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新装備各々01

◆書き始めたら長くなってしまったので、二話に分割しました。

「ということなんだけど、どうかな?」


「別に構わないよ。

 玲の装備を作るついでだし、素材も潤沢、いい気晴らしになるからね。

 それで彼女達ってどんな戦い方をするんだい?」


 仕事終わりの午後八時、場所は工房の地下にある秘密施設、僕がソニアとなにを話しているのかというと、つい数時間前、白盾の乙女のみなさんと元春と話した装備に関する相談だ。


「エレオノールさんが守って、アヤさんが攻撃、ココさんが援護で、リーサさんが遠距離からの魔法攻撃かな。

 あ、でも、リーサさんは場合によっては遊撃になるのかも」


「ふぅん。

 でも、魔法使いの子は注文通りマーリンと同じ仕様の杖でいいんでしょ。

 盾役の子には役目そのまま盾ってことで、カウンター系の盾を作ればいいんじゃないかな」


「リーサさんはともかくとして、エレオノールさんの方は扱いが難しくない?」


「いや、もともと玲の為にそういう防具を作れないかって考えてたから、その流れでね」


 カウンター系の盾というのはゲームなんかだとよくある装備だけど、現実に扱うとなるとデザインやその能力の奇抜さから、普段使いなどにはあまり向かないんじゃないかと、そう懸念する僕に、ソニアが言うには、もともと小柄な玲さんの為にそういう装備を考えていたとのことだ。


 成程、そういうことなら――、


 と、そんな話を聞いて僕が納得する一方でソニアはというと。


「でも、そのままだと面白くないから一工夫をしようかな」


「一工夫って、どんな感じ?」


 あんまり変なのにしてもエレオノールさんが困ってしまうんじゃないかと、単刀直入にその一工夫を聞いていく僕に、ソニアは「そうだね――」と考えをまとめるように胡座をかいたまま上を向き、そのままゆっくりと回転しながら。


「まず、最初に杖の方だけど、そもそも魔法使いなら手持ちの杖がもうあると思うし、こっちは玲に持たせてもいい装備だから帽子とかの形にしたらどうかな。

 それなら脳波とかを読み取るような装置もつけられるだろうし、使いやすそうじゃない」


 そういうことならリーサさんの方は特に問題はないかな。


「それで盾の方は受けた魔法をストックできるようにするのはどうかな。

 ストックした魔法はディロックみたいに使えるようにしたらどう?」


 たしかにそれはいいアイデアかも。


 白盾の乙女、魔法担当はリーサさんだけである。

 そこに新しく魔法に対処できる人が増えるのはいいことだ。

 それに、そういう仕様の装備なら、あらかじめエレオノールさんがその盾を使って、リーサさんの魔法を受けておき、開幕に一発、それを放つようにしておくなんて運用方法もできそうだ。


 ただ、ここで確認しておかねばならないのは――、


「でも、そんなことできるの?」


 魔法をストックするということは遅延魔法の部類になる。

 そんな高等技術を盾に落とし込むのは難しくないだろうか。

 そう懸念する僕にソニアが言うのは、


「ディロックを作る方法を流用すれば出来ると思うよ。

 まあ、自動でそれを処理するとなると、どうしてもストックした魔法の威力は低くなるとは思うけど」


 ディロックの生成は、強力なものになればなるほど繊細な魔力コントロールが要求される。

 それを、状況に応じて盾が自動的に行うとなると、受け止めた後の魔法の威力がかなり減衰してしまうのは致し方ないこと。


「ただ、盾に魔法の吸収機能をもたせるってことは、それだけ魔法的な防御力があがるってことだから、反射能力は弱くても、盾そのものの防御力は高くなると思うんだよね」


 魔法をストックするにあたって、ストックしきれない余分な部分はすべて受け流すような形にしてしまえば、対魔法防具としての性能がかなり高くなる。

 だから、メインはむしろそっちの方なのかもしれないとソニアは言い。

 リーサさんとエレオノールさん、両名の装備の方向性が大体決まったところで、


「後の二人はどうしようか。

 適当に作っていいなら、ボク、頑張っちゃうんだけど」


「いや、それは――」


 ウキウキとそんな顔して言ってくるソニアに、口を濁す僕。

 ソニアが頑張って作った装備なんて、どう考えたってオーバースペックな装備になるとしか思えない。


「じゃあ、なにかリクエストとかないかな?

 ある程度、指針を出してくれればいい感じにまとめるけど」


「そうだね。前に決定力が不足してるって感じのことを言ってたから、それを補うような装備がいいと思うんだけど」


 白盾の乙女はパーティとしてのバランスはいいのだが、そのメンバー構成上、時として相手を倒すのに時間がかかることがあるのだという。


「だとすると、作るのは武器とかそういうのになるよね。

 でも、それって虎助的にどうなの?」


「白盾の乙女のみなさんならいいんじゃないかな」


 万屋であまり武器を売り出さないのは、たとえばそれが戦争など、人間同士の争いに使われないようにという配慮からである。

 しかし、常連さんやエクスカリバー2を渡した剣士のレイさんののように、一定のライン以上の人格を持つ人や、エルマさんのように、そのまま元の世界に帰ったら命の危険があるような人には、武器を売り渡すこともあって、

 そもそも万屋では、データベースから攻撃力の高い魔法式だってダウンロードできるようになっているのだから、そこまで厳密に武器を管理しているのではなく。

 実際、使用者に嫌がらせのようなデメリットをもたらすような魔剣は、店頭でも普通に販売しているのだ。


「だったら後の二人は武器に相当するものでいいね。

 新鮮な龍種の血もあるし、こういうのは久々だからはかどるよ」


「でも、さっきも注意したけど、あんまり強いのとか、レアなものは止めてよ。

 出してくれた資金の問題もあるけど、白盾の乙女のみなさんの安全にもかかわるからね」


 ソニアが本気を出すとなると、それこそ一騎当千の武器を生み出しかねない。

 そして、あまり強力な武器は高価となり、それそのものが狙われる対象になって、白盾の乙女のみなさんの負担になりかねない。

 実際、白盾の乙女のみなさんは、ここに来る直前、万屋製のマジックバッグを狙われ襲われたという実績がある。

 だから、その辺の配慮も必要だと僕がそう指摘したところ、ソニアもその辺はきちんと理解しているのか、手元の魔法窓(ウィンドウ)になにか書き込みつつ。


「それはわかってるよ。

 というか、そういうことがないようにバランスを取るのが僕達の方針でしょ」


 仰る通りで――、

 実際、狙われたというマジックバッグもある程度の偽装が施されていたのだ。

 ただ、それを看破した相手が上手だったというか、運がよかったというかであって、


「それに、もしも強い武器になったとしても聖剣化していれば平気だし」


「まあ、そうなるよね」


 作る武器がなんにせよ、聖剣化――まあ、この処理は剣に限らずだけど、武器そのものに精霊さえ宿しておけば、無理やり奪われるといったような問題もなくなるし、最悪奪われたとしても犯罪などに使われる心配はまずなくなる。

 ただ、逆にそうすることによって狙われやすくなるなんてことも考えられなくもないのだが、その辺はソニアもきちんと対策を打ってくれることだろう。


「さて、今度はなんの精霊に宿ってもらうのがいいかな」


 というか、もう普通に聖剣とかを作る気満々なんだね。


「けどソニア、そうやって迷うのはいいんだけど、選べる精霊っていっても少ないんじゃない?」


 量産型の聖剣に使えるのは、万屋に関わりのある精霊のみなさんが説得して武器に宿ってくれる原始精霊になる。

 そうなると、ディーネさんやマールさん、そしてエクスカリバーさんと同じカテゴリに属する精霊しか集められないのではないかと、今まで作ってきた量産型の聖剣からそう思ったりもしたのだが、ソニアはなぜだか自慢げな顔で『チッチッチッ』と指を振り。


「それがそうでもないんだな」


「どういうこと?」


「ねぇ虎助、考えてもみてよ。

 精霊っていうならガラチンもそうじゃない。

 それに念話通信とかを利用すればマオのところからのフォローも受けられるから――」


 言われてみると、エクスカリバーさんが出来るなら、同じ聖剣を元にした存在のガラティーンさんからの紹介も受けられるってことなのか。

 そして、通信を使えば魔王様の拠点からも協力が得られるわけだから。

 そうなると水・樹・光・土・闇もしくは夜に関係する聖剣が作れるということになるわけで――、


「パッと思いつくのは夜系の精霊を宿した刀とかとかどうかな。

 ほら、アヤって子に似合いそうじゃない。

 それに夜系の精霊なら、その特殊効果も目立たなそうだし」


 たしかに、そのイメージはわからなくはない。

 わからなくはないんだけど……。


「でも、アヤさんに武器を作るなら、しっかり刀にしない方がいいと思うよ。

 アヤさんって見た目とか名前とか、ちょっと和風っぽいんだけど、普通に正統派の剣士だからね」


「そうなの?」


「うん。それにフレアさん達がいる世界に日本刀みたいな武器があるのかもわからないから」


 そう、一見すると日本人っぽいアヤさんも、ファンタジーRPGにありそうな欧風世界の住人なのである。

 だから、アヤさんも実は侍というよりもスピード重視の軽戦士といった感じのバトルスタイルで、


「それなら、それで刀っていうかサーベルっぽい感じで作ってもいいんじゃない」


「どうなんだろ」


 まあ、ソニアの言う通り、スピードを重視するということは叩き斬るというよりも撫で斬るといった剣の使い方が得意かな。

 しかし、ソニアには一度これと言い出したら人の話を聞かないところがある。

 だから、アヤさんの武器は出来上がってから、本人に使い心地を試してもらい。

 もしも、どうしてもダメだった場合、その時は僕が使うということになって――、

 しかし、果たして、そんな条件で宿ってくれる精霊がいるのかっていうのも心配なんだけど……。


「ココっていう子には虎助の靴の上位互換みたいなのを作ればいいんじゃない?

 ストームワイバーンの革を使ってさ。

 それなら丈夫だし、あえて聖剣化――いや、この場合は聖靴になるのかな。

 そうしなくても気軽に渡せるし、いろいろ機能を盛り盛りにして彼女に実験をしてもらえば、虎助の役にも立つんじゃないかな」


 成程、そういう装備ならお安く提供できるしね。

 僕個人としても魔法の靴の使い勝手がよくなるのはありがたい。


「それで元春のブラットデアはどうするの。

 こっちも一応パワーアップを頼まれたんだけど」


「そっちは内臓のデータをきちんと分析してからだね。

 他のと一緒にやっちゃうからその時に考えるよ」


「了解」

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