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幕間・ホニャララ軟膏MP

◆お盆ということでなんとなく書いてみたSSです。

 お暇でしたら読んでくださるとありがたいです。

 たぶん明日も投稿します。

 異世界にはポーションと呼ばれる回復薬が存在する。

 これは魔素を含んだ植物から取れる薬効成分を含んだ抽出液によって作られる魔法の液体だ。

 かつては薬草をそのまますりつぶしたり、蒸してその成分を搾り出したりとしていたようだが、それなりに技術の進んだ魔法世界では錬金術によって生み出すのが主流になっているのだという。

 そんな魔法世界の科学技術とも言える錬金術の技術には魔力付与というものが存在する。

 これは体内の魔力――つまり、人間が自分の使いやすいように吸収変化させた魔素を、物質に、それとも生命に付与するという魔法とのことである。

 そうすることよって魔法薬はより高い効果が発揮し、各種魔法のアイテムはその魔力が続く限り、ほぼ何の消費もせずとも魔法の恩恵に預かれることになるという。

 さて、ここで一つの疑問が浮かぶ。

 もともと魔素も何も含まれていない、ただ薬効成分が備わる薬にこの魔力付与施せば、それはポーションのような魔法薬になるのではないか。


「僕はそんな風に考えたんですけどどうでしょうか?」


「たしかに理論で言えば虎助の言う通りですの」


「実際、俺等の世界じゃあ別個に抽出した魔力と薬効成分を混合させて魔法薬を作るなんてメーカーもあるっていうからな」


 ポーションについてのおさらいをしつつもした僕の問い掛けに、マリィさんが、賢者様が、顎に手を添えつつもそれぞれの考えを返してくれる。


「それでなんですが、ここに僕の世界で有名な軟膏があります。本来はその抗菌効果によって傷の治りを早くするというだけの効果なのですが、それが魔力の影響を受けるとどうなるんでしょう」


 コトンとカウンターの上に乗せたのは黄色いパッケージでお馴染みの某有名軟膏。

 本来はこの薬に傷を直すような効果は存在しない。しかし、それはポーションの元になった薬草の似たようなものではないか。ならば、この軟膏に魔力付与してやれば、それはそれは便利な薬が生まれるのではないか。

 そんな可能性を訴えながらも僕は軟膏が入った瓶を錬金釜に投入する。

 そして数十秒の魔力付与を終えて取り出したその瓶は特に変わった様子も見られなかったが、


「さて、どうやってその効果を調べましょうか」


 何なら僕が指先を軽くナイフで切って試してみましょうか。そんな提案をしようとした時だった。


「ふむ。そうだな……こういうのはどうだろう。少年とお嬢にご休憩してもらって、その傷に軟膏を塗って確かめるってのは――ぐぼぁっ!!」


 見事に体重が乗ったマリィさんの右フックが賢者様の左頬をとらえる。


「虎助。けが人が出来あがりましたわ。コレで実験をしましょうか」


 まるでゴミでも見るようにして実験を促すマリィさん。

 しかし、これは賢者様の自業自得。

 ということで、さっそく賢者様にホニャララ軟膏MP(魔力付与)を試してもらうのだが、その効果が劇的だった。


「こ、これは――」


「すごい効き目ですの。あっという間に切れた唇が元通りに」


「ええと、口の中にまで塗って大丈夫なんですか」


「ふぃあふぃあ、ふぉふぉまでふへえふふりならふふぁわなひゃそんっふぇもんふぁへ」


 賢者様が何を言っているのか全くわらからないけど、血だらけだった口の中の怪我が一瞬にして治ってしまった。


「おそろしい魔法薬を作っちまったな少年」


 いや、急に真面目な顔でそんなことを言われても、


「ところで相談になんだが、少年の世界に媚薬や精力剤の類はあるのかな」


 ああ、そういう事ですか……。

 でも、賢者様……そんなことを言っているとですね。


「ぶべらっしゅっ!!」


 マリィさんに殴り倒されましたね。

 とまあ、こんな風に多少の混乱はあったけど、


「これは新しい万屋(ウチ)の商品にナリそうですね」


 勝手に薬を改造するなんて日本だったら法律に引っかかりそうなものではあるのだが、幸いにもここは異世界だ。たぶん問題はない筈――だよね。


「と、ところでですの虎助。虎助の世界には余計についてしまったお肉を無かったことにしてくれるような薬なんて、あ、ありませんわよね」


 おお、マリィさんアナタもですか。

 まあ、最近、お菓子やらスイーツやらと食べてばかりだったからわからないでもない。

 しかし、ダイエットに効く薬とか、やっぱりトクホとかそういう飲み物に魔力を付与するのかな。苦笑しつつもマリィさんのお願いならば仕方が無い。

 あと、一応の為に賢者様のリクエストも――と、定番の賞品を頭に思い浮かべる僕であった。

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