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迷宮下層の途中報告

 迷宮下層の探索から一日、

 早朝から万屋にやって来た元春が、ここに来る途中、コンビニで買ってきたおなじみのエナジードリンクを片手に見るのは、トワさんをメインにした昨日の迷宮下層探索の様子だ。

 綺麗な姿勢で迷宮を進む凛々しいトワさんの後ろ姿に、ゴーレムに軍隊アリと強敵に勇猛果敢に挑んでいくトワさんと、じっくりたっぷりトワさんの勇姿を脳内とインベントリにRECしたところで、ほぅとお爺さんがお茶を飲んだ後のような息を吐き出し顔を上げ。


「おいおい、俺がいねー時に限ってイベント連発とか、どうなってんだよ」


「どうなってんだよって言われても、

 女王アリのくだりは僕も予想外だったけど、それ以外は、まあ――、予定の範囲内だったかな。

 というか、イベント連発っていうなら元春の方が大変っだったんじゃない」


 昨日、元春は義姉さん絡みの後始末で部活仲間に呼び出しを受けたのだという。

 だったら、むしろそっちの方が大変だったんじゃ――と、僕の切り返しに、元春はそのジョリジョリとした坊主頭に手を当てて「ん~」とわざとらしく悩むようなリアクションをとって、


「どうなんだろうな。

 志帆姉にしては穏便?

 ってゆうか、最終的には風紀の判断になったから、

 俺等からすると『骨折り損』とかそんな感じだったぜ」


「そうなんだ」


 元春いう『骨折り損』というのは、元春や写真部のみなさんが飛びつくようなネタはなかったからってところだろう。

 ただ、風紀委員の人が関わってるってことは、元春達の利益とはあんまり関わりないところで問題があったんじゃないかな。

 そうなるとだ。僕も後始末に呼ばれるかもしれないから、元春が巻き込まれたアレコレは、僕も詳しく聞いておきたかったのだが、


「で、その、メタルカーバンクルってゴーレム(?)は何だったん」


 僕がなにか聞くよりも先に元春がそう聞いてきたので『元春の部活絡みの件は、また後で聞けばいいか――』と僕は心の中にメモ書きを残した上で、


「それがよくわからないんだよね」


「よくわかんねーって、ソニアっちが調べたんだよな。それで何もわかんなかったん?」


「いや、なにもってことはないんだけどね」


 少なくとも八龍のスキャンで集めたデータからいろいろな情報が読み取れた。


「ただ、細かい分析には特別な機材を使う必要になるんだよね。

 でも、メタルカーバンクルが迷宮の核ってことになると、アヴァロン=エラに持ってくることができないから、それを分析するのに専用の機材を迷宮に運び込まないといけないんだよ」


 だからいま、トワさん達に頼んで、万屋から迷宮に幾つかの魔導器を持ち込んでもらって、現地で魔導器の扱いに長けたメイドさんにメタルカーバンクルのデータを集めてもらっているところである。


「つか、ダンジョンの中で分析とか大丈夫なん?」


「ゴーレムとか魔獣とかに襲われる心配はもう殆どなくなってると思うよ。マスター登録でいいのかな、メタルカーバンクルの機能を使って、マリィさんにあの迷宮の持ち主になってもらったから」


 最初に八龍に送ってもらったデータから、メタルカーバンクルの大方の仕様は分析できていた。

 そのデータの中にはメタルカーバンクルの説明書のようなものもあったみたいで、ソニアの指導でマリィさんにはメタルカーバンクルの主になってもらって、安全な研究区画を確保したのだ。


「ふ~ん。じゃあ、あのダンジョンはもう安全ってことかよ」


「というか、そもそも迷宮のシステムに敵認定されなければ、あの迷宮ってそこまで危険な場所じゃなかったみたいなんだよね」


「そうだったん?」


「うん。オーナー(ソニア)の話によると、実はあの迷宮ってなにか目的があって作られたものじゃないみたいなんだよ。迷宮の名前もモデル12ってなんてるだけで、どんな施設かも明記されてなかったみたいなんだ」


 ちなみに、メタルカーバンクルが作れる施設のパターンは全部で百種類以上あり、それぞれいろいろな用途に使えるようになっているとメタルカーバンクルを調べたソニアは言っていた。


「要するに、メタルカーバンクルだっけ? あのちっちぇゴーレムが作れるダンジョンにはテンプレみたいなのがいくつかあって、あの迷宮はその12番が選ばれてたってだけって感じか?」


「いまのところはそういう結論かな」


 とはいっても、それもちゃんとメタルカーバンクルの分析を終えての話でもないし、僕もそのデータの詳細を把握しているわけでもないから断定的なことは言えないんだけど。


「でもよ。テンプレとかそういうんが色々あんなら、あのゴーレムがあればいろんなダンジョンが作り放題ってことかよ」


「そうだね。だから、分析が進めばこっちでもそういうゴーレムが作れるかもってソニアが張り切ってるよ」


「おおっ、そりゃなんだか夢が膨らむな」


 実用性としては、いまのところ皆無なんだけど――、

 元春が興奮するのもわからないでもない。


「まあ、そうは言っても、ダンジョンを作るには、資材っていうか、それに使う材料を集めないといけないんだけどね」


「材料?」


「実際に迷宮を作るには、壁とか床とかそれに使う資材をこっちで用意する必要があるんだよ」


「迷宮の壁ってゴーレムの一部なんだったか」


 だから迷宮を構築する素材はまた別に用意しないといけないのだ。


「しっかし、ダンジョン作る量の材料を集めるのって、スゲー大変じゃね」


 たしかに、迷宮を形作る素材をすべて一から調達するのは難しいんだけど。


「一応、その材料には迷宮を作る時に掘った地面の土とかが使えるから――」


「ああ、ダンジョンを作る時に掘った土とか、そのまま壁とかに使えばいいってことか」


「そうだね」


 ただ、新しく塔を建ててそれをダンジョンとするとか、内装とかこだわってダンジョンを作りたいなら、別に素材を用意しないといけないと思うけど、単純な洞窟タイプやそれに準じたダンジョンを作るだけなら、そこまで難しくはなと思う。


「けどよ、よくそんなでっけーダンジョンが作れるよな。

 聞くに、そのダンジョンってゴーレムの亜種みたいなもんだろ。

 モルドレッドもそうだけど、マオっちのとこのなんだっけか?」


「ティターンのことかな?」


 魔王様のところの巨大ゴーレムというと、ボロトス帝国がいま再起動を目指している超巨大ゴーレムかなと、元春に聞き返してみると、元春は手をパシンと叩いて僕に向けて指を指し。


「そう、それ、あれも結構な人間が乗ってようやく動かすんだろ。

 だったら、そのメタルカーバンクルをコア(?)にして作るダンジョンはどっからその魔力を持ってきてんだ」


 それに関しては、まだすべての情報が出揃っていない状態だからハッキリとしたことは言えないけど。


「別に一気に完成させる必要がないから、チマチマ大きくしていけばそこまで魔力は必要ないかな。一度ダンジョンとして完成しちゃえば、後はメンテナンスだけだからそこまで魔力は必要ないみたいだからね」


「な~る」


 とはいえ、それでも迷宮を管理するゴーレムの操作とか結構な魔素を消費すると思うんだけど、その辺の問題に関してはまだまだ調査が追いついてないって感じで、

 メタルクレイゴーレムの元になっている丈夫な壁材になにか秘密があるとか――、

 巨獣などのシンボルを触媒にしてエネルギーを引き出しているとか――、

 それともまったく別の方法で魔素を賄っているのか――、

 それは、迷宮そのものの調査が進めばいずれ判明するとのことだ。


「しかし、下の方の探索も済んだってことは、トワさん達のダンジョン探索はこれで打ち切りってことになんのか?」


 元春が探るように聞いてくるのはトワさんの勇姿が見られなくなるからかな。

 ただ、迷宮に関してはまだまだやることはいろいろあって、


「マリィさん達が直接の調査はもう必要ないと思うけど、あの迷宮がどんな世界にあるのかを調べたいから、トワさんにも手伝ってもらうこともあると思うよ」


「そういえば、そんなこともやってたな」


「ただ、こっちもマリィさんが迷宮の持ち主になったから、遠慮なく穴掘り専用のモグラゴーレムを送り込めるから、割とすぐに地上までいけると思うんだけどね」

◆次回は水曜日に投稿予定です。

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