしが戻ってくるのではと思ったのだ。

 しかし、常時発動型の亜空間の保持は難しく、だったら、空間移動で安全な場所と森を繋げばいい。

 そう考えたマオは早速ゲートをオープン。

 降り立ったその世界はちっちゃな赤いゴーレムが歩き回る赤茶けた荒野のような土地だった。

 ただ、その世界に存在する魔素は濃密で精霊にとって適した環境だといえた。

 後は外敵となる存在だけど……。

 その世界にやって来たマオの視線の先には店舗のような建物があった。

 マオは取り敢えずその店を訊ねてみようと考える。

 だけど、もしかしてエルフみたいな人がいたらどうしよう。店を覗き込みまごまごしていると、


「いらしゃいませ」


 声をかけられた。

 いつの間にか自分の後ろに優しげな微笑む少年が立っていたのだ。

 だけど、その少年はいきなり襲いかかってきたりもしなかった。斬りかかってこなかった。

 それどころか、店の中に案内してくれるとお茶とお菓子を出してくれ、きちんと話まで聞いてくれたのだ。

 そして、ポツリポツリと話したマオの事情に、困っているならと、とある魔剣を用意してくれたのだ。

 曰く、この魔剣には周囲の魔素を吸い上げ、周辺に迷路(ラビリンス)を生み出してしまうという呪いがかかっているのだという。

 少年はその呪いを上手く利用すれば住み慣れた土地を離れなくてもいいのでは?とマオに言ってくれたのだ。

 しかも、困ったときはお互い様だとよく分からない言葉を口に対価もいらないと言ってくれたのだ。

 この提案はマオにとって衝撃だった。

 魔剣の性能にも驚いたのだが、何よりも自分達の為にこんな貴重な道具をタダで譲ってくれる人間がいるなんてことが信じられなかったのだ。

 マオは生まれて初めてヒトという種の親切に触れた気がした。

 もちろん疑う気持ちが無かった訳ではない。

 だが実際、少年に言われた通りに、森の入口に魔剣を設置すると、森への侵入者がぱったりと消えてしまったのだ。

 そう、少年は本当に善意から魔剣を譲ってくれたのだ。


 そのお礼が言いたくて、それからその世界に通うことになったマオ。

 何度も何度も通っている内に色々な経験をさせてもらった。

 友達も出来たし、森では手に入らない美味しいものも食べさせてもらったりもした。

 いろんな遊びを教えてもらったり、生活の役に立つマジックアイテムをもらいもした。

 森とおんなじくらいに楽しい生活についつい入り浸ってしまうのを、友達であるリドラが迎えに来てくれる。それがまたマオにとっては嬉しかった。

 何時しか、こんな毎日がずっと続けばいいのにと、そんな風に思い始めたとある日のことだった。

 エルフがその世界を訪れたのだ。


 それは、思い出したくもない争いの種を作ったヒト(エルフ)とそっくりなエルフ(ヒト)だった。

 彼はマオを見るなり、口汚い言葉を吐きつけ、害意を込めた魔法を放とうとしたのだ。

 いつもなら動揺することもなく捌けるくらいの弱い魔法――、

 だけどマオは動けなかった。

 忌まわしき過去の記憶が脳裏を過ぎったのだ。

 このエルフがこのアヴァロン=エラという世界にも争いを持ち込むのではないか。

 私がいたから彼がこの世界に呼び込んでしまったのではないか。

 最悪の想像が頭の中を駆け巡り、心が竦んでしまったのだ。

 だけど、そんなピンチを助けてくれた人がいた。この世界で友達になったお姫様だ。

 彼女は発動せんとするエルフの魔法に割り込みをかけて破壊、自分の為に怒ってくれた。

 その小さな後ろ姿は、かつて自分を庇って消えてしまったドライアドに重なって見えた。

 いけないと、マオはお姫様を止めようとする。

 けれど体が言うことを聞いてくれなくて――、

 そうしている間にも魔剣をくれた優しい少年がやってきて、いつしか店の外から戦いの音が聞こえてきていた。


 行かなきゃ。自分が原因なんだから、みんなを助けないと――、


 震えている内にも戦いの音はどんどん大きくなり――、

 だけど、ある時を境にその音も消えてしまった。


 どうなったの?

 二人もドライアドみたいにいなくなっちゃったの?


 心配にかられるマオ。

 すると、友達がやって来て、いまあの少年が自分の為にあのエルフを追いかけているのだというのだ。

 それを聞いた瞬間、マオは心臓が止まるかと思った。

 マオはあのエルフがいなくなればどうでもよかった。

 しかし、少年は謝らせる為にエルフを追いかけていったというのだ。

 どうしてこんなことになってしまったのか。やっぱり自分がこの世界にやってきたから――、

 お姫様を気遣って平気な顔をするマオ。だけど、その内心は後悔と不安で押し潰されそうになっていた。


 しかし、そんな時間は長く続かなかった。

 少しして少年が大切にしているお人形(ゴーレム)から、全部が無事に完了したという連絡を貰ったのだ。

 それと、店の前でどうやってあのエルフに謝らせるかの相談を始めた声が聞こえてきたのだ。

 おそるおそる店の外を覗いたマオは困惑する。恐怖の対象だったエルフの一人が首だけの姿になって少年少女に攻め立てられていたのだ。

 その情けない姿にはかつての感じた恐怖は欠片も存在していなかった。

 ただ喚き散らすだけの我儘な子供にしか見えなかった。

 何もされていないのはただの憐憫や罪悪感からだけだというのに、

 絶対不利な状況になっても自分だけ大丈夫だ。エルフの態度からはそんな傲慢さが透けて見えていたのだ。


「本当にあれで良かったんですか」


 全てを終えた後、少年が申し訳なさそう聞いてくる。

 だが、マオにとってはエルフの処分などもうどうでもいいことだった。

 あまりに情けないエルフの姿を見て、マオの中のエルフへの恐怖感は薄らいでいたのだ。

 それでも直接対峙してみるとまた震えてしまうかもしれない。

 でも、いつもなら友達が身を挺して追い払っていたエルフの相手を、今度は自分が出来る。そんな自信を彼は与えてくれたのだ。

 だから言う。


「……ありがとう」


 けれど、この言葉は本当の意味で彼には伝わっていないのではないかとマオは思う。

 なにせ少年は、マオが感謝を伝えても尚、申し訳なさそうな顔をしていたのだから。

 マオはそんな少年の顔を見て、いつかこの気持が彼に伝わればいいのに――、そう思いながらも、ただただ無言で精一杯の笑みを送るのだった。

 ◆マオ簡易ステイタス(取り敢えず暫定です。変更があるかもしれません。※マオの魔力を修正しました)


 魔力:777777777(3✕3の7・スロットマシンで全部7が並ぶ感じをご想像下さい)


 取得実績:【妖精姫】【貶められし者】【森精魔導師】【水光魔導師】【土魔道士】【風魔道士】【魔導創造主】【聖女】【神ならざる人の御手】【森の守護者】【召喚師】【結界術師】【統率者】【交渉人】【空間魔導師】【絶対領域】【魔導創造者】【遊戯巧者】

【死霊祓い】【魔動機壊し】【魔獣殺し】【巨獣殺し】【竜退者】【龍退者】

       【精霊の加護】【妖精の加護】【守護霊獣】【神獣の加護】【龍の加護】


 付与実績:【光の巫女】【生贄羊】【光の魔女】【エルフ殺し】【千人斬り】【深き森の盟主】【魔王】【龍王】


 ◆ちょっとしたネタバレかもしれない設定


 ※マオの実績に【魔獣殺し】などがあるのは、生きる為、食べてゆく為に知性の無い魔獣を狩ったり、少年漫画的にテンプレな「殺してくれ」というシュチュエーションなどで得たものです。

 【エルフ殺し】はあくまで『付与実績』であり、周囲の評価によって得てしまった実績なので、殺害をしなくても得られるようになっています。マオが故意にエルフを殺した事はありません。


 ※因みに【森の賢人】は世界によって様々な種族(動物)に与えられる名誉実績となります。

 地球でいうところのゴリラやオラウータンにあたります。

 マオの世界ではそれがエルフと言うだけのことです。(マオはハーフエルフなので【森の賢人】は獲得できません)

 つまり、エルフ=ゴリラという構図が成り立つ訳です。

 SSで書きたいネタではありますが、エルフとゴリラを引き合わせるというそのシチュエーションが思いつきません。

 あるとしたら「異世界に転移したさまよえるエルフのデュラハンは森の中でゴリラと出会う」といったところでしょうか。

 でも、そうすると例のヘルメットにソニアが実験的にステイタスプレートの機能を持たせていたとか理由付けが必要ですかね。


◆ブクマ・感想・評価(正直な評価で構いません)などをいただけると、創作のモチベーションにつながります。よろしければ画面を下にスクロールしていただきご要望いただければありがたいです。


 面倒ならば評価だけでも構いませんので、よろしければご協力の方、お願いいたします。 ↓↓↓

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