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●とある特殊部隊のバトルロイヤル02

◆今回は前話とほぼ同じ時間軸にある八尾次男(つぐお)のお話となっております。

 世界が広いっていうのはこういうことを言うんだろうな。


 教官に連れられて、久しぶりのアヴァロン=エラにやってきた俺達が、今度はなにをやらされるんだと思ったら殺し合いだという。

 まあ、殺し合いっていうのは教官の冗談で、要するに、なんとかっていうバリアを使った実践訓練だって話だが、その戦い自体はリアルなバトルロイヤルらしく。

 面白ぇ、やってやろうじゃねぇかと気合を入れる俺だったが、今回、虎助の野郎は参加しねぇらしい。

 残念だぜ。せっかく前の借りを返すチャンスだと思ったんだけどな……。


 んで、その代わりってワケじゃねぇが、今回の訓練には教官が連れてきた女共が参加するそうだ。

 教官の娘で虎助の姉貴ってヤツは油断できねぇだろうが、他はちゃんと戦えるのか。

 正直、心配だっておもったんだが、

 ただ、あの教官がただひ弱なだけの女を連れてくるなんてあり得ねぇし……、

 って、止めだ止め、んなこと、直にぶつかってみりゃわかるこった。

 で、ダメそうならソッコーで落としてやりゃいいだろ。

 つっても、もしもそれで強かったなら全力でやるだけって話なんだがな。


 なんて、ゴチャゴチャと考えている間にもいろいろと準備は進んでたみたいだな。他の野郎どもの配置も済んで、ちっこい魔法窓(ウィンドウ)に三十秒前からの数字が出てきて、それがゼロになったら戦いの始まりだ。

 んで、初期位置からすぐ、なんとかってエルフの女を見つけて、落としてやろうって正面から突っ込んでいいったまではよかったんだが、


「私がいくら可愛いからって手加減は無用よ」


 初撃で思いっきりカウンターを食らっちまった。

 なんとかってシステムのバリアのおかげで、俺へのダメージは殆ど無くて済んだが、バリアなし食らったらそこでノックアウトだったかもって思うとゾッとするぜ。


 とにかくこいつはヤベェ。

 虎助並と思って対処した方がいいんだろうな――ってことで、


「テメェがおっかねぇってことはわかったよ」


 俺はエルフの女にそう応えながらも立ち上がって、いったん距離を取ろうと考えたんだが、

 そこで俺の真上から降ってくる足があってだ。


「と、上手く避けられちゃったみたいね」


 ここでこの女が来るのかよ。

 ズガンと衝撃音と同時に立ち昇った砂煙の中から殴りかかってくるのは志帆とかいう虎助の姉貴。

 俺はその攻撃を横に飛び退いてなんとか躱し、ガキッと近く響いた硬質な音に振り向くと、そこにはすでに殴り合いを始める虎助の姉貴とエルフ女がいやがって、


「ってか、無視すんなよ」


 これを隙だと思っちゃいねぇが、コイツ等の実力なら遠慮はいらねぇだろうと、最近の相棒である大剣〈鬼殺し〉で斬りかかるんだが、そんな俺の攻撃にこの女共ときたらだ。


「ちょっとアンタ、狙うならそっちにしなさいよ」


「フフ、一対二ね。面白いわ」


 勝手なことを言いながら物騒な拳を振り回しやがって、

 つっても、虎助の姉貴の言い分は魅力的だ。

 実際、ここまでの攻防を見る限り、いまここにいる人間の中で一番強ぇのはこのエルフの女だ。

 ここは虎助の姉貴の言う通り、先にエルフの女を仕留めてから虎助の姉貴を――、

 って、そんな小狡いこと出来っかよ。

 と、怒りを込めてフルスイングした大剣に、エルフの女はひょいと軽い前蹴りのように片っぽの足を乗っけて、


「ふ~ん、いい狙いね。

 でも、すぐに移動しないと危ないわよ」


 くそったれ、誰か狙ってやがったのかよ。俺達のところに魔弾が飛んできやがった。

 と、慌てて魔弾を剣で受け止める俺の一方、エルフの女はそんな魔弾を俺の斬撃に乗ってフワリと大きく飛ぶと、着地地点に落ちていた小石を拾い上げ。


「〈空射出(カタパルト)〉」


 なにかの魔法だろうな。唱えながら思いっきりそれをぶん投げる。

 とだ、少し離れた廃墟の壁が大きく崩れ落ち。


「今っ――」


 出遅れたか――、

 それを隙にと虎助の姉貴がエルフの女に襲いかかり、俺も遅れて回転斬りを追加しようと思ったんだが、エルフの女はそんな俺達の攻撃に対して、投擲モーションのまま地面を思いっきり踏み抜いて、


「震脚」


「くっ――」


「がっ――」


 俺と一緒に虎助の姉貴もふっ飛ばされワケなんだが、


「さすがに強いわね。やっぱギリギリまで隠れてるべきだったかしら」


「そんな性格でもないでしょうに」


「まあね」


 くっ、また俺を無視して殴り合いを始めやがった。

 しかし、そんなぶつかり合いも長くは続かなかった。

 エルフの女と虎助の姉貴が戦ってる周辺に魔弾の雨が降ってきやがったからだ。


「くっ、なんだこりゃ。狙撃ってレベルじゃねぇぞ」


「これはユリスね。派手にやっておいてなんだけど、あの子に見つかると厄介なのよね」


 悪態をつく俺にエルフの女が呟くように言いやがる。


「あの人、マリィって子のお母さんでしょ。こんな無茶苦茶なんて聞いてないわよ」


「見た目がお淑やかだから勘違いするのも無理ないけど、彼女、あれでハッピートリガーってのみたいだから」


 しかも、喋りながら軽く避けるとは余裕だな。

 ちなみに、魔弾の雨が飛んできてから俺は、二人への攻撃を諦めて、瓦礫の裏に隠れてなんとかやり過ごすのが精一杯って感じだ。

 ただ、この連続射撃だと、このままここにいたもジリ貧になっちまうだろうな。

 とはいえ、こっちから反撃っつっても、ここから出なきゃどうにもならねぇ。

 ここは剣を盾にして戦線から離脱するか。

 いや、〈一点強化(ポイントブースト)〉を使って瓦礫の一つでもぶっ飛ばすか。


 俺がそんな風に迷っていたところ、他からの動きがあったのか大量に飛んできていた銃撃が急にストップ。

 俺はこれをチャンスと、剣を盾に後は出たとこ勝負だと物陰から飛び出すんだが、


「はっ!?」


 瓦礫の影から飛び出したところで俺の目の前にちっちぇえ女が突っ込んできた。


 ――こいつはスクナか。


 と、目の前の女子の正体に気付いた時には、もうバリアの耐久値を示す円形ゲージが黄色く染まっていてだ。


「不意打ちは失敗みたいね」


 その声に見ると、虎助の姉貴が横目で俺を見てやがった。

 どうも、こいつは虎助の姉貴が召喚したスクナらしいが、こんなスクナ一匹で俺を仕留めようなんてだな。


「俺も舐められたもんだな」


「別に舐めてなんかないわよ。ただ単純にこのままだと私の手が足りなくなりそうだったから呼んだの」


 と、そんな虎助の姉貴の訳のわからねぇ話にエルフの女が、


「そうね。いつまでも隠れてないで出てきてもらいましょうか」


 見た目は軽く、だがメジャーリーガーのそれよりも早いだろう投石を二箇所の物陰にブチ込むと。


「八尾、引きつけが足りねぇぞ」


 瓦礫の向こうから梅田と新野が文句を言いながら飛び出してくる。

 コイツ等、俺を囮に奇襲を仕掛けようとしてやがったな。


「うっせぇ、見つかったのは自分達だろ。

 てゆうか、お前等も手伝え、このままだとコイツ等に全滅させられるぞ」


 罰はないって話だが、このまま全員落とされたら情けねぇ。

 三人で行けば虎助の姉貴くらいなんとかなんだろと俺が言うと、二人は「わかったよ」と諦めたように吐き捨てて、


「〈一点(ポイント)……」


「ちょっと、私を無視しないでくれるかしら」


 アイコンタクトで『さあ、そろそろ反撃だぜ』と、武器を構えなおそうとしたその瞬間――、

 さっきまで俺達から少し離れた場所で虎助の姉貴と戦っていたハズのエルフの女が梅田のすぐ横に現れて、


「は?」


 ドゥッと重い一撃が梅田の腹に叩き込まれたかと思いきや、吹き飛ばされてゲームオーバーに。


「一撃かよ」


「バリアはほぼ全開だったんだがな」


 と、愚痴る余裕もないらしい。


「ほら、よそ見してると危ないわよ」


「ガッ――」


「そうね。ちゃんとできるじゃない」


 虎助の姉貴もエルフの女レベルじゃねぇが、するりと懐に入ってきて殴ってきやがる。

 と、それをどうにか受け止めた新野に、エルフの女から誂ってんのかって声が飛んできて、

 また、エルフ女が瞬間移動みたいな感じで飛び込んできたかと思ったら――ソバット。

 俺達二人のみならず、虎助の姉貴をも狙ったその蹴りは、相棒を犠牲になんとか転がって受け流したものの。


「ヤバいぞ。これ逃げた方がいいんじゃねぇか」


「チッ、悔しいがお前の言う通りかもな」


 と、いつまでも意地はっててもしかたねぇか。

 ってことで、戦略的撤退を決める俺達だったが、そうは問屋が卸してくれねぇらしい。


「逃さないわよ」


 新野が殴り飛ばされて、

 ありゃ、もう駄目だな。


「もう少し気合を見せて欲しいわね。と――」


 そんで、俺もその場に突き倒されたら、もう後は言うまでもないんじゃねぇか。

 要するにゲームオーバーって訳だ。

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