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フレアとレニとリーヒルの森林開拓

 ◆今回はタイトル通り、フレア・レニ・リーヒルがメインのお話です。

 転移による魔力光が収まると、そこはコンクリート造りの遺跡の中だった。


「ついたか」


「そうですね」


 転移は一瞬、移動疲れということはないのだが、やはり今までとはまったく別の場所への移動したという気分的な負担があるのだろうか、何気ないフレアからの呼びかけにレニは小さくため息をつきながらもそう答え、まずは頼まれたこれをと、スカートの中――正確にはスカートの内側に吊り下げられたポーチ――からキューブ状のクリスタルを取り出して、それをいま転移してきたばかりのゲートの傍ら、目立たない柱の影に設置する。


 ちなみに、このクリスタルはインベントリという魔法的な集積回路を利用した中継機。

 この中継機が上手く働けば――もちろんそれを受信するものが必要となるのだが――それこそ世界と世界をまたいだ情報のやり取りも可能となるという代物だ。


 レニは設置した中継機をすぐに起動。

 今しがた移動に使ったゲートが機能停止しても魔法窓(ウィンドウ)の機能がすべて使えるのか、周辺にある中継機の場所をダウンロードされている魔法アプリから検索して、魔王城からつながるネットワークの中にこの中継機も加わったことを確認すると、さっさと遺跡を後にしようと出発するのだが、いざゲートのあるその部屋から出ようとしたところで問題が発生する。

 レニの仲間であり、魔王軍の幹部であるリーヒルが、そのあまりの巨体が故に、その部屋から出られなかったのだ。


 結局、フレアとレニがリーヒルの体を分解して、どうにかこうにかその通路を通り抜けたのだが、いざ通路を抜けて、二人が改めてリーヒルを組み立て直そうとしていたところにテトテトと近付いてくる一匹のリス。


 遺跡の奥に突如として現れた一匹のリスに警戒心を高めるレニ。

 しかし、そんなレニにフレアが言うのは、


「大丈夫だ。あれは虎助のところのゴーレムだ」


 そう、このリスは万屋から派遣された案内役。

 この森の周囲の調査、そして、魔王パキートの居場所の調査をしてくれていた万屋製リス型探査ゴーレム『リスレム』の一匹だ。


 そんなリスレムの先導で向かうのは、これからの拠点になる森の中心部。

 いまだ夜も開けやらぬ森の中、道なき道を切り開き、出会う魔獣を倒しながら鬱蒼とした森の中を突き進むフレアたち。


 ちなみに、この道は、のちのち重要な補給路になるということで、レニ達はリーヒルがなんとか通れるくらいに道を広げながら進んでいる。


 そして、道中倒した魔獣の回収を忘れてはいけない。

 これを万屋に売れば今後の活動資金になるのだから。


 と、そんなこんなで小一時間、フレアが風の魔法で草や雑木刈り取りつつもレニと一緒に襲いかかってきた魔獣を撃退、リーヒルがドリルモードに変形して切り開いた道軽くならし、進んだ先にあったのは小さな泉。

 直径にして十数メートルくらいになるだろうか、おそらくはどこか地中から水が湧き出してきているのだろう。周囲に水の流れが見当たらないにも関わらず、ポツンと存在するその泉の周りは、水気の影響からか、何本かの倒木が折り重なるように倒れていた。


 と、そんな泉に辿り着いた三人は、薄明かりが照らし出す幻想的な光景に見惚れるでもなく、淡々とした様子で、


「それで何から始めるのだ」


「まずは物理的な結界の設置ですね。安全に拠点作りをするなら必要です」


 とはいっても、これはあらかじめ万屋から仕入れた結界で、特殊なミスリルの杭を打ち付けていくだけで誰でも簡単に使える類の結界だったりする。

 ゆえに三人は、結界の中心となるミスリル製の小さなオベリスクを拠点に設置すると、それぞれ杭を二本づつ持って周囲に散らばり、先ほど中継機の位置を把握するのに使った魔法窓(ウィンドウ)の機能を使って、オベリスクを中心にきれいな六角形を作るように魔力を通した杭を地面に打ち込んで、最後の仕上げにと拠点に打ち立てたオベリスクに魔力を注入。その結界を発動させると、結界がきちんと起動しているかを実際に結界に触れてみることで確認し、オベリスクにそれぞれの魔力を登録、自由に出入りをできるようにしたところで結界内の木々の伐採を始める。


「しかし、このチェーンソーという魔導器は凄まじい威力だな」


「悪用するなよ。虎助はお前を信じてその武装を与えたのだからな」


「わかっている」


「かの店の方々にはお世話になりましたから、違えることは有りません」


 ソルジャーモードに変形、万屋において追加されたパーツで木々を伐採していくリーヒルが、その威力に思わず呟いた言葉、その言葉にフレアが注意を入れて、レニもそれに同意する。

 彼ら魔王軍としても、今回のことで多大な支援をしてくれた万屋には感謝しているのだ。

 ゆえに彼らの主義主張を違えることはあり得ないと――、

 そんな会話がありながらも、リーヒルの頑張りによって泉周りの伐採は進み。

 一方で、フレアは残った切り株を抜く作業を、レニがリーヒルの切った木の処理を行っていくことしばらく、太陽もすっかり顔を出し、広さにして約四百平米と、それなりの空間ができたところでようやく拠点作りが本格化する。


 まず行うのは地ならしだ。

 凸凹だった森の土地をドリルモードに変形したリーヒルが、新たに追加されたローラーオプションを使って整地する。

 その後、フレアとリーヒルが力を合わせて、これから自分たちの拠点となる建物を建てる土地の地面を掘削。

 周辺に落ちていた岩を砕き、浅く掘った穴の中に敷き詰めて、それをローラーで締め固めたところでレニに交代する。

 レニはあらかじめ万屋から提供されていた土魔法を使って砂利の上に強固で平らな土の土台を形成。

 作られた土台の上に、前もってアヴァロン=エラで形を整えてもらっておいた鉄筋の基礎を、マジックバッグから取り出して、設置をしていく。


 ちなみに、鉄筋の骨組みを組み立てていくのはフレアとリーヒルの役割だ。

 一方、レニはそんな二人の監督を行いながらも、作業の音を聞きつけ結界の周りに集まってきた魔獣達を結界の内側から、彼女のトレードマークともいえる赤い魔法で狩っていって、

 作業を続けること数十分、鉄筋の骨組みが完成したようだ。


 すると、レニは魔獣の相手の蹂躙を一時中断、血の匂いにつられて他の魔獣が寄ってこないようにと〈浄化(リフレッシュ)〉をかけた魔獣の死体をマジックバッグに回収。そして、フレアとリーヒル、二人の元へ戻ると一枚の魔法窓(ウィンドウ)を呼び出して、そこに表示させた魔法式を発動させる。


 これは指定した座標に複雑な形の結界を作り出す魔法。

 レニがその魔法を発動させるとフレアが設置した鉄筋の骨組みが半透明の結界で覆われる。

 そして、その結界の中にフレアとリーヒルが、このためだけに用意した筒状のマジックバッグを逆さまに、ドロドロの物体を流し込んでいく。


 ちなみに、このどろどろの物体の正体は速乾性コンクリート。錬金術により生み出された魔法のコンクリート。

 そう、レニが作った結界はこのコンクリートが乾くまでの間の土留めの役割を果たす結界だった。

 耐久力こそそこまでではないものの、重いものを支える持続力に定評のある結界だ。


 さて、そうして注入したコンクリートに振動魔法を発動し、コンクリート内に溜まった空気を抜いたところで、フレア達はレニと交代で拠点の周囲に潜む魔獣の討伐にかかる。

 一方、手の空いたレニはリーヒルが伐採した木材を魔法を使って乾燥させてと、途中で昼休憩を挟みながら作業をこなしていく。


 と、またしばらく地味な作業を続けたところでコンクリートが固まったみたいだ。

 レニ達はしっかりと基礎が乾いていることを鑑定系の魔具を使って確認すると、コンクリートの基礎に万屋で受け取ってきてあった加工済みの土台材をしっかりと設置。

 体が大きく力仕事が得意なリーヒルがスパイダーモードに変形、この作業を行う為に追加されたアームを使ってレニが風の魔法で簡単に加工した丸太を積み重ねてゆく。

 と、リーヒルが積み重ねた丸太にフレアがつなぎ材(ダボ)を打ち込んでゆき、そろそろ日暮れも近い頃になって外壁が完成。


 ここからは少し急ぎ気味に屋根を掛ける作業に移る。

 ちなみに、これに関しては、あらかじめ万屋で下地になる無垢材やら防水シート、その上に貼り付けるこけら板を用意していたということで、設置するのに時間はそこまでかからない。

 スパイダーモードのリーヒルのフォローのもと、フレアとレニが万屋から提供された電動釘打ち機で屋根を設置していって、最後に玄関や窓を取り付けて取り敢えずは完成だ。

 内装はまだまだであるが、これで今日の寝床は確保できたということで、リーヒルを除いた二人はログハウスの中へ。


「さて、キングたちはちゃんと合流できたでしょうか」

 ◆ちなみに、現実だとこんなに簡単に巨大なログハウスなんて建てられないですよね。

 というか不可能です。


 まあ、そこは魔法や錬金術の力やらと、魔王軍なんていう規格外な人材が二人いるということで、ぬるっと納得していただけるとありがたいと思います。


 実は強化発泡スチロール(でいいんでしょうか)で建設する、某龍球漫画に出てくるような家なら簡単に作ることが出来るのではと、そんなアイデアもあったりしたのですが、そうすると一瞬で家が出来てしまうのではと、ログハウスを作ることになったという経緯もあったりします。


 でも、森の中のログハウスとか、殺人事件が起こりそうなシチュエーションですよね。(ネタフリとかじゃありませんから)

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