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テンクウノツカイ

◆今週は2話投稿です。

 もう次のお話は明日投稿します。

 因みに今日と明日の話にはちょっとしたSSがオマケとしてついています。

 日もすっかり傾き、魔素灯のあかりに照らされた万屋の店内、その前面を覆う大きな開口部、スライドドアの前を青い目をした金毛のウサギが飛ぶように、いや、実際に宙を舞い、猛スピードで横切っていく。

 賢者様曰く、このウサギは『テンクウノツカイ(天宮の使い)』と呼ばれる神獣なのだそうだ。

 デーモンハンターの皆さんが帰ってからすぐにアヴァロン=エラを迷い込んできたお客様である。


「神獣ですか。じゃあ、万屋への被害も大きかもですし、追い返せるなら追い返した方が無難でしょうか」


「いや、待つんだ少年。アレは皆で倒そう」


 直接的に攻撃してくる様子もないし、このまま元いた世界に帰ってもらうのが無難な対応か。突如現れた神獣という存在にそんな提案をする僕に対して、いつになく好戦的な賢者様を珍しいと感じながらも、思い当たるとすれば、


「もしかしてレアな素材が取れるとかそういうのですか?」


「ああ、それもあるっちゃあるんだが、あれは神獣だ。つまりヤツを倒せば【神獣殺し】の実績が手に入るって寸法なんだよ」


「そっちですか」


 たしかに討伐するだけで手に入れられるレアな実績というものは、実績という存在を認識している者なら、誰しもが喉から手が出るほど欲しいものなのかもしれない。

 特に発達した魔法世界に住む賢者様は、強い魔獣と戦う機会なんてなかなかないだろうから、チャンスがあれば実績獲得を――なんて傾向が強いのだろう。


「だけど【神獣殺し】ってなんか凄そうっすね」


 そう言ったのは元春だ。バリケードのつもりだろうか、玄関付近に飾られる鎧の影から、古式ゆかしい野球部員のような坊主頭をぴょこんと出して店の外を覗いている。


「【神獣殺し】といえば【龍殺し】に匹敵する偉業だからな。もしも倒せたのなら、莫大な能力上昇の上に、倒した神獣によって特殊な恩恵が受けられるって話だ。因みにこのテンクウノツカイには〈天運〉なんてレアな権能もついているらしい」


 しかし、入手できる権能まで発覚しているってことは、この神獣はそれなりに有名な存在なのかな。

 ウサギを倒して〈天運〉とか、幸運のお守りにウサギの足なんてのもあるから、そういう関係なのだろうか。


「でも、神獣なんて殺したら幸運どころか逆にバチが当たりそうっすけど」


 ああ、それはありそうな話だ。迷信や昔話なんかで神の使いを殺した者に祟りをなんてのはよくあるパターンだからね。

 しかし、賢者様はこう述べる。


「そこは問題無い。神獣ってのは神が出した最終試練なんて言われている存在だからな。ある意味じゃあ倒されるべくして存在しているようなもんなんだよな」


 なんでも神獣という存在は、神様が天罰や天災などに生物の姿を与えた存在なのだそうだ。

 そうすることによって、神様が人間を始めとした生物にある程度の指向性を持たせた試練を課しているのだという。

 つまり、神獣という生き物は、神が生きとし生けるものへ課した罰であり、試練であり、超えるべき壁なのだという。

 なんというかはた迷惑な存在である。僕達の世界にもそんな神獣がいるのだろうか。

 だけど、ただ倒される為に生み出された存在だなんて、目の前にいる可愛らしいウサギの外見も相まって何だか可哀想な生物にも見えてくるな。

 神獣の成り立ちを聞いて、僕がセンチメンタルな事を考える一方で、基本的に下衆な2人組はいやらしく口端を歪めて笑い合っていた。


「天運ですか――、ラッキースケベとかありそうですな」


「ふふん。わかってるじゃねえかよ少年」


 たぶん神獣という存在は、2人のような人間に罰を与える為に生まれているんだろう。

 だが、それとはまた別に、


「つか、そんなレアモンスター俺が行っても足手まといなんじゃないんすか」


 元春が賢者様がしてくれた神獣に関する説明をどこまで理解して言っているのかは知らないが、強力な実績が得られるという事は、逆にそれだけ相手が脅威であるという証明でもある。

 そんな存在に魔法初心者が対抗できるのか?元春がそんな心配をするのだが、賢者様はチッチッチッと指を振り自信満々にもこう答える。


「安心しろって元春少年。テンクウノツカイはめちゃくちゃ弱い。ゲームで言うところのスライムとかゴブリンレベルらしいんだ」


「マジっすか!?」


「ああ、〈アナライザー〉でも耐久値は低いと出ているから間違いない」


 そう答える賢者様の顔にはいつの間にかサイバーなメガネが掛けられていた。

 たぶんこのメガネは、スカウ――じゃなくて、その名の通り〈鑑定(アナライズ)〉系統の魔法が込められた、賢者様の世界のマジックアイテム(シェル)なんだろう。

 というか、賢者様の世界のゲームでもスライムは雑魚敵なんですね。


「しかし、その分、スピードなんかが化物みたくなってるみたいだな」


「メタルなアイツみたないな感じっすか?」


 お約束ともいえる元春の返しに「うん?」と首を傾げる賢者様。

 しかし、話の流れからすぐに『メタルなアイツ』が何を示しているのか理解したのだろう。


「少年達の世界のゲームだとそうなるのか。俺のところじゃ金色のスケルトンが有名だな」


 こっちは違うんだ――とはいっても、それはゲームによりけりか。


「けれど、ゲームのキャラみたいに魔法が絶対効かないとかそういう権能は持っていないみたいだな。各種高い耐性を持っているみだいだが結界なんかは問題なく効果があるだろ。虎助少年。出口を――」


「結界で閉じ込めればいいんですね」


 賢者様の指示に僕は手元に浮かべた魔法窓を操作してゲート周りの結界を発動させる。

 因みではあるがこの〈魔法窓(ウィンドウ)〉は、ベル君達とのコミュニケーションを円滑にする為にと、以前にソニアが作った魔法である。元春の魔法修行に付き合う中、無詠唱で使えるようになったということで、最近、本格運用を始めたのだ。

 そんな魔法窓の操作によって、ゲートの周囲に超巨大シャボン玉のような結界が展開される。


「フフン。これでヤツにもう逃げ場はないってことだ。

 よっしゃ。いざ【神獣殺し】ときばろうぜ!!」


 気合を入れた賢者様が懐から拳銃型のシェルを抜き出してそのまま店の外へ、レーザービームのような光線でテンクウノツカイへと攻撃を仕掛ける。

 かたや、元春はというと、「ずるいっすよ」と文句を飛ばしつつも僕を見て、


「虎助、俺にも何か武器を貸してくれ」


「前に使った魔法銃でいいなら、殺傷力は無いけど動きくらいなら止められると思うよ」


 そんなこんなで、どうしようもない2人を見送った僕はといえば、実績の獲得に興味が無いのか、それとも、単に気付いていないだけなのか。相も変わらずエクスカリバーの抜こうと努力するフレアさんにお茶を出し、これで母さんや義姉さんがいたのならもっと殺伐としていたかもしれないと、かたや新しい修行場、かたや急な仕事と、それぞれの理由からこの場にいない2人の事を脳裏に思い浮かべながらも、元春と賢者様がダベりながら食べ散らかしたお菓子のゴミを片付けると、騒動の間ずっとカウンターの向こう側で大人しくしていたベル君に「後は任せたよ」と声をかけて店を出る。

 そして、テンクウノツカイとの戦闘を開始した賢者様達の邪魔にならないようにと、少し大回りに戦場となっているゲート付近に近づいて、


「大丈夫ですか?」


「おっ、虎助少年も参戦か?」


「いえ、さすがに可愛そうですし、実は似たような実績は持っていますから、僕はゲート周りのフォローをしようかと来ただけですよ」


 そんな視線の先には、くりんと光る青い目をレーザー光線のようにたなびかせ、元春が連射する魔弾から逃げ惑う金毛のウサギの姿があったりして、


「オイオイいつの間にそんな物騒な実績をゲットしたんだよ。こないだ見た時はそんなの持ってなかっただろ」


「ちょっとオーナーが開発した魔導器の実験で手に入ってね」


 勉強は苦手なクセにそういうところは本当によく覚えている。

 銃撃する手を止め、耳聡くツッコミを入れてきた元春に、その頭脳を勉強に生かせれば――なんて思いながらも、包み隠さずそう答えるのだが、


「いやいやいやいや魔導器の実験で神獣に挑むなんて無茶もいいところだろ。……いや、そうじゃないのか。その魔導器がよほど優秀なんだな」


 何を勘違いしたのか賢者様がこんなことを言ってくる。


「残念ながら、テンクウノツカイを倒すのにその魔導器は使えませんよ」


「ってことは、大火力タイプの魔導器か。一点集中型ならこいつには使えないか」


 そういう訳でもないんですけど――、

 まあ、説明するのも面倒だからいいだろうと勝手に納得してくれる賢者様への訂正をスルーして、話題を先へと進める。


「それで倒せそうなんですか?」


「今のままじゃダメだな。ありゃ早過ぎだわ。魔弾もかすりゃしねぇし、ドロップの無駄だな。何か策を考えないとな」


「見た感じだとそんなに早いようには見えないんですけど」


 どちらかといえば公園なんかにいる鳩のように、捕まえられそうで捕まえられないという、どこか挑発的な半野生動物のような動きに近いように見える。


「早いというよりも上手いって感じだな。こっちの攻撃は紙一重で避けられちまうし、だったら捕まえてやろうと魔弾をお取りに近付いても途端に距離を開けられちまう。アナライザーの数値に表れてないってことは、回避と瞬発力に突出してるだろうよ」


 アナライザーによる能力検知がどこまでのものなのかは知らないが、相手は神獣、数値には現れない特徴を持っているのかもしれない。


「だったら逆に餌でおびき寄せるとか出来ないんですか?」


 倒すのが可哀想だとはいっても、つい攻略法を考えてしまうのは、日々魔獣を相手にしているからだろうか。僕の安易な作戦を聞いた賢者様はう~んと唸って、


「さっきも言った通り、神獣ってのは生物の括りとは食事する必要もないからな。ウサギの好物ってニンジンだったか。それで釣れるくらいなら誰かが試してんじゃねえのか」


 たしかに手に入る権能まで発覚しているような神獣に食べ物で釣るなんて攻略法があったのなら、そっちの方が有名になっていそうだ。


「つかさ。結界とかで閉じ込められねーのかよ」


「この間、組み込んだ積層結界を使えばなんとかなりそうだけど、僕の魔法技術だと細かい操作ができないから、行動範囲を狭めるだけで根本的な解決にはならないと思うよ」


 餌付け作戦に早めの見切りをつけたのか、元春が出した作戦に肩を竦める。

 実際、僕の魔法技術では、いま展開している結界に一回り大きな結界を重ねるのが関の山。それでは殆ど効果がないと言うのだが。


「でも、逃げられる範囲が多少でも絞られりゃ、捕まえられる可能性は高くなるか」


「そうでしょそうでしょ」


「虎助少年。すまんがもう一仕事やってくれるか」


 2人がそう言うならと、どうせ自分の魔力は殆ど使わないんだ。僕は再び〈魔法窓(ウィンドウ)〉を展開。

 賢者様と元春のチーム。そして、金毛のウサギの動きを見ながら、現在、展開されている結界に重ねるように同じく半球状の結界を重ねる。

 その結果、元春と賢者様、そしてテンクウノツカイは、ゲートをぐるり囲むドーナツ状の空間に隔離される。


 そして始まる第二ラウンド。

 だが、2人は舐めていた。小動物を捕まえることの難しさを――、

 いや、この作戦を発動するまでにも追いかけてきたのだから、その困難さは理解していたのかもしれない。

 それでも挟み撃ちにすれば捕まえられるなどと甘い考えを持っていたのだろう。

 しかし、その考えはすぐに裏切られることとなる。

 張られた2枚の結界の間に生まれた空間は約5メートル。学校などにある運動場のレーンの幅くらいなものだ。

 それだけの幅さえあれば、俊敏性に優れる神獣にとって人間の攻撃を躱すなど造作も無いことだった。

 左右に揺さぶられ、あるいはスピードの緩急で、時には股の下を――、

 そうしてテンクウノツカイに逃げられた2人がまた挟み撃ちの状態に持っていくのには、二手に分かれてゲートを周りを半周ほど走る必要があるのだ。

 つまり、ゲートの直径100メートル×3.14の半分。元春と賢者様はテンクウノツカイに躱される度に約150メートルを全力疾走しなくてはならなくなってしまったのだ。

 これでは結界に閉じ込める前よりも追いかける距離が伸びてしまったことになる。

 それに気付いているのかいないのか、愚直に――いや、それぞれに銃型のマジックアイテムを卑怯に駆使してテンクウノツカイを追いかけ回す2人。

 だが、奔放なテンクウノツカイの動きにその体力は着実に削られていった。

 そんな2人に対して僕はといえば、暗くなったとみるや〈光装飾(イルミネーション)〉を使って2人の安全を確保したり、喉が乾いているとみるや、粉から作ったスポーツドリンクを差し入れたりと、テンクウノツカイゲットのサポートをしながらその様子を観察、頃合いを見計らって声をかける。


「あの……、そろそろいい時間ですし、諦めませんか?」


 僕が声をかけたのは日本時間で午後9時を迎えようとしているタイミングだった。テンキュウノツカイを発見してからもう3時間以上経った計算になる頃だ。

 これ以上やっても無駄じゃないだろうか。実績の獲得を打ち切るように言う僕の声に2人は――、


「いや、まだだ。俺達はまだやれる。だな、元春少年」


「おおっ!!まだまだイケるっすよ」


 ヤケクソになっているのか、それとも小動物には負けられないというプライドか、なんだか昔の熱血ドラマみたいなノリになってきたけど、その根底にあるのが浅ましい動機であることを忘れてはいけない。

 僕は「仕方が無いですね」と溜息を吐いて、


「じゃあ、あと30分だけですよ。直接的な力のない神獣だといってもいつまでも閉じ込めておく訳にもいきませんから」


 何しろ相手は神の獣である神獣だ。

 長い時間、狭い結界の中に閉じ込めてしまっては癇癪のようなものを起こしてしまうかもしれない。

 その辺りの安全性は待っている暇な時間にソニアに連絡を取って確認を取ったものの、相手は天災、厄災、神罰を具現化した存在である神獣だ。いつ、どんな間違いが起こるかもわからないのだ。


「30分もあれば十分だぜ」


「ああ。絶対に捕まえてやる」


 3時間の間つかまえられなかった人達が何を根拠にそう言い切れるのだろう。

 無駄に自信満々な2人に軽く呆れながらも30分、泥臭いというか生臭い、どんな手でも使って捕まえてやるという2人の猛攻を眺めていたのだが…………結局、捕まえることはできなくて、


「いいですね。逃しますよ」


 大の字に倒れる2人に問いかけるも返ってくるのは沈黙のみ、もはや返事をする気力もないようだ。

 僕は用意しておいた元気薬をエレイン君達に配ってもらいながら、『もうお終い?』そう言わんばかりに首を傾げる碧眼のうさぎに腰を折って感謝の意を伝える。


「神獣様も付き合ってもらってありがとうございます」


 そして、ここから帰れますよと教えてあげるように、ゲートの中心に向かって風呂敷ほどある柔らかな葉っぱを無造作に撒いて道を作っていく。

 因みにこの巨大葉っぱは、最終的にスルーされた餌付け作戦をいつ提案されても使えるように、神獣にも好まれそうな植物をとソニア(を経由してエレイン君)に探してきたもらっておいたものである。なんでも〈樹龍アポカリプス〉とやらの柔鱗なのだという。

 元春辺りがこれを聞いたなら『いや、それって葉っぱなんか?』とか微妙なツッコミを繰り出してきそうなアイテムではあるが、深く考えたら負けだろう。

 しかし、案外この作戦が一番効果的じゃなかったんじゃないだろうか。

 キャベツのような柔鱗をモキュモキュと食べながら素直についてきてくれる青い目をしたウサギに、僕は苦笑いを浮かべながらもテンクウノツカイをゲートまで誘導。


「では、またのお越しをお待ちしております」


 言葉が通じるとは思えないけどお客様はお客様。もう一度、頭を下げると共に、内心でウサギに一礼する自分の図を浮かべてちょっと間抜けだな――なんて考えたりもしてしまうのだが、


『ありがと』


 不意に聞こえてきた可愛らしい声に顔を上げると、目の前には何故か金髪碧眼のうさ耳美女が一人立っていて、チュッとほっぺにキスをしてくれたかと思いきや、


「「あ――――っ!!」」


 と、恨みがましい2人の絶叫が聞こえてくる。

 そんな大声に気と取られているその隙に、うさ耳美女はゲートの中心まで軽やかにジャンプ。


「じゃあね。そちらの2人も機会があったらまた遊びましょ」


 そんな言葉を残して光の柱に消えてしまった。

 そして、光の残滓を残すゲートをボーッと眺めていると、元気薬が効いたのだろう元春が歩いてきて、何か文句でも言われるのかと思いきや、


「なあ虎助、キスしてもいいか?」


 いや、何を言っているんだい君は――、

 ついに頭がおかしくなっちゃったのかと友人の脳を心配したのだが、続く言葉を聞いて、ある意味で元春が極めて正常な状態なのだと理解する。


「せめて間接キスを、いまならあのお姉さんの唾液(つば)がお前のほっぺたに残ってる筈なんだ」


 うわぁ。凄く気持ち悪い。

 これは僕も【G】という実績に毒されてしまっているのか。ついつい友人に対して嫌悪感を顔に出てしまう。

 と、そんな僕達の一方で、年齢による差だろうか。やや遅れて合流した賢者様が訊ねてくる。


「少年。何か実績が増えてねえか?」


 いつになく真剣な声でアナライザーをつけた賢者様がそう言ってくるので、元春の魔法修行やら何やらと、最近、使うことの多いステイタスプレートを発動させてみたところ。


「増えていますね」


 どうやら最後にしてくれたあのキスに何らかの意味があったみたいだ。ステイタスに【神獣の加護】という実績が追加されていた。


「神獣ってのは倒すだけが実績の獲得条件じゃないってことか」


 腐っても賢者様は【東方の大賢者】なんて呼ばれる人だったりする。

 そんな賢者様が知識欲を刺激されたように考え込んでしまう一方で、諦めが悪いのはやっぱり元春だ。


「やっぱりキスにはスゲー力があるんだって、だから、な。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、な」


 ああ、こういう時こそ義姉さんかマリィさんがいれば――、

 そんな事を思いながらも、三十六計逃げるに如かず。むちゅーっと唇を突き出し迫ってくるHENTAIから逃げるように素早くゲートに飛び込む僕であった。


 ◆◆◆おまけ◆◆◆


「そういやさ。俺の武器を作ってくれるって話はどうなったんだ?」


「忘れてなかったんだ。僕としては友人に物騒な武器は持って欲しくないんだけど。まあ、この世界に出入りする限りは自衛の手段は必要だからね。でも、向こう(地球)でも持ち歩くなら銃刀法を意識しないとダメだよ」


「ん?銃刀法を意識とかってーと――、ああ、あのゴムナイフみたいなのな」


「三次元ディバイダーね」


「それそれ、……でもよ、前から思ってたんだけどよ、その三次元ディバイダーだっけ?名前長くね。なんかダセーしよ」


「それは(わたくし)も思っていましたの。三次元ディバイダーにはもっとふさわしい名前があると」


「もともと三次元ディバイダーは開発ネームみたいなものですからね。この辺りで正式に名前を考えておいた方がいいのかもしれませんね。それで、元春はどんな武器がいいんだい?」


「おお、ワリーワリー話がそれちまったな。しかし、武器か。無難なところだとあの魔法銃みたいなヤツか。でも持ち歩くとなるとな武器っぽく見えないモンの方がいいんだろ」


「まあね。でも、思うところがあるならすぐに決めなくてもいいと思うよ。友人割引で安くできるけど、それなりにお金がかかるものだからね。取り敢えず適当に設計図を書いてきてくれると嬉しいかな。いいアイデアだったら万屋でも扱うことが出来るだろうし、モノによっては武器を作ってもお金がもらえるって可能性もあるからね」


「マジかよ。よっしゃ、気合を入れて考えてくるぜ」


「あくまで可能性なんだけどね」

◆実績とドラゴン紹介


【神獣の加護】……天宮の使い:〈金兎〉〈縮地〉〈幸運招来〉


〈樹龍アポカリプス〉……ドラゴンの血によって変質した黄金林檎の種から生まれた古の賢龍。植物の体を持ち、この世に存在する全ての理を暴く存在なのだといわれている。

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