●怪しい研究者02
「ふおぉぉぉぉぉおお。なんなのここ? 魔素濃っ!?
なにあのでっかいゴーレム?
ってゆうか、さっきまで遺跡にいたハズなのに――、
やっぱりあの遺跡のせいなのかな? ねぇ、誰か教えてくれないかい」
「ここはアヴァロン=エラ。さっきまでいた場所とはまた別の世界」
果てしなく広がる赤錆色の大地、魔法陣を取り囲むように配置される巨石群、そして巨大なゴーレムと、降り立ったゲートから見える景色に絶叫するのはアビー。ボサボサ頭にヨレヨレの服と身だしなみという概念をどこかの置き忘れたような女性研究者だ。
そして、彼女の疑問に淡々と答えを返すのはメル。フレア率いるパーティの頼れる斥候である。
「別の世界?
つまり、さっきみた儀式場は生物を別の世界へいざなう入り口ってことかい?
だったら戻って仕組みを調べないと」
「ちょ、落ち着きなさいって」
「これが落ち着いていられると思うのかい?
異世界だよ。異世界、異世界転移なんだよ!!」
「そうね。驚くのはわかるけど、とりあえず落ち着きなさい」
「ティマ。この人、たぶん聞こえてないと思う。だから実力行使」
メルから聞かされたこの場所の秘密に大興奮のアビーは、落ち着けというティマからの声も聞こえていないようで、ソワソワとティマに絡みついたり、はたまた遠くを眺めたりと、あまりに不審な行動を繰り返すため、上空にはドローンゴーレムのカリアが近づいてきて、常連であるフレア達の前ではただ警備に徹しているエレインもそろそろ動き出しそうな気配を感じたメルは、興奮状態のアビーを落ち着かせようと毒弾を発射。
すると、アビーは手加減された弱毒に侵され、その場に倒れ込み、そのやり取りにエレインが反応。
それにメルが『大丈夫だから』と先手を打ち、アビーが落ち着いた頃を見計らって万能薬を浴びせかる。
そして、「正気?」と声をかけるメルに、アビーはまだ毒弾のしびれが感覚的に残っているのか、若干気だるそうにしながらもゆっくりと体を起こして、
「いや、すまない。私としたことが少々取り乱してしまったよ」
アビーがくれた謝罪にメルは「少々?」と首を傾げつつも、ただ、ここでフレアがアビーが落ち着いたと判断したのだろう。
「ふむ、ようやく落ち着いてくれたか、ならば、まずは寝床の確保からだな」
と、マイペースにそんなことを言い出して、それはアビーとフレア、どちらに向けたものだったのか。ティマがやれやれと肩をすくめる中、一同はようやくゲートからの移動を始める。
ただ、そこは研究者としての性なのだろう。
落ち着きを取り戻したとはいえ興味を止めることはできないようだ。
アビーは目につくものすべてに『あれなに』『これなに』と小さな子供のような疑問をぶつける。
ティマとメルはそんなアビーの面倒を見ながらも、ズンズンと万屋への道を歩いていくフレアの後をついていくのだが、いざ、モルドレッドの股下を潜ろうとしたその時、フラフラと中段を歩いていたアビーがモルドレッドの片足に駆け寄ると、そのツルツルとしたボディーに触れて、
「で、これも動くのかい?」
「ああ、動くぞ。
ただ、そいつは燃費(?) が悪いらしくてな。滅多なことでは動かさないみたいだ」
「ふ~ん。やっぱりいくら周辺の魔素濃度が高くても、これだけの質量を持つゴーレムを動かすのは難しいのかい」
「みたいね」
「できれば動くところが見たいんだけれど、どうやったら見られるかな?
例えば、なにか敵を用意するとか」
「やめてくれ、虎助に怒られてしまう」
興味津々、質問をしながらも、チロリ舌を出しながら物騒なことを言い出すアビー。
しかし、アビーとしても、ここまで連れてきてくれたフレア達が責められるようなことはしたくないようだ。
珍しく困ったようにするフレアに、ため息を吐くようにして、
「ふむん、君がそこまでいうなら仕方ないね。
それで、コスケっていうのは誰なのかな。響きからしてエストガルの人のようだけど」
「いや、さっきメルが言ったがここは俺達がいた世界とはまったく別の世界だからな」
「つまり、あの店の店主は私達とは違う世界の住人ということかい。
これだけのゴーレムを作るくらいだから、さぞや凄い錬金術師なんだろうね」
なにも興味があるのはこのゴーレムだけではないのだ。
ならば教えてくれるところから聞き出していこうと話題を転換。
質問の方向性を変えたアビーだが、
「モルドレッドを作ったのは虎助ではないぞ。
たしか、ソニアというあの店のオーナーだったハズだ」
「そうなのかい。
ま、どっちにしたって楽しみだ。早く行こうか」
とにかく、面白い人物がいるのならそれでいい。自分が寄り道したにもかかわらず、早く行こうかとフレアの手をひこうとするアビー。
しかし、そんなアビーの手をティマがインターセプト。
「案内なら私がするわ」
やや強引にアビーの手を引いて歩き出すティマ。
そして、アビーはそんなティマの行動にハッとしながらも、すぐに生暖かい視線を向ける。
そう、アビーはこう見えて察しのいい女なのだ。
と、そんな、どこぞの青春マンガにありそうなやり取りをしながらも、およそ百メートル程ある道を進み万屋へ到着。
店に入るなり、アビーがその品揃えに唖然とし、一方、フレア達からしてみると万屋の品揃えはもう慣れたもので、『はわー』と呆けるアビーを引っ張り店の奥へ。
そして、
「虎助はいるか?」
「……まだ、来てない」
店主である虎助を呼ぶフレアの声に応えたのは、奥の和室でゲームを楽しんでいたハーフエルフな魔王少女のマオ。
「ふむ、そうか――、
ならばベルよ。この人をしばらくアヴァロン=エラで預かって欲しいのだが――」
すると、フレアは虎助がいないのならと、カウンターの奥に控えているベルに声をかけようとするのだが、ここでアビーが正気を取り戻したようだ。
「ん、誰と話しているんだい。
と、あのゴーレム……、
待ってくれ、あのゴーレムはもしや――」
認識阻害の結界に阻まれてカウンターの向こうが見えなくなっているアビーは、フレアの視線を追ってすぐにベルを発見。なにか心当たりでもあるのだろうか、ベルに妙な食いつきを見せるのだが、
「ああ、結界が張ってあるという話だったな。
ベル、この女性にも見えるようにしてもらえるか」
『……かしこまりました。プライベート制限を一部解除します』
アビーがなにか言うよりも先に、なにを勘違いしたのか、フレアがベルに認識阻害の結界解除を願い、アビーをじっと見つめたベルが軽く会釈をした次の瞬間、万屋本来の姿が姿を表す。
「な、これは――っ!?」
万屋本来の姿に驚くアビー。
『認識阻害の結界です』
「うわっと、不意打ちの質問にもちゃんと答えてくれるんだね」
しかし、一思わず溢れた呟き、その呟きに素早く反応したベルの対応力に、アビーの興味はコロコロと移っていき。
この子が質問に答えてくれるのならと、アビーはここで目を輝かせるのだが。
「待ってくれ、先に泊まる場所を確保しないか」
「おっと、これはすまないね。ちょっと先走ってしまったよ。
それでわたしはなにをすればいいのかな?」
まずは拠点の確保が優先とフレアから差し込まれた声に訊ね返すアビー。
「ああ、ベル。
このアビーをしばらくこっちにいさせたいのだが、トレーラーハウスは使えるか?」
すると、フレアはベルにトレーラーハウスが使用できるかを訊ね、それに『確認します』と答えたベルは、頭の上に『少々お待ち下さい』とメッセージを浮かべて、
待つことしばし……、
『……許可が降りました。
どのくらいのご宿泊を予定していますか?』
「だそうだが――」
フレアはベルからの質問をそのままパス。
アビーはそんなフレアの対応に苦笑しつつも。
「わたしとしては期限は設けたくないのだいのだけれど」
「それはさすがにどうなのよ」
可能な限りここに居たいと希望するアビー。
と、そんなアビーにティマが呆れたようなツッコミを入れて、
「そうなのかい。だったら十五日――、
いや、一ヶ月くらい泊まることはできないかい?」
『トレーラーハウスを一ヶ月ですね。
それですと銀貨二十枚になりますが――』
「そんなに安くていいのかい?」
思っていたよりも安い宿泊料金に聞き返すアビー。
『ご注文がトレーラーハウスの貸し出しということになりますので、食事やベッドメイキングなども含めますと割高になりますが、いかがいたしましょう』
ただ、追加でされた説明の意味がいまいち理解できない。
だから先程フレアがしたように、「どういうこと?」と、その説明を丸投げしたところ、ここでティマが前に出てきて、
「なんていったらいいのかしら、トレーラーハウスは貸家みたいなもので、お金を払えば好きに使っていいのよ。出る時には綺麗にしないといけないけどね」
特別なお客様に貸し出されるトレーラーハウス。ここでの宿泊は基本的にセルフサービスなのだ。
「成程、それは私としてはありがたいね。資料とか勝手に片付けられては困るものもあるからね」
「あまり汚くするなよ」
しかし、アビーはトレーラーハウスの仕様を『ありがたい』という。
そして、そんなアビーの発言の背景に、フレアが自分の事を棚に上げてトレーラーハウスをキレイに使うようにと注意をするのだが、当のアビーはどこ吹く風と、
「善処するよ」
まったくやる気のない人間の返事である。
そして、アビーは困ったやつだとばかりのフレア、白けた目線を送ってくるティマを気にすることなく。
「では、それでよろしく頼めるかな」
『かしこまりました』
さも当然のように注文を確定。
ベルが店番をカウンターの上でじっとしていたレイクに任せて、トレーラーハウスの準備を始めるのを出たところで、
「それで、これからどうするんだ?」
「問題はそこなんだよね。ここは興味深いものばかりで、何から手を付けていいのかわからないよ」
アビーにとってこのアヴァロン=エラは宝箱のような世界だった。
あまりにも興味を引くものがありすぎて、なにから手を付けていいのかというのが正直なところなのだが、
「レニの服が気になっていたんじゃなかったのか」
「そういえばあれもここの商品だって話だったね」
アビーがここに来るキッカケとなったのはレニが着ていたメイド服。
あまりに桁外れな状況にメイド服のことなど記憶の彼方へとすっ飛んでいたが、フレアに言われて当初の目的を思い出したアビーは「ああ」と手を叩き。
「それで、彼女が着ていた服はどれなのかな」
「あの服自体は売っていないけど、同じ素材の服なら、そこの棚においてあるわよ」
ティマに教えられた棚を見てみると、そこにズラッとカラフルなインナーが並んでいた。
「もしかして、これって全部そうなのかい?」
「いや、たしか他の素材を使ったものも混ざっていたハズだぞ」
「そうね。このへんはフェアリーシルクで、こっちはドライアドの細蔓、他はなにがあったかしら――」
「魔法金属の粉を混ぜたサーモスタットシリーズがある」
「ああ、あれ、凄いわよね。ただ着るだけで熱くも寒くもなくなるんだもの」
「快適」
アビーはどこか楽しげなティマとメルの話を驚きと共に聞きながらも、やはり研究者という人種は人一倍好奇心が強いのだろう。すぐに気を取り直したように。
「いくつか聞いたことがない素材が聞こえてきたんだけど。
詳しく聞かせてもらってもいいかい」
「そう言われてもね。私達もそういうものとしか知らないから」
「ベルの支度が終わるまで待つしかないな」
ティマ達もそのインナーにはお世話になっているだけに、使われている素材の名前などは知っているが、それがどのようなものかと聞かれてしまうと困ってしまう。
そして、ティマからの返答に、アビーは『それもそうか?』と納得しながらも、わからないのなら仕方がないと、そわそわする時間を待つこと数分、「おっと、来たみたいだぞ」とフレアから声があがり、その声に振り返ると、そこにいたのは緑青色のゴーレム――ではなく、黒い薄手のフード付きジャージを着た少年。この万屋の店長を務める間宮虎助その人だった。
そして、虎助はいつもとは違った注目で迎えられる状況に若干の居心地の悪さを感じながらも、いつものメンバーの中にまったく知らない人物の姿を見つけ、おおよそ状況を把握。
「みなさんいらっしゃいませ。そちらのお客様ははじめてのお客様ですね」
「ああ、虎助。
ちょうどいいところに来てくれたな」
「コスケ?
コスケっていうと君が噂の店長さんかい」
「どんな噂なのかは知りませんが、一応、僕がここの店長をさせてもらっている間宮虎助です」
挨拶に対するフレアからの返し、それを遮るようなアビーの声に虎助がやや曖昧にご挨拶。
そして、
「少し訳ありでな。彼女をしばらく預かってくれないか」
突然ともいえるフレアのお願いに「成程――」と少し間を空け、どこかへ連絡を取ろうとする虎助。
しかし、そんな虎助をフレアは引き止めるように。
「ああ、それならもうベルに頼んでおいた。それよりも彼女の相手をお願いできるか」
と、それを聞いた虎助は、ベルが動いているということは、すでにソニアが許可を出しているだろうと、そう理解をし、だったら自分はとフレア達からのお願いであるアビーのお相手を始めるのだった。
◆
翌日、場所は代わって物見高校。
それは授業終わりの廊下でのこと、傍から見るといつもと変わらない様子の虎助に元春がこう声をかける。
「それで珍しく疲れた感じだったのかよ」
「うん。さすがに答えられなくなってきたから、メモリーカードを渡して『後はご自分で――』ってことにしてきたよ」
「最初からそうすればよかったのでは?」
「お客様からの質問だから無下にもできなくてね。
それにあれが終わったらこれもって感じで次々と質問が飛んできて、なかなか切り出すタイミングが掴めなかったんだよ」
「ああ、どんどん話されると話を打ち切るタイミングを逃すよな。ひよりとかそういうろころあるぜ」
と、最後、唸るように言った正則のたとえ話に、元春が「のろけ乙」とちゃちゃを入れ、それに正則がまた「のろけってなんだよ」と天然を炸裂。
元春はげんなりした雰囲気を出しながらも、自分の掘った墓穴を埋めるように聞くのは、
「で、そのアビーさんって女の人は美人なのか?」
さて、その質問に対して自分はどのように答えたらいいものやら――、
虎助は興味津々とばかりに元春から出された質問にお客様のプライバシーを考えて、やや答え難そうにしながらも。
「ちゃんとすれば美人なんじゃないかな。
普段はというか、きのう見た限りだとかなりだらしない感じなんだけどね」
「いわゆる残念美人でしょうか。
趣味人にありがちなパターンですね」
「でも、そういう人に限って、ちゃんとしたら超絶美人とか、『実は巨乳でした』とかあるんじゃね」
「あるある。
虎助、そこんとこどうなん」
「それはノーコメントで、
しばらくアヴァロン=エラにいるみたいだから自分でたしかめてみたら」
胸の大きさは別として、人の美醜なんてものは個人の主観によって変わってくる。
その評価は自ら行うべきであると虎助が答えをはぐらかすと、元春が「こりゃ、今日の部活は休みだな」と嬉しそうに拳を手の平にぶつけ、正則が「俺はまた今度だな」と残念そうに肩を落とし、次郎が少し難しそうな顔をして、
「しかし、フレアさんの紹介とはいえ、よくもどこの誰かもわからない人をあそこに住まわせることになりましたね」
「それなんだけど。実はアヴァロン=エラに移動する前にロゼッタ様がその人となりを調べてくれたみたいで、別に変な人じゃないみたいなんだよ。
まあ、研究バカってくくりなら変な人に入るだろうけどね」
次郎としては、そのアビーという人物が危険な人間だった場合、万屋が危険に巻き込まれると心配してそう言ったのだろう。
ただ、その辺りの危険に関しては、魔王パキートの腹心である賢者梟のエドガーが『イズナ様のご子息であられる虎助様が経営する店舗に変な輩を送るわけにはいかない――』と、心苦しくも出産を終えたばかりのロゼッタ姫に看破をしてもらったのだ。
すると、そんな事情を聞かされた次郎が「イズナさんの威光がついに異世界にまで」と苦笑いを浮かべ。
「でも、結局は押し付けられたことは変わんねーんじゃね」
「それは、研究者というだけあっていろんな知識を持ってるみたいだし、万屋としては利益の方が大きいかなって話になってるんだけど」
「そういう考え方もありますか」
「そもそも万屋を作った目的はそっちだからね」
「しかし、彼女の来歴などは調べておいた方がいいのでは?」
アビー自体に問題が無かったとしても、彼女を取り巻く環境が何かしらの問題になるのかもしれない。
そんな次郎の指摘に、虎助は『ふむ』と一考するようにして、
「それはおいおいだね。
タイミングをみてレアな素材を肴に聞き出してみるよ」
「さすがにそれは――」
「いや、そういう人なんだよ」
そういう人だからこそ自分は疲れているのだと、虎助が軽くため息を吐くと。
「じゃあ、俺もレアな素材をプレゼントすりゃワンチャンあるってことかよ」
「どうなんだろうね」
たしかに、熱心過ぎる研究者であるアビーなら、希少なアイテムを餌にその興味を釣れるのかもしれない。
だが、それで元春が望むような関係になれるかというとどうなのか。
「それに希少な素材を買えるお金はどうするのさ」
そもそも希少な素材というのはレアなだけにお高い代物だ。
そんな素材を高校生程度のお小遣いで買うのは難しいだろうと指摘する虎助に、元春は「ふふん」と自慢げに鼻を鳴らし。
「そういう時のための資金プールだぜ。
虎助、マールさんとこのバイト代っていくら残ってる?」
虎助に万屋で稼いだお金の確認を要求するのだが。
「ニ万円くらいかな。ほとんど残ってないよ」
「何故?」
「『何故――』って言われてもね。ブラッドデアの改造にSEカードの購入、他にもいろいろとお金を使ってるから、もうそれくらいしか残っていないんだよ」
元春は世界樹農園を管理する樹の精霊であるドライアドのマールへの魔力供給でそれなりに稼いでいる。
しかし、それと同じくらい散財もしているのだ。
よって残っている資金はさっき言ったように高校生のお小遣いくらいしかなく。
ポンポンとアビーが喜ぶようなレア素材を買うことは出来ないのだ。
「それにアビーさんは結構お金を持ってるみたいだから、元春が買えるくらいの素材は自分で買っちゃうと思うけど」
「そうなんですか?」
「うん。きのう早速、素材買い取りのカウンターに張り付いて、ベヒーモの体毛とか、ヴリトラの鱗の欠片とかを買っていったからね」
その価格、金貨五枚。
今頃、用意したトレーラーハウスの中でいろいろと調べているのではなかろうか。
虎助は昨日アビーが買い込んでいったレア素材を思い出しつつ、横目でガッカリ項垂れる元春に苦笑するのだった。
◆ということで十章のエピローグでした。
ちなみに、今回登場したトレーラーハウスの賃貸料ですが、リビングにダイニングキッチン、バスとトイレ、そして寝室とロフト付きのトレーラーハウスが月二万とか、現実にあったら事故物件を疑うレベルですよね。
そして、水道光熱費は無料。
実際、その倍はとってもまだ安い家賃ですが、万屋からしてみるとトレーラーハウスを作る素材は有り余るほど大量にあって、その作り手の人件費もタダとなると、たとえば庭の片隅にある使っていない組み立て式の倉庫を貸すくらいの感覚なので、これくらいで十分と考えているという設定なのです。
なによりも、アビーがアヴァロン=エラでする研究は、擬似的にではあるもののソニアとの共同研究のようなもので、研究員を一人確保したと考えると、むしろソニアとしてはお金を払ってもいいことだったりします。