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妖精戦隊フェアリー a Go Go!!

◆戦隊モノを題材にしたノベルって意外と少ない気がします。

「いい格好だなフェアリー共」


「くっ、私達は負けない」


 五色の(ドレスアーマー)に身を包んだ妖精五人がSF世界の暗黒卿のような鎧の人物を前に吠える姿がある。

 さて、この状況は何なのかと言うと、ガラティーンさんの発見からの関連で、要望が出ていたフルフルさんたち用の鎧が完成、妖精飛行隊のみなさんを招いてのお披露目会&試着会をしていたところ、そのアニメチックなドレスアーマーを着てはしゃぐフルフルさん達の姿をボーッと眺めていた元春がふと『なんか戦隊モノみたいだな』と言い出して、かねてよりそういう映像作品を好んで見ていたフルフルさん達が『この鎧があれば私達にもああいうのができんじゃね』と、『この鎧を使ってそういう映像を撮ってみたら面白そう』と突発的にこの動画撮影が始まったのだ。


 ちなみに、この突発的に始まった特撮ごっこの敵役を務めるのは僕のスクナであるオニキス。

 フルフルさん達と同サイズで、凶悪な――っていったら語弊になるけど、敵役(かたきやく)を務められそうな見た目をしているのが闇の精霊であるオニキスしかいなかったのだ。

 ただ、素のオニキスでは敵役として迫力に欠けるということで、スクナの装備を作ることができるSEカードを使い、悪役にふさわしい禍々しい鎧を創造、それを装備してもらって悪役をお任せしたというのがここまでの経緯である。


 そして、そんなオニキスのキャラクター(悪役)ボイスは元春が担当している。

 何故わざわざ元春がオニキスの声を当てているのかといえば、生まれたばかりのオニキスがまだ上手くしゃべれないのが一つ、そして、そもそもオニキスがそのまま喋ったとしても迫力に掛けるからと、装備の内側に以前お遊びで作った木製スピーカーをセットして元春が声を当てることになったのだ。


 そんなこんなでオニキスは、現在、これまた禍々しい装備を身に着けたシュトラに跨り、圧倒的な力でもって妖精五人を蹂躙(の演技を)していたりする。


 ちなみに、この決戦場には対人戦闘訓練に使用するバリアブルシステムが展開されている。

 なので、万が一、事故が起こったとして怪我をすることがないようになっている。


 それ以外にも、ふとした思いつきから始まったこの撮影に興味を抱いたソニアが戦闘に迫力が足りないと、わざわざ今回のためだけに演出にこだわった攻撃力のない魔法を発動させる特殊な幻影魔法の魔法式を即興で構築、それぞれの攻撃に各種エフェクトをつけてくれているので、先頭の迫力といった面ではかなりのものになっている。

 

 と、そんな演出がありながらも、一方的にやられる展開になってしまったフルフルさん達だったが、ここで助っ人が現れる。

 黄金の鎧に身を包んだ|謎の戦士アーサーだ。

 アーサーは五人に止めを刺そうとしていた暗黒卿(オニキス)の前に黄金の剣を構えて立ち塞がり、邪魔だとばかりにシュトラが放った重力撃を斬り払いながらも、


「何をしているフェアリー。お前達のちからはこの程度なのか」


 恥ずかしながらここで僕のセリフ(録音)がカットイン。

 そして、


「フン。いま、立ち上がるところだったんだよ」


 緊張からか、フルフルさんがやや棒読みでそう言い返したところで、他のメンバーからも続々と自分たちを奮起させるようなセリフが飛び出して、さあ反撃と、そんな王道の展開なんかがあったりして、オニキスとシュトラ、妖精五人とアーサーが入り乱れる乱戦が繰り広げられる。


 そして、そんな七人の戦いが最高潮を迎えたところで、僕がオニキスに向けてハンドサイン。

 すると、オニキスがフルフルさんの攻撃をわざと(・・・)受け、大きく吹き飛ばされたかと思いきや、妖精五人がここが勝負どころだと一斉攻撃。

 そして、シュトラvsアーサーの勝負もついたみたいだ。

 オニキスがシュトラが二人集まるようにパタリと倒れたところで大爆発。

 唐辛子爆弾を改造した煙玉が炸裂したところで、毒々しい色の煙が戦場を包み込み、その煙の中から、背後におどろおどろしい魔法陣を背負った漆黒の巨人が現れる。


 ちなみに、この巨人は黒く染めたブラットデアを装備した元春で、その背後の演出は魔王様のクッションスライムのクロマルが担当していたりする。

 最初はペーパーゴーレムを作って、その役目を担ってもらうことになっていたのだが、どうせだから自分も出たいと、急遽元春がクロマルを巻き込んでその役を担うことになったのだ。


 ちなみに、このお約束の巨大化展開に対してフルフルさん達に変身はなし。

 ここでロボットバトルをするという案もあったのだが、お遊びみたいな撮影にわざわざ巨大ロボットを用意するのは面倒だと、あと、オニキスから元春に変わるその縮尺と性能を鑑みて、そのままの状態で立ち向かうというストーリーになったのだ。

 形としては特撮なのだが、手間の問題から格闘系魔法少女モノといったところで落ち着いたって感じかな。


 というわけで、巨大化という体の悪役交代が行われ、オニキスとのバトルの最終盤にその力が覚醒した(という設定の)フルフルさん達が五色の光の尾を引き空を撒い、巨人と化した敵役とのラストバトルに挑む。


 赤・白・青・黄・ピンクと各色の鎧を身にまとった妖精五人が仄かな光を放ちながら、元春演じる大巨人の周りをくるくると旋回、剣で、銃で、攻撃を仕掛けていく。

 ただ、その攻撃は元春には通じない。


「ハァっ!!」


 妙にノリノリな元春の気合によって吹き飛ばされる五人。

 と、その中の一人、薔薇をモチーフにした赤い鎧を身に纏ったフルフルさんが立ち上がり、吹き飛ばされやられた仲間の姿に唖然とし、それでも攻撃を続けようとする元春が演じる暗黒大巨人に勇気を振り絞って突撃をしていくのだが、その体格差はいかんともし難く簡単に捕まってしまう。


 まあ、本来の実力で言うと、だんぜん五人の方が上であり、たとえ捕まったところでちょっとした魔法を使えば簡単に高速を振り解けるのだが、そこは演出、ちょっとわざとらしくはあるのだが、フルフルさんが苦しそうな仕草を熱演?

 このまま握り潰されてしまうのかといったその時だった。

 フルフルさんの頭上に降り注ぐ光の柱。


 弾かれる元春の手。


『……立ち上がるのです。フェアリーローズ』


 響き渡るのは魔王様の澄んだ声(録音)。

 そして――、


『……リリィ、アイリス、パンジー、コスモス。(みな)の力を合わせるのです』


 魔王様の平坦でありながら意味ありげなセリフの後、光が収まったそこには、いつの間にか暗黒大巨人の拘束を振り切ったフルフルさんと、さっきまでの弱った演技はどこへいってしまったのか、しっかりした足取りの妖精飛行隊のメンバーがいた。


 そして、天上からつかわされるリリカルなデザインのキャノン砲。


 後はクライマックスを残すのみ。

 フルフルさんたちが届けられた自分たとが持つ武器を合体させて、光の柱の効果によって動けない設定の元春を前に魔力を充填。

 シューティングゲームにありがちなチャージ音と光の玉がキャノン砲の機関部あつまる演出があって、


「「「「「ファイナルフェアリーバーストっ!!」」」」」


 気合の声と共に放たれる極太のビーム。

 赤、ピンク、白、黄色、青と五色の光線が螺旋を描くようにダークネスな(ブラットデア)を装備した元春めがけて飛んでいき、ふたたびの大爆発。


 ガシャンと重々しい音を立てて崩れ落ち、地面に倒れてしまった元春を前にしてフルフルさんたちがシリアスな顔を作り「私達、勝ったのね」とか「ええ、ぜんぶ終わったのよ」とか定番のセリフを口にしてカット。


 そんな僕の声に「ふぃー」と地面にへたり込むフルフルさん達。

 フルフルさんたちに駆け出すのは魔王様。

 魔王様は疲れから座り込んでしまったフルフルさん達に「……カッコよかった」と小さな小さなポーション瓶を差し出して、一息ついたフルフルさん達は、


「それで、どうだった?」


「ちょっと待って下さい。いま再生しますから――」


 そう言って魔法窓(ウィンドウ)を操作すると、さっきまでの疲労感はどこへやら――まあ、元気薬(スタミナポーション)の効果だろうけど――「早く、早く」と急かしてくるので、すぐにいま撮影した画像を再生する。


 と、それは、たった五分の映像ながらも自分たちの手で作ったということでよりよく見ることができたのだろう。


「これは――、思った以上にちゃんとしたものになっていますのね」


「多少演技にぎこちないところはありますが思った以上の出来ですね」


「だってさ。フルフルちゃん」


「それを言うならレナレナでしょ。元春に吹き飛ばされた時、ぐるぐるってわざとらしかったもん」


「あれは演出――、そう演出だよ」


「演出過剰」


 マリィさんの褒め言葉から始まり、僕のちょっとした一言にキャーキャーと騒ぎ出す妖精のみんな。

 そんなフルフルさん達の様子に感化されたか、いや、映像の出来を見たからだろう。


(わたくし)もこういう映像を作りたいものですわね」


 マリィさんがポツリと呟くが、


「マリィさん。それは……」


 こういう映像はサイズの小さい妖精ならではの企画だと思う。

 マリィさんが同じことをしようと思ってもなかなか難しいのでは?

 そんな疑念はマリィさんも承知だったみたいだ。


「虎助の懸念は(わたくし)も承知じていますの。

 しかし、妖精の皆がしたようなものではなく、例えば時代劇の殺陣のようなものが映像として撮れればいいと思ったのです」


 成程、たしかにそれなら――、

 しかし、マリィさんもそういう知識に詳しくなったものだ。

 まさか、マリィさんの口から『殺陣』なんて言葉が飛び出してくるなんて、

 僕がマリィさんの口から飛び出した意外な言葉に感心する一方で、この男はまた――、


「いいっすね。トワさんとか、スノーリズさんとかにも出てもらって、みんなで剣を振り回しながら踊るってのはどうです?」


「つまり演舞のようなものですの」


 いえ、元春はただトワさんがアイドルみたいに踊っている映像が撮りたいんだと思います。


 しかし、それはまだまだ過程の話であって、

 許可とか準備とかいろいろあるだろうから。


「それよりも、いま撮ったこの動画どうします?」


「公開するんじゃねーの」


「公開?」


「フルフルっちも見たことがあんだろ。動画サイト。あそこに出してみたらどうなん」


「おお、面白そう。やってやって」


 僕としてはこの映像をこのまま持ち帰るのか、それともちょっと加工を入れるのかを聞いたのだが、元春としては、せっかくだからこの映像をお金儲けに使いたいのだろう。

 そして、フルフルさん達は純粋に自慢したいと元春の意見にノリノリのご様子なのだが、マリィさんの映像の後でなんだけど、地球でこんな映像を公開しちゃってもいいのかな。

 僕が今更ながらにそんな風に悩んでいると、元春がそれを見透かすように耳元で、


「いや、マリィちゃんの動画もCGで片がついたから、こっちもそうなるんじゃね」


 まあ、たしかにね。


「よくわかんないけど、私達はせっかく作ったんだからみんなに見てもらいたいな」


 そして、フルフルさん本人がそう言うならと、結局その動画を公開することになったのだが、

 後日、その動画サイトのアカウントを管理する元春から聞いた話によると、フルフルさん達の動画も、以前公開したマリィさんの動画のように話題になったらしく、やはりというかなんというか、いくつかの映像会社から、このCGを作成した人物と契約したいという問い合わせが来たそうだ。

◆本編よりも無駄に時間がかかった裏設定・装備編


フェアリーフラワー(FF)……魔法的に軽量化が施された妖精金製のドレスアーマー。それぞれに独自のデザインとカラーリング施され、特徴にあった魔法式が付与されている。


FFローズ……赤いカラーリングされたフェアリーフラワー。〈花火(ファイアーワークス)〉(=花火を模した砲撃が放てる)の魔法式が施されている。


FFリリィ……白いカラーリングが施されたフェアリーフラワー。〈細氷(ダイヤモンドダスト)〉(=細かい氷を空中に浮かべ盾とする)の魔法式が施されている。


FFアイリス……青いカラーリングが施されたフェアリーフラワー。〈水撃(ウォーターハンマー)〉(=水球を爆弾に変える)の魔法式が施されている。


FFパンジー……黄色のカラーリングが施されたフェアリーフラワー。〈幻日(パーヘリオン)〉(=魔弾を放つ魔力球(ビット)を展開する)の魔法式が施されている。


FFコスモス……ピンクのカラーリングが施されたフェアリーフラワー。〈星影(ビーナスベルト)〉(=視覚的認識力を阻害する桃色の光を作り出す)の魔法式が施されている。


フェアリーキャノン……五色の光を帯びたレーザーを放つことができる魔導砲筒。ガンソード・マジックバイデント・パワーナックル・コンボジットボウ・ブーストハンマーの五つの武装によって構成される巨大兵器。

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