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迷宮の奥へ02

「ふう、どうにかなりましたわね」


『数はかなりのものでしたが、動きが単調だったのが救いでした』


『手のヤツがウザかったよね』


『そうですね。特に防御力の高い個体は姫様とトワ様の武器でしか倒せませんでしたものね。なにか対策が必要でしょうか』


 ゴーレムの残骸散らばる地下鉄のホームのような空間にマリィさんとメイドさん達の安堵の声が響く。

 数分前、迷宮を進んだ先にあった地下鉄のホームのような長方形の大空間で待ち構えいたゴーレム軍団と接敵。

 ルクスちゃんが言う足元からのちょっかいが面倒なハンドゴーレム、やたらと防御力の高いメタルクレイゴーレム、そして、大きいのやら小さいのやらと様々なタイプが揃えられたオーソドックスな人型ゴーレムと、それはもう相当の数のゴーレムを、メイドさん達の連携と、各種装備の力をフルに使って打ち倒し、現在に至るというわけだ。


 リスレムでは逃げるしかなかったゴーレムも、マリィさん達にかかればこんなものである。

 例え、そのゴーレムの中に魔法金属並の耐久力を持つゴーレムがいたとしても、メイドさん達の装備はそれと同等のミスリル装備、さらにマリィさんが操る八龍はオリハルコン合金製の魔法剣、トワさんに至っては銀を素体とした最上級の魔法金属であるムーングロウをメインとした聖槍を装備しているのだ。倒すのに少々時間はかかってしまったものの、じっくりと腰を据えて相手をすれば倒せない相手ではないのである。


 と、死屍累々散らばったゴーレムを前に、メイドさん達がホッと一息といった雰囲気を醸し出す中、ウルさんが、魔弾の連射でオーバーヒートした魔法銃を迷宮の壁に立て掛けてつつも、戦闘中やられないようにとカードに戻していたギルを再召喚、すぐ側にいたミラジェーンさんに訊ねるのは、


『そういえばミラ、今回は風の精霊魔法ばっかり使ってたけど、アルラウネの時みたいに土の精霊魔法は使えなかったのかい?』


『やろうと思えばできなくはないのですが、

 やはり、迷宮の壁のような人工物に働きかけるのは難しいですから』


 たしかに、土属性の精霊魔法で人工物を動かすのは難しいと魔王様から聞いたことがある。

 だから、ミラジューンさんはこの迷宮内でも自然に発生している風をメインに魔法を使っていたのだろう。


「とにかく、まずは安全の確保が最優先です。皆、警戒しつつここの始末をつけますわよ」


『『『『『かしこまりました』』』』』


 マリィさんの号令でゴーレムの考察を止めてメイドさん達が動き出す。

 マリィさんは八龍にアイテムボックスから数匹のリスレムを取り出させ、メイドさん達はそれぞれにスクナを召喚、周辺の警戒をしてもらいながらゴーレムの残骸の回収を始める。

 これは、ゴーレムの破片から、なにか希少な素材が取れるかもしれないという理由が一つ、あと、迷宮に回収され再利用させないという理由があるからだ。


 とはいえ、数十体からなるゴーレムの破片をすべてを回収するのは骨が折れる作業である。

 なので、細かな破片なんかは無視をして――、

 メイドさん達は特に強敵だったメタルクレイゴーレムの大きな残骸を回収しながら、その地下鉄のホームのような場所を調べていくことになったのだが、その結果はあまり芳しくなかった。


『う~ん。なにも見つからないねぇ』


『こ、これだけのゴーレムさんがいたんですから、なにかあると思うんですけど』


『それでもなにも見つからないとなると、ここは単なる防衛拠点だったということでしょうか』


『そうなりますと怪しいのはこの奥ですか』


『ゴーレムの復活を考えると、ここに長く留まるのは危険だろうし、マリィ様、どういたします?』


「そうですわね。ゴーレムの復活を考えますと、ここの調査は――、虎助、お願いできますの」


「構いませんよ」


「では、(わたくし)達は先に進みましょうか」


 先に出したリスレムの捜査権を僕に移してもらって、八龍(マリィさん)とメイドさん達は迷宮の奥へ。

 ちなみに、移動の前にウルさんだけは装備を戻すみたいだ。

 ゴーレムの破片の回収作業の間、迷宮の壁に立て掛けてあった魔法銃を回収、装備をレイピアに戻してトワさん達の跡を追いかけていった。


 と、マリィさん達は地下鉄のホームのような地点から、迷宮の奥へ奥へと進んでいくのだが、


「なにもありませんわね」


 地下鉄のホームのような場所から進んだ先では、ゴーレムはおろか魔獣すら出現せず、微妙に湾曲した一本道が延々と続いているだけだった。

 マップを見る限りでは、通路がループしているとか、そういう類の罠ではないようなので、このまま進んでも問題なさそうであるけど……、


「――と、拠点のゴーレムが数体復活するみたいです。

 その内の数体がマリィさん達を追いかけるみたいですが、どうしましょう?」


「リスレムはどうなりました?」


「復活の兆候を捉えましたので、ゴーレムの手が届かない場所に避難させておきました」


 八龍(マリィさん)とメイドさん達によって完膚なきまでに破壊されたゴーレム達の破片を観察することでわかったのだが、この迷宮のゴーレムは現場に散らばった破片と、迷宮の構造体となっているコンクリートのような壁と合わさり、その場で新たに形作られる。

 ただ、その再生にはそれなりに時間がかかるらしく、気づいてから、逃げても十分間に合い。

 現在、地下鉄のホームのような場所を中心に、リスレムは前後2グループに別れて、その拠点のゴーレムを観察していた。


『そうですね。迎え撃って倒したとしても、また新しいゴーレムを送り込まれるだけと考えますと、ある程度は無視した方がよろしいのでは』


 意見をくれたのはトワさんだ。


「そうですわね。(わたくし)達は進みましょう」


 そして、マリィさん達には後追いのゴーレムが近づいてくるまでそのまま進むことになり、後方から追いかけてくるゴーレムの警戒はリスレムを操る僕が受け持つこととなった。

 それから、先を進む八龍とメイドさん達が都合二度のバックアタックをしのいだところで、またも八龍がなにかの反応を捉えたみたいだ。


「この反応――」


「先程の場所で察知したものと同じでしょうね」


「そうなるとこの先には――」


「おそらくゴーレムが待ち構えていると思われますが、どうしましょう?」


「もちろん押し通らせてもらいますの」


『しかし、マリィ様、追いかけてくるゴーレムはどうしましょう』


 たしかに、相手がこの位置になると、戦ってる最中に追いかけてくるゴーレムが追いついてきそうだ。

 だけど、その数はそこまで大袈裟なものではなく。


「と、迷っている時間はないようですね」


 向かう先にいる敵が動き出したとなれば構っていられない。


『嵌められましたか』


「どうでしょう。ある程度は計算尽くだったと思いますけど」


 ゴーレム側はこの迷宮内部の状況をほぼ把握していると言い切ってもいいだろう。

 だとするなら、この状況も、ある程度は計算されたものだろうけど、それにしては後ろからくるゴーレムの数が中途半端。

 まあ、相手もこちらがこれ程の探知能力を持っているとは思っていない可能性もあるから、揺動はこれくらいでいいと考えているのかもしれないな。


「どちらにしても、こうなってしまっては戦う以外ありえませんの」


 そう言って飛び出す八龍(マリィさん)


『マリィ様? まったく仕方がありませんね。みんな隊列は先程と同様に相手を殲滅しますよ』


『『『『『かしこまりました』』』』』


 なし崩し的に始まる戦闘。


「速いですわね」


 そして、マリィさんがそう漏らしたように、今回のゴーレムは今までのゴーレムとは違い、機動性が高いようだ。


『しかし、これは――』


「中身がないようですね」


 しかし、機動性を優先させた為か、その中身は空洞になっていて、耐久力はかなり下がっているようだ。


『それでしたら、ウル。やっておしまいなさい』


『お任せください』


 そして、素早くなったとはいえ、所詮はゴーレム、ウルさんの魔法銃のいい的だ。

 装備を素早く入れ替えたウルさんが砲撃を始めて、


『ディロック、行きます』


 ミラジェーンさんが氷のディロックを投げ込み、ゴーレムをその氷の花に巻き込みつつも障害物を作り出し、ウルさんの魔弾と合わせて越えてきたゴーレムを八龍とトワさんが突撃。二人が討ち漏らした敵をルクスちゃんとフォルカスちゃんが倒していく。

 ちなみに、氷のディロックを投げ終えたミラジューンさんは、場所に合わせて風の魔法を使ってその四人のフォローに回るみたいだ。

 と、それぞれがそれぞれの役割を果たす戦いがしばらく続き。


「マリィさん。そろそろ後ろからのゴーレムが追いついてきそうです」


「ルクス、フォルカス」


『了解』『い、いきます』


 反応を見る限り、その数は少なく、ルクスちゃんとフォルカスちゃんのちびっこコンビでも十分相手取ることは可能だと思う。

 ただ、ハンドゴーレムに関しては相変わらず厄介というか鬱陶しくはあったのだけれど、逆にハンドゴーレムを狙い撃ちにミラジューンさんが阻害効果を持つ精霊魔法を使うことで、ある程度の被害は抑えられたみたいだ。


「これで終わりですわね」


『そのようです』


 そして、最後に八龍(マリィさん)が残っていたハンドゴーレムを斬り裂いたところで周辺をスキャン。

 ウルさんのスクナであるギルの音響探知と、ミラジューンさんのキキの特技によって、安全が確認されたところで移動を再開させるのだが、


『あの、これってどこまで続くんでしょう』


「さて、虎助わかりますの」


「いまのところはどこに続いているのかわかりませんね」


『幻惑の類ではないのですよね。目的はなんでしょうか? 持久戦? それとも時間稼ぎでしょうか』


 想像はいろいろできるが、現在の手持ちの情報では判断できない。

 そして、その後も手を変え品を変え、ゴーレムの数は確実に減っていき、辿り着いたのは――、


『行き止まり?』


『嘘っ、ここまで来てなにもないとかありえないよ』


 なにもなかったことに徒労感を感じ、その場でへたり込むルクスちゃん。

 しかし、ちょっと待って欲しい。

 モニターを続けていた僕はそこに辿り着く少し前から、そこがただの行き止まりでないことを察していた。


「みなさんちょっと手元の地図を大きくしてみてください」


 僕の呼びかけに、マリィさんの手が動き、メイドさん達も戦闘の邪魔にならないようにと簡易表示していたマップを拡大させる。

 魔法窓(ウィンドウ)の向こうでも大きな立体地図が浮かび上がり。


『これは円?』


『これってぐるっと一周回ってきたってこと?』


『そ、そうみたい』


「しかし、これにどういった意味がありますの」


「さて、どういう意図でこんな構造になっているかは不明ですが、繋がっている可能性は高いと思いますよ」


『つまり、隠し通路のようなものがこの行き止まりにあるということですか?』


「あくまで僕の予想ですが」


 なにもないということもあるかもしれないが、ここまであからさまな構造になっているとなれば、隠し通路のようなものが一つでもあると考える方が自然だと思う。


 ということで、その行き止まりの調査をみんなで調べてみたところ――、

 意外にも簡単に隠し通路は見つかった。

 というか、八龍のスキャンを使えば一発だった。


「これは気付きませんでしたわね」


『はい。何かありそうな場所のすぐ後でこの仕掛けですから』


 ちなみに、隠し通路の先はこの通路に入る前にゴーレムと戦った地下鉄のホームのような広場から百メートルほど進んだ場所だった。

 そこから、かすかにカーブを描き、しかも通路に若干の高低差をつけることで、マップでもなければ通路が曲がっていることすら気づかないような構造になっていたようだ。


『しかし、どうしてこのような通路が?』


「それに関して、一つ思い当たることが、それを確かめる為にもみなさんにちょっとやってもらいたい事があるんですけど……」

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