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発見、巨大ゴーレム

「これがそのティターンというゴーレムですの」


「……ん」


「みたいですね」


「しっかし、こりゃまたでっけーゴーレムだな」


 僕達が覗き込む魔法窓(ウィンドウ)に映るのは、モルドレッドよりも遥かに大きな上半身だけの巨大ゴーレム。

 その周囲にはメカニックやら警備兵らしき米粒サイズの人間が映り込んでいる。

 両者の大きさ比較するだけでもこの巨人の大きさがよく分かるだろう。


 さて、いま僕達が見ているこの映像が何なのかと言うと、龍の谷に向かっていたフルフルさんが操る蒼空から見た映像だ。

 ちなみに、龍の谷を目指していた蒼空がどうしてこんな巨大ゴーレムを映しているのかというと、龍の谷へと向かうその道すがら、立地的な条件から、蒼空がこのボロトス帝国の上空を通りかかったことで、フルフルさんたち妖精飛行隊から、『どうせだから、森に侵入してきたボロトス帝国や、ムカつくエルフ達のことを調べてみたらどうなの』という意見があがり、軽く潜入調査をすることになったそうだ。


 そして、とりあえず、魔王様が暮らす精霊の森、そして、ボロトス帝国全体をカバーできるように中継機を設置して、各所に小動物を模した探索ゴーレムをバラ撒いたところ、ボロトス帝国の帝都から離れた辺境の地に存在する渓谷の奥まった場所に謎の超巨大テントを発見したそうだ。


 と、当然こんな場所に巨大テントがあるなんて怪しすぎると、蒼空を飛ばしてその施設に潜入、モスキートの試運転として巨大テント内の調査を行ってみたところ、まあ、探すまでもなく、このティターン(巨大ゴーレム)を発見。

 この度、報告にあがってきたという次第だとのことである。


「しかし、上半身だけでこの大きさとは、完成しましたら相当大きなゴーレムになりそうですわね」


「ああ、それなんですけど、ティターンはこれで完成体みたいなんですよ」


「ええと、これで完成ですの?」


「詳しくは現在調査中なんですが、どうもこのティターンはこの世界に古くから伝わる魔動兵器だそうで、ネクスラウドの半身巨人といえばかなり有名な話みたいですよ」


 それは地球でいうところのムーかアトランティスか。

 魔動機技術によって栄華を極めた魔導国家ネクスラウド。

 かの国は高度な魔動機技術によって、またたく間にその大陸を統一。

 しかし、突如発生した大魔法によって一夜にして滅びてしまったそうだ。


 そのネクスラウドがその大陸統一に使った三大魔動機と呼ばれるその一つがこのティターンなのだそうだ。


「しっかし、古代文明が残した巨大兵器の復活とか、なんかマンガとかにありがちな話だよな」


「まあ、こっちには魔法による保護なんかもあるからね。ものによっては、かなり昔に作られたものでもきれいな状態でも残っていたりするみたいだから、別におかしいことじゃないんじゃないかな」


「そういうもんか。

 で、これで完成って、コイツ、どうやって動くん?」


「あのおっきい腕を使って移動して、頭や肩のところに幾つかついてるクリスタルみたいなのから魔()を放つみたいだよ。

 二本の腕もあの大きさだから武器として使えなくはないと思うけど、基本的には移動だけに使うみたい」


 これじゃあまともに動けないだろ。そう言わんばかりの元春にティターンのスペックを軽く説明。すると元春も実際にティターンが動いている姿を思い浮かべたのだろう「ああ」と納得したような声を漏らし。


「ようは移動砲台って感じか?」


「そんな感じかな」


 イメージとしてはごつい松葉杖を装備したチェスの駒って感じかな。

 ティターンはそれ自体が塔のような二本の巨腕を前後に動かして地上を移動。

 陣地を確保した上で頭や肩に幾つか設置されているクリスタルから魔砲を放って敵を薙ぎ払っていく兵器みたいである。


 ちなみに、そのクリスタルから放たれる砲撃は無属性の光線のようなものらしく、クリスタルに充填する魔力の量が多ければ多いほど、その威力が増すのだそうだ。


「つか、それってヤバいんじゃね。

 マオっちンとこもその国に狙われてるんだろ」


「どうなんだろうね。ティターンの予想スペックを考えると、リドラさんだけでも対抗できそうだけど」


「マジかよ?」


「元春もドラゴンの強さは知ってるでしょ」


 元春が戦ったことがあるドラゴンといえば、ディストピアの中の劣化したフォレストワイバーンくらいしかないが、それでもドラゴンの驚異はその身をもって知っているハズである。彼等の爪や牙をもってすれば、いくら超巨大で重厚な外殻を持つゴーレムとて無事で済むワケがないのだ。


 それにそもそも――、


「リドラさんの爪ならブルー製のティターンの装甲くらい簡単に貫けると思うんだよね」


 と、ここでマリィさんが「そうですわね」と、たぷりと腕を組みをしながらも。


「その色からしてもしやと思っていましたが、ティターンの外殻はブルーになりますの」


「はい、残念ながら」


 この超古代文明的なゴーレムであるティターンの外装に使われているのはブルーという魔法金属だ。

 それは、たしかに魔法金属というだけあって、通常の鋼などよりかは頑丈な金属ではあるのだが、

 一方でブルーは、世界によっては劣化ミスリルやミスリルモドキなどと揶揄されるようなちょっと残念な金属だったりもするのだ。

 だから、たとえティターンが魔法的な防御手段も持っていたとしても、リドラさんの爪ならじゅうぶんその装甲を切り裂けるだろうし、それに、この間、リドラさんに渡した新しい魔法を使えば、ブルーではなく通常の金属で構成されているだろうティターンの内部構造の破壊だって狙えるのだ。


「成程、そういうことでしたらマオ達の驚異にはなりませんわね」


「……ん、問題ない」


 そして、その結論には魔王様も同意見のようだ。マリィさんの真似をするように腕を組んで、


「でも、ちょっと待てよ。そういうことなら、マオっちのとこで狙ってたっていう精霊金ってのは、このゴーレムの補強に使うってことなんじゃねーの」


 と、ここでツッコミを入れてくるのは元春だ。

 うん。元春としては鋭い私的であるが、これに関しては、実はその使い道が判明している。


「ああ、そのことなんだけどね。前もって集めた情報を整理すると、どうも精霊金は魔力を各部に送る配線に使うことになってるみたいなんだよ」


 施設内に放たれた昆虫型のゴーレムがが集めた情報をまとめると、ボロトス帝国が狙っていた精霊金の用途はティターンの伝達系にあるみたいなのだ。


「たしかに、これほどの巨体を動かすには、効率よく魔力を全身に回さなければ難しいですものね」


 まあ、その用途が魔力回路に使われるのだとしたら、精霊金よりももっといい魔法金属はあるのだが、単純にすでに入手先がわかっているということで精霊金が採用される運びとなったのだろう。


「しかし、これほどの大きさのゴーレムを動かす魔力はどこから持ってくるのでしょうか」


 さすがはマリィさん。いい着眼点だ。


 ソニアが生み出したモルドレッドだって、その燃費は非常に悪く、滅多なことで動かせないのだ。

 それよりも遥かに大きなゴーレムが、アヴァロン=エラよりも魔素濃度が薄いこの世界でまっとうに動くのはかなり無理がある。


 ただ、それにも秘密があって、


「ティターンは何十人、何百人もの魔法使いを動力代わりに使って動くゴーレムみたいですね。塔のようになっている両腕に人が入れるようになっていて、その中にびっしりと人間を入れるカプセルが並んでいるみたいなんです。そこに人間を入れることによってその巨体を動かすエネルギーとするみたいですね」


「それって人間を生贄にして動くとか、そういう感じなん?」


「いや、これはどっちかというと人間を電池みたいにして使うって感じかな。

 動かすだけで死んじゃうとかそういうことはないみたい。

 でも、例えば、乗り込む人間の魔力の総量以上に強力な魔導砲のようなものを撃ったりすれば、魔力の枯渇で死んじゃう人も出ちゃうかもしれないみたいなんだよね」


 あくまでこの施設にあったデータによるのだが、搭乗員の総魔力を超える砲撃を放つと、そのオーバーした魔力量によって、それに応じた数の犠牲者が出るという予想みたいだ。

 そう考えると元春の言うこともあながち間違いではなかったりするのかも。


 ちなみに、このティターンにはとうぜんのように安全装置のようなものはついていない。

 なので、これを操る人間が魔力タンク代わりとなっている人員のことを考えなければ、搭乗員全員を生贄に超火力の魔砲を撃つなんてことも出来るみたいだ。

 過去の文献から読み取れる情報によると、もともとこのティターンを製造したネクスラウドは、魔力の高い奴隷を使い捨てに、協力な魔砲を連発し、その版図を広げていったみたいだ。

 まさにボロトス帝国にぴったりな兵器である。


「しかし、それでもこの大きさのゴーレムを動かすには、少し無理があるように思えますけど」


「そこは本当にエネルギー効率を突き詰めた結果みたいですね。

 実はこのティターン、両手を前後に動かす以外の動きができなくなっているみたいなんです」


「たしかに駆動箇所を制限すれば、そのぶん必要な魔力も減らせますわね」


 そう、この巨大なゴーレムが動かせるのは大きな腕の二本だけ、

 しかも、関節代わりのシャフトを軸に前後に九十度ほど動かせるくらいなのだ。

 そして、本体そのものにどっしりと安定性をもたせることによって、その巨体のバランスを取るために必要な制御系の魔法式を省略、消費エネルギーを節約することで、どうにか移動砲台として機能するように作られているみたいだ。


「そう聞くと、なんかこのティターンってヤツもショボく感じるな」


 たしかにね。


 つまり、このティターンという兵器は、その上部に取り付けられた砲台代わりのクリスタルを除けば、単純に魔法金属の耐久性にあかせて作った巨大な玩具のようなものでしかないとも言えるのだ。


「しかし、それでもこれがこの世界で猛威を奮った兵器には変わりませんの。

 そして、その伝説に違わぬ破壊力は持ち合わせているのではありませんの?」


 なんとかの七日間ではないが、ティターンのことを書いた文献を調べると、あの砲台の威力がかなりのものであることが読み取れる。


「ならば、このティターンというゴーレムは害悪にしかなりませんわね。

 ここで潰してしまった方がいいのではありませんの?」


「まあ、マリィさんの仰ることはご尤もなのですが、このゴーレムがこれだけとも限りませんし、破壊したら破壊したでなにか動きがあるかもしれませんから」


 ネクスラウドの遺産がこれだけとは限らない。

 ここで、このティターンを潰したとしても、第二第三のティターンが――、もしくは他の魔動機が見つかるかもしれないのだ。

 だったら、所在が知れてるこのティターンを監視し続けることでボロトス帝国の動きを監視するのもアリなのではないか。

 なによりも、魔王様達はまだこの施設を発見したばかりなのだ。

 いろいろな情報を得るためにも、すぐにここを破壊することはあまりよろしくない。


「でもよ。それはそれとして、動き出した時のためになんかしておいた方がいいんじゃね」


「それは当然だね。だから一応、ティターンを動かしてなにかやろうとしたらこっちから破壊できるように爆弾をしかけておくとか、そういうことも考えていたりするんだけど――」


「現状それが一番適切な処置でしょうか」


「魔王様、どうでしょうか?」


「……ん、それでお願い」


 ということで、魔王様からの報告からの皆の考察。

 それによる結論として、僕は動き出したティターンに対抗する為、この後、ソニアにティターンの駆動に合わせ発動するディロックを作ってもらうことが決定した。

◆一応、ティターンのスペック。


 ティターン……魔導国家ネクスラウドの優秀な魔工技師たちによって作られた規格外の大きさを誇るゴーレム。その全高はおよそ五十メートル。ただその大きさがゆえに運動性能はかなり低い。頭に三つ、それぞれの肩に五つづつクリスタル型の魔導器が装備されており、そこから放つことが可能な魔砲は上位の魔法をも軽く上回る威力だと言われている。(イメージは有名RPGに出てくる城型の召喚獣)


 最後、ティターン対策については軽く流しましたが、これは単純にティターンを動かそうとしたその時、その動かす魔力に反応して発動する爆発のディロックを作ってもらったというだけです。

 ディロックは一定以上の魔力の流れに反応して発動する遅延型魔法なので、例えば、ティターンの関節に特注のディロックを仕込むことによって、いざ移動をしようとした瞬間に爆発するとか、魔力をチャージすることによって威力が増大するクリスタルにディロックを仕込むことによって、砲撃と同時に大爆発なんてことが狙えたりできます。

 わざわざソニアに相談したのは、万屋では基本的に殺傷能力が高いディロックは販売していない為、それを作ってもらう為だったり、爆発まで見つからないようにするようにディロックそのものにちょっとした仕掛けを施してもらう為です。

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