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●とある特殊部隊のバトルロイヤル03

◆今回は警察の特殊部隊に所属する春日井聡子視点のお話となっております。

「お疲れさまです。

 実際に戦ってるところを見てたからわかってましたけど、やっぱり八尾さん達でもホリルさんには敵いませんでしたか」


「春日井ぃ、テメ、見てたんなら手伝えよ」


「いえいえ、私ごときが相手になると思います?

 途中で一発魔弾が飛んでいったでしょ、あれ私なんですよ」


 狙撃しようとした瞬間に位置を探り当てるような人なんかを、私なんぞがどうこう出来るわけがないじゃないですか。

 そんな私の言い方に八尾さんも自分で無茶を言ったことを分かってくれたみたいですね。「ああ――」と気不味そうな顔で頭を掻いて納得してくれたみたいで、


「それで、八尾さんはどうやってやられたんです?

 最後、ホリルさんに吹き飛ばされた後がよく分からなかったんですけど」


 八尾さんがやられた瞬間、その映像を見ていましたが、なんでやられたのかがよくわからないんですよね。

 八尾さんが情けなくも逃げようとしたところで、ホリルさんに軽く押されただけでやられちゃったみたいなんですけど、バリアブルシステムの仕様を考えると、その結末はちょっと不思議なんですよね。

 もしかして、降参をしたのかとも考えたんですけど、八尾さんがそんな殊勝なことをするとは思えないですし。

 その時の状況が気になって聞いてみたんですけど、八尾さん自身もどうして自分がやられたのかがわからなかったみたいです。


「ああ、それな。それがよくわかんねぇんだよな。

 たしかに最後の攻撃、ただ突き飛ばされただけで、まだバリアは残ってたハズなんだってのにゲームオーバーって、あれってどうなってるんだ」


「狙撃されたんじゃないのか。

 あの金髪爆――「チッ――」じゃなくて、ユリス様にやられたとか」


「いや、一回狙われたからな。狙撃は気をつけてたんでそれはねぇと思うんだが……」


「なら義姉さんにやられたんじゃないですか?」


 と、ここで私達の会話に入ってきたのは近くでシステムの管理をしていた虎助君です。

 フィールドに残る人数が少なくなって手が空いたのかな。せわしなく操作していた魔法窓(ウィンドウ)から手を放して、私達の会話に入ってくるんですけど。


「ん、それって、お前の姉ちゃんがなんか魔法で俺を仕留めたってことか」


「いえ、状況から察するに、単に拳圧を飛ばしただけなんじゃないかと」


「そうね。属性変化はまだ出来ないって言ってたけど、今回の場面だと逆にそれがよかったんでしょ」


「あの、どういうことです?」


 親子二人で納得してもらっているところ悪いのですが、詳しい説明をプリーズと私が言うと。

 どうもその拳圧というのは、格闘ゲームや漫画などにありがちなパンチを魔弾のようにして飛ばすような技術だそうで、志帆さんは今、それに自分の得意属性である火を乗せる練習をしている最中なのだそうですが、その完成にはまだ至っていないらしく。

 今回、不完全なそれを飛ばした結果、八尾さんにはそれが見えずに、あっさりとくらってしまったってことのようです。


「って、俺はその失敗した技にやられたってことなのかよ」


 虎助君と教官の話を聞いてガックリと肩を落とす八尾さんなんですが、


「どうなんでしょう。義姉さんなら狙ってやったという可能性もあると思いますけど」


「志帆ちゃんならそっちの方がありそうよね」


 虎助君と教官が志帆さんの性格から、あえてそれを使ったんじゃないかと指摘すると、


「言い訳、乙――」


「だな」


 梅田さんと新野さんが誂うようにそう言って、八尾さんがそんな二人に襲いかかっりまして、

 ただ、この三人のじゃれ合いはいつものことなので、私も他の隊員も三人のことは完全に放置です。


「で、あと残っているのは、隊長に設楽副隊、日出野と瀬戸だけかよ」


「これってふつうに全滅しちゃうんじゃ……」


 私達が現在の戦況を確認していたところ、ここで私達がいる牢屋の中にぴょこんと小さな女の子が入ってくる。


「負けちゃいました」


 おっと、私達が八尾さんの微妙なやられっぷりについて話していた間に、誰かが日和ちゃんを倒したみたいですね。


「あら、ひよちゃん、やられちゃったのね。誰にやられたの?」


「隊長さんにです。

 ユリス様の攻撃から逃げてたところを横からやられちゃいました」


 さすが隊長――と言いたいところですが、こんな小さい女の子を――、しかも、追われているところを横からかっさらうなんて、いい大人としてどうなんでしょう?

 まあ、そういうクレバーなところは隊長らしいといえばらしいんですけど。


 と、そうしているうちにもまた一人、また一人と牢屋に人が増えてきたみたいですね。


「あー、悔しい、やられた。

 強すぎでしょあの人、

 それに、まさかあんな邪魔が入るなんて」


 キィ――と、その文句から志帆さんはホリルさんにやられてしまったみたいです。

 しかし、志帆さんの邪魔っていうのは誰のことなんでしょう。

 ちなみに、最後まで勝ち残ったのは、意外といいますかなんといいますか。

 終始、建物に隠れながら狙撃を行っていたユリス様のようです。

 ホリルさんが隊長と戦っている間に極大の魔砲を打ち込んで仕留めたみたいです。

 というか、牢屋からでも、ハッキリと見えていましたよね。

 ホリルさんの断末魔の叫びによると『こんなの避けられないわよ』とのことですが、虎助君の話によると、この極太ビームを撃つには相当なチャージが必要らしく、ホリルさんが志帆さんや隊長との戦いに集中している間になんとか準備が整ったみたいで、もう少しチャージが遅れていたら、逆にユリス様がやられていたんじゃないかってなことみたいです。


 しかし、これでゲームセットですか――と、全魔法窓(ウィンドウ)がユリス様を映している状況に私はそう思ったんですけど。


「あれ、まだ戦いが終わってない?」


「何を言っているの。まだホリルさんとアニマちゃんが残ってるじゃない」


「あっ――」


 思わず声を出してしまったのは私だけではありませんでした。

 牢屋の中を見回して、あの美人のホムンクルスさんがいないことに気付いた隊員が騒ぎ出します。


「全然気づかなかった」


「マジか」


「そういえば、そんな子もいたな」


「てか、どこに隠れてたんだ。あんだけの人数がいて、誰も会わなかったってものおかしいだろ」


 広いとはいえ、あの廃墟は所詮は映画のセットのようなもの。

 なので、その広さもちょっとした商店街と同じくらいの広さしか無く、その中に私達隊員と彼女たち五人が配置されたとなると、相当うまく隠れでもしない限り、一度も遭遇しないということはないハズなのですが、どういうことでしょう?


「あの子の場合はもともとそういうところがあって、虎助がそれを伸ばしたからねぇ」


「ホント厄介だわ。虎助とおんなじ」


 ああ、そういう人いますよね。

 と、そうこうしている間にも現場では動きがあったようですね。

 唯一画面に映るユリス様が肩に乗るスクナの指示で魔弾を連射します。

 すると、どういう理屈化はわかりませんが、アニマさんが炙り出され。

 アニマさんはここが勝負時だと判断したのか、自分を守るバリアの耐久値を犠牲にしながら突撃。

 ユリス様が放つ無数の魔弾を最小限の回避と防御魔法で突き抜け、ギリギリのところでアニマさんが競り勝ったみたいですね。

 接近戦に持ち込んたアニマさんは、太腿のナイフホルダーに刺していたナイフ――いえ、アレは包丁と呼んだ方がしっくり来ますかね――を使って、胸を狙った一撃を繰り出し、ホリル様のバリアが消し飛んで決着ですか。


 このシステムは急所に大きなダメージが入りますから、相当的確な狙いだったんでしょう。


 そして、勝負も決まり、みなさんが戻ってきたところで表彰式に移るのですが――、

 見事に上位を教官に連れて来られた人達に持っていかれましたね。

 ギリギリで隊長がご褒美をもらえる順位につけているってくらいですか。

 ちなみに、そのご褒美は万屋秘蔵のアイテムコレクションの中から好きな物を選ぶというものでした。

 そして、そのラインナップを見た私達の反応がこちらです。


「おいおい、古傷や後遺症、欠損を治すポーションって――」


「……薄毛にも効いたりするのか?」


「俺は精霊を宿すメモリーカードってのが気になるな。いろいろとサポートしてくれるんだろ」


「いや、ここは断然アシスト付きの防具だろ」


 と、私達が注目している意外にも、素材から装備からと、いろいろなご褒美が用意されていて、

 隊員のみんなが好き勝手に欲しい物に注目している間にも、勝者五人がそれぞれに好きなアイテムを選んだみたいです。


 ちなみに、ご褒美をもらえた上位五名がなにを選んだのかというと、

 アニマさんがなにやらロボットのようなものを――、

 ユリス様が高い美容効果を持つポーションを――、

 ホリルさんが黒龍の革で作ったグローブを――、

 志帆さんがちょっと地味な金色のメダルを――、

 そして、隊長が最初に誰かが言った部位欠損を治すポーションなどの回復薬のセットを選んだみたいですね。

 まあ、隊長の場合、隊の誰かさんが言ったみたいな目的じゃなく、単純に隊の誰かが重大な怪我を負った場合に使う為のポーションだそうですが……。


 しかし、どちらにしても、こんなラインナップを見せられたら、もし次があったのならと、ハリキリざるをえませんね。

 教官はその辺の狙っていたのでしょうか。


 ただ、次の時はもう少し参加者を手加減してくれると嬉しいと思います。

 とりあえず、当面の目標としては、ひよりちゃんに勝てるくらい強くなることでしょうか。

◆上位五名が受け取ったご褒美。


 アニマ……工作用ゴーレムアーム。

 ユリス……龍種の骨髄などから作った魔法の美容液。

 ホリル……ヴリトラレザーのグローブ。(武器破壊効果付き)

 志帆……野薔薇のメダリオンver.3.1.1。(オリハルコン仕様の試作品)

 川西……ダーケン、カドゥケウス、パズズ、ダイダルゼリーなどの素材を使った新薬。(安全性は確認済)


 ちなみに、八尾の相棒である大剣〈鬼殺し〉は万屋製の武器ではなく、部隊とつながりのある鍛冶工房で作られたものだったりする。

 そして、ユリスがホリルに対して発射したとされる砲撃ですが、

 あれは以前、ウルが魔境から行ける地下迷宮の女王アリ退治に使った砲撃と同じものです。

 ただ、その砲撃にはロックオンと鑑定の機能が付いており、砲撃チャージの間にロックした相手を鑑定、それが人間であった場合は死なないように砲撃の質を変える設定になっております(直接的なダメージから状態異常や魔力そのものにダメージを与えることに特化することによって、相手の死亡を防ぐシステム)。


◆次回投稿は水曜日の予定となっております。

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