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●前日譚・とある魔女の受難

 番外編を書こうとしたら、ちょっとした短編くらいはある分量になってしまいました。

 数話に分けて投稿しようとも考えたのですが、番外編を複数話にするのもどうかと思いまして、一気に放出してみました。


 今回の時間軸は一章の半年前です。

 少々登場人物が多いかもですが特に覚えておく必要のない一発キャラのようなものですからご安心を?

 再登場があるとすれば大物っぽいお姉さん(?)と苦労性なその部下くらいでしょうか。

 ※今回は虎助視点ではありません。

 それは、後に『そにあ』と呼ばれるようになるビッグフットが発見されたという情報が世界中を駆け巡った翌月のことだった。

 どこともしれない森の中に建つ洋館に美女ばかり6人が顔を揃えていた。

 彼女達の正体は【魔女】と呼ばれる地球における魔法使い。

 その日、彼女達が集まったのは、各地域に暮らす魔女達のトップである『工房長』を集めた会議『夜会』を開く為である。

 そして今回、夜会に上がる議題は、ロッキー山脈の中ほどで発見されたビッグフットと呼ばれる存在である。

 と、そんな夜会に出席する一人、アジア・オセアニア地域の魔女を統括する工房長・望月静流は憂鬱な顔を浮かべていた。

 その理由は、ビッグフットの発見者である日本人が、そのビッグフットを日本に連れて帰ると言い出したのだと夜会が始まる少し前に聞いていたからだ。

 大国で発見された謎の生物を国外に出すなんて、何かしらの取引が裏で執り行われたのか。その理由を想像するだけでも恐ろしいと、静流が浮かべる憂鬱な表情には、手に入れた情報から読み取れる裏事情が関係しているのかもしれない。

 そうして始まった夜会冒頭、口火を切ったのは、ロシア・中東地域のトップを務めるリュドミラ=アンダースタインだった。


「ゴーレム以外にあり得まい」


 魔女であるというのに、ノスタルジックな軍服姿で身を固めているのは彼女の趣味であるという。

 そのような変わった趣味を持っているからというべきか、リュドミラは独自に情報収集を専門にする下部組織を編成していたりする。ビックフット関する情報もそんな下部組織が入手してきたのだろう。

 そんなリュドミラの断定に、南米にある『工房』の主、艶めかしい肢体から無駄な色気を放つアニータ=ブラガが言う。


「問題はどこの『工房』で作られたゴーレムかということでしょ。まあ、見つかった場所が場所だけにどこで作られたかなんて考えるまでもない訳だけど」


「アァン?あんなのがオレ等に作れると思うのかよ」


 アニータから送られる意味ありげな流し目を受けて、がなり立てるのはジョージア=フランクリン。【雷滅の魔女】と恐れられる北米支部の【工房長】だ。

 しかし、アニータはジョージアの怒気を軽くいなして、小馬鹿にするようにこう返す。


「ふふっ、確かにアナタ達みたいな暴れるだけしか能がない連中に作れるものじゃあないわよね。けど、何なのかしらねアレは?」


「知らねえよ。特殊部隊を手玉に取ったって話だが、そんなゴーレムがあるなら俺が確保してるっての」


「ふむ、それは気になる情報だな」


 あからさまな挑発への怒りからつい口にしてしまったのだろう。ジョージアの口から零れた情報に、リュドミラがギラギラとした視線を送る。

 そして、口にしてしまったからにはしょうがないと、ジョージアは手持ちの情報の少し開示する。

 それによると――、

 ビッグフットとして捕まったゴーレムは、その後、発見者にその関係者、地元政府機関の間で、その所有権が誰にあるのかと揉め事になったらしい。

 しかし、モノが魔導ロボットとも呼べるゴーレムだけに通常の場所で協議を行うのも危険と判断、政府関係者の計らい(・・・)により関係者各位の身柄は黒い噂のある某軍事施設へと移送されたらしい。

 だが、その時点で既にゴーレムの所有契約は結ばれており、施設に移動してから何らかの交渉が行われたものの、契約を覆せずに決裂。どういう訳か戦闘に発展してしまったらしい。

 結果、ビッグフットとマスターに選ばれた少年は、基地からの脱出を強行する羽目に陥ったらしいのだが、圧倒的な魔法の力(・・・・)によって全ての傷害を排除。

 しかし、その戦闘による特殊部隊の被害、及び、施設への被害は軽度なものだったという。

 と、簡単にまとめるとこんなところか。ジョージアからの情報を精査した一同は、


「だが、不意打ちでもなく、準備万端に警備を固めた一つの施設をを相手に、しかも、敵地の最奥ともいえる場所から双方ほぼ無傷のまま生還できるものなのか?」


 場所はその筋で有名な某軍事施設である。そして、その施設の運営には、軍人や科学者だけではなく、錬金術師や宇宙人などと呼ばれる存在も関わっているという噂がなされ、たとえ魔女とはいえど侵入することすら不可能とされる曰く付きの施設なのだ。

 まあ、彼女達、魔女の側から言わせると、出来ないのではなくて、単に興味が無いからやらないというのだが、それでも、潜入や特殊な破壊工作に特化した魔法を身につけた魔女でもない限り、簡単に攻略できないということは間違いないだろう。


「でも、そういうのはやりようじゃないの~?」


 間延びした声で会話に入ってきたのはジャンヌ=ヴォドル。ショッキングピンクの髪をツインテールにして、フリルやリボンが過剰搭載されたミニドレスを身に纏うという、典型的な魔法少女ルックをした美幼女(・・・)だ。

 しかし、その見た目に反して、彼女はこの夜会に参加するメンバーの中で二番目の年長者なのだというのだから、魔女社会というのは業が深い。


「というか、その施設に入れるか入れないかなんて、どうでもいいんじゃないかしら。それよりもそのゴーレムは今どこにいるのよ?」


 と、本筋から逸れかけた話題を元に戻したのはアニータだ。


「発見した日本人の冒険家の息子がマスターになったとか聞いたな」


 続くリュドミラの発言がスイッチだったかのように、一人の少年の映像が壁面に映し出される。

 プロジェクターによって投射された写真に映るのは、一見するとどこにでもいるようなアジア系の少年だった。

 しかし、この写真を手に入れるのにどれだけ(・・・・)苦労したことか(・・・・・・・)。そんな呟き声が聞こえてきそうな顔をする静流の苦労など知った事かと言わんばかりにアニータが訊ねかける。


「あら、可愛い男の子ね。どこの誰なのかしら?」


「名前は間宮虎助。15歳の高校生だそうです」


「ええと、静流、それだけなの?」


「はい」


「おいおいサボってんじゃねえぞ。きっちり調べるのがテメーの役目だろ」


 アニータの質問に簡単なプロフィールを返す静流。

 と、そんな素っ気なさ過ぎる静流の対応にジョージアが突っかかっていく。

 しかし、ジョージアの文句は的外れなものだった。

 ジョージアにしてもビッグフットが起こした事件の全てを明かしていないのだから。訊ねられたことしか答えなかった静流を責められるものではない。

 だた、今回の場合は少々状況が違っていて、


「きちんと私が調べた上での結果がそれだけだというのです」


 追加されたその一言に会議場の空気が一変する。

 この現代社会において、一人の人物の映像を取得することはそんなに難しいことではない。それが世界的に有名になってしまったビッグフット発見の関係者なのだとしたら尚の事にだ。

 しかし、今回、静流はこの写真を入手するにあたって、多大な苦労をさせられたのだ。

 そして、ここにいる全員がそれぞれに程度の差こそあれ、静流の情報収集能力を、調査に使用される魔法(・・)の有用性を知っていた。そんな静流が基本的なプロフィールと写真一枚という成果しか上げられなかった事に対して驚いているのだ。


「テメー。ちゃんと力を使って調べたんだろうな」


「だから、そう言っています」


「ちょ、ちょっと待って、この子って、何とかっていう日本人の冒険家の息子でしょ。素人なんじゃないの?」


 睨みつけるように言うジョージアに静流がそう切り返し、アニータが慌てたように問いかける。因みにここでいう素人という言葉は魔法的なという意味で使われる言葉である。

 だが、静流の答えは変わらない。


「考えてもみて下さい。夜会の議題に上がるようなゴーレムの主人になった時点で、この少年も普通から外れた存在に当て嵌まるでしょう」


 そんな静流の言葉に『確かに――』と殆どの工房長が納得するように頷く一方で、不満気な人物が約1名(・・・)


「チッ、所詮はアジアくんだりの魔女ってことかよ」


「私達をあまり舐めないでもらえますかね」


 吐き捨てるように言ったジョージアの一言に静流が柳眉を吊り上げる。

 しかし、二人の間に生まれようとしていた険悪な空気がハッキリとしたものになる前に、パンパンと諌めるような拍手が割って入る。


「やめなさい二人共。私達が揉めてどうするの」


 二人を止めたのは、今回、この夜会のまとめ役を任されるカリオストロだった。

 金糸のように輝く頭髪にギリシャ彫刻のような美貌、そして白磁の肌、存在そのものが魔法であるような美女。それがカリオストロという女性だった。

 しかし、そんな美女の仲裁でも、一旦、火が着いてしまったジョージアの怒りは簡単には収められなかった。


「ア゛ァン。引退したクソババァが五月蝿えんだよ」


 ジョージアが怒りに任せて口汚く吠えた瞬間だった。会議室内の空気が例えようのない重圧を抱え込む。発生源は勿論、口汚く罵られたカリオストロ本人だ。

 カリオストロが放つ雰囲気に絶句する一同。そんな沈黙の中で、穏やかに聞こえるカリオストロの声だけが響く。


「あら、ジョージアは私に文句があるのかしら。だったら後で私の部屋に来てくれるかしら。|きちんと話し合わなければいけませんからね」


 ジョージアが口にしたそれ(・・)はまさに禁句だった。各エリアを統括する工房長である彼女達にしてみても、長い年月を経た魔女(・・・・・・・・・)たるカリオストロから放たれる凄みは抗えるものではないのだから。

 個体化したような空気の中、耳が痛くなるような静寂が会議室を支配する。

 幾ばくかの時間が流れ、ジョージアが思い出したかのように声を絞り出す。


「あ、いや、その――、オレが悪かった。……すまねぇ」


 対するカリオストロの笑顔は一見すると春の日差しのような柔らかなものだった。


「別に私に謝ってくれなくてもいいわ。ただ後で憂さ晴らしに付き合ってくれたのならそれでいいの」


 しかし、その笑顔を向けられたジョージアは厳冬の雪山にいるかの如く顔を蒼くしていた。

 そして、


「それよりも会議を続けましょうか」


 取り敢えずこの件はこれでお終い。言外にそう告げるカリオストロの一言で、軽い恐慌状態に陥ったジョージアを除く4人が音を立てずに息を吐き出す。

 それから、また、わずかな沈黙を挟んで、口を開いたのは、やはりリュドミラだった。


「とにかく、とにかくだ。人から探れないのならゴーレムの方から探ればよかったのではないのか」


 しかし、その意見はすぐに斬って捨てられることになる。


「〈無限書庫〉に照合してみましたが、該当する機体は無いとの結果でした」


 いま静流が口にした〈無限書庫〉というのは、情報記録に特化した魔導書のことである。

 ノートなりなんなりといった道具に情報を記録させ、それを魔導書自体に食わせる(・・・・)ことで大量の情報を取り込むことが出来る魔法の本だ。そこに収められる情報量は、一つの国家が所有する情報をも遥かに超える量になるのだという。

 そして当然の如く〈無限書庫〉には探知系魔法を利用した高度な検索機能が備わっていて、

 静流からの報告に、リュドミラが、アニータが、落胆する中、気にする風でもなく横から入ってくるのはジャンヌだった。カリオストロが生み出した張り詰めた空気にあてられて、声に若干の硬さを残しながらも気軽な感じで聞いてくる。


「ってことは、誰が作ったかも分からない未契約のゴーレムが、あんな山奥で彷徨っていたってことになるんだよね。でも、そんなことあり得るの~?」


「可能性としましては〈無限書庫〉による各工房の情報共有が拡大化した以前のなりますか」


「じゃあ、〈無限書庫〉が作られる前の、百年以上前の機体になるってことなの~?」


「それこそありえない。百年以上も昔にこんな高性能なゴーレムが作れると思うか」


 リュドミラが言うまでもなく、ビッグフットと呼ばれる未知のゴーレムが動く映像、世界的に公開されたその映像を見るだけでも秘められた性能が推し量れるというものだ。


「つまり、誰か我々の知らない魔導技師が居るということですか」


「う~ん。それを言うなら錬金術師なんじゃないかな~。ほら、あの人達ってほら基本的に個人主義者でしょ~。変な知識とかを独占してるとかじゃないの~」


 錬金術士。それは、魔女とはまた別に存在する魔法の力を操る一団のことだ。

 しかし、そんなジャンヌの意見に、今回、相談役として夜会に参加しているカリオストロから別の意見が上がる。


「揺らぎの向こうからやってきたという可能性はありませんか?その後の事態の動きから考えますと、あの基地とも関わりがあるみたいですし、全てが偶然ではないとしたらその可能性があるのではありませんか。 とはいえ、細かく指摘しますと、日本人の冒険家が発見したところなど矛盾するところがありますが」


 魔素濃度が比較的高いといわれる地域に住む魔女達にとって、魔素による次元の歪みと、その先に異世界が存在するという話は既に常識の範疇である。そして、そんな世界から、偶然にもゴーレムなどの魔動機が迷い込むなんて事例は過去にも幾つかあったりした。

 加えて、ビックフットとして見つかったそのゴーレムが最初に連れて行かれた基地というのが、また曰く付きの場所であり、人工的に作られた(・・・・・・・・)一種のパワースポットでもあったのならその可能性はあるのではないか。

 常人よりも長き時を生きる魔女として、カリオストロが示した可能性に全員が息を呑む。


「どちらにしても、このまま放っておくのは危険だな。私達が動きましょうか?」


 カリオストロに向けてリュドミラが自ら打って出ようかと提案するも、


「は、はっきり言ったらどうだ?……テメー。手元に置きてーんだろ」


 美味しい役目を最年少のリュドミラに持って行かれてたまるか。欧米人らしからぬ序列意識でも働いたのだろうか。いい意味でも悪い意味でも直情系のジョージアが、カリオストロにより陥っていた軽度な恐慌状態から立ち直り、声を荒らげる。

 しかし、二人の主張には少し無理がある。


「でも、マスターが居るゴーレムを手に入れるのは難しくないかしら」


 機体そのものへのインターセプトに技術の流出への対策と、ゴーレムという魔動機には、現代科学による認証機能などを軽く上回るような主人を認証する機能が備わっている。

 普通に考えたのなら、既にマスターが存在するゴーレムを奪うのはかなりハードルが高い。

 だが、それに関しては手が無い訳ではなくて、


「それは交渉次第なんじゃないの~」


「……んなことより、手っ取り早く持ち主を消しちまえばいいだろ」


 アニータの懸念に、ジャンヌが懐柔策をうたい、普段の調子を取り戻し始めたジョージアがカリオストロの機嫌を伺いながらも強硬策を提案する。

 しかし、そんな二人の――、いや、ジョージアの意見にだろう。静流から反対の声があがる。


「私達の国で勝手してもらっては困りますね。日本はアナタ達の国と違ってそういう事には煩い国ですから」


「……バレないようにやるさ。

 人間を一人二人消すなんてのはオレ等にとっては難しいことじゃない」


「私達も人間なんですけどね」


「んな綺麗事を――」


 あくまで自分達は魔女であって人間ではない。ジョージアの傲慢を当然の真理とばかりに指摘した静流とジョージアの間に再び険悪な空気が再燃する。

 だが、そこに割って入るカリオストロ。


「そうですね。背後に我々が把握していない魔女が存在している可能性もあるかもしれませんし、ミイラ取りがミイラになるなんて場合も考えなければなりません。分かりました。私が出向きましょう。案内してくれますね静流」


 そして、どうせまとまる筈がないんだから。最初からこうすれば早かったとばかりに名乗りを上げるカリオストロ。

 と、結局はそういう結論に落ち着きますか。まとまりのない夜会にありがちな強引な結論に巻き込まれた形の静流は、かく工房長から向けられる嫉妬、警戒、憎悪、憐憫とそんな視線に深い溜息を吐くのだった。


   ◆


 夜会が行われた翌日、自らがトップを勤める『工房』にとんぼ返りしたジョージアは荒れていた。

 ごちゃごちゃと怪しげな物品がスチールラックに押し込められる倉庫のような部屋の一角、ポツンと置かれたソファに座り、テーブル狭しと並べられた酒瓶を煽り、喚き散らす姿は、最早恒例となっていた。


「クソッ、あの女。ゼッテーぶち殺してやる」


 ジョージアが怒りを向けるのは、アニータでありリュドミラであり、静流でありカリオストロだった。

 ジャンヌがその対象に入っていないのは、今回の夜会ではたまたまジョージアにちょっかいをかけるような発言をしなかったからである。

 そう、ジョージアにとっては自分と意見が合わない全ての存在が敵対者なのだ。

 しかし、


「残念ながら工房長の相手など、私共の手に余ります」


「そうだな。あるいはアニータ、リュドミラ辺りはどうにかなるかもしれないが、カリオストロ殿は当然として、ジャンヌや望月が相手でも難しいだろう」


 最初に口を挟んだのはこの工房でナンバー2の地位にあるメリー。続けて、戦力分析をするような補足を入れた黒人女性は戦闘部門を取り仕切るジニーである。

 彼女達は気性の荒いジョージアに意見が言える数少ない人材だった。

 だが、二人のなだめる声も虚しく、酔いに任せて気炎を上げるジョージアの悪態は止まらない。


「あんなクソ共、オレの魔法にかかれば一発だっての。

 取り敢えず、あの生意気な日本人をヤッちまうか?」


 だが、そんなジョージアの強気の発言にジニーが待ったをかける。


「知らないのかボス。望月静流は、あの訳の分からん憑依魔法〈付喪神〉を復活させた女だぞ」


「チッ、インスタントゴーレムか?」


 ジニーが言った〈付喪神〉という魔法の事はジョージアも知っていた。アルコールによって鈍らされた思考能力でも厄介と思える程にだ。

 しかし、ジョージアはそれでもまだ〈付喪神〉という魔法の真の危険性を理解していなかった。


「いえ、望月が使う〈付喪神〉は、所謂、式神と呼ばれるようなペーバーゴーレムではなく、神道と呼ばれる特殊な宗教の理念を礎にしたマリオネット系の魔法です。使い馴染ませた物質を触媒を使用した場合、その性能は恐るべきものになるかと、直接的な戦闘は避けるべきかと」


「たく、老害共がよぉ……、だったらあのクソ猿日本人に任された獲物(ゴーレム)を横からかっ攫ってやるってのはどうよ」


 突きつけられた現実に、脈絡もない案が飛び出すのは酔いが回っているからだろうか。

 とはいえ、ある意味でジョージアの考えは間違いではなかった。

 夜会で得た情報だけでなく、この北米支部が独自に集めた情報を鑑みても、そのゴーレムを手に入れた勢力が、今後の魔女界のキャスティングボードを握ることになるのは簡単に予想できることなのだ。

 そんなチャンスが目の前に転がっているというのに逃してしまうのは惜しいというのは、ジョージアだけでなくリュドミラ辺りも思っているだろうことなのだ。


「だがよボス。横から掻っ攫うといってもなぁ……、そのゴーレムの処理は望月に一任されたんだろ」


「そうですね。いくらこの決定がカリオストロ様の独断だとしても、夜会に出席したメンバーが意義を唱えていないこの時点で、強引な手法に打って出るのはいささか危険かと」


 まあ、夜会で決定された事への異議というなら、ジョージアにもその権利があるのだが、カリオストロの威圧に屈したジョージアが、カリオストロがいないところで異議を申し立てたところで、リュドミラやカーミラ辺りに鼻で笑われるのがオチだろう。

 それがまたジョージアにとっては面白くなくて……。

 どっかりソファに背中を預けるようにして「ア゛――」と、唸るような声を吐き出すジョージア。

 しかし、それも束の間、烈火の如き怒りを込めて、

「ホンット面倒臭ぇ面倒臭ぇ面倒臭ぇ。なんでオレ等があのクソ老害共にビビらなきゃなんねぇんだよ。なんでオレ等があのクソ老害共に気を使わにゃならねぇんだよ。おかしいだろ。間違ってるだろ。舐めてんじゃねえのか」


 一つ文句を言う毎に、目の前のテーブルを蹴りつける。

 放たれる啖呵は身勝手な憎悪に染まった戯言でしかない。

 そして、その行為に意味は無い。

 単に鬱憤晴らしの行動といってしまえばそれまでだ。

 しかし、おかげで頭はスッキリした。

 酔いが完全に醒めたとは言わないものの、敵を潰す算段をつけるくらいの計算力くらいは戻ってきた。

 いや、そもそもジョージアという魔女(・・)は物事を深く考えるような質ではないのだ。

 そう、思い立ったが即行動。即決即断で柵なんて関係ねぇ。ゴーイングマイウェイなマインドがジョージアという魔女そのものなのだ。

 再び「ア゛――」と、クセの強い赤毛をかき混ぜるようにしたジョージアは、顔を上げて、一言――命令を下す。


「やるぞ」


 すると、ジョージアが下したその決断に、ジョージアならばそう言うだろうとばかりに好戦的な笑みを浮かべるジニー。

 その一方で、メリーは内心の心配を示すようにピクリと小さく眉をひそめる。

 しかし、メリーが反対の声を上げることはない。ジョージアが一度言い出したことを決して翻さないと短くない付き合いから知っているからだ。

 そして、一度すべきことを決めてしまえば行動が早いのがこの北米支部に集う魔女達の特徴でもある。

 ジョージアは酒瓶に残った透明の液体を一気に煽り飲むと、メリーに工房の仕事を任せて、ジニーとその部下2名を引き連れアジトを出発する。その口元に嗜虐的な笑みを浮かべて……。


   ◆


 アジトを飛び出して数時間、ジョージア達4人の姿は日本の某地方都市に存在するコンクリート作りの二階住宅の前にあった。ターゲットであるビッグフット及び、間宮虎助の自宅である。

 と、早速、ジョージア達はそれぞれの役割に合わせて、各所にスタンバイ。

 突入役はジョージアとジニーの2人。ジニーの部下2人の役割は探知系の魔法を使った周囲への警戒をしてもらう。

 突入作戦にしては少ない人数のようにも思えるが、こと戦闘においてはトップクラスの魔女が2人――突入役を務めるのだ。たかが一般家庭への突入作戦としては過剰戦力に他ならない。

 それでなくとも、マンハッタンを中心に、後ろ暗い仕事を受けたりもするジョージア達からしてみると、この手の狭い室内での戦闘は得意分野ともいえる戦場なのだ。

 特に細かな作戦などもなく、住宅の前後二箇所に、周囲を見渡せるマンションの屋上にと、大凡の配置が完了したところで、周囲に人気が無いことを確認した各々が、ベルトのバックルを模した仕事道具のスイッチを入れる。

 瞬間、ジョージア達の姿が景色に溶ける。

 いわゆる光学迷彩という機能だ。ただこの装備に限っては、科学だけではなく魔法も併用することによって、自分の周囲の空間に干渉し、ゴテゴテとした装備を身に着ける事無く、現代科学で再現できる何倍ものハイディング効果を得ることが出来るのだ。

 しかし、これもまた一般人に使うには過剰過ぎるアイテムである。

 とはいえ、平和ボケしているクセに凶悪犯罪にはうるさいというのが日本という国である。仕事を済ませてさっさと本拠地に帰らなければ確実に面倒事になる。それでなくてもこの作戦は北米支部の独断なのだ。アジア・オセアニア地域を仕切る望月静流と作戦後すぐに事を構えないようにと、アメリカに残ったメリーからの提案で万全を期すことになったのだ。

 ただ、透明になったジョージアが敷地をまたごうとした瞬間、嫌な予感でも感じたかのようにその動きを止める。

 しかし、この手の感覚はこの仕事をやっていればよくあることだ。首を左右に振ってズカズカと敷地に入っていくジョージア。小さな違和感などジョージアの楽しみ(・・・)を阻む理由にはならなかった。

 そして、不用心にも鍵のかけられていないドアから屋内への侵入に成功する。

 だが、ここで予想外の事態に遭遇する。

 玄関を入ったところでターゲットの一人である間宮虎助に出くわしてしまったのだ。

 本来ならばありえない事態だった。

 何故なら、そうならない様にと、索敵を担当する部下が魔法によって周囲の人間の動きを補足しているのだから。

 もしや部下が失態を犯したのか。透明化した顔を歪めるジョージアだったが、直ぐにその疑念を振り払う。夜会での報告を思い出したのだ。表情にやや緊張の色を浮かべたジョージアがその動きを止める。

 そう、ここで慌てるのは三流のやることだ。

 何故ならジョージアの体はいま光学迷彩によって見えていない状態なのだ。

 不自然にドアが開いてしまったが、それとて、姿が見えていない以上、あまり問題にはならないだろう。

 いや、むしろドアを締める為に近づいてきたところ襲いかかろうとするのがジョージアという女である。

 しかし、ジョージアが必殺の距離に近付くよりも前に、思いもよらないことが起きる。


「え、えと、どちら様ですか?母さんのご友人ですか?」


 間宮虎助が見えていない筈のジョージアに声を掛けたのだ。

 あるいは、いきなり開いた扉に驚き、反射的に声を掛けたのかもしれないが、ジョージアにそれを判断できる材料は無かった。

 と同時に、もともと細かいことを考えるのが苦手なジョージアはここに来て面倒臭くなってきていた。

 もういい。最終的には殺すのだから、見つかったところで関係ない。

 そう言わんばかりに襲いかかろうとするジョージア。

 しかし、頭の何処かでは、助けを呼ばれては面倒だ――と、そんな計算もあったのかもしれない。

 唇だけで呟いた詠唱に乗せて得意魔法の一つ〈サンダースネイク(這い寄る雷蛇)〉を発動させる。

 〈サンダースネイク(這い寄る雷蛇)〉――それは、魔法名そのまま、地面を走る雷の蛇を生み出す魔法である。

 だが、雷蛇を向けられた虎助は、どこからか取り出した鉄串を床に投げつけて、いや、貫通させて、這い寄る電流を地面へと逃す。

 その手際に目にし、反射的に飛び退くジョージア。

 すると、背後から不意に声がかかる。


「あら、お客様?」


「母さんのお客さんかと思ったんだけど。その様子だと違うみたいだね」


 聞こえた声にジョージアが振り向くと、そこには黒い和服に身を包んだ小柄な女性が大きな荷物(・・)を肩に担ぎ佇んでいた。

 しかし、ジョージアの視線は、その女性――間宮イズナからすぐに離れることになる。

 イズナの肩に自らとタイミングを合わせて突入した筈のジニーが担がれていたからだ。

 そして、イズナに続く黒いゴーレム。

 世間的にはビッグフットと認識される小さな存在の頭の上にも、また2人の人物を担いでいた。

 ジニーの部下である他2名だ。

 即ちそれは、感知魔法が得意なメンバーすらも気付かぬ内に殲滅させられていたということになる。

 と、自らがおかれた状況を把握する事に専念するジョージアの一方で、間宮親子の会話は進む。


「じゃあ、ソニアちゃんの知り合いかしら?」


「ボクにはこっちに知り合いなんて居ないんだけど」


 喋るゴーレムに透明なままの目を見開くジョージア。

 しかし、すぐに驚いている場合ではないと思い直したのだろう、ジョージアは余計な魔力消費を避ける為に透明化を解いて、


「テメエ等、何モンだ」


「何者だと聞かれましても」


 それは自分達の方が聞きたいことだ。

 それが虎助の偽らざる本音だろう。

 何しろ玄関が開いたと思ったら透明人間が居て、いきなり雷撃をぶっ放されたのだから。

 そんな、虎助の反応とはまた別に、イズナがジョージアに声をかける。


「質問できる立場かしら?」


 次の瞬間、息を吸うのも困難な程の重圧がジョージアに襲いかかる。

 それは、先日、カリオストロから受けたプレッシャーよりも遥かに強力なものだった。

 言うなれば恐怖そのものが具現化しているようなものか。

 だが、部下を人質に取られて、ただ震えるばかりだというのは、一団の長を任されるジョージアのプライドが許さなかった。


「粋がってんじゃねえ」


「粋がってるのはどっちなのかしら」


 恐怖を振り払うように声を張り上げるジョージアに、微笑みながら圧力を強めるイズナ。

 そして、体の自由を奪わんと猛威を振るう恐怖が許容できる限界に達しようとしたタイミングで、ジョージアが動く。


「もう、面倒だ。全員しびれて死にやがれ」


 投げやりな叫びこそが呪文だとでも言わんばかりにジョージアの体から電撃が迸る。

 全方位に伸びる電撃の正体は〈ライトニングストーム(雷嵐)〉。

 地球上(・・・)で彼女にしか使えない雷系最強の魔法だ。

 しかし、その魔法に冠せられる最強という言葉が、この世界、この時代に限ってだということを彼女は知らない。

 異世界の基準でその魔法が中級の初歩と言われていることを彼女は知らない。

 そして、ジョージアを中心に枝分かれした紫電が周囲を蹂躙する。

 空気を切り裂き、床を焦がし、盛大に火花が散る。

 電撃が収まった室内にプラスチックが焦げたような刺激臭が立ちこめる。

 後は電流対策が施された装備を身に付ける部下達を起こして死体の始末すればそれでお終いだ。

 電撃によって発生した煙の中、振り返ったジョージアが周囲に走った電撃によって拘束の手を離れ、倒れているであろう部下達の下に歩み寄ろうとするのだが、


「もう、こんな場所で魔法――よね?派手な技を使っちゃうんだから。玄関マットが駄目になっちゃったじゃない。どこに請求を出したらいいのかしら」

「いや、母さん。そういう場合じゃないと思うけど」


 まるで吹き荒れた電流すらも日常の一部であるかのような呑気な会話が聞こえてくる。

 そう、虎助にイズナ、そして、ビッグフットとされる黒いゴーレムは無傷のままそこにいたのだ。

 どうやって?

 思わずそんな言葉を零してしまうジョージア。

 しかし、電撃によって発生した煙が薄まった視界の中で、床に付けられた円形に焦げ跡を辿り、自分が薄い透明な膜で覆われていることに気付かされる。

 結界だ。


「出せ……、ここから出せっつってんだよ!!」


 瞬間沸騰、自分が閉じ込められたことに気付いたジョージアが荒ぶる。

 体の周囲に纏わり付いていた電気に魔力を通し、強制的に〈サンダーストーム(雷嵐)〉を再発動させる。

 しかし、その電撃も長くは続かない。

 魔素が極端に薄い地球上で中級の魔法を使うのは、相当な消費を強いられるからだ。

 〈サンダーストーム(雷嵐)〉が再発動して数秒後、電撃の嵐が途切れたところで、冷笑するような声がジョージアに向けられる。


「本当に元気なお嬢ちゃんだこと、面倒だから殺しちゃおうかしら」


 何気なく囁かれたセリフにジョージアの体がビクリと反応する。

 強者としてジョージアが今迄に放ってきた脅し文句が、ほぼそのままの形で帰ってきたのだ。その後の末路など想像するまでもないだろう。

 だが、この場には、唯一、いずなの凶行を止められる人物がこの場にいた。虎助だ。


「母さん。警察に捕まっちゃうから止めてよ」


「冗談よ。

 でも、アナタはどこかでこういう言葉を聞かなかったのかしら?

 ……殺すなら殺される覚悟をするべきだ――とか……、

 まあ、その事を嫌というほど分からせるためにも、ちょっとお仕置きが必要でしょうね。ここで逃して、また玄関を壊されたら困るから」


「ア゛ァン?」


 二人の軽いやり取りからして、イズナが口にした物騒な発言はもともと本気の言葉では無かったのかもしれない。

 けれど、ジョージアにとってはここで雰囲気に飲み込まれてしまったら。その時点で終わりだという予感があった。

 がなり立てるこの声は恐怖に囚われたジョージアにとって反射的に飛び出した精一杯の反撃だったのだ。

 そんなジョージアの声にイズナが何か(・・)をしようとして、腰の高さまでしか無い小さな影が割って入る。『そにあ』だ。


「待ってイズナ。この子はボクに任せてくれないかな」


「あら、ソニアちゃんがこの行儀が悪い子の躾をしてくれるのかしら。

 ああ、相手は魔法使いだものね。でも、それなら私もちょっと受けてみたいわね」


 『ソニア』が出した提案に、以前から魔法という技術に興味を抱いていたイズナが悪戯っぽく笑う。


「ざ、残念だけど、ボクにイズナの先生はちょっと荷が重いかな。

 ま、まあ、虎助のこともあるから、その内に魔法の教科書みたいなのを用意しておくよ。

 その時にまた虎助(・・)に教えてもらうといいさ」


 しかし、イズナの願いはソニアにとって手に余るものだった。

 だからその辺りの面倒はと、唯一イズナのストッパー役たりえる虎助に押し付けて華麗にスルー。

 その上で、この話はこれでお終いとばかりにさっさと話を前にすすめる。


「取り敢えず、結界を解いて暴れられても困るから。イズナ。このまま彼女を気絶させることはできるかい?」


「何を――」


「そうね、問題ないわ」


 と、そんなソニアの思惑などお見通しとばかりに笑顔で応じるイズナの声を最後に、ジョージアの意識はプッツリと途切れるのだった。


   ◆


 どれくらいの時間、気絶していたのだろう。目を覚ましたジョージアは赤茶けた荒野の中にいた。中央アメリカに見るような赤茶けた不毛の大地だ。

 ただ、ジョージアがいま寝かされる場所のすぐ近くには数本の鉄杭が無造作に立てられており、彼方に視線を飛ばせば、ストーンヘンジのような石柱群がぼんやりと見えている。

 そんな視界の端っこには、気絶した状態のジニーとその部下2名が倒れており、ジニー達を介抱する虎助の姿もあった。

 と、それを何となく眺めていたジョージアだったが、暫くして意識がハッキリとしてくると、気を失う前に何があったのかを思い出したのかのように目を見開き、そのまま眼球だけを動かし、周囲に視線を走らせる。

 ジョージアが探しているのは一番の脅威になるだろうイズナの姿だ。

 それは、恐怖からくる警戒なのか。それとも、恥辱からくる復讐心なのか。

 ともかく、ジョージアにとってイズナという存在は、短い邂逅によって無視できぬ存在となっていた。

 しかし、確認できる範囲にイズナの姿が見当たらない。

 隠れている可能性はあるが、確認できる範囲では近くにいる様子は伺えない。

 つまり、撤退するなら今がチャンスだということだ。

 そして、幸いにも、使い果たしたと思われた魔力も何故か回復している。

 イズナがどこに居るのかは把握できないが動くなら今しか無い。

 そんな決意を固めたようにジョージアは表情を引き締め、口内だけで呪文を構築する。

 気付かれる前に〈サンダースネイク(這い寄る雷蛇)〉で眼の前にいる少年――間宮虎助を無効化しようとしたのだ。

 そこには当然、虎助を人質にイズナに対抗しようという計算があったのだろう。

 しかし、いざ、魔法を発動させようとしたその瞬間、当の虎助から声をかけられてしまう。


「すいません、母さんが無茶をしまして」


 虚を突かれたジョージアは魔法の発動に失敗してしまう。

 そして、


「テメエ……しっかり気付いてやがったのかよ」


 舌打ちをするジョージアに虎助はまた1人、ジニーの部下に気付けを施しながらも返事をする。


「えと、そうですね。殺気って分かりますか?

 ジョージアさんは殊更それが強いみたいで、分かりやすいんです」


 現代に生きる魔女には信じられていないが、殺気というものは確かに存在する。

 しかし、それはアニメや漫画にあるような経験からくる判断や、一部の達人が身に着けるような超感覚的なものではなく。単に魔素を介して伝えられる原始的なテレパシーの一種――そうであると虎助は知っていた。

 いや、あるいは本当に漫画的な能力もあるかもしれないが――、

 あくまで虎助の場合は、調査という魔素を知覚する魔法をマスターし、仕事柄それを使い熟す過程で、他者が自然に漏らす魔素――いや、魔力から、特に強い反応を示す、殺意や害意という思念を受け取ることが出来るようになったのだ。そして現在、虎助は、この地球上の人間の中で(・・・・・・・・・)最も殺気に敏感な感覚を備えるようになっていたのだ。

 と、そんな説明を省いた虎助の返答にジョージアが返した言葉は、また別の事に関する質問だった。


「名前まで知られてるってか?」


「蛇の道は蛇って伝わりますか。まあ、母さんを相手にした時点でその辺りは諦めて下さい」


 翻訳による英語への変換。虎助はそれがきちんと行われているのかを気にしながらも、


「それでですが、ジョージアさんは気絶する前の話を覚えていますか?」


「お仕置きなんて馬鹿げたことを言ってやがったなぁ」


 雷滅の魔女などと呼ばれる自分がお仕置きなんて悪い冗談だ。

 そうとばかりに虎助の話を鼻で笑うジョージアだったが、ふと気付く。

 少しの会話を交している間にも、虎助の手により気絶から回復させられた部下達が、まるで借りてきた猫のように大人しくしているのだ。

 自分ほどではないが、それでも好戦的であるジニーが、上司であり、親友でもある自分が貶されるような事を言われているというのに、何もしないでいるというこの状況がジョージアには理解できなかった。

 しかし、そんな疑問が何らかの形で口をついて出る前にこんな声を掛けられてしまう。


「ちょっと振り返ってみてください」


 しかし、そう言われて素直に振り返る魔女(バカ)がどれだけいるだろうか。

 敵対する相手に背中を見せる行動そのものが致命的な隙になるからだ。

 実際、ジョージアもそうやって幾人もの人間(バカ)を手にかけてきたのだから。

 だが、今回ばかりは振り返った方がいいと、ジョージアの本能が、そして部下達の瞳がそう訴えかけていた。

 だから、癪に障る――、

 そんな表情をしながらもジョージアは言われた通りに振り向いてみるのだが、ジョージアは自分が下した判断をすぐに後悔することになる。

 振り返った先にあった光景を目にし、部下が何故黙り込んでいるのかを理解したからだ。

 そこに居たのは馬鹿馬鹿しいほど巨大なゴーレムだった。

 所謂、アニメでお馴染みの変形ロボットのくらいの大きさの、しかし、その外見は、ベーシックなゴーレムにありがちな丸みを帯びた土人形というような大巨人。

 そんな巨大ゴーレムに目を奪われるジョージアを尻目に、虎助はその場から離れるようにしながらも、こう声をかける。


「えと、一時間後くらいしたらまた見に来ますから、それまで何とか正気を保っていて下さいね。

 ああ、フォローもつけていますし、おそらくここで死ぬことは多分ありませんから、そこのところはあまり心配しなくて大丈夫ですよ」


 しかし、今のジョージア達に虎助の言葉を聞く余裕など無かった。

 正確には確認しようと思うことさえ難しかったという方が正しいだろう。


「じゃあ、皆さん頑張ってください」


 そして、その一言がきっかけだったかのように眼前の巨大ゴーレム〈モルドレッド〉が動き出す。


「うぅぅわぁぁああ!!」


 果たして彼女達は虎助という少年が告げた一時間という時間を無事に生き延びることができるのか。

 気が狂いそうなくらいの膨大な魔力を放ちながら鉄腕を振り上げる巨大なゴーレムに、誰ともかく叫びを上げて、蜘蛛の子を散らすようにてんでバラバラの方向へと逃げ出していく。

 しかし、ジョージア達に逃げ場は無い。

 虎助がこの場を離れたその瞬間、四方を囲うように配置された鉄杭によって、出入禁止と認識阻害、二つの効果が込められた結界が発動したからだ。

 そう、彼女達はには、もう――、このお仕置きを受ける道しか残っていないのだから。


   ◆


 閑静な住宅街に立つ二階建ての一軒家。

 どこにでもあるような民家の前に立つ妙齢の女性(いや、実年齢を考えると初老と言った方が正しいのだが)望月静流は重い重い溜息を吐き出していた。

 急遽開かれた夜会から数日後、カリオストロからのご指名(・・・)を受け、件のゴーレム関係者にアポイントメントを取ろうとその手段を探していたところ、どういう訳か、会おうとしていた人物から(正確にはその保護者から)呼び出しを受けたのだ。

 それだけでも面倒な状況だと言うのに、更に何を考えているのか分からない上司を引き連れて、呼び出した相手の自宅、つまり本拠地に顔を出さなければならないとなれば、静流がどんよりとした重い空気を纏ってしまうのも仕方のないなのかもしれない。

 しかし、ウダウダしていたところで嫌なことが無くなる訳でもない。

 静流は「良し!」と小さく気合を入れるようにしてインターフォンをプッシュ。すると、程なくして「はーい」と黒い和服に身を包んだ小柄な女性が玄関扉を開き顔を覗かせる。間宮イズナだ。

そして、イズナは二人に目線を送りなり、こう訊ねる。


「望月静流さんとそちらはラミリス=(ハザード)=カリオストロさんでいいかしら?」


 と、この先制パンチに固まってしまうのは、もちろん静流とカリオストロの二人である。

 呼び出しを受けたからには静流の名前が発覚しているのは仕方が無い。

 だが、カリオストロの本名が飛び出すとは思っていなかったのだ。

 しかし、いつまでも呆けている訳にはいかない。


「この度はお招きに預かり大変恐縮です。我々が呼ばれた理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」


 正直、静流達の側からすると、呼び出された理由がまるで分からない。

 そんな静流の問い掛けにイズナは「取り敢えず玄関先で話すことでもありませんし」と二人をリビングまで招き入れたところで口を開く。


「本当はね。そちらから接触するまで待とうって考えてたんだけど、四人ほど、そちらの人員を預かっている以上、声をかけておいた方がいいんじゃないかってウチの息子がいいましてね」


「どういうことでしょう?」


「とぼけているのかしら、それとも本当に知らないの?

 だったらお招きする必要は無かったかしら」


「本当に何の事だか、良かったら詳しい話をお聞かせ願えませんか?」


 答えているようで答えになっていない。

 イズナの言葉を受けて首を傾げる静流。

 すると、思いもよらない最悪の名前がイズナの口から聞かされる。


「ええと、ジョージアさん――だったっかしら、ジョージア=フランクリンさん。

 ちょうど三日前、彼女が手勢を率いてウチに忍び込んできたのよ。

 とはいっても、見張りを合わせて4人という少人数だったけれど」


 聞きたくもなかった名前を聞かされ、思わず顔をしかめてしまう静流。

 しかし、結果としてジョージアの件は魔女達の側の不手際だ。不承不承その詳細を訊ねかける。


「失礼ですが、いま彼女は?」


「一応無事よ。

 無事なんだけど、再教育の最中だからもう少し預からせてもらえる」


 ここは慎重にと言葉を選ぶ静流にあっけらかんと答えるイズナ。

 その言葉を信じるのなら、この家に侵入したジョージアは既に無力化されていて、イズナの手に落ちていることになる。

 しかし、静流はその話をすぐに信じることが出来なかった。

 静流はジョージアが持つ高い魔法戦闘力を情報として知っていたからだ。

 そして、その気性の荒さも――、

 そんなジョージアが侵入してただで済むはずがないのだ。

 おそらくは相当の被害が出ただろう。

 しかし、当のイズナは何の気負いもなくこう言うのだ。


「なんて言ったかしら【雷滅の魔女】? 彼女が使う魔法には少しビックリさせられたけど本物の魔法使い(・・・・・・・)にはても足も出なかったみたいよ」


 イズナは壁にかけられた時計を見て、


「多分そろそろ帰ってくる頃だから、ちょっと待っていてくださいね」


 そう言い残してリビングを出て行ってしまう。

 まるで、今から下手人を連れてくるから、その間に対応を決めておきなさいと言わんばかりに……。

 不意の放置状態に唖然とする静流の横、カリオストロが珍しく硬い口調で話しかけてくる。


「どうやら面倒な状況になってしまったみたいですね」


「ええ、本当にあの直情馬鹿には困ったものです」


 静流としてはジョージアが変に仕掛けなければ穏便に済ませられたという計算があった。

 相手方から招かれるまで接触できなかったのは、ひとえに自らの不徳の致すところであったのだが、一度接点さえ持ってしまえば、後は交渉次第でどうにかなると考えていたのだ。

 だが、そんな目論見もジョージアの暴走で一気に難しくなってしまった。

 状況から判断できる現状に静流の口調がつい荒くなってしまうのも仕方のないことなのかもしれない。

 しかし、カリオストロが口にした面倒というのは、静流のそれとは少し違っていたようで、


「いいえ、私が言っているのはジョージアのことではありません。

 まあ、この場合は相手方がどう思うかの問題もありますからそうであるとは言い切れませんが、基本的に今回の件(間宮毛襲撃)は、彼女達の独断行動ですから、それに対してワルプルギスが動くことはありません」


 カリオストロの言う通り、ワルプルギスとはあくまで世界中に散らばった魔女達の互助組織のようなものでしかなく、自分達に関わる問題への対処や意見交換はするものの、同じ組織に属するものが捕えられたとしても、その行動が独断専行によるものならば、命をかけてどうにかするという繋がりではないのだ。

 ならば、カリオストロがいう面倒とはなんなのか。


「問題なのは、我々組織の一員が、まかりなりにも彼女――間宮イズナと敵対してしまったというところにあります。

 あれはある種の化物よ。

 私達二人が、いえ、ワルプルギスの上位会員の全員で当たったとしても勝てるかどうか分からないわ」


「それ程までの相手なのですか?」


 切れ長の目を見開き驚く静流。

 静流としてはジョージアが無力化されたと聞かされた時点で、その真偽はともかく、間宮イズナという人物に対する危険度を上方修正していた。

 それでも、カリオストロすらも警戒する程の人物とまでは考えていなかったのだ。

 しかし、そんな会話を二人が交わしていた時だった。まさにカリオストロが危惧していた事を具現化するような囁き声が二人の背後から聞こえてくる。


「あら、化物だなんて酷いわ」


 それはそれは穏やかな――、

 しかし、心臓を鷲掴みにするような声だった。

 数日前の夜会にて、カリオストロが放ったようなプレッシャーが、それ以上に濃密なナニカが二人を襲い、動けなくする。

 いや、それだけではない。

 扉から出ていったいずながどうやって背後から声を掛けてこられるのか?

 確かに、いま座るソファの後ろにはスペースがあった。

 しかし、背後に窓は無く、回り込むには自然と二人の視界を横切らなくてはならない。

 それなのにどうやって?

 すぐにでも振り向いて確かめたい静流とカリオストロの二人だが、その意思に反して、体が金縛り(・・・)にでもかかったかのように体が動いてくれない。

 そんなもどかしさと恐怖が入り交じる状況の中、リビングから廊下へと繋がる出入り口から姿を表したのもまたイズナだった。

 えっ!?素っ頓狂な声が静流の口から零れ落ちる。

 しかし、「どうしたのかしら?」と、しれっと笑顔で聞いてくるイズナの態度に何も言えなくなってしまう。

 聞いてしまったが最後、その先がないかのような雰囲気をイズナが醸し出していたからだ。

 そして、問い詰めることすらも憚られる空気漂うリビングに、イズナに続いて一人の少年が入ってくる。ゴーレムのマスターであるとされる間宮虎助だ。


「すいません遅くなりました。ちょっと向こうに行っていまして、

 えと、初めましてでいいですか?間宮虎助です」


 虎助が零した『向こう』という単語が気になったのか、反射的に口を開きかける静流だったが、カリオストロがそれを制する。

 名乗られたからには返さなければならのが礼儀である。

 カリオストロの行動を、失礼があってはいけないと、そういう風に理解した静流は簡単な自己紹介をする。

 それにカリオストロが続いたところで話が聞きそびれていた本題に戻る。


「それで我々が呼ばれた理由なのですが――」


 イズナの方に伺う視線を送りながらもズバッと切り込んでいく静流に、虎助は申し訳無さそうな顔をして、


「すいません。

 実は、今日お二人をお呼び立てしたのは、ジョージアさん達を引き取ってもらおうと思ったからなのです。

 ただ、こちらの事情で引き渡しにはもう少し時間がかかりそうでして」


「では、呼ばれた意味は無かったと言うことですか?」


 イズナに見張られる緊張感からか、若干言葉足らずになってしまった静流のセリフに、虎助が過剰反応をする。


「いえ、あの、その、本っ当にすみません。

 せっかくお越し頂いたのにこのまま帰す訳にはいきませんよね。

 えと、そうですね。お二人は【魔女】でいいんですよね」


「……はい」


 分かっているだろうに敢えて確認するかのような虎助の物言いに、何を要求されるのか。警戒に体を強張らせた静流は思いもよらない言葉を耳にする。


「でしたら、魔法薬とかマジックアイテムの類のご入用はありませんか?

 よろしければ格安でご用意させていただきますけど……」


「「えっ!?」」


 突然切り出されたその提案に、静流とカリオストロの声が揃う。

 だが、すぐに自分を取り戻したのは年の功か。カリオストロが問い返す。


「ええと、それはマジックアイテムを譲ってもらえるということでよろしいですか?」


「はい。実は僕達、とある場所で魔法薬やマジックアイテムなんかを販売する『万屋』を開いていまして、魔女の皆さんなら僕達の店にある商品に興味があるのではないかと、

 お呼び立てしておいて何のお構いも出来ずに返してしまうのは申し訳ないですから。

 それに、後日またジョージアさん達を回収してもらう必要もありますから、よかったら、その辺りのアイテムを幾つかお譲りしたいと思うのですが、どうでしょう?」


 どうでしょうと言われても、迷惑をかけたのはこちらなのに――、

 そう言わんばかりに顔を合わせるカリオストロと静流。

 そんな二人のリアクションを勘違いしたのか、焦った虎助が「ちょっと待って下さいね――」と、席を立つ。

 そして数分――、

 虎助は両手に様々な薬瓶を抱えたゴーレムを引き連れて戻ってくる。


「これは……」


「試供品の魔法薬です。

 実物があった方が分かりやすいと思いまして、

 他にも雑貨や各種素材、オーダーメイドで魔具なんかも作っていたりするんですけど――」


 見慣れたものから見慣れないものまで、各種マジックアイテムに魔法薬。そして、地球ではほぼ入手不可能な魔法金属らしきものまであった。

 それは現代に生きる魔女にとって貴重過ぎるアイテムの数々だった。

 しかし、静流にはもう一つ気になる点があった。


「あの、このビッグフットといいますか――ゴーレムも商品なのですか?」


 試供品の並ぶガラステーブルのすぐ傍らに佇む黒いゴーレム。それを指差す静流に虎助の動きが止まる。

 そんな虎助の反応に、カリオストロが慌ててフォロー入れようとするのだが、その前に、


「それは『そにあ』を譲って欲しいということですか?」


「可能ならば」


「どうなんでしょうか『そにあ』は特別製ですから、難しいかと、

 値段によっては(・・・・・・・)同じような(・・・・・)ゴーレムを(・・・・・)作れなくもないとは思うのですが、

 すみません、店の方針で信用できない方にあまりに強力な魔動機なんかは売らないようにしているんです……」


 虎助の言い分は魔女の側からしても納得できる答えだった。

 何しろゴーレムは機密情報の塊なのだ。その内部には魔法式や錬金術の技法。その他、貴重な素材が詰まっているのだ。よく知らない相手に、それこそ何の担保も差し出す真似など考えられない。

 それを十全に理解しているような虎助の返しに、ついこんな考えが思い浮かんでしまう。


「もしや、間宮さ――いえ、虎助さんは〈錬金術〉を嗜んでいるのでしょうか」


 一度は静流の言葉を遮ろうとしたカリオストロだったが、その質問内容は気になったのだろう。黙って聞く体勢に入る。

 そんな静流達の疑問に対する虎助の回答は以下の様なものだった。


「僕が作れる訳じゃありませんよ。

 ただ、僕が勤めている店のオーナーなら、ほぼ同じものをつくれるかと――、

 まあ、時間とお金は相当にかかるでしょうが」


「因みにその店はこの近くに?」


「ああ、これは特に秘密と言う訳じゃないんですけど、実はそのお店というのが異世界にありまして、これもやっぱり連れて行くのが簡単じゃないといいますか――」


 長き時を生きる魔女であるカリオストロにしても、異世界の間を行き来するような大魔法の存在を知らなかった。

 いや、逆にそれだけの実力を明かすということは、敵対したらどうなるか。それを示す一種の暗喩なのか。虎助の伺うような視線にイズナから受けた恫喝まがいのプレッシャー。カリオストロは間宮家にやって来てから体験した数々の出来事を思い出すかのように黙考し、自分達がおかれる立場を慮って判断したのだろう。最終的には先送りの決断をする。


「分かりました。

 取り敢えず、その件は持ち帰って検討させてもらってよろしいでしょうか。

 何しろこれだけの魔法薬やマジックアイテムを購入するのには、それなりの手持ちが必要でしょうし」


「そうですよね。高い買い物ですからね」


 残念そうな虎助のリアクションに自分達の方が悪い気分になってしまう静流達。

 いや、実際に仲間の暴走を止められなかった時点で静流達に正当性を語る資格はないのかもしれない。

 そう。くしくもジョージアが強行しようとした。いや、実際に行動に移った。勝者こそが正義とばかりの行動は、虎助やイズナ達の側にも言えることなのだ。

 そして結局、お互いの思惑がすれ違ったままに第二回魔女との遭遇はお開きとなり、間宮家を後にすることになる静流達だったが、


「どうして交渉を先延ばしにしたのですか?」


「静流、アナタは気付かなかったのですか。

 彼は我々にも匹敵するだろう魔力を持っていましたよ。

 下手に警戒を与えていたら我々を相手にできるくらいには」


 まさか――、

 つい口にしてしまったその言葉が静流の内心を如実に表していた。

 あんなどこにでもいるような少年が、秘術で若返りや寿命延長などを施した静流やカリオストロに匹敵するという事実など、魔女という常識(・・・・・・・)に囚われる彼女達にとってはありえないことなのだから。

 しかし、カリオストロの次の言葉でそんな疑念も吹き飛んでしまう。


「この国の諺というものにあるでしょう。

 蛙の子は蛙と――、

 彼は――、あの虎助という少年は間宮イズナという女性の息子なのですよ」


 それは、なんと説得力のある言葉だろう。

 あの家であった異常な出来事を思い返すかのように黙り込む静流。

 それ程までに、間宮いずなという女性は静流にとって異質な存在だったのだ。

 と、そんな静流を慰めるようにカリオストロが優しく語りかける。


「まずは彼等の信頼を得ることから始めましょう。慎重にすすめるだけの理由が彼等にはありますから」


 そして、最後にこう締めくくる。


「やはり、リュドミラやカーミラでは彼等の相手は難しいでしょうね。ということで、静流――、彼等との折衝はアナタに任せたいと思うのですがよろしいですね」


「え゛っ」


 にっこりと微笑むカリオストロの有無を言わさぬプレッシャーに静流は何も言えなくなってしまう。

 間宮いずな程ではないにしろ、カリオストロという人物もまた一種の化物なのだから。

 これが中間管理職の世知辛さか。静流はキリキリとした痛みを胃に感じつつも、黙ってカリオストロの後についていくしかなかった。


   ◆


 それから数日後、彼等が言った通り、ジョージア達は静流達の元へと帰ってきた。

 ただ、帰ってきたジョージア達に以前のような粗暴さは欠片もなく、まるでよく訓練された兵士のような静かな規律を備えていた。

 そんなジョージア達の姿を見て、まだ間宮家に手を出そうとしていた魔女達の動きが次第に沈静化していくことになるのだが、それはもう少し先の未来であった。

 今回の題名である『とある魔女』というのはジョージアではなく、中間管理職で苦労人の静流のことです。


 バックアップって大事です。今回、長いのに途中でデータが吹っ飛んで発狂しそうなになりました。

 例えるならローグ系ゲームで育てに育てた武器を不慮の事故で失った感じですか。

 心が折れそうになりました。


 やっぱりゴールデンウィークだからでしょうか。今日はポイントとか評価、ブクマをしてくれる人が増えていました。ありがとうございます。

 これからも楽しんで読んでもらえるような作品を書いていきたいと思います。

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