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戦い終わって――、十二支会議。※

◆おまけも含めて、少し長めのお話になってます。

 突発的な東京遠征から明けて翌日――、

 僕としては普段通りのつもりだったんだけど、やはり幼馴染の目には疲れているように見えたようだ。

 登校中、元春に出くわすなり「どしたん?」と心配されてしまったので、詳しい話は学校が終わってからと、その後は気合を入れ直し授業に集中して放課後――、

 わざわざ部活を休んで来てくれた元春と、今日は錬金術の補填があり、来店する予定だった次郎君と、ちょうどそこにいたマリィさんや魔王様を含めてお話だ。


「結局、そいつ等はマウントが取りたかっただけだったわけか」


「みたいだね」


 ちなみに、自称・皇宮警察が母さんにちょっかいをかけた理由は、今まさに元春が口にした通りの内容だった。


 具体的には、最近めざましく力をつけてきた川西隊長の部隊にいくつかの仕事を奪われて、危機感をおぼえた彼らの一部が、その指導役である母さんの失態(?)に目をつけ、手柄をかっさらおうと横槍を入れてきたというのが今回の件だったのだという。


 ちなみに、彼等が主張する母さんの失態であるが、

 曰く、『自分達の許可なしに重要テロ犯(ハイエスト)を勝手にアメリカ側に引き渡そう(・・)としているのはけしからん』と言いがかり的なものでしかなく。

 よくもまあそれで、拳銃を持った警官を引き連れて、一個人宅を取り囲んだものだというものだった。

 なにより、ハイエストの引き渡しについては、加藤さんの家の敷地内で現在製作途中のアスレチックが公共工事扱いになっていことからもわかる通り、ハイエストの引き渡しについては国も承知している案件なのだ。


「てか、そもそもイズナさんに喧嘩を売るってのが頭おかしーんじゃね。

 ソイツ等、イズナさんのこと知ってたんだろ」


「それなんだけど、なんか母さんのことをあんまり知らない一部のお偉いさんが、資料だけ見て、これならいけるって、ちょっかいをかけてきたのが、今回のことみたいだね」


「それもどうかと思いますが――」


 次郎君はこう言うが、人というのは自分に都合のいい事実ばかりを信じるものということである。

 そもそも、昨晩戦った人達くらいなら、本格的に魔法をおぼえる前の母さんでも――というよりも、実際にほとんど体術だけで――対処できていたことを考えると、本当に無謀極まることだったのだ。


「そんで、ぶっ倒したヤツ等はどうしたん?

 いつものヤツをつけたとか」


 元春が言う『いつものヤツ』というのは〈息子殺しの貞操帯〉のことだろう。


「別に何も――、

 ハイエストに関する情報をしっかりとすり合わせた上で、今後こういうことがないようにって、ちょっと特殊な念書を交わしたくらいかな」


「「「それだけ(ですの)?」」」


 この結末に意外そうな声を出すみんなだが、そこは法治国家の日本である。

 神社本庁での暴れっぷりを考えると、そんな常識など今更のような気がしないでもないけれど。


「僕達との戦いで心を折られた上に相手側の作法に則った契約をして、母さんがじっくりとお話(OHANASHI)をしたとなると、それ以上は必要ないかなって」


「う~ん、その契約ってのも気になるけど、やっぱ最後のが一番の罰かもな」


 魔法薬で体の傷は癒えたとしても、果たして心の方はどうだったのか。

 しかも、昨晩あの施設にいた殆どの陰陽師が、最強の武器である式神を失ってしまったとなると、その損失は計り知れない筈だ。


 そう、地下の門からお偉いさん三人と戦ったあの平舞台までの道中に出会った相手の式神は、希少な実績獲得のチャンスとばかりに、三人で代わる代わる殲滅していったのだ。


「しかし、お札で鬼や妖怪を呼び出すだなんて、まるでマンガや映画の中の世界ですね」


 それは僕も感じたことである。

 ただ、僕達だってカードからスクナを呼び出したりしてるから、人のことは言えないいんじゃないかと、和室でくつろいでいたアクアとオニキスを呼び寄せたところ、次郎君が眼鏡のブリッジを指で押し上げて、


「言われてみれば確かにそうですね。

 しかし、そうなりますと、彼等は地球にあって、相当高度な技術を持っていることになりますか」


「伝統ある大きな組織らしいからね。

 技術的な積み重ねはかなりのものがあるんじゃない。

 さっき話題にした念書だって彼等の技術だし」


 ちなみに、いくつか符術に関わるアイテムはこのアヴァロン=エラに持ち帰って、ソニアに調べてもらったところ、そもそも使われているお札が、条件が整った土地で百年以上育った樹から作られるもののようで、そこに、これまた特殊な墨で魔法式を書かなければならないようなものらしく。

 ソニアに言わせると、正直、なにか特別な効果でもなければ、あまり作りたいような代物ではないという。


 なにより、そうして作ったお札も、その種の魔法に適正があって、かつ相手に実際に力を示さないと使えるのもではないようで、更に事前契約もかなり面倒な手続きが必要だとの分析らしく。

 実際、話の中で出てきた念書なんて、単純な約束事を守らせるだけの契約だというのに、無駄に長い呪文を聞かされた後で、血判なんかを押したりしなくてはならないと、かなり面倒な代物だったのだ。


ちな(ちなみに)、それでした約束を破るとどうなるん」


「鬼子母神が出てきて、違反した人がお仕置きされるらしいよ」


「「鬼子母神ですか」――ってなんだっけか?」


 これは元春の知識の範囲外かな。

 とはいえ、鬼子母神に関しては、僕も昨日まではただ名前だけを知っているだけの神様で、

 あの後、僕達にも関わることだからと、いろいろと調べてみたのだが、

 どうもその鬼子母神って神様は、七福神として有名な毘沙門天の部下の奥さんで、五百人の子供を育てるべく、他人の子供を食べて栄養にしていたような方だったようだ。

 ただ、その行動を見かねたお釈迦様が彼女の一番可愛がっていた末子を隠し、子供を奪われる辛さを教えたことで、その後、彼女は改心して仏に帰依、最終的に子供を守る守護神になったという。


「なんといいますか、神と名がつくにしては物騒な逸話を持つお方なのですね」


 たしかに、鬼子母神が鬼子母神と呼ばれるようになった逸話は、マリィさんが引いてしまうのも当然のエピソードである。

 ただ、神話に出てくるような存在は、得てしてそういう背景を持っていたりするもので、


「しかし、この皇宮警察でしたか、

 彼等もよくそのような存在と契約が結べたものですわね」


 と、マリィさんが見るのは、昨夜僕達が彼等の本拠地に乗り込んだ際に記録した映像である。


「それなんですけど、その伝承が本当かどうかはわかりませんし、名前が同じだからといって、ここで名前に上がる鬼子母神がそのままの存在とは限りませんから」


「たしかに、そういった召喚魔法には、特殊な条件などがあることがありますわね」


 その説明になにか思い当たることがあったか、マリィさんが納得したように頷いて、


「なんにしても、約束を破るとその鬼子母神様がしっかりと制裁を加えてくれるらしいので、

 今後、変なちょっかいをかけてくることは無いでしょうね」


「てか、それってもうフラグじゃね」


「さすがにそれはないでしょ」


 鬼子母神のこともあるけど、しっかり置き土産も置いてきたし、僕達に――というよりも、母さんと敵対することへの恐ろしさはしっかり伝わっている筈だ。その筈だよね。


「けどよ。契約で神様とか、そんなん使えんだったら、ふつうにイズナさんと戦った時に出せばよかったんじゃね」


 それは僕も少し考えたことなんだけど――、


「鬼子母神はあくまで契約関係に使えるだけみたいだから」


「ああ、その鬼子母神ってのは特殊召喚魔法みてーなもんか」


 元春のその発想はまったくゲーム的なものであるのだが、そんなに間違ってもいないかな。


「つっても、イズナさんなら、それでも余裕で勝てそうな気がすっけどよ」


「「「たしかに、それはそうだね(ですね)(ですわね)」」」



 ◆



 窓一つ無い広い部屋の中、中央に置かれた円卓を囲むように十人の男女が集まっていた。

 人数は二人ほど少ないが、彼等は皇宮警察のトップ――十二支と呼ばれる面々であった。


「いやぁ、まさか本部が落とされるなんて困ったね」


 まったく困っていない様子で肩をすくめるのは、派手なスーツで身を固めたホスト風の優男。


「ホント、情けないよね~。

 根津さんはともかく、地雷オバサンに、犬飼君までやられちゃったみたいだし」


 続いて、ぐでっとテーブルに体を預け、優男の声に応えるのは、派手なメイクがいかにもな金髪のギャルだった。


 すると、話題に上がったうちの一人、

 長い前髪で目元を隠す青年・犬飼が「僕は悪くない、僕は悪くない」とぶつぶつ繰り返し。


「クソ雑魚が調子に乗るからだ」


 ツンツン頭の青年が頭の後ろで手を組みながらからかうと、

 雑魚と言われた犬飼が長い前髪の奥から覗く瞳で人を呪い殺さんばかりに睨みつけ。


「ホント、乾君と犬飼君は仲が悪いね」


「イヌイヌコンビなのにね~」


「一緒にすんじゃねぇ」「……一緒にするな……」


 優男とギャルのからかうような声に、乾と呼ばれたツンツン頭の青年と犬飼が同時に反論。

 すると、ここで絵に書いたような馬面男がバンと机に手をつき立ち上がり。


「お前達、なにを呑気に構えてる。

 これは由々しき事態であるぞ、一時的にも本部が落とされ、我々が一方的に攻められるなぞあってはならぬことなのだ。

 これは断固制裁を課すべき事態であるぞ」


 声高に報復の実行を叫ぶのだが、


「そんな風に言っても、先に仕掛けたのはこっちでしょ~」


「たしかに、なにかするなら原因を作った人に責任をとってもらわないと」


「な、なにをわけのわからないことを――」


 やる気というものがまったくみえないギャルと優男から意味深な視線を向けられ狼狽。


「いや、『わけのわからないことを――』なんて言っても、しっかり証拠も揃えられてるんですって」


「どういうことだ?」


 ここで疑問の声を(さしは)んできたのは用意された椅子に窮屈そうに座る大男だった。


「黒岩さん。それが襲撃をかけてきた人間がわざわざ証拠を残しいってくれたそうなんですよ」


「それこそ相手が勝手に言っているだけであろうが――」


「いやいや、それが実際に動員された警察官の証言とか、しっかり証拠がまとめられたものでねっと」


 激高する馬面男を無視するように優男が手元に用意していたタブレットを操作すると、まずは今回の一件が時系列でまとめられた各種資料と報告がそれぞれ手元のタブレットに送信され。

 続けて、部屋の壁面に備え付けられた巨大モニターにいくつかの動画が映し出される。


 それは、スーツ姿の男達がとある住宅に押しかけ、少年に詰め寄るシーンだとか、どこかで見たようなサラリーマン風の男性が、小柄な女性に尋問を受け、泣きながら証言する姿だとか、見覚えのある地下施設で大立ち回りをする数名の姿だとかが克明に捉えられた映像だった。


「資料はともかく、この映像は?」


「だからこれもその証拠ってヤツです。

 ほら、黒岩さん。ここに出てくる刑事の顔、見たことがありませんか」


「む、彼は馬飼野のところの――」


「てゆ~か、資料で関係先とかきっちり出てるし、

 それより、ここに出てくる三人、ヤバくない? ヤバくない?

 地雷オバサンと犬飼君がボコボコなんだけど~」


 優男の誘導を受け、大男こと黒岩がなにやら思い当たる節があると呟くと、ダウナーなギャルがしっかりと資料の重要な部分を指摘。

 そんなことよりもと注目するのは、本来なら本日この会議に出席する予定だった地雷オバサンこと十文字と犬飼が侵入者と戦う様子だと、全員の視線が壁面のモニターに集まったところで、


「そっか、犬飼が弱ぇだけだろ」


 脳天気な乾からからかうようなコメントを入れられると、当の本人である犬飼が「……殺す殺す殺す殺す」とまた物騒な呟きを繰り返し。


「乾っちのそういうトコ、尊敬するわ。

 これ見て、そう言えるんだもん。ホント理解不能~」


 そんな二人のやり取りにダウナーなギャルが、ちょうど十文字の首が斬られるのを見ながら呆れ声を出せば、


「むぅ、召喚術の応用か、それとも未知の術か、理解に苦しむな」


 黒岩が十文字の状態――、

 そして、映像の中に度々登場する生きた生首を冷静に分析するように(ひと)()ち。


「けど、あの狡噛のボンボンが一蹴っていうのはインパクトがあるよね」


「コウガミ? 誰だよソイツ」


 優男の呟きに怪訝そうな顔する乾。


蟒蛇(うわばみ)さんのとこの筆頭幹部」


 それにダウナーなギャルが机にもたれかかったまま、カミソリのような鋭い目つきの男を指差すと、


「筆頭が瞬殺とかって大丈夫かよ」


 乾が茶化すようなことを口にして、


「君のところの兵隊も一緒にやられたようですが」


 名前を出された蟒蛇がズレてない眼鏡の位置を直しながらも乾に皮肉を返し。


「はぁ、俺んなこと聞いてねぇんだけど」


 そんな蟒蛇の言葉に二人の間に剣呑な空気が漂うも、

 十二支の中で最年長である禿頭の老人から「やめんか」とお叱りの言葉が入れられれば、静かに睨み合っていた二人も已む無しとお互いに椅子に座り直し。


「……それでどうするのです」


 このタイミングで口を開いたのは、先ほど優男とギャルにやり込められた馬面男だった。


「どうするっていっても尾上さん。

 これ、ちょっかいかけた方のミスでしょ」


「それに根津さんに契約を結ばれたらどうにもなんないよね~」


 しかし、ホスト風の優男の『改めて言わなくてもわかるでしょ』とばかりの雰囲気と、ダウナーなギャルがお手上げとばかりに投げやりな言葉を返され、馬面男こと尾上が苦虫を噛み潰したような顔を隠し切れず。

 その一方で、


「これ、契約を破ったらどうなるんだよ」


「鬼子母神と戦うことになるだろうな」


 乾の疑問に答えたのは禿頭の老人だった。


「鬼子母神?

 字面からして式神の類だろ。そりゃ強ぇのか」


「三代前の()が喰われておる」


「おいおい七宝の爺さんよ。三つ前の()っていやぁ、伝説の(いか)れ軍曹じゃなかったか。

 そんなヤツが喰われたって、鬼子母神ってのはそんなヤベー式神なのかよ」


「あの時は契約の強さというものもあったが、契約した両者の力が飛び抜けておったのだ」


「そりゃどういった意味だ?」


 と、この内容に身を乗り出したのは乾だけではなかった。

 というのも、いま話しの中に出てきた、三代前の()を務めたという人物というのが、その界隈で伝説と謳われる程の陰陽師だったからだ。

 そもそも、かの人物が自分の術によって死亡したというのは、ここにいる者でも、殆どの物が初めて聞く話で、

 各人程度の差はあれど、興味があると集まる視線の中、老人が語るのは鬼子母神を使った術の詳細。


「術者の素養、契約者の力関係とその内容、そして破棄の度合い、それ以外にも細かな要素はいくつかあるが、おおよそは先の三つで鬼子母神が現世に顕現される強度がかわるのだ。

 三船殿が喰われたのは、戦後のドタバタで開放されてしもうた山本五郎左衛門との賭けに敗れてしまったからだ」


「山本五郎左衛門って実在してんのかよ」


「あれはどこにでもおるわ。条件さえ整えばここにも現れる」


 七宝の言葉に驚愕の一同。

 ただそれは、思いもよらずここで飛び出した妖怪の総大将の名前が故なのかもしれないが、


「今回の場合、どうなるんです?」


 と、この微妙な空気の中で手を上げたのはホスト風の優男。


「契約内容は大したものではない。術者は言うまでもないだろう。

 後は契約者がどれ程の実力者だが――」


「だったら余裕だろ。やられたバカ三人が普通に生きてんだからな」


 若干のショックを引き釣りながらも粋がってみせる乾。

 そんな乾の態度に、ここで七宝老人が壁面に映し出される映像に目を向けながらも、


「乾の小僧、お主、やるつもりか」


「ああ、原因がこっちにあるとしてもだ。こんだけコケにされて『ハイ、そうですかって』黙ってられっかよ」


 乾のこの意見には老人も共鳴するところがあるのだろう。「むぅ」と難しそうな顔で押し黙り。


「しからば、三好に黒岩、後は尾上も協力して――」


 七宝が脇に大太刀を置いた女子高生らしき人物、大柄の男、そして、今回の当事者とおぼしき馬面の男と視線を飛ばしながら言うのだが、乾はそんな七宝の言葉を遮るように首を振り。


「いらねーって、俺一人で十分だ」


「そうはいかん。こうして映像がある以上、今回のことが外に漏れることは必然。

 これ以上の失態を重ねることはまかりならん」


 ただ、そのは七宝としても譲れない一線なのだろう。

 今度は乾と七宝とで緊迫感あふれる睨み合いが展開されるも、それもあまり長くは続かなかった。

 最後は乾が諦めたように椅子に体を預け。


「わーったよ。三好と黒岩のおっさんには手伝ってもらう。

 けど、尾上はいらねぇ。

 足を引っ張られるのがオチだからな」


「乾、お前――」


「うるせぇよ。今回の元凶はアンタだろ。

 これ以上、俺等の足を引っ張んな」


 こうもはっきりと言われてしまっては、他の面々の手前、尾上としてはなにか反論をしなければ立場がない。

 しかし、尾上がなにか言い訳を口にするよりも先に、


「わかった。それでいい」


 七宝老人に出られてしまってはどうしようもない。

 結局、尾上は項垂れたように椅子に体を預けるしかなく、乾の「っしゃ」と気合が入るような声でその日の会議は締めくくられるのであった。



 ◆おまけ◆



「そういや式神を倒しても実績がゲットできんだろ。どんなんゲットしたん?

 なんか凄い能力とかあったん」


「それがちょっと微妙な感じだったんだよ」


「しかし、映像を見る限り、それなりに強力な魔獣だったという印象なのですが」


「たしかに映像で見る限り、式神は巨獣とまではいかないまでも、強力な権能が得られそうな相手でしたの」


「それが全部終わって帰る途中にいろいろ調べてみたんですけど、殆どがいま持ってる権能の下位互換でしたね」


「あんなに強そうなのにか」


「うん、召喚されてる影響なのか、ほとんどの権能が属性魔法の効果アップみたいな感じで、上がり幅も微増って感じだったし」


「言われてみますと、火や水、風に土と四大元素に関わる手合が多かったように見えましたの」


「あと、相手が召喚されているというのも関係しているのでは」


「たぶん次郎君の考えが正解だね」


「ってことは、新しい能力ゲットってことにはならなかったん?」


「いや、中には面白そうな権能もあったよ」


「へぇ、それってどんなん?」


「たとえば、泥田坊って妖怪の権能なんだけど、〈悪路走破〉っていって、足場が悪いところでも訓練次第でうまく動けるようになるとか、同じようなパターンで化け猫から〈忍び足〉を――、

 他にも加藤さんが壊した妖刀村正からは〈妖刀装備〉が手に入ったし、母さんなんて、鬼蜘蛛から〈繰糸〉、馬頭から〈説教〉、煙羅煙羅から〈浮身〉、呪いのマリちゃん人形から〈恐笑〉、河童大将から〈玉抜き〉、他には――」


「って、〈玉抜き〉ってのも気になるけどよ。イズナさん多くね」


「張り切ってたからね」


「さもありなんですね」


「さすがはイズナ様です」


「まあ、イズナさんだもんな。

 ちな(ちなみに)、虎助はなんかゲットしたん」


「だから、最初に言った〈悪路走破〉と〈忍び足〉と――、

 あと、これはあんまり役に立たないと思うんだけど、垢舐めって妖怪から〈舌技向上〉っていうのをもらったよ」


「ちょい待ち。虎助、いまなんつった」


「もしかしなくても〈舌技向上〉のことだね」


「おうよ。

 つか、舌技って、いいのもらってんじゃん。超Sレアスキルじゃんよ」


「元春ならそう言うと思ったけど、そこまでいいものじゃないからね。

 ちょっと舌の動きがよくなったかなってくらいのものだからね」


「十分、それで十分だっての。

 よし、いまから垢舐め探しに行くぞ。

 ボッコボコしてやんよ」

◆作者の為の備忘録※


 子・根津、呪詛使いの小男。(療養中の為、欠席)

 丑・黒岩、巌のような大男。

 寅・三好、無口で小柄なサムライガール。

 卯・???、ダウナー系金髪ギャル。

 辰・七宝、眉毛フサフサおじいちゃん。

 巳・蟒蛇、インテリヤクザ風中年男。

 午・尾上、馬面な地味男。

 未・???、年齢不詳の女性。(会議中は爆睡していたのでセリフ無し)

 申・十文字、毛皮のコートの女。(ネクロマンサー系、療養中の為、欠席)

 酉・???、ホスト風優男。

 戌・犬飼、エロゲ主人公な呟き青年。(悪霊憑き、狗神)

 亥・乾、ヒャッハーなツンツン頭。


 三船……三代前の子。壊れ軍曹と呼ばれた狂人。

 山本五郎左衛門……妖怪の総大将。


 十二支は十二ある系統のトップが選ばれる。

 基本的に世襲制ではなく実力主義であるが、特定系統の技術については、一族で独占している場合もあり、その限りではない。

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― 新着の感想 ―
[一言] てっきり会議の最中にイズナ襲来イベント発生かと思いましたわ 正直やりかねないし まぁ一応は上に慮ってカタをつけた体でしょうから、今はやらないのでしょうけど… でも見ているよなぁ…見るための条…
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