エルフという種族3
※前話で上半身裸になったエルフの青年ですが、ワイバーンによる死に戻りで現在は半裸ストーカーモードが解除されています。ご注意を――
アヴァロン=エラからエルフの青年が消えて数分後、改めて戦闘準備を整えた僕がそのディストピアに降り立つと、何故か義姉さんとエルフの青年が取っ組み合い寸前の言い争いをしていた。
「ええと、これはどういう状況です?」
「ハァン?虎助じゃない。てか、アンタこそ何でこんなところに来てんのよ。 あの女に頼まれて来たとかじゃあ――ないわよね」
戸惑いながらもした問い掛けに義姉さんが、もしかしてと逆質問を飛ばしてくるけど、質問の途中で母さんに限ってそれはないだろうと思い直したようだ。自分で自分の言葉を却下する。
「うん、ちょっとそこの元お客様に制裁を加えようと追いかけてきただけだかな」
そして義姉さんは、僕の受け答えに「ふぅん。そうなの――」と興味なさげにしながらも、
「――って、あれ、もしかして虎助さぁ……怒ってたりしてる?」
幼馴染として気付くものがあったのか、珍しくおどおどとした態度で聞いてくる。
「友人が彼に酷いことを言われてね。彼にはその報いを受けてもらわないとって追いかけてきたんだよ」
「下等な人族が私に制裁を加えるだと笑わせてくれる」
義姉さんの質問に答える僕の発言、それを聞いたエルフの青年が鼻で笑うのだが、
「そんな人間から逃げ出したのはどこのどなたでしたっけ?」
「誰が逃げたと言うのか――」
売り言葉に買い言葉――とはちょっと違うけど、万屋での一件からついつい挑発的になってしまったのは仕方のないことではないだろうか。
そんな僕の意見にエルフの青年は激高し襲い掛かってくる。
しかし、どうしたことか、その動きにキレはなく、空切で受け止めることによって、残っていた刀身も簡単に分割できてしまう。
正直、あっけないにも程が有るのだが、せっかく武器破壊に成功したんだから、この流れに乗らない手はない。
「さて、武器をなくしてしまいましたがこれからどうします?」
僕は空切を突きつける。
しかし、エルフの青年から帰ってきた反応は意外なもので、
「フン、これも幻覚なのだろう」
「幻覚?」
予想外の反応にオウム返ししてしまう。
すると義姉さんが、
「ああ、ソイツ――、アタシと会った時もそんな感じだったわよ。急にこんな世界に送られてきてから壊れちゃってんじゃない。自分で自分の手を切っちゃったりなんかしてたから――」
どうやら、僕がディストピアに入る準備に手間取っている間にも、その内部では色々なことがあったみたいだ。
まあ、ここはソニアが作ったディストピアの中でも初期のもので、かなり厳し目の難易度になっているから、義姉さんの話もなんとなくわかる気もするのだが、
でもそれは、義姉さんみたいに、長くディストピアの中に滞在していないとおこりえない症状なんじゃないかな。
と、そんな僕の考えはある意味で間違っていなかったみたいである。
「言わせておけば貴様、好き勝手言ってくれるな」
義姉さんの言い分を聞いて不満を露わにするエルフの青年は怒りにあかせて魔法を使う。
発動させたのは、既にお馴染みとなった〈茨の戒め〉。
こう何度も使われるとバカの一つ覚えのようにも思えるが、使い勝手のいい魔法だけについ頼ってしまうのも仕方が無いだろう。
とはいえ、それが短期間に二度三度と使われたとなれば、対策の一つも立てられるというものだ。
僕は腰のポーチの中から一本のナイフを取り出して、その刀身に魔力を込める。
すると、刀身から炎が吹き上がり、絡みつかんと伸びてくる茨を簡単に燃やし斬ることができる。
「ま、魔法剣!! しかも、その刀身の黒は――、ミスリル製の魔法剣か!?」
「なにそれ超欲しいっ!!」
説明セリフありがとうございます。
だけど、このナイフは、マリィさんが本当に試しに作った試作品でしかなくて、
別に驚くような性能を秘めた武器でもないんですけど……。
なんて言ったら、欲しがりな義姉さんはともかく、ミスリル製の武器に並々ならぬ誇りを持っているらしい彼の方は、また怒り狂ってしまうだろうか。
と、僕はあえて心の中に余計な考えを浮かべながらも、
「これで魔法も封じましたよ。降参してくれると助かるんですけど」
片手に空間を分割する空切、片手に炎を灯したナイフ。二刀の構えで投降を迫る。
だが、エルフの青年には現実が見えていないらしい。
「幻覚の分際で生意気な」
「幻覚じゃないですよ」
「フンッ、騙されんぞ。この世界も、貴様も、その武器も、あのハーフエルフの小娘が作り出した幻覚なのだろう」
はてさて僕はそれにどう応えたらいいものやら。
たしかに、アヴァロン=エラに転移した状況や、このディストピアの仕様を間違った方向に推理してしまうと、そんな結論に達してしまうのも分からなくはないのだが、
「ここは現実ですよ。というか、この世界はフォレストワイバーンの牙を核に、そこに残った残留思念から、彼の龍がかつて所有していた亜空間を利用して創り出した半精神世界なんですけどね」
「う、嘘をつくな!! 龍が創り出す亜空間を利用する魔法式を組み込んだ魔導器など、それこそ伝説級の代物ではないか。そんなものを下賤なる人族が所持している筈がない」
やはりこうなってしまったか。
わざとらしくもディストピアにの説明をぶっ込む僕に、エルフの青年から激しい反論が飛んでくる
しかし、それにしても伝説級の魔導器とはまた大袈裟な。
素材さえあればディストピアは何個でも作れるものなんだけど……。
それだけソニアの魔法工作の技術が優れているということかな。
ともあれ、
「別に信じないというのなら僕はそれで構いませんよ。僕の目的はアナタを捕まえて店での行いを謝らせることですから」
「私が何を謝る必要があるというのだ?」
言葉尻を捕えて、キロリと目を細めてくるエルフの剣士。
「迷惑をかけた全てのお客様にですよ」
僕が出勤するまでに傍若無人にふるまってくれた彼には、魔王様は勿論としてマリィさんにも謝ってもらわなくてはならない。
「私を愚弄するか!?」
「愚弄もなにも、悪いことをしたら謝る。当然のことじゃないですか」
「ハーフエルフに頭を下げる方がよっぽど罪ではないか」
何を当然のことを――と、常識を諭す僕にエルフの青年は自分の常識を語る。
それは、考え方の違いと言ってしまえばそれまでのものかもしれないけれど、
「まあ、アナタの今迄の言動を考えると、そう言うだろうと思いましたよ。だから僕は僕の考え方を貫く為に、無理やりにでもアナタに謝ってもらうだけです」
「貴様にそれができるとでも言うのか?」
「ええ、その為の準備をしてきましたから。どちらかと言えば、武器を持ってない人相手にイジメになってしまわないかという方が心配ですね」
「言ってくれる」
吐き捨てるようにそう言ったエルフの剣士はその威勢のいい言葉とは裏腹に、じりっと一歩後ろに下がると、腰にさげた小袋から取り出した光る液体の入った瓶を床に叩きつける。
すると、石の床に広がった液体から湧き出すように光の精霊が現れて、僕と義姉さんに特攻をかけてくる。
これは――、触媒を使った精霊喚起ってヤツかな?
僕が殺到してくる光る精霊の分析をする傍ら、エルフの青年は何か植物の種のようなものを手の平に乗せて呪文の詠唱を開始する。
聞き覚えのあるその呪文は、ベル君に使ったあの巨大な木を呼び出す魔法だった。
彼はこの光る精霊を時間稼ぎに例の巨木を召喚しようとしているのだ。
しかし、こんな狭い部屋の中にあんな巨木を呼び出そうとするなんて、火のディロックを使った僕の自爆戦術に驚いていた人間がやることでは無い気もするんだけど。
いや、これは、ここが幻覚の中だと信じているからこその暴挙なのか。
結果的には復活することには代わりないから、彼としてはそれでいいのかもしれないけど、巻き込まれる方はたまったものではない。
僕はエルフの青年の動きに対し素早く魔法窓を開いて、
「〈回れ――〉」
その言葉に呼応するように、僕の手の平の上にピンポン玉サイズの魔力の玉が浮かび上がる。
突撃してくる光の精霊を絡め取り。
しかし、その魔力を玉を持ってしても全ての精霊を絡め取ることはできなくて、
「ちょっと虎助――、その玉、こっちにも寄越しなさいよ」
義姉さんはこう言うが、僕の魔法技能でこの玉を遠隔操作することはまだできない。
だったらどうすればのか?それは簡単だ。玉そのものが動かせないというのならそれを持っている僕が移動すればいい。
僕は義姉さんの命令に従うべく、義姉さんと義姉さんに襲いかかる精霊の前に躍り出る。
そして、猛牛と戦うマタドールのような華麗なステップで突進してくる光の精霊を絡め取っていく。
と、そんな光景が信じられないと、エルフの青年は詠唱を中断、驚愕の声で聞いてくる。
「な、なんだその魔法は――」
「【原典】というものを利用した省略術式だそうですよ」
そう。これは、ソニアによって生み出されたオリジナル魔法。
原典と呼ばれる簡単な魔法の起動式と特定の言語(この場合は日本語)を連動させた魔導書を、魔法世界の手乗りパソコン〈イベントリ〉に収めて持ち歩き、登録された言の葉の羅列をキーにして魔法式を喚起、同時に思い浮かべたイメージをイベントリに読み取らせ、魔法へと昇華させる省略術式。
ソニア曰く、この方式は原始的な魔法のソレに近く、使用者の属性、想像力、コンディション、そして、使う言語によっても発動する効果が変化してしまうというとても不安定な術式なのだという。
僕はこの原典から紡ぎ出した術式に、自らが持つ〈誘引〉の属性と、地球でいうところの月――、つまり衛星のイメージを組み込んで、魔法として発動させたのだ。
とはいっても、それは魔法初心者である僕が使う魔法であるからして、初級魔法レベルの威力にしかならなかったみたいなのだが、
幸いにもいま群がってきている精霊の一匹一匹の力はそれに準ずるものでしかないようだ。
と、そんな風に絡め取っていった精霊をどうするのかといえば――、
「のしを付けて返しますよ」
一言、僕は〈一転強化〉で脚力を強化、エルフの青年の懐に飛び込んでゆく。
そして、衛星のようにまとわりつかせていた精霊ごと〈誘引〉の玉を押し付けヒットアンドアウェイ。飛び退る僕とは反対に光る精霊達が誘蛾灯に惹き寄せられる虫のようにエルフの青年へと群がっていく。
魔力の玉をエルフの青年に押し付ける直前、僕はそこに込められるイメージを僕が持つ〈誘引〉の属性へと純化させていたのだ。
だが、その精霊は所詮、牽制として放たれた原始精霊の群れでしかなかったみたいである。
「くっ――」
呻きながらもエルフの青年は光る精霊達の突撃をその痩身で受け止める。
さすがにこれだけじゃ仕留められないか。
だけど問題はない。僕の攻撃はここで終わりではないのだから。
僕が打ち込んだのは彼が呼び出した光る精霊だけではないのだから。
エルフの青年が光る精霊の突撃をやり過ごしたのを確認した僕は、自分の両手に〈誘引〉の魔力を纏わせる。
〈誘引〉とは、即ち、誘い引き入れる力のことである。
対象となるのは、物質、意識、縁など、なんでもござれ。
ただし特にその力を発揮するものをあげるとすれば、それは同じく〈誘引〉の力だろう。
青年の体には既に僕の〈誘引〉の魔力が打ち込まれている。
そして、僕の手の平にも〈誘引〉の魔力が灯っている。
例えばこの〈誘引〉の魔力を足元に転がっている礫に込めるとどうなるのか。
僕はバックステップの着地に合わせて足元に転がる礫を触っていく。
すると、僕に触れられた礫が引き合う磁石のようにエルフの青年目掛けて飛んで行く。
飛んでくる礫の雨にエルフの青年はくっと苦鳴を零しながらも、その手中に木剣を創り出す。
おそらくはあの木剣は巨木を生み出す予定だった種を利用して創り出した即興の剣だろう。
「舐めるな!!」
エルフの青年が裂帛の気合でもって殺到する礫を叩き潰していく。
しかし、僕のこれは別に舐めているのではなく単なる牽制でしかない。
そして、それは、きちんと自分のイメージした通りに魔法が発動しているのかを確かめる為でもあった。
僕はここで攻撃の本命である赤い液体の入った小瓶をウェストポーチから取り出す。
「猿真似か?」
「さて、どうでしょう」
迫る礫に対応しながらも、余裕綽々。訊ねてくるエルフの青年に、僕ははぐらかすように応えながらも小瓶全体に〈誘引〉の魔力を込めていく。
そして、魔力を充分こめたところでその小瓶を放出。
解き放たれた小瓶がエルフの青年目掛けて飛んでいく。
しかしその小瓶は、先の礫と同様に、エルフの青年が持つ木剣に叩き割られてしまう。
だが、木剣によって小瓶が割れた瞬間、瓶の中に収められていた赤い液体がまるで生きているかの如くエルフの青年へと襲いかかる。
そう、〈誘引〉の魔力が働くのはなにも固体に限ったものではないのだ。
しかし、エルフの青年に襲いかかったその液体は、精霊を顕現させる訳でも、何らかの魔法効果を発揮するでもなかった。
「なんだ。不発か?」
何の効果も発揮しない液体にエルフの青年が苦笑する。
だが、これでいい。
「義姉さん。逃げて下さい!!」
滅多に張り上げない僕の大声に驚いたような顔をする義姉さん。
しかし、普段おとなしい僕がわざわざ大声を出すからには何か理由があるのだろうと、義姉さんは何も聞かずに部屋の外にへと走り出す。
と、そんな義姉さんの慌てっぷりをエルフの青年は鼻で笑い、
「フッ、何か作戦でも考えていたようだが失敗だったみたいだな。勝てないと見てすぐに撤退の決断を下すか――、いい判断だ。 しかし、私から逃げられると思ったか」
ナルシストにもポーズを付けてそう言うと、逃げる義姉さんを追いかけるべく動き出す。
でも、そうはさせないよ。
僕はエルフの青年の動きを邪魔するように〈誘引〉と礫のコンボを再発動。
「そうですね。簡単には逃げられないでしょうね。まあ、逃げられないのは元お客様の方なのですが……」
「何を言うのかと思ったら私が逃げられないだと、何を根拠にそんな大口が叩けるのか」
「何を根拠にですか――、ならば僕はこう答えましょう。『僕がかけた液体はなんだと思います?匂いを嗅いでみてください』と――」
僕の言葉にエルフの青年の動きが一瞬止まる。そして、
「ちょっと待て、もしやさっきの液体は――」
「その反応をするということは果実の事を知っているたいですね。ですがそれは、ご想像のモノとは違うものですよ。まあ、効果の程は同じようなものなのですがね」
そう、さっきの小瓶に入っていた赤い液体は、この世界に入る前にベル君から受け取った対フォレストワイバーン用の誘引剤。
この世界に存在するとある果実と同じ臭いを発する液体なのだが、ぶっちゃけてしまうと、今日の午前中、僕が出勤する前に、アヴァロン=エラに迷い込んだ魔獣の血だったりする。
つまるところ、いまエルフの青年からは肉食獣が好む、血の滴るいい匂いが漂っているとそういうことになるのだ。
そして、どこからともなく聞こえてくる死神の羽音。
「ちょっと、虎助早く逃げないとヤバイわよ」
部屋の外、なんだかんだで面倒見がいい義姉さんから催促の声が飛ぶ。
と、そんな義姉さんの声に促されるように逃げ出そうとするエルフの青年。
しかし、誰が逃げていいと言った?
僕はウエストポーチの中から束になったロープを取り出すと魔力を込めて放り投げる。
そのロープはまるで意思でも持っているかのように空中で展開、青年の足に絡みつく。
「マジックロープか」
悔しそうな声をあげてロープに足を取られたエルフの青年がその場に倒れる。
そして、その時は訪れる。
ガガァン!!
建物の壁を砕いて乱入してくるのは、もちろん深緑の鱗を持った飛龍である。
僕は「ロープを解け――」と口汚い罵りと共に助けを求める青年を無視して崩壊する部屋から脱出する。
その後、エルフの青年がどうなってしまったかは分からない。
ただ、直後に響いた絶叫と、フォレストワイバーンが暴れる音が消えて少し後、戻った部屋の有様を見る限り、彼が無事でないことは確かだろう。
そして、
「大丈夫ですか。義姉さん」
「全然大丈夫じゃないわよ。てか、ああいう作戦があるなら最初から言っておいてよね」
青空が覗く壊れた部屋の中を眺めながらする僕の問いかけに、義姉さんは髪に引っかかった瓦礫の破片を払いながら文句を言ってくる。
「しかし、義姉さんは逞しくなりましたね」
「こんな世界に一週間もいるのよ。そりゃ逞しくもなるでしょ」
ディストピアにおける肉体は半精神体となっているから睡眠の必要もない。しかも相手は魔法あり肉弾戦ありの最強種族であるドラゴンだ。そんな相手に初見殺しを連発されたのなら、プレイヤースキル――じゃなくて、自分の体の動かし方も上達するというものだ。
「でも、今回は本当に容赦なしだったわね。あの変態、何をやらかしたのよ?」
「さあ」
「さあって――」
呆れたような声を上げる義姉さん。
だけど、
「やらかしたのは僕が出勤する前だから、詳しいことは知らないんですよね。ただ、エルフはハーフエルフを迫害しているみたいで、魔王様の事を汚らわしいだの何だのと馬鹿にするものだから、ちょっとね」
「アンタそういうの嫌いだからね」
納得したとばかりにため息のような声を吐き出しながら、義姉さんは動画を逆再生するかの如く直っていく部屋に遠い目を向ける。
「でもさ、それだったら、逃がしちゃったのは不味かったんじゃないの。ああいう奴等はねちっこいから。目を離すとまたなんかやらかしてくるでしょ」
確かに義姉さんの言うことも一理ある。
あるのだが、
「この世界のリスポーンは基本的にこの建物内部で行われるんだよ。だから、待っていればその内にここに戻ってくると思うよ。体の状態は元に戻るけど、付与魔法はそのままだからね。こうやって血液爆弾を飛ばしていればふぉれすとワイバーンに狙われ続けるしかないだろうし」
そう言いながらも僕は取り出した魔獣の血が入った小瓶に〈誘引〉の魔力を込めて放つ。
と、小瓶はまるで意思があるかのように障害物を避けながら遺跡の中を飛んでいく。
「アンタ、何気に容赦無いわよね~」
それを見て満面の笑顔を浮かべる義姉さんの横でホーミング小瓶弾を放つことどれくらいだろう。
幾度目かの破砕音が鳴り止んだ後、光粒と共に目の前にエルフの青年が復活する。
僕はその復活の最中にあるエルフの青年の首を復活の途中で分割、その身柄を確保する。
「ホント、虎助ってえげつない戦い方をするわよね」
「そりゃ、母さんにそう教育されましたから」
はてさてこれほど説得力のある言葉があるだろうか。その一言にもう何も言えなくなってしまう義姉さんであった。
◆『原典』についての補足
『原典』とは呪文を作る時のベースになる魔法式を指します。
少し分かりづらい例えかもしれませんが、呪文はプログラム、原典はプログラミング言語と考えていただければ良いかと。
つまり、元々の共通システムである魔法式(=機械語)が存在し、宗教や価値観によって、その魔法式を使い易いように呪文化や魔法陣化など(JAVAやC言語、Rubyなど)しているのです。
その考え方でいきますと、今回、虎助が使った原典はソニアオリジナルの呪文方式(要は完全日本語対応のオリジナルなプログラミング言語を作ってしまった)となります。
因みにアヴァロン=エラでは全ての呪文が日本語として聞こえていますが、それは翻訳魔導器〈バベル〉の効果であって、基本的にそれぞれの言語(時には特殊な魔法語)で唱えられております。
〈魔法式〉……原始精霊であり魔素と呼ばれるエネルギーが放つ波動のようなもの。
モールス信号のように短波と長波があり、その組み合わせによって様々な反応を示す。
その反応を利用する技術が魔法となります。
◆
長いお話を書いていますと4000文字以下のSSが妙に書きたくなります。
前に書いたおまけみたいに簡単なお話が書きたいですね。
でも、続く話を書いていますと、途中でぶっ込む訳にもいかないですし、困りものです。




