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元春と賢者と

今週は本文末尾に掛け合い形式のおまけSSがついています。

 場所は狭間の世界アヴァロン=エラにある万屋。

 元春もすっかり常連となったある日の夕方、ふらりとやって来たのは賢者様だった。

 そして、いつものように入ってくるなりのこのセリフ。


「なんだ。今日は男ばっかかよ」


 今日はマリィさんも魔王様もおらず、なぜだか魔王様がいないタイミングを見計らったかのようにやってくるフレアさんと僕達しかいないのだから、賢者様がそう言いたくなるのも分からないでもないのだが、そもそも次元の狭間という立地条件にあるこの万屋に、女性目当てでやってくることの方が間違っていないだろうか。

 賢者様のいつものセリフに僕が心の中で溜息を履く一方で、初めて会う渋い中年(に見える)男性の登場に元春が落ち着かないようだ。

 後で紹介してあげた方がいいのかな。意外なところで人見知りなところがある友人に、そんなことを思いながらも、先ずは店主の役目を果たすべく賢者様に声をかける。


「お久しぶりです賢者様。それで、今日はどんな御用でしょうか?」


「集金と新商品の売り込みだな。面倒なことに虎助少年もポーションを作れるようになっちまったみたいだからな。新作を作ってきたんだよ」


 正確には僕が作っているというよりも、僕が使った錬金術をトレースすることによってエレイン君達にも平凡な(・・・・)下級ポーションの量産体制が整ったという方が正しいのだが、それはこの際どうでもいいとして、

 賢者様の新作のポーションって……また変なポーションでも作ってきんだろうな。

 特に期待もせずどんな物を作ってきたのかを訊ねる僕に、賢者様は懐から、まるでマニキュアかなにかだろうか、ラメのようなキラキラとした物体が入った紫色をした液体入りの小瓶を取り出し、自信満々にこう言い放つ。


「惚れ薬の第二弾!! とゆうか、これはその廉価版だな。モテ薬だ」


 うん。賢者様は今日も絶好調だね。

 あからさまに疑わしげな目線を向ける僕に代わって飛びついたのは元春だった。


「売って下さい」


 そう言って綺麗な土下座をする元春に、賢者様は一瞬虚を突かれたように呆けるも、すぐに優しげに見える微笑を浮かべて語りかける。


「ふむ、少年――売るのはいいが、どうしてこれが欲しいんだ?」


「そんなの、モテたいからに決まってるじゃないですか――っ!?」


 それはまさに魂の慟哭だった。


「フフ、フフフフフフ。なんだなんだこの少年は、話が分かるじゃねえかよ。よっしゃ。特別にこのモテ薬をタダでくれてやろう」


 かたや、同志を得たり。そんな歓喜に打ち震えるような賢者様の提案は、ぱっと聞く限り、気前のいいようななことを言っているように聞こえるけれど、騙されてはいけない。


「やめておいた方がいいと思うよ元春。賢者様はなんいうかその――マッドサイエンティストみたいな人だから」


 体よく実験台にされるのがオチだろうと指摘しようとするのだが、


「人聞きが悪いぞ少年。俺はだな、この少年の情熱にほだされた。ただそれだけなんだよ」


 いや、どの口が言いますか。


「いや、俺は実験台でもいいんだ。モテの為なら喜んで身だって投げ出すぜ」


 ジト目を送る僕の一方で、元春がなんかカッコイイ風に言うのだが、その根底にはどんな手段を用いてでもモテたいという浅ましい本音があることが透けて見える。

 本当に困った友人である。

 けれども、まあ、この経験も元春にとって、ある意味でいい薬(・・・)になるだろうと溜息を一つ。


「それでこのポーションにはどんな副作用があるんです」


 処置なしと軽く流す僕の対応に「うぉい」元春から小気味のいいツッコミが入るのだが、

 元春は自業自得になるとしても、店主としてはいい加減な代物を売る訳にはいかないのもまた然り、訊ねる僕に賢者様が答えるには、


「なに、簡単な幻惑魔法の応用だ。これはその中でも匂いに特化したやつでな、えっとだな――、お前等はフェロモンって物質を知っているか?動物が異性を引き寄せる臭い物質なんだが、要はそれと同じような効果を魔法薬として再現したアイテムだな、これは」


 聞く限りでは雑誌内広告にありがちな怪しい香水って感じの印象だけど、そこは魔法的なアイテムだ。それらのアイテムとは違って実際に何がしかの効果を発揮するのだろう。

 だが、ものが賢者様が開発した魔法薬となると、


「大丈夫なんですか?」


「ああ。一応は、マウスや俺自らでその効果を確かめた」


 何か副作用のようなものがあるのではないか?と訊ねる僕だが、

 賢者様がわざわざ自分で試したということは、このモテ薬とやらは本当に完成品ということなのか。

 ただ、それならどうして賢者様が自分で使わないのかという疑問が残る。

 本当に効果のあるモテ薬なら、賢者様がそれを他人に譲り渡すだろうか。

 しかし、馬鹿正直にそれを聞いたところではぐらかされてしまうだろう。自分にとって都合が悪いことは言わない主義の賢者様が口を開くとは思えないからだ。

 ならば僕は元春を生贄に薬の効果を見ればいいと、それ以上の追求は先送りに商談を進める。

 もしものことがあっても元春なら実力行使で止めればいいからね。


「それで値段の方はどのように設定するんです?元春の分はタダとしても、商品として扱う限りは賢者様が考える適正価格を知っておきたいのですが」


 材料費に技術料。そして万屋の儲けなどを込みにした販売価格はどれくらいになるのか。確かめる僕に賢者様が提示した金額は、


「ハイポーションよりは安く売りたい。銀貨8枚でどうだ」


 そうですね――と言いかけたところで元春が聞いてくる。


ちな(因みに)、銀貨8枚って円でいうとどれくらいなんだ?」


「万屋の設定で言うのなら日本円で8000円ってところかな」


 世界によって銀貨の質や大きさがまちまちなので一概には言えないが、銀という金属の価値に限っては、魔法金属化させたミスリルの人気の高さから万屋(ウチ)では銀貨1枚を1000円という価格で取引をしている。

 と、そんな僕の回答に、元春が自分の小遣いやらなんやらでモテ薬がどれくらい確保できるのかとブツブツと計算し始める。

 そして、それを見た賢者様といえばこう言うのだ。


「おっ、この食いつき、これなら売れそうじゃねえか」


 まあ、元春の反応を見た感じでは、同じく下世話な妄想を抱く人達に一定のニーズがありそうではあるが、それはこのモテ薬に8000円という価値が妥当であればという話である。


「それで、どうやってその効果を確かめるんです?」


「少し待ってりゃあ嬢ちゃんが来るだろ――」


「もしかしなくてもマリィさんを実験台にするつもりですか。命知らずですね」


「ただ反応を見るだけだって、直接手を出さなけりゃ問題ねえだろ」


 そういう問題じゃないと思うんですけど――、

 なんて話していた丁度そのタイミングで、窓の外に見えるゲートに光の柱が立ち上がる。


「おっ、噂をすりゃあ来たじゃねえか」


 賢者様の言う通り、時間的にはマリィさんが来る頃だけど……どうやら今日は違ったみたいだ。

 光の柱が収まったそこにいたのは鎧やらローブやらに身を包んだ4人の男女だった。


「ハンター方々ですかね」


 銀の鎧を装備した剣士に、ドワーフかな?斧を担いだ小柄な獣戦士。そして、更に小さな軽装の女性にローブを身にまとった魔導師らしき人物。各人の見た目からそう判断する僕。

 因みに一目見て僕が盗賊などの犯罪者集団である可能性を捨てたのは、パーティの中に女性が居たからだ。中には女性が所属する盗賊団なんてものも居たりするそうなのだが、下世話な理由から女性メンバーがいる盗賊団は少ないと聞く。

 なにより、彼等が身に着ける装備品や転移後すぐの警戒度など、規律が取れているような雰囲気が無法者に醸し出せるそれではないと感じたからだ。


「ふぅん。いいカモが来たじゃねえか。というか、こんな離れててよく見えるな。まあ、どっちにしてもモテ薬を試すには丁度いいな。少年、準備だ」


 賢者様は僕の目の良さに感心しながらもカウンターの上のモテ薬を元春に押し付ける。

 そして、モテ薬を受け取った元春はといえば、うす。と気合を入れるようにして、渡されたモテ薬を飲み干す。

 しかし、よくあんな怪しげな飲み物を何の躊躇も無く飲めるものだ。

 元春だからといえばそれまでだけど、これは何かあった時はすぐに止めないといけないな。

 以前にフレアさんが賢者様の魔法薬でバーサク状態に陥った事を思い返し、薬を飲んだ元春に警戒の視線を向けながらも、ゲートからのおよそ100メートルを慎重に歩き入店したお客様に挨拶をする。


「「いらっしゃいませ」」


 店員でもないのにわざわざ挨拶をする元春。

 どうせ店員のフリをしてモテ薬の効果を試そうという魂胆だろう。

 下衆な友人のあからさまな行動に僕がさりげなくジト目を向ける一方で、リーダーなのだろう。腰に剣を刺し、機能美を追求したかのような銀の鎧で全身を固めた青年が声をかけてくる。


「あの、ここはどういった場所なのでしょうか?」


「はい。ここは狭間の世界アヴァロン=エラです。お客様方はどうやってここにいらしたんですか?」


 聞けば彼等はとある世界に存在する聖教会という組織に所属するデーモンハンターなのだという。

 下された司令により、吸血鬼が棲み着いたと噂される館を調査しようと、その敷地に入ったところ、濃い霧に巻かれて、気が付いたらこのアヴァロン=エラに降り立っていたとのことだ。

 最初はなにがしかの罠を疑ったそうだが、特に攻撃される気配もなく、幻惑系のバッドステータスも受けていないということで、転移系の罠なのでは?と判断、現在地を確認するべく目の前にあったこの万屋に目を付けたのだという。

 僕としてはその転移系の罠というのが気になるのだが、個人的な興味は別として、


「多分それは移動性の次元の歪みに巻き込まれたんですね。ここにはそういったお客様がよくいらっしゃるんですよ」


「つまり、ここは私達の住む世界とは別の次元に存在する世界だと」


 簡単な説明に顎に手を添え呟いたのは、白いローブに身を包んだグラマラスなお姉さんだ。

 見た目から察するに彼女がこのパーティ唯一の魔導師なのだろう。唯一、次元の歪みに関する知識がある人のようだ。


「戻る方法はあるんですよね?」


 ブツブツと自分達が遭遇した現象の考察をし始めてしまう魔導師さんに代わり、訊ねてきたのは、最初に話しかけてきた青年だ。知識欲を優先させてなかなか解説をくれない仲間を見かねて聞いてきたのだろう。


「ええ、それはさっきここに来た時に降り立った場所、ゲートと言うんですが、その中心にもう一度立てば、いつでも元の世界に戻れますよ」


 その言葉を聞いて、銀鎧の青年はパァッと明るい顔を浮かる。そして、「ありがとうございます」なんて頭を下げてくれるも束の間――、


「あれって聖剣ですよね」


 そう青年が視線を向けるのは、うんうんと必死に踏ん張っているフレアさんではなく、その手に握られる黄金の剣だ。やはり剣士としては気になってしまうのだろう。というか一番目立つ場所にディスプレイされてるからね。


「一応、聖剣エクスカリバーということになってますね。お値段は応相談になりますが」


「売り物なんですか?」


 僕の言葉が信じられないとばかりに素っ頓狂な声をあげる銀鎧の青年。

 だが、僕からしてみると彼くらいのリアクションなど既に見飽きたもので、


「はい。ここはお店ですから。ですが、エクスカリバーが認めてくれないと、あの台座から持ち出すことが出来ませんので、それが販売の最低条件となっていますが」


 正直、その条件さえ満たしていれば銅貨1枚で売ってもいいと僕は思っている。

 目玉商品が無くなるのはお店としては痛いけど、いつまでも展示されているだけというのもエクスカリバーにとっては不幸なことだからね。


「成程……僕もチャレンジしてみてもいいですか」


 そう言う青年に、


「構いませんよ。あの、フレアさん。お客様がチャレンジしたいようなので代わってくれませんか」


 僕はフレアさんに声をかける。


「む、君もこのエクスカリバーを求める勇者という訳か。ふふん。お手並みを拝見させてもらおうか」


 そして、フレアさんはその言葉通りエクスカリバーの脇に避けると腕を組んで、


 えと、フレアさんのそのセリフ――物凄く噛ませ犬っぽいですよ。


 僕が心の中でそんなことを呟いるなんて思わないだろう。場所を譲ったフレアさんが見守る中で、いま、銀鎧の青年のエクスカリバーチャレンジが始まる。


 そして、その結果は――、


「残念ですが、僕には抜けそうにありませんね」


 人柄も良く実力もありそうな彼ならばもしかして――とも思ったのだが、残念ながら彼もエクスカリバーのお眼鏡に叶わなかったらしい。強化魔法をかけてまで行った挑戦にもエクスカリバーはピクリとも動かなかった。


 だが、これは――、


 残念そうに柄を放す彼を慰めるようにエクスカリバーがその刀身に聖なる光を灯したのだ。

 そんなエクスカリバーの反応に、フレアさんは勿論のこと、青年のパーティ一同も、そして、モジモジと気持ち悪い元春はいいとして賢者様までもが目を見開く。

 結果は抜けずに終わったのだが、彼になんらかの資格があるとエクスカリバーが認めたのだろう。

 それが何かと聞かれても僕に答えられるものではないが――、

 少し待っていて下さいと彼達を引き止めると2階に上がり、


「こんな武器もあるんですが――」


 持ってきたのは一振りの片手剣だった。

 それは次元を超えてこの世界に紛れ込んできた、ごくごく微量のピュアシルバーが混ぜられた魔法剣。聖剣とまでは言わないものの、死霊系の魔物への特効を持つ名無しの名剣だ。

 そして、僕からその片手剣を受け取った青年は、抜き放った銀色の刀身を眺めて、


「これを僕に譲ってくれるというんですか?」


「ええ、貴重な金属が使われていて金貨500枚と値は張りますが、デーモンハンターの皆さんには役に立つかと思います」


 しかし、その値段を聞いて驚く青年達。


「き、金貨500枚!?」


 おっと、これはちょっとふっかけ過ぎたかな?


「あの、高かったですか?もしかして、持ち合わせが無いんでしたら、金貨ではなく素材や装備の下取りでとかも出来ますけど」


「いや、そうじゃない。安過ぎるくらいだと思ったんだ。本当にその値段でいいのかい?」


 そう思って僕は素材払いなどの回避策を提案するのだが、どうやら彼が驚いていたのは安過ぎるという意味だったみたいだ。

 しかし、日本円にして五千万を安いと言い切ってしまうその財力には驚かされるな。

 真剣な気持ちでエクスカリバーにチャレンジするくらいだから、それなりにお金は持っているだろうとは思っていたけど、まさか約五千万円くらいする剣を安いと言ってのけるとは思わなかった。

 まあ、世界によっては実際に金を生み出す錬金術を使える術士が存在したり、逆に胡椒が金と同じ価値なんて都市伝説のような話が実際に存在するなんて世界もあるそうだから。物の価値観なんてそれぞれだろうと思うけど。

 ともかくだ。買えるだけのお金があるなら店側としてすることは一つしかない。


「ええ。この剣も貴方のような使い手に使われた方が嬉しいでしょうから。但し、この剣が持つ力に見合うような使い方をお願いしますよ」


 とはいえ、釘を差しておくことも忘れない。


「ああ、ああ。この剣に誓って」


 しかし、エクスカリバーに認められた彼ならば、私利私欲でこの剣は使わないだろう。

 と、そんな会話を交わしている内にもお金の用意ができたようだ。

 どうやら彼がエクスカリバーにチャレンジの傍ら、元春が何度か声をかけていた軽装の女の子がこのパーティの財布番兼空間魔法の使い手らしい。亜空間から取り出した金貨袋をカウンターに乗せてくれる。

 その数を見て、これはちょっと多いんじゃないのかと思ったのだが、金貨袋に続いてカウンターに並べられた物の数々に納得する。

 どうやら他の仲間の面々も魔法金属で出来た防具などに目をつけていたらしい。次々とカウンターの上には防具の数々にポーション類が積み重ねられ、

 結果的に本日の売り上げだけで金貨千枚以上となってしまった。

 というか、一日の売り上げが一億円以上とか……。

 久しぶりの大商いに、本当にこんなに儲けてしまっていいのだろうかという思いが先に来てしまうが、儲けの殆どが万屋の施設拡充やソニアの魔法研究様に回されたりするので、考えても無駄だと諦める。

 そして、双方ホクホク顔のまま「ご来店ありがとうございます」と見送って、もう片方、同時並行的に進行していた取引相手に声をかける。


「そういえば、全然でしたねモテ薬」


「いや、俺もさ。何度かお姉さん達に声を掛けたんだけどよ。一人はブツブツって何か考えてて聞いてくれねえし、もう一方はあの金髪剣士に惚れてるみたいでさ。ぜんぜん話を聞いてくれなかったんだっての」


 ふむ。元春の証言を聞く限りでは、それぞれに興味がある事が存在したが為にモテ薬の効果が発揮されなかったと……。

 いや、相手が高レベルなハンターの方々だけに、単純に薬の効果がレジストされただけなんて可能性も無きにしも非ずだが、


「賢者様。これ失敗じゃないんですか?」


「おかしいな。俺がわざわざ王都まで言って実験したときには、下は5歳の女の子から、上は100を越えたばあちゃんまで声をかけられまくったんだが、個人が持つ魔力とかに関係あんのか」


 どうやら賢者様が自分の為に使わなかったのは、その異常なまでのモテ効果にあったようだ。

 たしかにストライクゾーンが特殊かつ狭い賢者様にとっては、無差別にモテるというその薬は使えない薬なのかもしれない。

 しかし、それならどうして元春にはその効果を実感できなかったのか。

 とりあえず、その疑問が解けるまではお蔵入りとなったこのモテ薬だったが、この時の僕は忘れていた。元春には【G】という女性に嫌悪を抱かせる実績があるということを――、

 そう、モテ薬の効果は発揮されていたのだ。

 ただその効果を上回る程に【G】が持つ権能〈嫌悪対象〉の効果が大きかっただけなのだ。

 結果、単に普通に接する程度に抑えられていただけだったのだ。

 僕は後になってその事をソニアから聞かされたりもするのだが、その間に、別のアプローチから開発された効果と価格の軽いモテ薬も開発されたりと、賢者様にその事を報告するタイミングがつかめず、結局、そのモテ薬は幻の商品に終わるのだった。


◆◆◆おまけ◆◆◆


「そういやオークの○ンタマでさ、媚薬とかつくれねーのかよ。異世界モノのテンプレだろ」


「テンプレって、まあ、そういう用途もあるみたいだけど、レシピを知らないからね。オーナーなら知ってるかもだけど、どっちにしてもオークの睾丸は全部使っちゃってもうないから作れないよ」


「へっ!?使ったって、この前、デッケーのを取りまくってたじゃねえか」


「この前、オークを倒した時に飲んだ元気薬。あれってポーションに魔獣の睾丸なんかを混ぜて作る薬なんだよ。新鮮な内に処理した方がいい薬が出来るからね。すぐに使い切っちゃったんだ」


「つーことは俺等が飲んだのは?」


「新鮮っていっても、さすがに倒してすぐには作れないから、あれはベヒーモっていう巨獣の睾丸を使った元気薬だね」


「どっちにしても○ンタマじゃねーかよ!?」


「でも、効果はあったでしょ」


「確かにあの日から暫く――って、待てよ。志保姉はこのことを知ってるのか?」


「知ってる訳ないじゃない」


「オイオイ。お前……殺されるぞ」


「ふふ……バレなきゃ大丈夫だよ」


「意外と命知らずなんだよな虎助は」


「元春にそれは言われたくないね」

〈嫌悪強調〉……所有者の嫌悪されるべき行動が強調されて相手に伝わる。紳士的な行動を心がけていれば発動しない権能。


〈元気薬〉……ポーションをベースに魔獣の睾丸を使うことによって作られるスタミナ薬。加工方法は勿論だが、使用されるポーションと睾丸の品質によっても等級が決まる。魔法世界では夜のお供として大人気の魔法薬。元春と志保が飲んだ元気薬は最上級のもので、未だ元春はその効果に悩まされているのだという。因みにオークの睾丸で作った中級元気薬は複数人の探索者が大人買いしていった。おそらくは転売目的なのだろう。

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